特集 2016年4月15日

巨大アナゴ「ダイナンアナゴ」をおいしく食べたい

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東京湾のあちこちで巨大なアナゴが頻繁に釣れる。

以前に当サイトでもこの魚を蒲焼きにして食べてみたのだが、その仕上がりは一般的にイメージされるアナゴのそれとは似つかず、残念ながら素材の特性を生かして食べることができなかった。

だが、僕はその失敗を経て後、マアナゴの代わりとしてではなく、巨大アナゴらしさを尊重して食べる方法を少しずつ研究してきたのだ。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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その名はダイナンアナゴ

ダイナンアナゴってこんなやつ。
ダイナンアナゴってこんなやつ。
その巨大アナゴは名を「ダイナンアナゴ」と言う。

大きな個体は全長150センチ以上、体重は10キロ以上に達する。「アナゴ」という響きからは想像しがたい、大迫力の大型肉食魚である。
ダイナンアナゴの蒲焼き。マズくはないんだけど、普通のアナゴの味を期待しているとガッカリする結果に…。
ダイナンアナゴの蒲焼き。マズくはないんだけど、普通のアナゴの味を期待しているとガッカリする結果に…。
見た目のインパクトは抜群。身は軟らかく、そんなに悪くもないのだが、やはり大味でマアナゴの味を期待して食べると少々がっかりしてしまう結果に。骨が多いのも減点要素。
見た目のインパクトは抜群。身は軟らかく、そんなに悪くもないのだが、やはり大味でマアナゴの味を期待して食べると少々がっかりしてしまう結果に。骨が多いのも減点要素。
生息環境は深海だったり、漁港内だったり、工場地帯だったりと実に神出鬼没…というか、どこにでもウヨウヨしているようで、東京湾で魚釣りをしていると、やたらと遭遇しがちなのである。
これでちょうど平均的なサイズ。それでも500mlのペットボトル並みの太さ。
これでちょうど平均的なサイズ。それでも500mlのペットボトル並みの太さ。
入手はかなり容易なので、うまい調理法が見つかれば今後の食費も浮きそうなものなのだが…。
流しに置くと威圧感がすごい。
流しに置くと威圧感がすごい。
たっぷりの塩で揉み、ぬめりを落とす。
たっぷりの塩で揉み、ぬめりを落とす。
作る料理に応じて身を切り分ける。身の色はご覧のとおり真っ白でキレイ。
作る料理に応じて身を切り分ける。身の色はご覧のとおり真っ白でキレイ。
ところで、この魚は皮目に沿ってやたら硬い小骨が大量に入っているため、調理時にはかなり細かい骨切りをしなければならない。ミリ単位の。この作業は面倒だが、慣れてくると楽しい。そして毎度、微妙にコツを忘れて再修業を強いられる。
煮付け。骨切りがまだうまくできていなかった頃の作。
煮付け。骨切りがまだうまくできていなかった頃の作。
うーん、別にまずくはないけど…。
うーん、別にまずくはないけど…。
蒲焼きがだめなら煮穴子だろう!と甘辛く煮つけてみたが、やはりいまいちパッとしない。
風味がアナゴに比べて薄い。磯臭さや血生臭さも無いが、魚らしい脂の風味や旨味も薄い。あと、小骨が気になる。

これ、アナゴであることをいったん忘れて、ただのあっさりした白身魚として扱ったほうがいいな。

意外と淡泊!刺身でも可

この魚には肋骨が無いので、ハラミは非常に食べやすい。刺身でもOK。
この魚には肋骨が無いので、ハラミは非常に食べやすい。刺身でもOK。
ダイナンアナゴの刺身
ダイナンアナゴの刺身
おっ、意外とイケる!…ただ、味に主張無さすぎるなー。
おっ、意外とイケる!…ただ、味に主張無さすぎるなー。
小骨も肋骨もないハラスを使って刺身を引いてみる。
身はとても軟らかく、味は非常に淡泊。若干口に筋が残るのがマイナス評価だが、概ね可もなく不可もなく。「うん。普通においしいんじゃない?」という感じ。
もう一工夫したら、よりおいしくなりそうだ。
刺身に味噌、ネギ、しょうがを加えて
刺身に味噌、ネギ、しょうがを加えて
粘りが出るまで叩き合わせる。身は軟らかいが繊維質で、なかなかバラけない。
粘りが出るまで叩き合わせる。身は軟らかいが繊維質で、なかなかバラけない。
ダイナンアナゴのなめろう。これは美味い。ダイナンアナゴである必要性は、まあ別に無いが。
ダイナンアナゴのなめろう。これは美味い。ダイナンアナゴである必要性は、まあ別に無いが。
そこで薬味と叩いてなめろうにすると、よりおいしくなった。ただ、アジのそれと比べるとやはり淡泊というか、魚自体の味が希薄だが。
良く言えばクセが無いということなので、まあこれはこれでアリかな。

天ぷらがベストか

ダイナンアナゴのから揚げ。一見おいしそうだし、実際に味自体は悪くないのだが…
ダイナンアナゴのから揚げ。一見おいしそうだし、実際に味自体は悪くないのだが…
味はいいのに、小骨がひどい!
味はいいのに、小骨がひどい!
また、油で揚げてしまえば間違いなかろうと唐揚げを作ってみたところ、小骨にひどく悩まされることに。ハラス以外はよほど上手く骨切りできないと、噛むたびに非常にストレスが溜まってしまう。

そのあたりに不慣れなうちは一口サイズにカットするより、大きめに切って調理したものを箸でむしる方が食べやすそうだ。
この小骨が!不快!
この小骨が!不快!
ダイナンアナゴの天ぷら。図らずも衣をつけすぎて沖縄風に。
ダイナンアナゴの天ぷら。図らずも衣をつけすぎて沖縄風に。
小骨を避けながら熱いうちに食べる。皮がモチモチととろけて美味い!天ぷらがダイナンアナゴにベストマッチな料理かもしれない!
小骨を避けながら熱いうちに食べる。皮がモチモチととろけて美味い!天ぷらがダイナンアナゴにベストマッチな料理かもしれない!
というわけで大ぶりにカットして天ぷらにしてみたが、これが大当たりだった。

サクサクの衣に、ふわふわの身質がマッチしている。あっさりめの味も油との相性がよく、くどくならない。…今後はこの魚が釣れたらなめろうと天ぷらメインで消費していこう。

チャレンジメニュー「ダイナンアナゴのゼリー寄せ」

さて、ここまで紹介してきたダイナンアナゴの調理法だが、「なめろうか天ぷらにするといいよ」というなんとも面白みのない結論に至ってしまった。
そんなの当たり前だろう。そもそもなめろうや天ぷらにして不味い魚なんてそういない。
もうちょっと尖った、チャレンジングスピリットにあふれる料理も試してみるべきでは?…という読者様方の声が聞こえる。ええ、お応えしますよ。
ダイナンアナゴのゼリー寄せ!
ダイナンアナゴのゼリー寄せ!
イギリスの迷作料理としていろんな意味で名高い「ウナギのゼリー寄せ」の巨大アナゴ版である。そもそも、僕はオリジナルのウナギのゼリー寄せを食べたことがないので、この調理法がダイナンアナゴに適しているのかもわからない。ただ「作ってみたかったから作った」だけである。

作り方は簡単。筒切りにしたダイナンアナゴを塩水で煮込み、煮汁ごと冷蔵庫で冷やし固めればOK。皮から溶け出たゼラチン質で透明な煮凝りになる。
うわ~…、おいし、そ、う…。
うわ~…、おいし、そ、う…。
イタダキマス…
イタダキマス…
ああ!意外と味は普通なんだけど!なんか無理!
ああ!意外と味は普通なんだけど!なんか無理!
…味はクセも無く、そういうものだと思えばそれなりに食べられそうではある。しかし、見た目の悪さと食感の相乗効果で、必要以上に不味く感じてしまう。
いや、これはキツい!

このままでは完食できないので、緊急の措置をとることに。
再加熱して煮凝りを溶かし、身を崩してそぼろにする。
再加熱して煮凝りを溶かし、身を崩してそぼろにする。
トマトソースで炒めて、ダイナンアナゴスパゲティーの完成。これは無難に美味い。
トマトソースで炒めて、ダイナンアナゴスパゲティーの完成。これは無難に美味い。
いったんフライパンで加熱しなおしてトマトソースで和え、スパゲティーと絡める。これでなんとかすべてのゼリー寄せを消費。
食材の処理に困ったら揚げものかカレーかパスタ。これ鉄板。

不味くはないけど…

というわけで、ダイナンアナゴは蒲焼きなどいかにもアナゴっぽいメニューを避ければ意外と難なく食べられた。拍子抜けするほど。味は薄いが、まあ、そこそこおいしいのだ。

だが、今後も釣れるたびに持ち帰るかと問われれば、ちょっと悩んでしまう。骨切りなど調理にかかる手間を考えると、彼らはリリースして他の魚を優先して食べるほうが理に適っているのでは…と。

でも、一度トライしてみる価値はあるかもよ?
背びれに毒針のあるハオコゼという魚が胃から出てきた。毒針、役に立ってないじゃん!
背びれに毒針のあるハオコゼという魚が胃から出てきた。毒針、役に立ってないじゃん!
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