中身を水分で満たし、モノリスのように林立する自動販売機。設置者達はありったけの情熱とクリエイティビティを駆使してお得感をアッピールする。売り上げを落とすも伸ばすも自らの腕次第のハードボイルドな世界。あの小窓はそんな彼らの「聖域」なのだ。これからも敬意と好奇心のもとに、コーヒーやらジュースやら凍頂烏龍茶やらを購入していきたい。
自販機販促の今
基本的に待ち伏せ型の商売である自動販売機。設置場所や商品のラインナップなど拡販のポイントは数あれど、設置したからにはいかに通行人の目に止まるかが勝負となる。
そこで各メーカーの自販機にはテレビCMで起用した人気タレントのPOPや、豪華な賞品があたるキャンペーンなどの装飾がほどこされる。
そこで各メーカーの自販機にはテレビCMで起用した人気タレントのPOPや、豪華な賞品があたるキャンペーンなどの装飾がほどこされる。
道端でトミー・リー・ジョーンズの尊顔がおがめるのはブランド戦略のおかげだ。ありがたや。
絢爛豪華な伊藤園のキャンペーン。完ぺきなバランスではないか。
しかーし、この飽和した市場において消費者の心を動かすにはもっと直接的な、具体的なメリットを訴える必要があり、それはずばり価格である。昔のように100円、ワンコインでジュース買えたらいいよね。
これこれ。おもにこの小窓がステージとなる。
で、ひとくちに100円といってもいろんなデザインや書体があって楽しいから集めてみよう!というわけだ。大局的な視点からいきなりどうしようもなく瑣末なテーマになってしまったがはりきってやっていきたい。
いろいろすごく不安だけどテンション高くいってみよう!
オペレーターの100円
おおまかに言うと自動販売機の設置、運営は飲料メーカーやその関連会社が行う場合と、飲料を製造せず自販機の設置、運営を専業で営む会社(オペレーターと呼ばれる)が行う場合がある。
「100円」が多く見られるのは後者の自販機で、販促物はたいがいオペレーター会社により製作される。観察していくと会社による違いがうっすら見えてておもしろい。
「100円」が多く見られるのは後者の自販機で、販促物はたいがいオペレーター会社により製作される。観察していくと会社による違いがうっすら見えてておもしろい。
■ユカはシンプル&ドリーミー
首都圏・関西圏を中心に自販機設置事業を展開するオペレーターの大手「ユカ」、キリンやサントリーなどメーカー各社のものだけでなく自社オリジナルの自販機「Dream自動販売機」も取り扱っている。
これが「Dream自動販売機」シグナルレッドがまぶしい。
オリジナル自販機は飲料メーカーのものと違い、1台に様々なメーカーの飲料を入れる事ができるので、ラインナップの幅が広がるという利点がある。業界では「白ベンダー」などとも呼ばれているそうだ。
プライスダウンを視覚的に伝える矢印。副菜のように添えられた「より」がかわいい。
なんかウンチクめいたコメントをはさんでいるが、やることはとにかく100円を見ていくだけだ。
キリンの自販機でもユカ設置のものには同じテイストの100YENが。
ユカ製「DreamPrice」先に紹介した「プライスダウン」とうって変わってポップなカラーリングと書体。
欠けたトップボードが夢の跡。
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■西武商事のきめこまかさ
西武商事も首都圏を中心に自販機事業を展開しているオペレーターである。
うまいこと「100」を2回言っている。
同様のデザインフォーマットで価格帯の違いに対応している。
ほら、110円バージョン!すごくないですか?ていうかバックの青がキレイだな。
この気づかいにおじさんなんかうれしくなっちゃったからもう1つ紹介しちゃおうかな。
コインイラストバージョン、それにしても繰り返している。
110円になるとほら10円玉が!いや、そりゃそうなんだけどなんかいい。
■ スーパードリンクのパンチにびっくり
次に紹介するのは「スーパードリンク」
なんていうか生まれ持った派手さを感じる。
数年前に見かけた自販機のパフォーマンスには度肝をぬかれた。
なんだ頭のスターライトパレードは。
ポリシーのあるリーゼントのような存在感。100円だよ~んという事を伝えるためだけの設備である。
私が見た時は動いていなかったが、通常は床屋のポールサインのように中にあるロゴがめちゃくちゃ描かれた筒が回転するらしい。
わかるようなわからないようなコピーもいい感じで空間を切り裂く。
あまり濃厚に紹介しているとダラダラと長くなってしまうのでちょっと軽やかにいってみよう。
よろこびすぎ!
われらがチェリオ!
円がキャラ化!
ツートン!
ハッピー使いがち!
柑橘系!
缶!
100円に後光!
ゆるすぎ!
擬人化!
ガール!
ほっこり!
要は並べるときれいだしかわいいという事だ。春ですね、黄色や赤の100円の花が咲きほこりますね。
オペレーターの製作物で個人的にいちおしなのはこれ。
オペレーターの製作物で個人的にいちおしなのはこれ。
テスト!オペレーターは日東商事。
まさかのテストモチーフ。解答欄にお買い得、で、点数100円。このほどよい「してやったり感」が楽しい。
後日、遠目にこのステッカーを見つけ「あ、あのテストのやつだ」と駆け寄ったらおもわず「ウッ」とうなった。「マンボ」までいきそうになった。
後日、遠目にこのステッカーを見つけ「あ、あのテストのやつだ」と駆け寄ったらおもわず「ウッ」とうなった。「マンボ」までいきそうになった。
110円!何点満点だ!
なにかが破綻しているようなしていないような絶妙な世界が、街角に立っている自販機の小さな一角に、確かに存在していたのだ。ありがとう、私はこの時の感情を一生忘れないだろう。
次のページからは設置主の愛が存分に込められたDIY部門です。ドント、ミス、イット。
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DIY部門は個性が突き抜ける
自販機の魅力として外せないのが手書きやワードアートなどによるDIY系の販促物である。
松井選手との組み合わせで相乗効果をうむフレンドリーさ。
大阪では解像度がギリギリなピースを発見
ピースか、そうでなければ2本買えコラのサイン。
ちなみにこの時は自販機の下をのぞき、毒グモを探していた。
セアカゴケグモを探す平坂さん。とても生き物探しには見えない。
ダイイングメッセージのようなはかなさ。
安いが一番!!世界の本質を言い当てたな。
ロードサイドに自販機が並んでるの、あれいいですよね。
最後の「ス」を明朝体でシュッとさせてきた。
小窓一杯の100円が立ち並ぶ様は壮観。
「100円」ではないのだけれどオーナーの熱意あふれる自販機クリエイティブも少し紹介しておきたい。
荒々しく叫ぶ自販機「激安」
商品まわりの対応は丁寧。
もっとオペレーションが煩雑なものも見た。
結局どこのボタンをおせばいいんだ。
この手書きもよかった。はみだしてこその吹き出し。
DIY系100円ではこの作品に最大限の賞賛を送りたい。
福島県で発見、下の小窓に注目。
100円玉書体の100が!
100円玉硬貨の書体を再現するだけでなく、0の中部分までくりぬいた丁寧な仕事。これによって背景のペプシロゴも認識され、価格のお得感とブランドを同時にユーザーに訴える事が可能となった。小窓販促イノべーションである。
商品回りにもいい100エンブレムが。そして顧客とのコミュニケーションも欠かさない。
プレミアムなアイテムにはプレミアム感のある100が似合う。金紙なうえに少し笑っている。
背面にも100円!完ぺきだ!売れますように!
よゆうで100円に見間違えたよね。