会場は六本木でした
展示会の会場は六本木ミッドタウンのホールだ。
あらまあ素敵
この中にはいると、
会場はこんなふうでした
展示会のタイトルは「ORF2015 次世紀の芽」。次世紀につながるような先端的な研究を見てもらおう、ということなんでしょう。
SFCには総合政策学部や環境情報学部、看護医療学部などいくつかの学部があって、それらを一堂に会した展示会ということなので内容もさまざま。とにかく手当たり次第に見てみることにした。
増井俊之研究室
まずは、増井研究室というところにやってきた。
この人が増井先生
このおじさん誰?と思う人もいるかもしれないが、日々使ってるスマホの予測入力方式を発明したのがこの人だ。超すごい人である。
いろんなものを発明するおじさんではあるが、この日のだしものは「コンピューターを操作できちゃう椅子」であった。
ただ座っているだけに見えるけど
「東京タワーを見てみようか」というと東京タワーが映るし、
「電気をつけよう」というと電気がつく!
座ってるだけにしか見えないのでかなり不思議だ。でもこれ、じつは肘掛けの部分がこうなってる。
ここにボタンがあるのだ
両手の肘掛けの下にボタンがあり、これでメニューを操作するようになってる。右手のボタンを押せば次の選択肢に進み、左手なら戻る。両方なら決定みたいな感じだ。
「ほら光の色が変わったでしょう」
「Gearコントローラー」という。これだけだと「椅子にボタンつけただけじゃん」と思うかもしれないが、これの肝は実は逆で、たった2つのボタンだけで複雑な階層構造を辿っていけるナビゲーションの仕組みを考え、それを椅子に応用したというのが正しいのだ。
戦国時代に昼寝をすると大変なことになるVR体験
次は、戦国時代に昼寝をするとどうなるかが体験できるシステムだ。
こうやって笠をかぶって静かにしていると、たくさんの馬がドドドッと走る地響きが背中から伝わってくる。「いくさじゃー」と叫ぶ声が聞こえてきて、ほんとに近くで戦が起きているような、寝てる場合じゃないなという気持ちになってくるのだ。
VRというとオキュラスリフトみたいに視覚に依存したものをよく見るけれど、これは主に聴覚と地響きだ。でもだからこそ臨場感がある。とても面白い。
強制的に笑顔になるマシーン
次は筧康明研究室の丸山さんによる「Facial Marionette」。
他人の笑顔で自分も笑うシステムです
左側で額にシールを貼っているのが丸山さんです。
右側の女性が笑うと、システムがそれを認識して丸山さんの眉につながるケーブルをひっぱり、丸山さんも笑うという仕組み。
いま右側の女性が笑っているけど、うまく動くかな?
おお!動いてる!
その様子をみて自然と笑っちゃってるのが面白いなとおもった
編み物で数学の問題を解く
つぎは田中浩也研究室の對馬(つしま)さんによる、極小曲面編み。
ハンモック的な何か
正多面体の辺のすべてをつなぐ最小の曲面は何か、というプラトーの問題というものがあるらしい。
で、それを解くのに「かぎ針編み」という編み物の方法が使えるというのだ。つまり、それぞれの辺から内側にむかって順に編んでいくと自然と答えになるという。
そうやって正八面体の場合で編んだのが上の写真だ。でかいのでハンモックみたいになってる。ちなみに、シャボン液から引き上げるようなよくある手法だとうまく行かないらしい。
手元にあるのが正八面体
これの説明のために作ったという正八面体の模型が、なんとストローでできてるのだ! それが証拠に、どんどんほどいていくことができる。
こうなって、
こうなって、
ほら!
こういうのを作った記事です
ぼくの記事ではストロー同士をクリップで結んだけど、對馬さんのは磁石を埋め込む工夫がしてある。だから脱着がスムーズなのだ。すごいと思った。
正八面体の帽子をさわやかにかぶる對馬さん
いちどバラしたストローをまた八面体に組むのはパズルみたいで難しい。なかなか上手くいかなかった。
右側で苦戦するぼく
これ楽しいのでほかの人にもやってほしい。今度つくってみよう。
マツコ・デラックスは毒舌なのになぜ嫌われない?
つぎは白井宏美研究室というところにやってきた。
「われわれはマツコ・デラックスの話法に着目しました」
ここでは「何が人を惹きつけるのか」というテーマで研究をしている。その中で、マツコデラックスや有吉弘之のような毒舌家はなぜ毒舌なのに人を惹きつけるのかを分析した、というのが今回の出しものだ。
たしかに、ぼくのような一般人がただ悪口を言っても嫌われるだけである。悪口を言っても好かれる秘訣とはなんだろうか。
理論的前提があります
前提として、会話には「だよ」みたいな普通体と、「ですよ」みたいな丁寧体がある。それに男ことば、やくざことばみたいな「役割語」がある。
マツコ・デラックスはこれらのスタイルを場面に応じて上手に使い分けているというのだ。
「有田とマツコと男と女」という番組から抽出したマツコの話法の特徴は、たとえば次のようなものだった。
鍵はスタイルシフト
場面としては、女性がモテたいのにモテないという悩みを話していて、マツコ・デラックスがそれを聞いている。
まずマツコは「もうね、しゃべり方がモテない」とツッコミを入れた後、さらに強い口調で「うっせ だからそれがモテねえつってんだろ」と毒舌を放っている。結果として両方とも笑いにつながっているが、ここに「スタイルシフト」がある。
お分かりいただけますでしょうか
まず最初のツッコミは、普通体による軽い毒舌だ。それを相手が笑って受け入れているという反応を見て、さらに強い毒舌を男ことばという役割語で放っている。
つまり、マツコはただ単に毒舌を言っているわけではない。初対面の相手などにはまず丁寧語で会話をし、相手の反応を見ながら普通体や役割語にシフトし、そのギャップによっても笑いを生んでいるというのだ。
…ということなのです
まとめると次のとおりだ。
1. マツコ・デラックスは聞き手の反応によってスタイルシフトを行い、与える印象を頻繁に変えている。
2. マツコ・デラックスの毒舌は普通体・丁寧体・役割語を使用し、相手へ配慮している。
そんなこと考えたこともなかった、というのが正直なところだけど、言われてみると面白い。なるほどね。
ちなみに有吉弘行の毒舌については、
1. 笑いながら毒舌発話をすることで辛辣さを和らげている
2. 笑っていないときは終助詞「ね」を使って辛辣さを緩和している
という分析になったそうだ。確かに笑いながら喋る印象があるね。
説明しているのが石川初先生
石川さんは今年の4月にSFCの教授になった。
当サイトとの関わりでいうとライター大山さんとGPS地上絵を書いていたりもする。
今回のだしもののテーマは「足下を描き直す」。SFCのキャンパスをいろんな視点で捉え直すといったことだろう。
慶応SFCはこんなところです
しかし、まずはSFCってこんなところだよという紹介をしたほうがいいだろう。
慶応大学湘南藤沢キャンパスは、神奈川藤沢市遠藤にある。最寄り駅は湘南台駅で、バスだと15分ほどかかる。
キャンパスは丘の上にあり、緑が豊か。周囲には商業施設はほとんどなく、畑と民家に囲まれている。ローソンがつぶれた今、歩いて5分ほどのスリーエフが生命線である。
周囲には何もなさすぎて好感が持てる
会場にあった模型をもとに書いた見取り図はこんな感じだ。
慶応SFC中心部
といったところで本題に入ろう。こんなSFCをどう描き直すのか、というのがテーマだ。
まずは、江戸切絵図風に描いてみたという吉田さんの作品から。
オメガ館辺絵図
オメガ館というのは中央左の大講義室棟のことだ。SFCには案内図がないということに気づき、江戸時代の案内図であった切絵図のフォーマットで描いてみたという。
なにかこう、急に大名屋敷みたいに見えてくるようで面白い。ぼくも現代の東京を切絵図の書式で描いてみたいなと思っていたので、やられたと思った。
自然風景式庭園としてのSFC
次は絵画だ。
SFCの、水と起伏のある芝生と不規則な樹木という構成は18世紀イギリスの自然風景式庭園に遡ることができるので、当時の庭園風にSFCを描いてみたということらしい。建物の様式も当時のように変えてある。
参考にした風景画の画家はウィリアム・ケントで、この絵の作者は西本健人さんである。ケントつながり。
路線図としてのSFC
最後は石山さんによる「路線図としてのSFC」。
とうとう路線図である。地名の遠藤にちなみ、遠藤電鉄ということになっている。解説によると「基本的には単線だが、一部駅間では複線となり列車どうしの交換が可能」「車両基地をグラウンドの地下に埋め込むことで、車両の保守点検を一本化する」となっている。
もう分かるだろう。石山さんは、空想の路線の保守のことまで心配してしまう鉄道好きである。朝夕のラッシュのために「通学急行」を設けた時刻表も作成済みだ。
湘南台駅のバス待ちの行列は、ひどいときには100メートルも続いたりするそうだ。一刻もはやい遠藤電鉄の運行開始を望みたい。
おもしろいよ
大学のなかでどんな研究をしてるのかってよく分からない。でもこうやっていっぺんに見ることができると、ほんといろいろやってるんだな!と思う。
他の大学でもぜひやればいいのになと思います。そしたら見に行きたい。