横浜市水道局のページより
横浜市は一般の浄水場の見学を行っている。というわけで、私が今回見学させていただくのは相鉄線上星川駅からは徒歩15分という場所にある「西谷浄水場」。実は横浜市は近代水道の発祥の地であり、この西谷浄水場も昨年100周年を迎えた古い歴史を持つ浄水場だ。浄水場見学はちょっとした人気スポットだそうで、予約に時間がかかってしまった。そして1か月ほど待ってようやく見学の日がやってきた! 楽しみだぞー。西谷浄水場の見学は月曜日から金曜日までの平日と第2土曜日(*第2土曜日の見学は、20人以上の団体に限る)に予約して行うことができる。見学についてはこちらをどうぞ。
相鉄線上星川駅から西谷浄水場まで歩いている途中、ものすごい坂に遭遇した。
相鉄線上星川駅から西谷浄水場まで歩いている途中、ものすごい坂に遭遇した。
すごい坂
この坂は「水道坂」。西谷浄水場は自然に流れる性質を利用した自然流下方式で配水を行うため、かなり標高の高い場所にあるのだ(近年は配水ポンプも併用している)。
水道坂
なので、西谷浄水場へ向かう道は坂だらけに慣れている横浜民でも割とビビるレベルの坂がずっと続くのだ。
横浜市水道局のマーク
坂を上る途中、道路に横浜市水道局のマークを見つけた。顔を上げるとそこにあったのは……。
洋館のような雰囲気のある建造物
とても雰囲気のある建造物が。横浜ではこうしたクラシカルな建物をよく見る。この建造物は西谷浄水場旧計量器室跡。
中を覗くとそこには……
今は使われていないということだったが扉から中を覗いてみると計量器らしきものが! わくわくする!
西谷浄水場へ
鮮やかなブルーの作業服。自然の緑との対比が目に鮮やかだ。
水道坂を上りきった先に西谷浄水場があった。ここでは横浜市鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、保土ヶ谷区などに給水している。
旅館的
浄水場の見学は1日2回、この日は2組の施設見学客がいたのだがこのように歓迎してくれている。
本日案内をしてくれる西谷浄水場職員の竹本さん
横浜スタジアム換算なんだ
施設の見学は2時間程度。先に浄水場の紹介スライドを見る。地域の小学生も見学に来るので、紹介のスライドも非常にわかりやすいものとなっている。「ああ横浜だな」と感じたのは、西谷浄水場が毎日作っている約35万6千立方メートルという水を、東京ドームとかではなく「横浜スタジアム」換算をしていた点だった。
スライドの後は希望すれば浄水場で行っているような水の浄水体験をさせてくれる
頂いた資料より
浄水場の水は、浄水場の水の玄関である①着水井(ちゃくすいせい)→水の中の汚れ(土や砂)を沈殿させる②沈殿池(ちんでんち)→もっと軽くて小さい汚れを取る③濾過地(ろかち)→飲めるようになった水を一時保存する④配水池(はいすいち)の大きく分けて4つのプールを通過することで私たちが普段口にする水道水となっているのだ。というわけで施設の案内をしてもらう。
施設内を見学する
そして待ちに待った施設見学!
浄水場施設を見て回っていきます。
ツツジの見頃に来てみたかった
古い歴史を持つ西谷浄水場の敷地内には歴史を感じさせる建造物がたくさんだ。例えば移動中に見えたこの建物は大正4年(1915年)に築造されたレンガ造平屋建 銅板葺(ルネサンス様式)というもので、国の指定登録文化財になっている。ちなみにグリーンのモコモコはツツジで、初夏にはピンク色に染まり絶景となる。
①相模湖から来た水の玄関(着水井)
まずは相模湖から水が到達する水の玄関、着水井
水が黒いのは大雨のせいではありません。活性炭という薬品を混ぜてにおいを取っているのです。プールはほとんど屋外にあるというところにまず驚いた。それにしても、浄水場向かっているときから雲行きが怪しいなーとは思っていたのだがこの時が大雨のピーク。こんなに写真に写るレベルの雨ってちょっとどうかしてると思う。
深淵へ誘うような、吸い込まれそうな黒さですよ・・・・・・。
西谷浄水場は相模湖から水を引いている。相模湖の水は取水堰から西谷浄水場まで、35キロ~40キロくらいの道のりをトンネルや太いパイプを通って山越え谷越えはるばるやってきた水がこれだ。飲み水になる第一歩として、ここ着水井で薬品を使って水に含まれるにおいを吸着する。
②汚れをとる(沈澱池)
次に水は沈澱池(ちんでんち)へ送られる
矢印は速度の違う羽。これはプール内をかき混ぜる役目をしている。
沈澱池の水には凝集剤という薬品を使い、水の中の汚れを塊にして沈殿させるのだ。プールの水中には大きな羽が沈んでいて、これが常にプールをかき混ぜている。
このプール内には斜めの板がたくさん取り付けられている
西谷浄水場ではプール内に斜めの板(傾斜版沈降装置)をたくさんとりつけることで、水中の汚れがより早く落ちやすくなるという工夫が施されており、外国の浄水業者も技術を見学に来るそうだ。
沈澱池の最後の方でも結構飲めそうな色をしている
③細かい汚れをとる(濾過池)
濾過地はもっと軽くて小さい汚れを取る池だ
このプールの底には砂が敷いてあり、水が砂の間を通っていく間に小さな汚れをろ過するのだ
ちなみにここの砂は3日に1度洗浄することで常にきれいな状態を保っているんだそう。
濾過池の砂を洗浄するための施設がある
隣にある水道記念館の敷地内にあるこのドーナッツ型の施設は濾過池の砂を洗浄するための水槽なんだそうだ。
学校のプールっぽいし、飛び込みたい
ここの時点でもこの水は割と飲めるんだけど、水を消毒する。消毒してはじめて安心して飲める水道水になるのだ。
④送る前に一時保存する(配水池)
芝生の下に1号配水池がある(現在休止中)
最後に飲めるようになった水を一時保存する配水池は……西谷浄水場の芝生の下にある。ちなみに写真に写る1号配水池は現在は休止中とのこと。実際に稼働している3号配水池は横浜FCのサッカーグラウンドになっていた。
ところどころひび割れた門が
1号配水池の入り口にあった門。関東大震災で受けたというダメージがなまなましく残っていた。歴史を感じる……。こうしてやっと出来た水道水西谷浄水場では自然流下と配水ポンプを使って各家庭に水を配水しているのだ。
「できたての水」を飲む!
待ってました!
そして施設見学の最後に待ち受けているのはお待ちかねの「できたての水」コーナーだ! できたての水を解放して見学終了の私を待ち受けていた。贅沢だ。
蛇口をひねると動物たちのおしりが見られるぞ
蛇口がいちいち亀とか小鳥とか・・・・・・かわいい。
どれ……(ゴクリ)。
うまい!
水道水、うまい! あとすごく口当たりが柔らかく感じた。これもできたての鮮度も関係しているんだろうか? 水道水の鮮度なんて今まで気にしたことなかったなあ……。浄水場で飲む「できたての水」は、普段口にしている水道水よりも格段に美味しい気がしました。世界も視察に来る日本の浄水技術は最高!
見学の際には水道記念館もあわせてどうぞ
ちなみに浄水場の隣には水道記念館がある。4月~8月は第一月曜、9月~3月は毎週月曜日、祝日の翌日(土・日にあたる日を除く)、年末年始が定休日になります。水道まみれの一日を送ることができるのだ。
ランドマークまで見通せる
見学を終えて外に出たところ、雨はやんで青空が広がっていて、行きに登った時「すごい傾斜だな」と思っていた水道坂は雨に濡れてなんだか命の危険を感じた。ゆずの夏色の曲のふたりがこの坂を自転車二人乗りしてしまわないよう祈らざるを得なかった。(※公道での二人乗りは禁止です)
帰りに見た川、局地的な大雨により増水していた
やはり、工場見学の時のように浄水場で水道水を作る過程を見学し、できたての水をいただくというのは格別な経験だった。
しかしひとつ残念だったのが浄水場見学のちょうど施設見学中に矢のような雨が降りはじめ、雷鳴が轟きはじめた。浄水場は高い建物が無くて雷が落ちやすくて危険ということでゆっくり見られなかった。さらには見学日に第一月曜だけという超レアな水道記念館の定休日に当たってしまい水道記念館の見学はできなかった。
あらゆるタイミングに見放され、前世でどんな悪行を詰んだらこんなタイミングになるんだろうと笑ってしまったのだが、そんな日だからこそ見学の予約が取れたんだろう……ということにしておく。
しかしひとつ残念だったのが浄水場見学のちょうど施設見学中に矢のような雨が降りはじめ、雷鳴が轟きはじめた。浄水場は高い建物が無くて雷が落ちやすくて危険ということでゆっくり見られなかった。さらには見学日に第一月曜だけという超レアな水道記念館の定休日に当たってしまい水道記念館の見学はできなかった。
あらゆるタイミングに見放され、前世でどんな悪行を詰んだらこんなタイミングになるんだろうと笑ってしまったのだが、そんな日だからこそ見学の予約が取れたんだろう……ということにしておく。