韓国式かき氷「パッピンス」
韓国式かき氷の「パッピンス」を出す店が原宿に開店し、行列ができるほど人気になっているという、うわさはきいていた。
しかし、それでもなお「かき氷は、はやるとかはやらないとかいう問題じゃなくて、夏場だからみんな食べてるだけじゃないの?」と、鼻ほじしながら侮っていた。
コッピ……カフェか。
そんなおり、ソウルに行くことになり、南大門にあったカフェで、例の韓国式かき氷のパッピンスを売っているのをみかけた。そして、メニューのビジュアルをみてビビった。
氷が見えない
氷がほぼ見えない。そのうえ、どんぶりに入っている。なんなんだこれは。どうなってんだこれは。にわかに事態が混乱してきた。
原宿では何時間も並ばないと食べられないかき氷。いまここなら、誰も並んでいないのですっと入って食べられる……と思うと、好奇心がむくむくとわいてでてきた。
しかし、このかき氷、どうみてもスィーツだ。店のなかをのぞいてみると、中年男性がひとりで食べに来るような雰囲気でないことは言うまでもない。
しばらく好奇心と羞恥心がせめぎあったが、最終的に好奇心がせり勝った。
中年男性ひとりはスイーツをたのみづらい
そんなわけで意を決して「マンゴヌンゴッピンス」を注文。値段は9000ウォン、日本円で830円ほどである。
店内は、日本人のおばちゃんと、韓国人のおばちゃんがいるのみ
よく、若い女性がひとりで牛丼屋にはいりづらいみたいなはなしがあるけれど、それの真逆が現在の状況である。
「氷水」が「ピンス」
さて、マンゴーピンスをまっているうちに、この「パッピンス」がそもそもなんなのかをスマホで調べて予習しておきたい。
ウィキペディアによると「パッピンス」とは、韓国語で「パッ」が小豆のことで、「ピンス」が氷水のことであるという。小豆をかき氷にかけたものが主流だったが、最近はフルーツやきな粉がのったものも登場し、大進化を遂げているらしい。
韓国では、ちょっとしたカフェであればメニューにあるものだが、なかでも、釜山発の「ソルビンカフェ」という店が、人気であるらしい。ちなみに、原宿の人気かき氷店がこの「ソルビンカフェ」である。
右がきな粉のインジョルミピンス、左がマンゴーピンス
いま入っているこの店は、ソルビンカフェではないものの、きな粉のかき氷やマンゴーのかき氷などのメニューは、ソルビンカフェと同じであり、ソルビンカフェインスパイア系のカフェと思われる。二郎インスパイア系みたいなノリのカフェだ。
ズドーン
どこから食べ始めたらいいのかがわからないが、とりあえず、氷を発掘してみる。
砂糖にみえるけれど、かき氷の氷だ。
普段食べているかき氷にくらべると、格段に粒が小さくふわふわだ。
普段食べているかき氷が、道路のシャーベット状の雪だとすると、この氷は北海道のパウダースノーみたいな感じだ。
しかも、この氷、どうみても削って作っているとは思えない。雪の結晶みたいなのがみえる。そして、この粉雪みたいな氷じたいに、ミルク的な味がうっすらついている。
これが、マンゴーや練乳のあまさを引き立てており、ただの氷のようなそっけなさがなくていい。
んうまいですわこれ
台湾のマンゴーかき氷や、鹿児島の白くまなどとは、ちょっと別物と考えたほうがいいかもしれない。
いままで、かき氷を子供のくいもんだろとバカにしていたぶん、衝撃がすごかった。
土下座。という言葉があたまをよぎる。土下座外交といわれてもしかたがない。しかしあやまりたい。いままでかき氷をバカにしてすみませんでした。申し訳ない!
中年男性をさそって行く
日本に帰国した後も、ソウルで食べたあのかき氷の衝撃が忘れられない。そこで、ライターのきだてさんをさそって原宿の「ソルビンカフェ」にあのかき氷をもういちど味わいに行くことにした。
原宿の「ソルビンカフェ」です
ソウルではひとりで心もとなかったものの、こんかい男はふたり。編集部の古賀さんもついてきてくれたので3人。入店がためらわれることはない。
原宿の「ソルビンカフェ」は現在、入店するのに朝10時から配布される入店整理券をまず手に入れる必要があり、その整理券をもらうための行列がすごい。
すごい行列
われわれ、というか、ぼくがいらん気合を入れて朝8時から並んだので1番の整理券をもらい、11時の開店時に入ることができた。
メニューはおおむね韓国の店と同じものを売っているのだが「Coming Soon」のものがけっこうある
メロンの存在感がすごいぞ
それぞれ、まるまるメロンヨーグルトソルビン、マンゴーグレープフルーツソルビン、黒ゴマ小豆ソルビンの三種類を頼んだ。
メロンの存在感たるや、圧倒的でもある。
どうなってんのこれ
ただここで残念なお知らせをしなければいけない。
この「まるまるメロンヨーグルトソルビン」は、7月31日までの期間限定商品である。つまり、この記事が公開されるころにはすでにたべることができない。
以降、メロンのやつの感想があっても「そういうものがあったんだな」というメモリアルなアーカイブのつもりで読んでいただきたい。
童心にかえるメロンの力
キャッキャウフフ
ひとしきり、写真を撮りおわると、まずは、きだてさんがたのんだメロンのソルビンからとりかかってみたい。
切り方これでいいのかな
つめてえ
まるごとメロンの、メロン部分はもちろんメロンだからうまいのはいうまでもないが、なかの氷部分に入っている乳白色のかたまり。バニラアイスと思って口に入れると「チーズケーキだ!」とハッとさせてくれる。
チーズケーキと氷があうんだなこれがまた
かき氷にチーズケーキ。単調になりがちな味にしっかりとしたアクセントになる。つまり、うまい。
あと、きだてさんが「氷をたべるとき、スーッと吸うと口の中が吹雪になる!」と、幼稚園児の発見みたいなことをいいだしたのはメロンのテンションのせいだろう。(たしかに吹雪みたいな感じにはなった)
いちいち工夫がおおいかき氷
黒ゴマ小豆ソルビン
古賀さんがたのんだ「黒ゴマ小豆ソルビン」。てっぺんのもちみたいなのは、見たとおり、もち。そして小豆、黒ゴマ周りにローストアーモンド。もちろん、なかの氷はあのふわふわのかき氷。
中をほじくりかえすと、層になってる!
古賀さんが興奮気味に「これ、なかが層になってて、きな粉入ってますよ!」という。たしかに、中を掘りすすめていくと、きな粉が出てくる。なんだこれ、関東ローム層か。このかき氷、いちいち工夫が多いのだ。
氷の食感におどろいてぶれた
このソルビンは、もちの存在が絶妙だという。あまくて冷たいかき氷をガーッとたべたあとにもちに行くと、もちに、あたたかさとしょっぱさを感じるという。しかも、このもち、秋田の郷土料理であるバターもちのようだという。
寄る年波にはかてない
3人とも、さいしょのうちは、ワーキャーいいながら食べていたものの、食べ進めるにしたがって、あきらかにそのスピードが落ちてきた。
かき氷どんぶり一杯はさすがに量が多かった。だいたい、韓国の店舗では、かき氷をひとつ頼むと、かならず、さじがふたつついてくる。基本的に二人前の量なのだ。
若い子ならば、ひとりでもペロリといけるかもしれないが、40前後の老体にはさすがにきつい。そのうえ、エアコンがしっかり効いてる部屋の中なので、体がひえる。3人とも「長そで持ってくればよかった」とくやんでいた。
がまんできずに、思わず追加でホットの飲み物を3人ともたのむ。
かーっ、熱いコーヒーうめえ
セントバーナードが持ってきたブランデーみたい
進化するかき氷
すでに、食べ物としての進化はこれ以上ないとおもっていたかき氷。しかし、そんなことはなく、かき氷は、あらゆる工夫がほどこされ、スィーツのあたらしいジャンルとしての地歩を固めつつあることがわかった。
もういちど、あやまっておこう。申し訳ございませんでした。
ちなみに、ぼくときだてさんは翌日おなかがゆるくなった。