特集 2016年3月8日

空力を味わいたい

車のような空力を感じたい。やってみるとヤン車のようになりました
車のような空力を感じたい。やってみるとヤン車のようになりました
動く物体が受ける風の力、空力。ぼくらはこれをミニ四駆の改造で学んだ。

ところがミニ四駆のお店の人に「実は空力にも意味があることがわかったんです」と聞いた。なんてこった。意味ない前提だったのか!

そもそも空力ってどれくらいのものなんだろう。どんなものなんだろう。自分でつけて体験してみた。
動画を作ったり明日のアーというコントの舞台をしたりもします。プープーテレビにも登場。2006年より参加。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

エアロパーツで空力を感じよう

一般的な車とレース用の車では見た目に明らかなちがいがある。派手な色やステッカー、そして空力のためにつけられたエアロパーツである。

とくに大きなものとしてリアウイングとフロントスポイラーというものがある。これを人用に作ってみる。
エアロパーツの代表的なもの、ウイング。スケッチして設計図を作成
エアロパーツの代表的なもの、ウイング。スケッチして設計図を作成
スチレンボードを切っていく
スチレンボードを切っていく
ホットボンドでとめたらかっちりついた。なかなかいい具合だ
ホットボンドでとめたらかっちりついた。なかなかいい具合だ

リアウイング、うまくできた

まずはリアウイングで画像検索して設計の参考にする。車改造パーツ屋がいかに車を速く走らせるかと苦心した結果が並ぶ。

こちらも速くなれ、速くなれ、と呪文のようにつぶやきながらウイングを作った。

一方、これで速くなるなら小学生相手に瞬速売らずにウイング売るだろうなという思いもある。
つづいてフロントスポイラー。いかつい車は前の下の方がしゃくれている。空気を下にいかせないためだそうだ
つづいてフロントスポイラー。いかつい車は前の下の方がしゃくれている。空気を下にいかせないためだそうだ
一番下となると靴だろう。この靴に加工をしていく
一番下となると靴だろう。この靴に加工をしていく
塩ビシートを貼って前を長くしていく。車のものをまねして少しだけ穴も開けておいた。穴には網戸の網が貼ってある。
塩ビシートを貼って前を長くしていく。車のものをまねして少しだけ穴も開けておいた。穴には網戸の網が貼ってある。

フロントスポイラーも上出来

エアロパーツのついた車はいずれも前方下部にボリュームがある。空気が車の下にいかないようにするフロントスポイラーというパーツだそうだ。

人間の下部分というと靴だろうから靴の下に空気がいかないように塩ビシートで下の空気を上に行くようにむけていく。

もちろん自分でも書いていて違和感はあるが、とにかくできた。わずかに空気の抜ける道を作って網戸の網でふさいだ。

これで蚊も入ってこれないはずだ。
なぜかパリコレに出てきそうな靴になった
なぜかパリコレに出てきそうな靴になった
おお、これがエアロパーツか。長いなあ
おお、これがエアロパーツか。長いなあ

エアロパーツ堂々完成、いよいよ空力を感じる

リアウイングもフロントスポイラーも完成した。これをつけて外に出てみよう。

どちらも白い素材で作ったので白い服に着替えた。よし、よし。これで白い車のようになることだろう。白い車のように!? 空力を感じるはずが一体いつのまにそんな目的が出てきたのだろうか。

さあ、出よう、レーシングコースに! いや、マンションの前に!
外に出たら一瞬で崩壊。ピカチュウカーみたいになった。
外に出たら一瞬で崩壊。ピカチュウカーみたいになった。
そしてできました、人用エアロパーツ。人なのに白いヤン車のようです
そしてできました、人用エアロパーツ。人なのに白いヤン車のようです

白いヤン車のようだ

リアウイングを背負う。フロントスポイラーをテープで固定する。できた、エアロパーツをつけた人だ。

そして肝心の空力はどうだ、動いていないと風もそれほど感じないので何も変わらないな……と思いをめぐらせる前になんだろうこのただある感じは。

ただ、あるなあ、といった感じだ。白いヤン車があるなあという感じだ。

空力を感じたいと思ってたのにいつのまにおれはヤン車になっていたのだ。
なんてこった、今にも走り出しそうだ
なんてこった、今にも走り出しそうだ
と思ったら実際に走りだした! すげえや!
と思ったら実際に走りだした! すげえや!
おや? 歩道にヤン車が入ってきたな
おや? 歩道にヤン車が入ってきたな
ヤン車が近づいてきて危ないぞ…
ヤン車が近づいてきて危ないぞ…
ヤン車が…いや、ちがう!
ヤン車が…いや、ちがう!
人だ! 白いヤン車だと思ったらエアロパーツをつけた人だ!
人だ! 白いヤン車だと思ったらエアロパーツをつけた人だ!

走って空力を感じるか

エアロパーツをつけて走ってみる。走ると風をうける。ウイングにも風が当たるのがわかる。しかしそれ以上に走ってウイングがゆれる振動の方が大きい。空力<振動だ。

一方のフロントスポイラーであるが、こちらも空力以前に靴底に配置された塩ビシートのグリップの悪さが目立つ。

元がコンマ何秒のレースの世界のものだ。日常ではささいすぎて目立たないか。

一方、ヤン車感は依然として目立っている。
はやいぞ!
はやいぞ!
鳥だ、飛行機だ、いや、ただの人だ!
鳥だ、飛行機だ、いや、ただの人だ!
より空力を感じるために自転車に乗ってみたら…なんてこった、もう完全に車だ!
より空力を感じるために自転車に乗ってみたら…なんてこった、もう完全に車だ!
明け方、クラブ帰りの女性をこういう車がナンパしてるのを見たことがある
明け方、クラブ帰りの女性をこういう車がナンパしてるのを見たことがある
車を持たない暴走族のリーダーにも見えてきた
車を持たない暴走族のリーダーにも見えてきた
なんてこった、このリーダー、ガルウィング仕様だったのか…
なんてこった、このリーダー、ガルウィング仕様だったのか…
ぼくパトロールに行ってきます!
ぼくパトロールに行ってきます!

自転車でわずかながら空力を感じる

今度は自転車だ。走るときのような振動はないし、走るよりも速い。

正面から風が当たる。フロントスポイラーはもはやあきらめたがリアウイングにも当たる。するとほんのわずかに下向きの力を感じる。

おお、これだ、これがダウンフォースか。下向きの力でタイヤと路面ががっちりくっつく。これで速く進むらしい。

初めてのダウンフォースの感動。おれがヘレン・ケラーの先生ならこのウィングをつけてあげて「…ダウンフォース!…ダウンフォース!」と味わわせてあげたい。

しかしだめだ、おれはヘレンに会わせる顔がない。というのもこの白いヤン車のような出で立ちは、教育者として完全に失格だ!
ヤン車だ!
ヤン車だ!
ヤン車だ! 完全に白いヤン車だ!
ヤン車だ! 完全に白いヤン車だ!
いや、エアロパーツつけた人だった!
いや、エアロパーツつけた人だった!
もう一回走ってみよう、やはり空力はわずかだ
もう一回走ってみよう、やはり空力はわずかだ
やっぱり人だ。それよりも公園の子供たちがざわついている
やっぱり人だ。それよりも公園の子供たちがざわついている
小学生たちが奇行にさわぎだした。くそ、Youtuber世代め…
小学生たちが奇行にさわぎだした。くそ、Youtuber世代め…

エアロパーツは空力よりも見た目の効果である

一般的な車のエアロパーツはスピードのためというよりもドレスアップのためにつけることが多いようだ。

たしかにたしかに。その空力の力は人でいうとわずかなものだった。しかしそれよりもその見た目の力だ。

この日、公園には多くの子供たちがいた。白いヤン車が二周すると子供たちがあきらかにさわぎはじめたのだ。

そういえばマンションの前でもじっと見てなにか言いたそうにしている子供がいた。

わかる。君たちが言いたいのは「Youtuberですか?」だろう。

おじさんわかるんだ。長い間こうやって何か変なものを作って外で試してみたり変な実験をしてきたからね。昔はみんな見て見ぬフリをしてくれたよ。でも最近では君たち子供の反応がちがってきた。「Youtubeですか?」と聞かれることがあるんだ。君たちの好きなYoutuberだね。どうやら子供たちの間で奇行に対する興味が増してるんだ。

それ自体は悪くないことだと思うよ。でも残念ながらおじさんはYoutuberじゃない。ただの白いヤンキー仕様の車だ!
その後狭いバーで飲んでいたのだが、邪魔だといわれて片付けられたリアウイング
その後狭いバーで飲んでいたのだが、邪魔だといわれて片付けられたリアウイング
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