匂いの「思い出喚起力」に翻弄される
実家の最寄り駅は西船橋駅なので、地下鉄東西線には馴染みがある。高架下(荒川から東は高架なのです。地下鉄なのに)の空き地でよく遊んだものだ。
以前その高架について調べたこともある。 大人になってからは、通勤で使っていた。
日本を代表する驚異的な混雑率を誇る東西線。いい思い出ばかりではないが、深い愛着を抱いている。まずはその東西線の香りを味わおう。
まず大前提として「路線ごとに香りの個性があるはず」という、なんの根拠もない予断から始まっていることをお伝えしておきたい。「丸ノ内線って丸ノ内線独特の匂いがするよねー」というような思い込みだ。(今回確かに「丸の内線臭」があることを実感した。うれしかった。これに関してはのちほど)
なので、どの駅で嗅ぐか、は重要だ。予断したものの、こういっちゃなんだが駅ごとに匂いが違うのはあきらかなので。ほんとうは全駅で嗅ぎ、集計をすべきだろう。
しかしそんなことはしない。だってたいへんじゃないですか。前回に引き続き言っておこう。デイリーポータルZ は論文ではないのである。
で、とりあえず東西線代表として門前仲町駅を選んだ。理由は特にない。なんとなく、だ。
この門前仲町からスタートし、茅場町→銀座→三越前→永田町→市ヶ谷→後楽園→御茶ノ水→新御茶ノ水→大手町、と移動し、計8つの路線を嗅ぐ。
こういう経路で嗅ぎ回りました。(
@hashcc さんによる
東京の鉄道路線図を元にしました。地下鉄以外を削除してしまったので元図のすばらしさを活かせていませんが)
ご覧の通り、都営地下鉄は今回は嗅いでいない。東京メトロだけ。といっても副都心線を嗅ぎ漏らしている。疲れちゃったのだ。だってたいへんじゃないですか。
で、まずは東西線。馴染みの好きな路線、あらためてじっくり嗅いでみよう。なんかどきどきする。良く知っているけど、あらたまって嗅ぐとなるとなんだかちょっと照れる。結婚生活3年を過ぎて、あらためて妻をくんくん嗅ぐみたいな感じ。
馴染みのあの子はどんな匂いだったっけなー。
車両から駅に降りたとたん驚いたのは、襲ってきた生ぬるさ。車内がキンキンに冷えていたため、匂いより先に温度の落差に感覚が持って行かれたことに動揺した。立ち会いしょっぱな猫だましをくらったかっこうだ。
気持ちをたてなおし、大きく深呼吸。
確実に何かの匂い。懐かしい。これだ。東西線の香り。さまざまな思い出が脳裏をよぎる。
団地を撮影しに行ったあの日の高揚、上司に怒られての帰路……。いかん。大阪と違って、どうも勝手が違う。純粋に匂いだけを嗅ぐのが難しい。嗅覚の思い出喚起力ってすごい。
匂いによって喚起された思い出が去来する。
「東西線=海の香り」ってことで
集中しろ、と自分に言い聞かせ、通行人のいぶかしげな表情に臆することなく、目を瞑って深呼吸。やってきたのは、水の匂い。ほんの少しだけ塩っぽいかな。良い言い方をすれば、これは海の匂いだ。
東西線、それは千葉の海の香りか。
しかし、電車が出て行く風に乗って、さらに別の匂いがやってきた。二種類の匂いが混ざらずに交互に鼻孔に入り込む。
むずかしいぞ。これは何の匂いだ。ちょっとだけ食べ物っぽいかな。おかずじゃなくて主食的なやつ。穀物っぽさがある。小麦粉?
海に小麦粉? 海の家的な?
などと思いながら薄目でホームを往き来していたら、冷風が頬をなでた。はっとして見ると、そこには空調が。そして空調の匂いがする。
しまった、空調の季節か! これもまた嗅ぎ鉄攪乱の要素だぞ!
脳みその匂いから空調臭を差し引くために(そんなことできるのかどうか別として)あえて冷房の風を嗅ぎに行ったが、それほど匂いはしなかった。きっと匂いのしないようにメーカー頑張ってるんだと思う。そういえば昔のクーラーって匂いしたよね。
さらに行くと、都営大江戸線乗り換えコンコースからすごく風が吹いてて、全然違う匂いがする。しかし今回は都営線は対象外だ。この匂いは無視しよう。そうしよう。
大江戸線への乗り換え階段から強風に乗って別の香りが。しかし今回はこれは加味しない。
とりあえず東西線はここらへんにしておこう。現時点では「東西線は、海の香り」ってことで。
で、あっ、と思ったのは、これ路線のカラーである水色に知らず知らずに影響を受けてないか? 大阪でもその懸念があったが。
いや、今は考えるまい。前回大阪ではたいへんな「嗅ぎ疲れ」に襲われたので、ペース配分を考えないと。今後いくらでも嗅ぎ直しのチャンスはある。
出だし1路線目からかなり高度な嗅ぎプレイをせねばならなかった。次は日比谷線だ。茅場町駅へ。
日比谷線は「ガラスの匂い」
日比谷線に乗り換えるために茅場町駅の東西線ホームで降りる。懸念はしていたが、降りた途端門前仲町とは違う匂いが! 機械の熱の匂い。エンジンやモーターの匂いっぽいフレーバーがかすかにする。
前回大阪でも始終さいなまれた「やっぱ、路線ごとに香りが違う、っていうのは思い込みに過ぎないのではないか。駅ごとに違うのではないか」という疑念がここでも。いやまあ、実際思い込みなのは分かってるんですがー。
天井がワイルドな茅場町。
でも、ホームの天井を見たら工事中の風情。そうだそうだ、これは茅場町の本来の匂いじゃないぞう。工事中だからだ。そうにちがいない。ノーカン、ノーカン。東西線は海の香りのまま、ってことで。
で、日比谷線のホームに移動。おお、ちゃんと東西線とは違う匂いがするではないか。なんか煙っぽい感じだ。
いや、うーん、煙っていうか、鉄かなー。そして湿度が高くて温度も高い。これに比べると東西線はやっぱり海っぽいぞ。
しかし日比谷線のホームもこの通り工事中なのであった。
「日比谷線=煙と鉄」か、とも思ったが、ここもまた工事中なので、その影響かもしれない。これは純粋日比谷線臭ではないだろう。
これは別の駅で嗅いでみなくてはならない。工事中ではない駅で。
工事中ではない日比谷線駅。八丁堀で嗅ぎ直し。
選んだのは八丁堀駅だ。
降りたとたん、茅場町とは全然違う匂いがした。なんだろうこの香りは。表現が難しい。まず爽やか。人工的な感じ。施設っぽいというか。ケミカルな感じ。でも嫌な感じじゃない。
普段使わない「匂いの言語化」という脳みその部分がフル回転。
うーん、ガラスの匂い……とかかな? ガラスに匂いなんてあるのか、というもっともな疑問もあるとは思うが、表現として受け入れていただきたい。
かなり悩んだ。この時点で「もしかしたら東京の地下鉄は大阪より嗅ぐのが難しいのかもしれない」と思い始める。いくら嗅いでもうまく表現できない。
というか、鼻ってけっこうすぐに慣れちゃう。数分も持たない。これは電車降りた途端の言語化が勝負だな! と気を引き締める。次行こう。とりあえず「日比谷線=ガラスの匂い」ってことで。
再び車両に乗り込む。それにしても車両って全部違う匂いがする。要するに人間の匂いってことなんだろう。うまいぐあいに車内で鼻がリセットされるので好都合だ。
銀座線、難しい
銀座駅、日比谷線ホーム。人が多すぎて鼻が駅の香りに到達できない。
次は銀座駅。予想はしていたが、ここは人が多すぎてだめだな。人の匂いが強すぎる。だって、いま、仁丹の匂いがしたぞ。たぶん通り過ぎて行ったおじいちゃんからだな。
銀座線のホームに移動しよう、と階段を上がって改札口に来たら、化粧品売り場の匂いがすごくする。
そして改札口のこのコスメ臭はどうだ。
これは改札に面した百貨店からの香りか。はたまたマダムたちの身体からのものか。いままで銀座には何回も来ているが、改札口がこんなにも化粧品っぽいとは気がつかなかった。ふだんいかに匂いを無視しているかをあらためて実感。
で、銀座線ホームに降りる。
ホームに降りても、コスメが追いかけてくる。
改札からの距離が近いので、引き続き化粧品売り場の匂いが充満している。ホーム狭いから臭いも入れ替わらない感じだ。
「銀座線の香り」 は今回楽しみにしていたフレーバーなのだが、ここでは無理だ。
純粋銀座線の匂い嗅ぎたい!
コスメに追われて、おとなり京橋駅へ。
しょうがないので、ひと駅移動して京橋駅へ。
降りて思わず顔はほころぶ。お、これは化粧品とか人間の匂いじゃないぞ。なんだろう。東西線とも日比谷線とも違う。
やや土っぽいかな?
かなり想像していた「地下鉄の匂い」に近い。うれしい。でもいざとなると上手く表現できない。もどかしい。
古いお屋敷の匂い? とか?
親戚の家のソファの匂いとか、そんな感じ。
その中にかすかに鉄の匂いもする。
飛躍した喩えが許されるなら「推理小説っぽい匂い」だ。しかも本格推理小説ね。戦中戦後ぐらいの。ディクスン・カーの密室ものとか。よく分からん表現で申し訳ない。
三越前駅、無臭!
思いのほか銀座線に手こずった。他の駅いくつか行きたいところだが、まだ3路線目で先は長い。「嗅ぎ鉄」に深追いは禁物だ。暫定的に「銀座線=屋敷の匂い」ってことにしておこう。
次は半蔵門線。三越前で乗り換えよう。それにしても大阪のときと違って土地勘というか「地下鉄勘」があるので気が楽だ。
それにしても、さきほどの日比谷線に比べると、銀座線の新しい車両は人の匂いが全くしない。すごく脱臭性能が高そうな匂いがする。「脱臭性能が高そうな匂い」ってへんな表現だが。
そして三越前駅。降りた途端、違和感に襲われる。
なんと無臭だ!
まさか無臭とは。びっくりだ。銀座線にはほんとうに手こずらされる。
銀座線が匂い立たないで、どの線が香るというのだ?
暫定的に 「銀座線=屋敷の匂い」 ということにはしたが、これはやはりいずれじっくり「銀座線集中嗅ぎ週間」を設けねばなるまい。
「嗅ぎ鉄」はよそ者の趣味なのか
さて、いまはとりいそぎ半蔵門線だ。
三越前駅での銀座線から半蔵門線乗り換えはいったん改札を出てしばらく歩く。銀座線は無臭だったが、さて半蔵門線ホームはどうだ?
どうだ?
どうだ!
半蔵門線ホームに到着して、絶望した。
これがまた無臭なのだ!
三越前駅、すごい。どこまでも無臭。三越の陰謀か。
だめだ、三越前。永田町駅に移動だ!
到着して大きく深呼吸するも……!
なんと。ここも無臭だ。なんということ。半蔵門線は無臭なのか!?
「永田町」なんてすごくドロドロした腐臭を放っていたもよさそうな名前なのに、無臭。政府の陰謀か。
あまりの匂いのなさに一生懸命くんくん嗅いだら、嗅ぎ慣れた匂いがしてきた。
自分の体臭だ。
考えてみれば、嗅ぐ主体が完全な無臭であるはずがない。嗅ぎ鉄の行為は、いわゆる「観察者効果」から無縁ではいられないのだ。って、それっぽいこと言ったけど、空気採取して成分分析すればいいだけですよね。
いかん、鼻および脳みそが混乱してきたぞ。
日比谷線といい、銀座線といい、そしてこの半蔵門線といい。どうも香りが弱い。大阪はもっといろいろ匂いしたんだけどなー。東京つまらんなー。
いや、これはぼくの嗅ぎ疲れかもしれない。
あるいはぼくが慣れすぎてて、東京の地下鉄の匂いが「嗅ぎの基準点」になっているがゆえに感じ取れない、という可能性もある。
ぼくが大阪の地下鉄を嗅ぐことができたように、逆に大阪の人こそ東京の地下鉄を味わえるのかもしれない。「嗅ぎ鉄」はよそ者の趣味なのか。
少子高齢化は匂いにも現れるのではないか
半蔵門線、まさかの無臭にがっかりしつつ、次の有楽町線に乗り換えのためエスカレーター乗ったら、油の匂いがしてきた。揚げ物っぽい。
お店でもあるのか? と思いながら乗り換えコンコースに来たら、いわゆる「駅ナカ」の店が。匂いの発生源はここと見た。
嗅ぎ鉄における「エチカ問題」。
東京メトロでもめざましい駅ナカ「エチカ」の発展により純粋地下鉄臭が嗅げなくなっているのではないか。これを嗅ぎ鉄における「エチカ問題」と名付けたい。
永田町の有楽町線ホーム。ホームはちょうかっこいいのだが、はたして香りはどうだ。
「どうせ有楽町も無臭だったりするんでしょ、永田町」 って感じで完全にやさぐれてホームに到着。
お! なんか爽やかな匂いがするぞ!
無臭ではなかった。でもやっぱり匂いの強さはほんのかすか。 かろうじて香っている程度。
あまりにも弱いのでなかなか表現するのが難しい。なんだろう、この爽やかフレーバーは。
東西線とはちょっと違う水っぽさ。向こうが塩を含んだ海なら、こっちは湖って感じか。そしてその湖畔の爽やかさの中に、少しだけ有機っぽさを感じる。木の香り、と言っておこう。
「有楽町線=湖畔と木の香り」
人は表現に困るとポエジーを発揮するのだ。なんだよ「湖畔」って。
あと大学生っぽい人が多く、うっかりすると若い匂いが漂ってくる。
おそらく人間は人間の匂いに敏感なので、嗅ぎ鉄の障害は人間。そしてやっぱり東京って人が多い。嗅ぎ鉄に向かない都市だ。
若い人は若い匂いがするが、やはりとくにおっさんの匂いが邪魔になる。多分これは自分がおっさんだからなおさら敏感に嗅いじゃうのかもしれない。
少子高齢化は都市の匂いにも現れるのではないか。
有楽町線で市谷へ移動。ここは砂っぽいテイストだった。さきほどは湖畔、こんどは砂。有楽町線は爽やか路線、ってことで。
南北線、お茶っ葉の匂い!
市ヶ谷で南北線ホームへ移動。
南北線は埼玉の匂い、っていう印象を持っていたのだが、どうだろうか。
埼玉の匂いって具体的に何だよ、と聞かれると困っちゃうのだが。
南北線市ヶ谷駅ホーム。ビニールっぽい匂いがするぞ。
はたして、人工的な香りがする。ホームドアが並ぶ風景に似合った新しい匂い。そしてここも匂いは弱い。
完全に嗅ぎ疲れだ。
そろそろ休憩しなければ、と思いながら南北線車内に載ると、これがものすごく寒い。冷やしすぎではないか、南北線。ぼくが弱ってるだけか?
寒さですっかり縮みあがって後楽園駅に到着。そしてここで出会った香りは!
降りた途端、今までにない種類の香りがやってきた。とっさに「お茶っ葉の匂い!」って思った。
意外すぎる。今回いちばんびっくり。なぜお茶っ葉。狭山茶か。
最初の、水色の東西線が海の香り、っていうのと同じで、このお茶っ葉印象も南北線の色に影響されてるか? いや、これは確かにお茶っ葉だよ。
「南北線=お茶っ葉」の不意打ちですこし元気を取り戻し、丸ノ内線ホームへ。
丸ノ内線も銀座線と並んで、匂いが楽しみな路線だ。しかし、銀座線は期待はずれだったからなー、丸ノ内線もなー。
期待を裏切らない丸ノ内線
後楽園駅、丸ノ内線ホームへ。ここでは丸ノ内線は地上に出ちゃってる。
後楽園駅は残念ながら地上なので、地下鉄の匂いはしない。雨の日の匂いがする。
そうなのだ。今回、天気の悪い日に巡ってしまったのだ。どうせ地下鉄だし、とあまり深く考えずにいたが、天気によって匂いが違うということは充分あり得る。
晴れの日なら半蔵門線も芳香を放っていたかもしれない。ちょっと想像できないが。雨の日にこそ匂い立ちそうなものだが。
丸ノ内線に乗り、御茶ノ水駅へ。ホームに降りた瞬間は、今回のハイライトだった。
自分の中での前評判は高かったが、銀座線以降のなんともやる気の感じられない地下鉄臭の連続にすっかり意気消沈で臨むことになった丸ノ内線・御茶ノ水駅。
しかし 「嗅ぎ鉄」 の神はいたのだ。降りた瞬間、その存在を信じた。
ああ! これこれ! 子供のころから感じてた「ザ・地下鉄の匂い」!
うれしい! さすが丸ノ内線!
思わず心拍数も上がる(ここのところずっとこれ装着して心拍数を記録してるのです)。
丸ノ内線のこのかぐわしい香りは、鉄と土、そして電気の匂い、と表現できる。
やや酸味を感じる強く甘い香り。銀座線のうまく嗅げない具合も、半蔵門線の無臭具合も、この芳醇な丸ノ内線のための助走であったと解すれば、すべてが報われる。ありがとう、丸ノ内線。
もうなんかこれでおしまいにしてもいいぐらいの充実した芳香だったが、あともうひとつ、千代田線も嗅いでおこう。
丸ノ内線御茶ノ水駅からいったん外に出て、JRを通り過ぎ新御茶ノ水駅まで歩こう。そのついでに休憩だ。
丸ノ内線のいい匂い嗅いだらおなか減っちゃった。そしてあらためて食べ物ってすごく匂いを放っているんだな! と実感。強烈だ。
そして千代田線新御茶ノ水駅。ここは中学・高校時代にさんざん通った駅。いままで気づかなかったが、いざ意識して嗅ぐと、例のながーいエスカレーターの下から香ばしい香りがするではないか。期待できる!
丸ノ内線に並んで千代田線の香りも期待していた。そしてそれは裏切られなかった。
こちらも「ザ・地下鉄の匂い」が香りまくっている! そして丸ノ内線とはちょっと違う味わい。うれしい。休憩して「嗅ぎ体力」も回復している。じっくり嗅ごう。
丸ノ内線より、香りに角がある。
やや酸味を感じる。ボディがやや細い。しかし他の路線に比べれば充分厚みがある。
金属成分は、丸ノ内線の鉄分を真鍮に置き換えた感じ。土っぽさは少ない印象。
丸ノ内線に比べると立ち上がりが柔らかく、嗅いでいるうちに香りの下地だけが残る。
むこうが芳醇ながら一本調子なのに比べると、こちらには複雑さがある。
充分な経験を積んだ壮年の香り。これが老境にさしかかったのが丸ノ内線、といったところか。
あまりのうれしさに、香り表現の筆も進む。あらためて思うが、ワインとかウイスキーのあのポエムは、ああいう表現にならざるを得ないのだ。人は一生懸命に気に入った味わいを伝えようとすると、ポエムを書かざるを得なくなる。
暫定版・東京メトロ嗅ぎ鉄チャート
今回の結果をまとめると以下のようになる。
そして、前回の大阪版にならってチャート化すると、下のように。
軸が「甘口/辛口」「熟成/若い」でいいのか、はなはだ疑問だが今回は大阪の形式に合わせた。東京の場合は香りの強さの軸が必要かもしれない。
さらなる「嗅ぎ」の必要性を実感
半蔵門線が無臭というのは問題があるだろう。ぼくも信じられない。嗅ぎ体力を充実させ、他の駅で後日嗅ぎ直したい。
そもあれ、銀座線は残念だったが、丸ノ内線と千代田線が香ばしかったので全体としては満足だ。銀座線は子供のころはもっと香ってたと思うんだけどなー。
おそらく時代とともに地下鉄の匂いは変わっているのだと思う。消臭技術も発達しているだろうし、ファブリックや車両の材料をはじめ、構内の内装、清掃の方法などもどんどん変わっているのではないか。
そういう時代の変化もさることながら、季節の違いも大きいと思われる。体臭といい、空調問題といい、夏は嗅ぎ鉄に向かないかも。あと天気も影響があるだろう。
つまり、また別の状況で嗅いでみよう、と思ったということだ。都営地下鉄も嗅ぎ残してるし。匂い立ってそうだよねー、都営。
JR横須賀線の地下駅、新橋駅も嗅いだ。地下鉄とは違う香り。とくにホームの端っこ。湧水が育てた有機物の香りだ。メトロにはなかった野性味あふれる香り。ストロング。
【告知】7/30日「スリバチ・ナイト」やります
毎年夏になると執り行われる、地形趣味の祭典「スリバチ・ナイト」今年もやります。
今回はぼくの大好きな漫画家・衿沢世衣子さんも登壇。楽しみ。
カルカルにて18時から。詳しくは→
こちら