「マジ」っていう言葉を集めてみました。右上から「マジ 親とかにも黙っとくし! マジで!」「また落ちるってマジで」「ぬり絵とか福笑いとかマジ禁止ね!」「へー マジで 園川の弟!?」
まずは国語辞典ナイト2のダイジェストをお送りします
先日、国語辞典編纂者の飯間浩明先生と、国語辞典マニアの見坊行徳さんにご出演いただき、お台場の東京カルチャーカルチャーで「国語辞典ナイト2」というイベントを開催した。
おかげさまで満員御礼でした!
イベントでは、昨年好評だった企画「漫画雑誌から国語辞典にのせたい言葉をさがす」というものを行った。
漫画雑誌から国語辞典(三省堂国語辞典)に載せたい言葉をみんなで勝手に検討しようという企画だが、せっかくなので、イベントで拾った言葉のなかから印象的だったものを幾つか文字おこしして紹介したい。
漫画雑誌から国語辞典(三省堂国語辞典)に載せたい言葉をみんなで勝手に検討しようという企画だが、せっかくなので、イベントで拾った言葉のなかから印象的だったものを幾つか文字おこしして紹介したい。
「マジ」が進化している
『りぼん』1月号「ハツコイに手錠」瀬川あや、「つばさとホタル」春田なな、「キミとだけは恋に堕ちない」酒井まゆ、「アニマル横町」前川涼
これは普通に言うよねと思うかもしれませんが「マジ」か「マジで」かが問題なんです。
ほう。
この4つの例だけから帰納しますとね、最後にくると「マジで」になるんです。
あー
「また落ちるってマジ」で止めないんです。
「で」が絶対つくと。
ところがその左下は「マジで弟」って言ってますね。(こういう場合の)「マジで」はどういう時に使うかというと、「マジで弟!?」というふうに下に名詞がくると「マジで」になるのではないか?
はー(なるほどー)
(「マジ」が)始めにきた場合「マジ黙る」「マジ禁止」みたいに(あとに続く言葉が)動作性の場合は「マジ」なんです。「あの子マジかわいい」っていう場合は「マジ」なんです。昔、私たちのころは「マジ"で"かわいい」って言ったんですが、今の人は「マジかわいい」って言うんです。
昔はそういいましたね。
というふうな、この例とあと若干の例で、そういうふうに今のところ私は考えているんですが。
(マジ、マジで、が)用言にかかるか、体言にかかるか? ということですね。(体言=活用しないことば、名詞のこと。 用言=活用することば、動詞、形容詞、形容動詞。)
そうです、用言にかかるか、体言にかかるかで、微妙な違いが出てきてるんじゃないかと。これだけで結論は出ないんですが、もっと集めてみようと、これで論文書くひとはいないと思いますが、少なくとも国語辞典の説明のときは、こういう例があとできいてくるわけです。
あと、マジに関して言うと、驚きのときの「マジでー」が滅び、「マジかー」になってませんか?
あぁー、それは、非常にいいご指摘だと思います。
驚きのときはもう「マジで!」とはいわず「マジか!」になってる。
そうですね、(古賀さんが)お書きになった文章の中でも「マジか!」って出てきますね。その「マジか」という使い方も頭のなかに入れて置かなければいけませんね。
「マジ」だけでこれだけ進化してるんですね。
だから、「マジってもう当たり前の言葉じゃん」と、見過ごすといけないということなんです。
吹奏楽業界では有名な言葉「ダメ金」
『りぼん』1月号、「吹彩-SUISAI-」雪丸もえ
ダメ金です。「その時はダメ金で全国には行けなかったみたい」といってます。
あ、わかんない。
で、わかんないひとのために、下のコマに全部解説がかいてあるという。
あ、ほんとだ「金賞でも代表枠に選ばれないことを そう呼ぶらしいよ」
これ、吹奏楽の漫画なんですよね「吹彩」っていう。吹奏楽用語では一般的なんでしょうか?
会場からもそのような声が。(会場の声を聞いて)吹奏楽用語では一般的。
私は吹奏楽をやらないので、知らなかったんですが、普通に昔から言うとききました。
つまり県大会で金賞ってのがいくつも出るわけ、5校、6校と、でもその全てが全国大会に行けるわけじゃないので、金賞をとったにもかかわらず、全国大会に行けなかったのをダメ金と言ってるんですね。
でもこれは、解説するぐらいの言葉ってことですね。
だからちょっと専門用語というか、専門の世界で使ってるという感じですね。
現在は吹奏楽業界でしか使われないダメ金だが、「いいところまで行ったけど、残念だったこと」を「ダメ金」みたいに言う言い方が吹奏楽業界を離れて使われるようになれば……将来的に国語辞典にのる可能性もあるかもしれない……。
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「せーしまーす」が「失礼します」にきこえる
『週刊少年チャンピオン』2+3号、「Gメン」小沢としお
この漫画をみると「それじゃまたね」と言われて「セーしまーす」と言っている。これは前後の(コマの)文脈から言うと「失礼します」という意味なんだろうね。
でしょうね、失礼しますというのが縮まって「せーしまーす」と。
あ!
今「しつれいします」っていってましたよ!
言ってましたか?
言ってますよ「しつれいします」って! もう一回言ってみてください!
「せーしまーす」
言ってる! 言ってる!
これ「せーします」って言ったら「しつれいします」に聞こえるという不思議な言葉じゃないですか?
「せーしまーす」……ぃ言ってる! 言ってる!
興奮しすぎですよ! ……でもでも、これは発見ですねー。
すごい! でも、これ書き言葉だとあまりピンと来ないですね。
私はじめ何のことかわからなかったんですが、前後のコマをみて「失礼します」だなと判断したんですが、でもありうるんですね、古賀さんが「せーします」が「失礼します」にしか聞こえないというのは、それだけその音韻的に似通ってるということなんでしょうね。
言うと急にわかりますね。
これは「あざーす」ほどの勢力は無いかもしれませんが、「せーします」が言いやすいなと、LINEとかで書きやすいじゃないですか、もしかしたら使う人が多くなるかもしれないですね。
というわけで「せーしまーす」が、「しつれいします」に聞こえるという件。ここで明らかになった。
「せーしまーす」ほんとに「しつれいします」に聞こえる。嘘だと思う人はいまそこでつぶやいてみて欲しい。
意識としては「せーしまーす」と言っているのに、耳に入ってくる音は「しつれいします」になっている。
発音と聴音の感覚が乖離しているというのはなかなか得がたい感覚だとおもう。
「あざーす」は、発音しても「あざーす」にしかならないけれど、「せーしまーす」は完全に「しつれいします」と聞こえるのだ。
「せーしまーす」ほんとに「しつれいします」に聞こえる。嘘だと思う人はいまそこでつぶやいてみて欲しい。
意識としては「せーしまーす」と言っているのに、耳に入ってくる音は「しつれいします」になっている。
発音と聴音の感覚が乖離しているというのはなかなか得がたい感覚だとおもう。
「あざーす」は、発音しても「あざーす」にしかならないけれど、「せーしまーす」は完全に「しつれいします」と聞こえるのだ。
「さしすせそ」でいちばん「しつれいします」にきこえるのは?
さて、「せーしまーす」が「しつれいします」に聞こえるのであれば、同じサ行の「さしすせそ」でいちばん「しつれいします」に聞こえるのはなんだろうか?
ライターの打ち合わせでみなさんに聞いてもらいました
ライターの打ち合わせに出席した7人に、さしすせその「せーしまーす」をきいてもらい、「しつれいします」に聞こえたものに手を上げてもらった。
「……さーします」
「さーします」はふたり……
「せーします」は全員「しつれいします」に聞こえた
その結果、以下のとおりになった。
「さしすせそ」それぞれで「◯ーしまーす」と言って、7人中何人が「しつれいします」に聞こえるのか?
「せーしまーす」が全員「しつれいします」に聞こえたのはいいとして、「さ」や「す」でも若干「しつれいします」に聞こえるという人がいるというのがすごい。さらに「しつれいします」は一番最初が「し」であるにもかかわらず「しーしまーす」が0人というのもおもしろい。
以上をふまえて、ざっとまとめてみた。
以上をふまえて、ざっとまとめてみた。
しかし、なぜ「せーします」が「しつれいします」に聞こえるのか? おそらく素人がいくら頭をひねってもこれ以上のことは出てこないので、飯間先生にお話をうかがった。
「しつれい(失礼)」を早口で言うと、「しつ」の部分に母音の無声化が起こります。
つまり、私たちは 「shi(し)」「tsu(つ)」「re:(れー)」 とゆっくり発音しないんです。「し」「つ」は母音が落ちて、「shtsre:」のようになります。
「shts」なんて発音しにくいし、聞き分けるのも難しいですね。ぼんやり聞くと、なんかスースー言っているぐらいにしか聞こえない。
しかも、その次の「れー」に含まれる「r音」は、日本語の子音の中で一番発音しにくく、えてして曖昧に発音されます。「ござります」が「ございます」、「わからない」が「わかんない」になるなど、もともと「r音」は落ちやすい。それだけ不安定な音だということです。
「失礼します」も、早口で言うと「れーします」の「r」が落ちて「えーします」になってしまう。
つまり、「失礼します」は、早口で言うと、冒頭で何かスースー言い、その後に「えーします」が続く、結果として「せーします」になってしまう、ということだと考えられます。
つまり、私たちは 「shi(し)」「tsu(つ)」「re:(れー)」 とゆっくり発音しないんです。「し」「つ」は母音が落ちて、「shtsre:」のようになります。
「shts」なんて発音しにくいし、聞き分けるのも難しいですね。ぼんやり聞くと、なんかスースー言っているぐらいにしか聞こえない。
しかも、その次の「れー」に含まれる「r音」は、日本語の子音の中で一番発音しにくく、えてして曖昧に発音されます。「ござります」が「ございます」、「わからない」が「わかんない」になるなど、もともと「r音」は落ちやすい。それだけ不安定な音だということです。
「失礼します」も、早口で言うと「れーします」の「r」が落ちて「えーします」になってしまう。
つまり、「失礼します」は、早口で言うと、冒頭で何かスースー言い、その後に「えーします」が続く、結果として「せーします」になってしまう、ということだと考えられます。
「母音の無声化」と「r音が落ちやすい」というのは「いらっしゃいませー」が「しゃっせー」みたいになるのを考えると、なんとなく納得できる。
日本語には現在100種類ちょっとの発音があるが、古事記や万葉集の頃には特殊な「キ」「ヒ」「ミ」など、現在では消えてしまった発音がさらにあったらしい。消えてしまったのは、おそらく、発音しにくかったのだろう。
発音しにくい音や聞き取りづらい音は、はなし言葉の中で欠落して言われることがよくあり、そのまま定着することもある。
「せーします」が「しつれいします」に聞こえるのも、そういう言葉の変化のひとつかもしれない。
適当なあいさつだと思ったけど貴重なサンプルかも
「あざーっす」とか「ちゃーす」みたいな言い方を、適当なあいさつだと思って聞くとイラッとするかもしれない。
しかし、ルールのある日本語のなまり方の一形態だとすると、貴重なサンプルのような気がしてくる。
そう思うと怒る気も失せる上に、逆にもっと言ってくれという気持ちになるから不思議だ。
そう、これからはもっと胸を張って、堂々となまっていただきたい。
しかし、ルールのある日本語のなまり方の一形態だとすると、貴重なサンプルのような気がしてくる。
そう思うと怒る気も失せる上に、逆にもっと言ってくれという気持ちになるから不思議だ。
そう、これからはもっと胸を張って、堂々となまっていただきたい。