まずは見てくれ、武器になった果物たちを!
素材収集も武器加工も本当に本当に大変だった。が、ここから語ると長くなってしまうので、何はともあれ完成品を見てもらいたい。
気分は完全に、ドラクエの武器屋主人。
やぁやぁ、よく来たね!▼
今日は良い武器が入ったんだ、見てってよ!▼
燃え盛る切っ先は真紅の果実!
ランブータンの矢:900G(3本セット)
ドリアン・クロー:1200G
レモングラスのムチ:700G
別名スネークフルーツ、ウロコを逆なでするとふつうに痛い!
サラックのまきびし:500G(1セット)
ニッパヤシの魔鉄球:2000G
ロータスサイコ:???G
友人「価格の基準は何なんですか?」私「気分」
言われるまでもなく完成度はまちまちだが(サラックに関してはそのまんま)、値付けでお分かりの通り、「ドリアン・クロー」と「ニッパヤシの魔鉄球」がお気に入り。この見た目、きっと前世は恐竜だったに違いない。
装備風景はあとで書くとして、まずはこの日にたどり着くまでの苦労話をどうか聞いてほしい。このドリアンもニッパヤシも実は二代目なのだ。そんなことより武器を見せろ、という方は
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素材を収集するべく、南部フルーツフェスティバルへ。
武器の素材として以前からドリアンとニッパヤシに目を付けていた私は、「南部フルーツフェスティバル」へ向かった。これは毎年5,6月頃にベトナムで行われる、南部フルーツの物産展。なお、この会場となるスイティエン公園というテーマパーク自体も相当にオカシイ、詳しくは
2004年に古賀さんが記事を書いているので読んでほしい。
スイティエン公園は「狂ったディズニーランド」とも呼ばれ、
オブジェの怪奇的なデザインと巨大さに圧倒される。
ツッコミ好きの友人と行ってほしい、一人だと溜め込んでしまいます。
果物エリアに到着。
武器に使えそうな果物を品定めします。
ひと通りの果物を買ったあと、ドリアン売り場の裏手に回った。何を隠そう、目的はこれ。
ゴミ…もとい、皮!
果物を武器化すると言っても、ニッパヤシのように丸々使うものもある一方で、ドリアンはそのトゲトゲとした皮さえあればいい。都合よく、売られるものはくり抜かれた中身だけなので、ポイポイと捨てられるゴミの一部を収集した。
実は前回のフルーツフェスティバルでも同じ方法で皮を収集し、
ドリアンの鎧をつくってベトナムの人々に披露したところ、Yahoo JAPANのトップに載るという異常な事態を見せたことがある。それからというもの、街でたまに「ドリアンの人だ!」と言われるので、「ありがとうございます!」と返す。事情が分からないままだと異様な光景だ。
一方のニッパヤシというと、こともあろうか頑なに販売を拒否されてしまったのだが、帰りにたまたま露店で見かけたので交渉したら150円ですんなり売ってくれた。スイティエン公園まで行くことなかったかなーと少し複雑な気持ちにはなったが、それ以上に「こんなに重いものがたった150円で!?」という変なところで感動を覚えてしまった。もしかしたら、石がお金だった時代の価値観が、わずかながらDNAに息づいているのかもしれない。
本当に重いんです、10kgはある。
これで素材は収集完了…と思いきや、ここからが苦労話の本編なのだ。まだちょっと続くので、箸休め的に装備風景を置いておきます。
※果物です。
消えるドリアン、崩れるニッパヤシ。
ドリアンのトゲに気をつけながら、重すぎるニッパヤシを抱えながら、なんとか帰宅。自宅はアパートの7階にあるが階段なし、汗だくになりながらやっとひと仕事を終えた。
よく見ると分かる、若干の手ブレは疲労の証拠。
ドリアンは水洗いをするためにバスタブに置いた。
中身が無いとは言え、臭いものは臭い。個人的に嫌いな匂いではないが、ドリアンのおそろしいところは、その場から移動させても地縛霊のように匂いが留まりつづけることだ。少しの間も部屋には置いておけない。水でふやけた内皮をこそいだら、撮影の日が来るまでバスタブに放置しておくことにした。だが、それがいけなかった!翌日ー。
ドリアンが消えた。
おいおいちょっと待てよ!チーズじゃないんだから。意志を持った?そんな訳はない。自宅のアパートでは部屋を掃除する家政婦さんを雇っており(ベトナムでは一般的なこと)、彼女がドリアンの皮をゴミと認識したらしい。いや、バスタブ!ここバスタブ!ゴミ箱じゃない!俺の苦労を!俺の苦労を君が!君が何を分かっているんだ!?今年一番の怒りに震えた。
しかし、事件はそれだけでは終わらない。数日後にはー。
ニッパヤシが崩れはじめた。
どういうこと!?というよりどういう仕組み!?
ドリアンの怒りを引きずっていた私は、「あのババァまたやりやがった!」と真っ先に家政婦さんを疑ったが、よく観察するとニッパヤシの構造上そうなるものらしい。ごめんね、でもドリアンの件は許してない、と心の中でつぶやきつつ、慌ててニッパヤシのパーツを元に戻そうとする。しかし、100%天然由来のパズルと化していて、もうどうしようもこうしようもなかった。為す術もなく、翌日にはバラバラになって死んでいた。
小さな命を救えなかった感がある。
スイティエン公園へ行ってまで手に入れたふたつの素材が、数日間で消滅。ヤバイでしょ、どうするの、と思うだろう。結局どうなったかというと、撮影日の直前にどちらも別のところでふつうに手に入った。そりゃ無いよりか断然良いのだけど、苦労したのになぁ…と、少し複雑な気分を抱えながら当日を迎えた。
お待たせ?しました、やっと武器をつくります。
つくろう武器!匠の業が光るフェルナンド氏
武器をつくる上で、以前安土
桃山時代について教えてくれたフェルナンド氏に協力を仰いだ。というより、たまたま話す機会があったのでついでに誘ったつもりだったのだけど、そういえば彼は甲冑や火縄銃を自作していたではないか!現代の刀匠だ!うってつけの人選になった。
取材記事から。フェルナンド氏自作の甲冑。
彼と素材、足元にある弓矢も本人持参。
つくろう、武器を!
とくに設計図もなく行き当たりばったりで制作をはじめた武器づくりだったが、この日、「結束バンド」と「フェルナンド氏」の実力を目の当たりにすることになった。
なにかに使えれば、程度の気持ちで持ってきた結束バンドが…!
驚くほどにガッチリと固定してくれるのだ!
私 「このニッパヤシから生えてる枝と、鎖を固定したいんだけどなぁ…」
フェ「いいアイデアがありますよ」
フェ「千枚通しと金槌を使って穴を空け…」
フェ「ハサミでこじ開けるように広げれば…」
私 「けっ、結束バンドが通った!」
フェ「あとは落ちてた木枝の太さをナイフで調整して」
フェ「鎖とガムテープで固定すれば」
私 「にっ、『握り』が生まれた!」
結束バンドとフェルナンド氏がいなければ、武器の完成度はまるで違ったものになっていただろう。彼らには心から感謝を表したい。さて、随分と引っ張ったが、いよいよ南国フルーツの武器たちを披露します。
つかおう武器!悪漢に襲われたときのために
早速装備を!…する前に、武器を使うからには敵はいた方がいい。そこでフェルナンド氏と私がそれぞれ悪漢役を担うことにした。6つの武器の実演を、立て続けでご覧ください。本当に立て続けです。
悪漢が現れた!▼
ネルソンはすくみあがった!▼
「…」
ネルソンはドリアン・クローを装備した!▼
悪漢は逃げ出した!▼
■トロピカルフルーツの武器化2 レモングラスのムチ
悪漢が現れた!▼
フェルナンドはレモングラスのムチを装備した!▼
悪漢は逃げ出した!▼
■トロピカルフルーツの武器化3 サラックのまきびし
ふたたび悪漢が現れた!▼
あやこはサラックのまきびしを装備した!▼
悪漢は逃げ出した!▼
しょっちゅう悪漢が現れる!▼
フェルナンドはロータス・サイコを装備した!▼
グロテスクな蓮の実が!▼
悪漢の精神をゾワゾワさせる!▼
悪漢の心は次元のかなたへ飛ばされた!▼
ニッパヤシの魔鉄球は人を殺せる。
最後のふたつは動画でご覧いただくことにしよう。
ニッパヤシの魔鉄球!
ランブータンの矢!
分離していた。
やっぱり、トロピカルフルーツは武器になる
最高の形で終えることができ、思い残すことは何もない。何気に鎖は一年前から買っておいたものであり、この日を本当に本当に楽しみにしていたのだ。最後に、ドリアン・クローとニッパヤシの魔鉄球は危険なのですぐに処分した。なんたって我々は平和を愛する。悲しいけどこれ武器なのよね。
最後の最後に、カットシーンをご紹介。
老人「若いの…それで人は殺せんよ」二人「は、はぁ」
果物は、ライターがおいしくいただきました(皮とかは捨てました)。