道ばたで見た鳥がでかい
秋に釧路で車を走らせていると、道路沿いの畑にやたらでかい鳥が突っ立っている事があった。正体はタンチョウヅル。釧路では冬に給餌場に集まり、その美しい姿や恩返しを見に各地から人が集まるのは知っていたが、なんだそのへんに立っているのかと、北海道の「そのへんのポテンシャルのすごさにまた格別な思いが巻きあがった。
でかい鳥の、さらにでかいオブジェをつくる人類。
タンチョウの他にもオオワシやオジロワシ、オオハクチョウなど冬の道東はでかい鳥のオフ会状態になる。でかい土地にでかい鳥、両成敗でいいじゃないですか(なにが)。東京でもダウンジャケット2枚着て通勤する寒がりが、でかい鳥を見に真冬の釧路へ飛んだのだった。
まず湿原がでかい
釧路といえばやはり釧路湿原。東西最大約25km、南北灼約36kmにわたって広がる日本最大の湿原である。東京の山手線内側がすっぽり入ってしまう広さで、日本の総湿原面積の約6割を占めるという。展望台から見下ろすと、なんかもう途方もない湿原だ。
まいったなこれは。
巣からしてでかい
「あれオジロワシの巣ですよ」
湿原のでかさに怖じけづいて依頼したガイドさんが指差す方向を見やると……。
彼方に大いなる違和感を持つ逆三角形が。
巣だ!それにしてもでかい!となりにはオジロワシ。
でかい!なんだあれは。西新宿あたりの専門学校か。
北海道を代表するでかくてかっこいい猛禽類の一種、オジロワシは基本冬鳥として渡ってくるが、一部の個体は夏も留まり北海道で生活する。翼を広げた幅が約2mにも達する怪鳥の巣はスケールが半端なかった。中で気の利いたオイスターバーでも経営してるんじゃないか。
後で見つけたハンサム。かっこいい。モテかたを知っている表情。
やっぱりツルでかい
展望台からざっくり釧網本線沿いに北上して釧路湿原を散策してゆく。
今回はじめてタンチョウと会合したのが茅沼駅。日本で唯一タンチョウが来る駅である。
無人だけどタンチョウが来る駅。
冷害で餌が不足した1964年、当時の駅長によって給餌されて以来、タンチョウがこの駅にやってくるようになった。86年に無人駅となったが給仕は近隣住民に引き継がれ、相変わらず少数が姿を見せるという。
SLを撮影しに来ていた人が「あの位置に立てたらなー」とつぶやいていた。
気品あるたたずまい。スワロフスキーを売りたい。
タンチョウは「丹(赤い)頂(頭頂)」と書き、その名は真っ赤な頭頂部に由来している。
赤い羽毛が生えているのではなく、皮膚が露出してその血流の色で赤く見えるのだ。
ちょっと分かりにくいかもしれないが……。ほのかにザビエル感がないだろうか。
「あれはハゲか…」それを知ってからは、降りしきる雪の中のタンチョウ写真を見る度にえもいわれぬ寒々しさを感じていたが、本物を見るといっそうそれを実感した。しかしポジティブにとらえれば、世の中には美しいハゲというものが確実に、存在するのだ。ツルのように赤く美しく禿げていきたい。釧路まで来てよかった。
他にもでかい
ワシやツル以外の鳥もいろいろな意味ででかい。運良くエゾフクロウも発見できた。
この表情!リア充だわ、所得も高いわきっと。
一見ものすごく無防備な寝姿だが、周囲は小枝やツタで覆われ、カラスや猛禽類などの侵入は極めて難しい。晴れた朝陽の下でまどろむ肉塊を目の前にしておあずけを食うしかない、天敵のマインドにもダメージを与える絶妙なポジショニング、っていうかあんたらはどうやって入ったんだ。
北海道、ご当地野鳥のシマエナガ(これは小さい)
塘路湖(とうろこ)付近ではSLに遭遇。SLもそれを狙う撮影隊のレンズもでかい。
ひゃー、かっこいいなおい!
ベストアングルのために近くの山に登っている人達。めちゃめちゃ寒いだろうな。
タンチョウの大衆食堂がでかい
釧路湿原のタンチョウ観察スポットとして有名なのが阿寒の国際ツルセンターや鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリだが、ガイドさんの話によれば、暖冬の影響でそこに匹敵する数のツルを集めているところがある。
鶴居・伊藤 タンチョウサンクチュアリ。雪景色に生えるタンチョウたち。
で、この畑。圧倒的ボリューム
例年より雪が少なく、地表が露出したデントコーン(畜産用のトウモロコシ)畑。ここに来ればわざわざ給餌してもらわなくても餌にありつけるとあって、大量のツル達が参集しているのだ。
「いや~まあサンクチュアリとかと比べるとあまりいい絵ではないけどもね」
確かに茶色い地面は露出し、タンチョウはみんな下向いちゃってるし後景には牛舎とかがいろいろあってうるさい。しかし「個人的にはこういうガチャガチャしたの大好きです!」と本音をぶつけてシャッターを切りまくった。
300羽はくだらないと言われるツル軍団の一大パノラマを動画でどうぞ
カメラのズーム倍率がでかい
翌日は別のでかい鳥を狙って釧路より太平洋沿いに東を目指す。
今回、でかい北海道行脚に備えて導入した機材がある。
ニコンの83倍ズーム(2000mm)という常軌を逸した超望遠カメラだ。これが想像以上に便利だった。
お、あんなところにでかい鳥のペアが!
グイーン!オジロワシだ!
というか、83倍のズーミングというのがすごすぎて,もうなんかズームしながら笑ってしまう。私の資産もこんな感じでレバーをさくっと倒すだけで83倍になればすごく幸せなのだが。
世の中のあらゆるものを拡大したい。拡大は正義だ。
こんな感じで道中、いろいろ83倍にしながら厚岸町へとむかった。
オオハクチョウがでかい
厚岸町の東側に広がる広大な汽水湖、厚岸湖は国内有数のオオハクチョウの越冬地として知られている、でかい鳥をめぐるなら外せないスポットである。
厚岸湖、カルガモかというくらいにオオハクチョウが群れをなす。
一見優雅でも水面下で必死に足を動かしていると影の努力を讃えられがちなハクチョウだが、昔、遊園地の池でカモに餌をあげようとしたら後ろからハクチョウがカモの羽をくわえ、そのまま後ろにぶん投げて私にえさをねだってきたことがあって、なんか性格きついなと思った事がある。
せわしなく歩いてカモメとかをどかす。
オオセグロカモメ、ホオジロガモなど、目つきの悪い軍団の競演。
オオワシは器がでかい
だだっぴろい湖のはるか遠方に茶色い物体が見える。
事件の予感だ!
おお!なんかネイチャードキュメンタリーとかでよく見る光景が!
力つきたエゾジカの死体にカラスやキタキツネ等捕食者一行が群がり、ジビエパーティーの様相を呈している。
少しカメラを横に振ると…オオワシいた!向こうのはオジロワシの幼鳥かな?
シカの周辺ではすでに食事を終えたオオワシが昼食後の談笑をしていた。
皆があこがれるわし鼻(口だけど)。かっこいいではないか。
オオワシは前出のオジロワシよりも更に一回りほどでかい。
残りものをあさるカラス達に目もくれず、吹き付ける冷たい風に微動だにせずにたたずむ姿はまさに氷原の王者たる風格だった。
エゾジカのIQがでかい
この後で、生きているエゾシカに遭遇。雪道を徐行する前に飛び出して、しばらく逃げようとしなかった。
この余裕しゃくしゃくの表情がなんかイラッとくる。
昨日のガイドさんが「猟師から聞いた話なんですけどね」と語っていた事を思い出した。
「エゾシカってやつはまあとにかくかしこい動物で、禁漁区の中では森や林の中で人に見つかるとすぐに逃げるんですが、撃たれないように民家や国道とか、銃が使えないところをちゃんと目指して逃げるらしいですよ」
車の前のエゾジカはとにかく動かなかった。きっとこちらが「わ」ナンバー、つまりレンタカーであり、衝突事故を起こせば移動プランがぐちゃぐちゃになるだけでなく、安心パックに入っていたとしても20,000円から50,000円の自己負担が必要になるので運転手がこちらを轢く事はありえない、という事も計算しているのだろう。
やっとどいてくれたが全然遠くにいかない。レンタカーで悪かったな。
日も暮れかけてから立ち寄った厚岸湾の堤防から海を見ていたらゼニガタアザラシ?がさっくり顔を出す。北海道やっぱすごい。
なんか水を冷たがっているような表情だった。
ちなみに厚岸名物、牡蠣のアピールがアグレッシブ。
ワシが近いとさらにでかい
翌日、もうひと声とばかりにさらに東、風蓮湖~春国岱を目指す。
風蓮湖では湖面が凍結すると湖面の下に網を仕掛ける「氷下待ち網漁が行われ、そのおこぼれを狙ってワシ達が集まる。ワシにとっては「氷上『氷下待ち網漁』待ち漁」というわけである。
おおーいるいる。
着いたころには漁は一段落し、派手なアクションはもう見られないかもと言われた。
じっくりオオワシを見たいだけの私にはギャラリーも減ってちょうどいい。
多数のオオワシと少しのオジロワシ。なんかもっと緊張感ないのかと言いたくなる程親しげだ。
「そういえばモンハンってやったことあります?」「いやどっちかというとこっちがモンですよね
しぶい!ナイスミドル!利益供与したい!
お先しまーす。飛んでるところはなんかもう特撮っぽい。
欽ちゃん走りのようによろよろ駆けて行ったキタキツネ
道路沿いのでかい木には数羽のオジロワシ。カラスやトビのようにそのへんの枝でぼーっとしている姿がすごくいい。
電線が入るとさらにありがたみがなくなっていい。
このイカリ肩、かっちり決まった髪、デヴィッド・バーンだ、デヴィッド ・バーンだこれ!(かっこいいと言っていると思ってください)
オジロワシの幼鳥、若年にしてこの貫禄。
またまた東へ進み、春国岱(しゅんくにたい)へ。北海道東端の、地図で見ると野付半島に次いで「細くてなんか切れそうなところ」である。
この砂州は切れそうというだけでなく、野鳥の宝庫として知られており1年を通じて多様な野鳥が観察できる。
だったらこんな季節に来るなとばかりに雨……。
40歳になった今でも旅先でふわりふわり雪が降って来たらそれなりにはしゃぐ自信はあるが雨はいやだ。しとしと濡れて、髪がぺったり貼り付いて、そんなの哀しすぎるではないか。
なので野鳥観察センター内から近くに飛んでくる鳥を観察する。
ミヤマカケスに……。
あざやかなアカゲラ
実はでかい鳥めぐりのフィナーレとして探していたのはこのキツツキ科の親分格、クマゲラである。まあガイドさんからもかなり難しいと言われていたのでダメもとではあったのだが、やはり発見はできなかった。まだ他にも探索予定だったのだが悪天候のため断念。無念、またチャレンジしたい。
明日仕事か…
負け惜しみにでかい鳥
クマゲラはグーグルで検索すればどんな鳥かすぐわかるのだけれど、千葉で見つけためちゃめちゃでかい一羽を貼っておきます。