価値のわからないものをオークションに出品する企画は、第三弾の今回も出品物を探すところから始まります(前回までの様子)。
きみは切手センターを知っているか
切手センターというお店をご存知だろうか。
それは大都会、新宿駅のすぐ近くにある。
それは大都会、新宿駅のすぐ近くにある。
新宿駅のすぐ近くです。
看板には見返り美人(日本の有名な切手)。
切手センターはビルの一フロアに切手屋さんが数店舗集まって形成されている。広島のお好み焼きビルや大阪のたこ焼きミュージアムと同じ形式である。
切手センターのフロア。
お好み焼きビルではいろんな名店のお好み焼きが食べられるように、切手センターでは様々なジャンルに特化した切手屋さんを一度に見て回ることができる。外国切手を専門とするお店、古銭を扱うお店、現行切手を扱うお店などなど、好きなジャンルがあればそこに腰を据えて掘り出し物を見つけることもできるし、屋台感覚でふらふらと見てまわってもいい。
これはもう切手好きにはたまらない空間であろう。かくいう僕も小学生の頃は切手を集めていたのでその熱は胸の奥にくすぶっている。加えて今回は現役で切手を収集している収集家にも一緒に来てもらった。
これはもう切手好きにはたまらない空間であろう。かくいう僕も小学生の頃は切手を集めていたのでその熱は胸の奥にくすぶっている。加えて今回は現役で切手を収集している収集家にも一緒に来てもらった。
切手収集家の西村さん。
当サイトライター西村さんである。専門収集分野は土侯国切手と呼ばれる収集家のために刷られた切手なのだとか。
今日はコレクションの一端を持ってきてくれました。
これが土侯国切手。ほほう、これは確かにかっこいい。
中でも西村さんの興味は主にロシアや中東の宇宙関連の図柄。理由は「かっこいいから」。実に筋の通った理由である。
店主との会話も切手センターの愉しみ
僕が西村さんのコレクションに目を奪われている隙に、西村さんはすでに一軒の切手屋さんと話し始めていた。
各店舗でそれぞれの専門の店主と話し込むことができます。
「昔はね、ほら、一シート買ってもぜんぶ同じ柄だったじゃない。だから子どもが一枚単位でお小遣いで買えたの。」
それが最近では一シートに数種類の柄の切手が入っているため、集めようとするとシートまるごと買うことになるのだとか。そうなってくると出費がかさみ、子どもには手の出しにくい趣味となる。
それが最近では一シートに数種類の柄の切手が入っているため、集めようとするとシートまるごと買うことになるのだとか。そうなってくると出費がかさみ、子どもには手の出しにくい趣味となる。
このお店では切手にきれいに消印が押された状態で売られていた。
「今年はちょっと無計画に出し過ぎたから、来年は考える、って偉い人も言ってたわよ。」
なんでもここには郵政の偉い人もたまに顔を出すのだとか。日本の切手の過去と未来がここを起点として広がっているのだ。
なんでもここには郵政の偉い人もたまに顔を出すのだとか。日本の切手の過去と未来がここを起点として広がっているのだ。
消印が押してある、という価値
ところで、僕が30年くらい前に切手を集めていたころは、使用済み切手はコレクションの対象にならなかったように記憶している。それが今の切手コレクターの間では、場合によっては消印が押されていることが重視される場合もあるのだとか。
たとえばこのシートには8月31日の消印がびしっと同じ方向に押されている。しかも8時から12時といういわゆる「午前印」がより価値が高い。沼だ。
収集家の中には、同じ柄の切手ばかりを集め、押された消印を端からそろえてカレンダーをコンプリートしようとする人もいるのだとか。もはや単に集めるだけでは物足りず、コレクションは難しい方難しい方へと進化しているのだ。
琉球切手ってなんだ
星の数ほどある切手センターの切手たちの中から、西村さんが一冊の切手アルバムを探し出してきた。
珍しいといえばこれなんてどうですかね。
「琉球、満州」と書かれたファイル。
西村さんが手にしていたのは沖縄切手、琉球切手と呼ばれる種類のもの。中でも戦後、沖縄がアメリカ軍統治下にあった時代には、日本政府が発行していながらドル建て(セント)で売られていた切手があったのだとか。
琉球切手についてはDEEokinawaの記事が詳しい。
琉球切手は250以上の種類があるというが、その価値はなかなか素人では見極めにくい。
琉球切手についてはDEEokinawaの記事が詳しい。
琉球切手は250以上の種類があるというが、その価値はなかなか素人では見極めにくい。
なかなかいい値段するものから。
駄菓子感覚で買えるものまで。かにシリーズがかわいい。
今回は琉球切手の中から、3枚の切手をオークションに出品するために選んだ。どれも高すぎない値付けがされていて、柄が気に入ったものである。
この3枚をあとで出品します。
切手の買い方、上級者編
ところで切手センターで切手を買う時には決められた作法があるので、僕のように初めて行く人は気をつけたい。
まず切手を触る時にはピンセットを使うこと。これは切手を集めている人には普通かも。
まず切手を触る時にはピンセットを使うこと。これは切手を集めている人には普通かも。
僕は買い方を知らなかったので西村さんに来てもらってよかったです。
買いたい切手をピンセットで器に入れて。
番号と値段をメモる。
切手センターの切手の数は本当に膨大なので店主もいちいち値段を覚えていない。そこで値段はアルバムから外す時に自分でメモしていくのだ。このメモと切手の入った器とをお店の人に渡すと合計してくれる。切手好きに悪い人はいないので、このシステムが一番効率がいいのだろう。
僕が出品用の琉球切手を選んでいると、西村さんがお店の隅に頭を突っ込んで何か叫んでいた。
僕が出品用の琉球切手を選んでいると、西村さんがお店の隅に頭を突っ込んで何か叫んでいた。
「おお安藤さん!これは、これはどうっすか!!」
油田でも掘り当てたかのような興奮である。西村さんの見つけたものは
1枚10円の切手の山でした。
うむ、西村さん、これはたしかに興奮するな。
見よ、この真剣さの中にも快感のにじみ出たまなざしを。
このお店の店主は毎月のように海外に行って珍しい切手を買い付けているらしく、そうなってくるともう整理陳列が追いつかないのだ。そこで未整理の切手はこうして箱にどかっと入れられ、1枚10円で売られている。それを僕らみたいなモノ好きがふがふがいいながらピンセットで漁るのだ。
2人合わせて100枚以上選んだ。
なにせ1枚10円である。僕らみたいに1時間かけて100枚選んだとしても1000円だ。こんなエンターテイメントが他にあるか。酒とかギャンブルとかにハマっている人に切手センターを教えてあげたい。
けっきょく閉店間際まで切手をあさり、僕も西村さんもほくほくで帰路についた。僕は帰ってから家でビールを開けて、買ってきた切手をアルバムに並べながら(これ今年で一番楽しい瞬間かもしれないな)と思った。
けっきょく閉店間際まで切手をあさり、僕も西村さんもほくほくで帰路についた。僕は帰ってから家でビールを開けて、買ってきた切手をアルバムに並べながら(これ今年で一番楽しい瞬間かもしれないな)と思った。
忘れていたが琉球切手である。
これまで通りモバオクに出品するにあたり、買ってきた切手を専門家以外の人に見てもらうことにしたい。
今回の目利き以外の人は知り合いのインド人である。
これまで通りモバオクに出品するにあたり、買ってきた切手を専門家以外の人に見てもらうことにしたい。
今回の目利き以外の人は知り合いのインド人である。
インド人のラジャさん。
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ラジャさんはインド人
ラジャさんはガンジス川のほとり、バナラシ出身のインド人である。日本人の女性と結婚したのを機に日本にやってきて3年弱、かなりすらすらと日本語を話す。
ラジャさんはインドにいる間、土産物屋さんで働いていたのだとか。
そんなラジャさんの将来の夢は、牛を飼ってチャイスタンドを経営することである。
ラジャさんはインドにいる間、土産物屋さんで働いていたのだとか。
そんなラジャさんの将来の夢は、牛を飼ってチャイスタンドを経営することである。
チャイを入れるジェスチャーをする、ラジャさん。現在はマクドナルド勤務。
将来の夢を奥さんに熱く語るラジャさん。
どや。
ラジャさんに切手センターで見つけた琉球切手を見てもらった。
--ところでラジャさん、インドでも切手をコレクションしている人っていますか?
「いると思う。old is good 古いものほど高いね。」
なるほど、感覚的には日本と同じだ。
--ところでラジャさん、インドでも切手をコレクションしている人っていますか?
「いると思う。old is good 古いものほど高いね。」
なるほど、感覚的には日本と同じだ。
この切手、いくらになると思いますか? 「これ、古い?」
さすがは元インドの土産物屋さんである、物の価値についてよくわかっている。しかしもちろん日本の切手についての知識はない。
「インドでは切手、みんな郵便局で買う。」
日本でもだいたいそうである。
「インドでは切手、みんな郵便局で買う。」
日本でもだいたいそうである。
うーん
そうですねー。
--どうでしょう、この切手、いくらになると思いますか。
「売る人によるかな」
--というのは
「買ってくれそうな人になら50万円って言う」
「売る人によるかな」
--というのは
「買ってくれそうな人になら50万円って言う」
「50万円って言うね」 ラジャさんが商売人の顔を見せた。
「インドで土産物売っていた時、まず人を見る。それから仲良くなる。そうするとみんな、こっちが売ろうとしなくても買ってくれる。」
なるほど。
僕もインドが好きで何度も行っているので、ラジャさんの言っていることはわかる。インドではとにかくみんな仲良くなろうとしてくるのだ。
しかし今はそういう話はしていない。ずばりこの切手がいくらになるか、予想してほしいのだ。質問を変えよう。
--では仮に、ラジャさんがこれを買うとしたら、いくらで買いますか?
「1万円でも買わないかな」
よくわかりました。
なるほど。
僕もインドが好きで何度も行っているので、ラジャさんの言っていることはわかる。インドではとにかくみんな仲良くなろうとしてくるのだ。
しかし今はそういう話はしていない。ずばりこの切手がいくらになるか、予想してほしいのだ。質問を変えよう。
--では仮に、ラジャさんがこれを買うとしたら、いくらで買いますか?
「1万円でも買わないかな」
よくわかりました。