特集 2015年10月21日

ベトナム人の小腹を埋めるストリートフードたち

小腹埋め放題!
小腹埋め放題!
ベトナム人は一日に五回、食事をとる。

と、言われる。

もちろん朝昼夜の3回だけの人もいるのだけど、5回ってどれだけ大食漢なんだよ!と思われた方は早合点。言い換えれば「一日二回小腹を埋める」ということなのです。埋めるものの正体とは?紹介します。
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

前の記事:古傷エピソード~猫のケンカの仲裁だけはするな~

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小腹を埋める正体は…ストリートフード!

まずはこちらをご覧あれ!
ジャンボ餃子ではない
ジャンボ餃子ではない
これ何だと思います?

正体は、ライスペーパーでつくったピザ!ベトナムの軽井沢とも呼ばれる街・ダラットで生まれたとされ、「ダラットピザ」とも呼ばれる。数あるストリートフードの中でも、私はこれが一番好き。

そう、小腹を埋めるものはストリートフード。食文化が豊富なベトナムでは路上の外食文化が盛ん。ただしあくまで家族団らんも兼ねた内食を中心にしているためか、外食はそれほど重くなくその場でサクッと食べられるものであることが多い。結果、ベトナム人は一回の食事量が分散され、それが彼らのスリムな体型に一役買っていると言われる。

一方で(日本を含む)外国の食文化がドンドンと入って来ていることもあって最近は肥満児がふえており、「近い将来にアオザイが着られなくなる」とも言われているのだけど、それはまた別の話。

それよりも今目の前にあるライスペーパーピザ!
左から、揚げ玉ねぎ、乾燥小エビ、ミンチ、ネギ、うずら卵。
左から、揚げ玉ねぎ、乾燥小エビ、ミンチ、ネギ、うずら卵。
これを全て、ライスペーパーにのせて混ぜる。
これを全て、ライスペーパーにのせて混ぜる。
チリソースを回しかけ七輪で炙り、折りたたんで完成。
チリソースを回しかけ七輪で炙り、折りたたんで完成。
それを狐に憑かれたような顔でほおばります。
それを狐に憑かれたような顔でほおばります。
断面。
断面。
これがもう、パリッパリのシャクッシャクなんです!美味い!皆さんイマジン、具材のラインナップからまずくなる訳がない!ちなみにこれで1万ドン、現在のレートなら55円。惜しむらくは四年前だったら40円。

家でも家庭用コンロで簡単につくれそうですよね。味噌やソースやマヨネーズでやってもおいしそう。あれ、本当に美味いなそれ。これはいい、店開こう。そうとなればマーケティングだぞ!話を聞くぞ!

私 「いつもどれくらいやってるの?」
店員「朝から夜まで、ずっとだよ」
私 「何枚くらい売れるもん?」
店員「平日は30枚、休日は50枚ってところかな」

思ったよりも少なかったな…。

とは言っても売上は一日平均で35万ドン、一ヶ月1050万ドン(5万6千円くらい)だから、利益が半分だとしても市内で働くホワイトカラーの初任給くらいか。

男性「Oh, Rice paper!」

いきなり横から声がして振り向くと、観光客のおじさんがしげしげと様子を観察していた。海苔は外国人にとって紙にしか思えず、ひどい食べ物だと感じると聞いたことがある。海藻は身近じゃないかもしれないが、ライスペーパーは米、普段から食べているだけに余計に「米を紙にするなんて!」と思うのかもしれない。もしかしたら、今めっちゃキレているかもしれない。
ふたつ頼んでいた、どうやらキレてなかった。
ふたつ頼んでいた、どうやらキレてなかった。

そもそもここはどこなのか

念のためにも、あなたがベトナムを訪れたときのためにお伝えしたい。何故ならここは、ホーチミンの超有名観光エリアで、はじめて来る機会があったら必ず寄ると言っても過言じゃない場所だから。
ゴ~ン、ゴ~ン(鐘の音)。
ゴ~ン、ゴ~ン(鐘の音)。
サイゴン大教会、ほかにも中央郵便局や統一会堂といった観光スポットが集まる4月30日公園。取材した日の話をしているのではなく、名前が「4月30日公園」なのです。ベトナム戦争が終わって南北統一が叶った日が4月30日、由来はそこから来ている。

ここで余談。ベトナム戦争は「ベトナムとアメリカの戦争」と思われがちだけど、南北に別れたあくまでベトナム人同士の戦争が基本です。当時は違う国という扱いでも、たった40年前までベトナム人同士で殺し合っていたと思うと印象はまるで変わって来ます。ベトナムはアメリカに勝ったということ以前に、今のベトナムには勝者も敗者もいるのです。ただこれもまた人の数だけ解釈があるので、気になる方は調べてみてください。
そして現代、活気あふれる公園の様子。
そして現代、活気あふれる公園の様子。
そんな4月30日公園は、若者たちを中心にたくさんの人達でいつも活気があふれていて、自然とストリートフードの物売りも集まっています。ここ以外にもありますが、売る側も外国人に慣れているし、中途半端な場所よりはぼったくりに遭う危険も少ないでしょう。

ライスペーパーは炙る一方で切り刻んだりもする

つづいて、同じくライスペーパーを使った食べ物を紹介!バンチャンチョン、直訳すると「コーティングされたケーキミックス」という訳の分からない物体になってしまうのですが、もちろん見た方が早い。
ビニール袋に直で具材を入れている。
ビニール袋に直で具材を入れている。
日本人は袋に直接というと抵抗があるが、この国では普通。
日本人は袋に直接というと抵抗があるが、この国では普通。
たんざく状に切り刻んだライスペーパーを袋に入れ、そこに若いマンゴー(酸っぱいです)、ピーナッツ、うずら卵、スルメ、香草、そしてチリソースと牛肉を煮込んで出た上澄み液を入れる。最初は固いプラスチック板みたいなライスペーパーも、水気でふやけてやわらかくなり、まぁまぁ食べやすくなる。これで15000ドン、日本円で80円くらい。四年前なら以下省略。

私 「一日、何袋くらい売れるもん?」
店員「50袋くらいかねー」
私 「おばちゃん、どれくらいやってるの?」
店員「三年くらいやってるよ」

キャリアが長いのか短いのか。
ほかのお客さんが来たので話は中断された。
そんなほかのお客さん、学生っぽい。
そんなほかのお客さん、学生っぽい。
私 「週にどれくらい食べてるの?」
二人「毎日食べてる!」

へぇ!今は3時半、これが昼飯や夕飯ということはあるまい。やっぱりベトナム人一日五食説は本当なんだな。別に疑ってはいなかったけど、得心が行った。
ほかにもあるストリートフード、これは揚げ物。
ほかにもあるストリートフード、これは揚げ物。
お店のひとつが場所を変えていった、移動が楽そう!
お店のひとつが場所を変えていった、移動が楽そう!
実は撮影開始時からこの人がマンゴー!と勧めてくる。
実は撮影開始時からこの人がマンゴー!と勧めてくる。
こっちからもマンゴー!と勧めてくる。
こっちからもマンゴー!と勧めてくる。
この二人はマンゴー早売り競争でもしているのか。二人で同じものを攻める必要はあるのかと聞きたいが、「え、なんで?」とか逆に聞かれそう。本当に意味は無いんだろう。それがベトナムの物売りスタイル。
あとこの少年は自分が可愛いことを絶対に分かっているな。
あとこの少年は自分が可愛いことを絶対に分かっているな。

埒が明かないので散歩しよう

うん。このままここにいてもおもしろいんだろうけど、どうにも埒が明かない気がしたので、通訳をしてくれている友人とちょっと歩いてみようという話になった。そもそもここは公園、いろんなものが見れる。
通路のド真ん中だが、
通路のド真ん中だが、
構わずダンスの練習にいそしむ青年たち。
構わずダンスの練習にいそしむ青年たち。
私 「あれ何してんの!?」
友人「あれは…あっ、女性の日ですね」
私 「ん?どういうこと」
友人「10月20日はベトナムの女性の日で、その出し物の練習をしているんだと思います」

女性の日で…男たちが踊る出し物…。うーむ、日本だと絶対に出て来ない発想だ!これを見た女性たちは「感動したわ!嬉しいわ!」ってなるのだろうか、なるんだろうな。所変われば品というか事情が変わる。
なんと!たいやき売りがいた。
なんと!たいやき売りがいた。
日本の魚のケーキ、と書いてある。
日本の魚のケーキ、と書いてある。
いや、誤解を生むだろ。「魚を使ったケーキ」と「魚の形をしたケーキ」じゃ大違いだろ。なお、ホーチミンでは今たこ焼きもブームになっている、何にしろベトナム人は小腹を埋めたいのだ。中身は分からないけど、受け入れられるスタイルではあるだろうなぁ。
中を見せてもらったが見えなかった、そりゃそうだ。
中を見せてもらったが見えなかった、そりゃそうだ。
教会の周辺は地元の人にとっても撮影スポット。
教会の周辺は地元の人にとっても撮影スポット。

縁石と新聞紙でただちにそこはカフェになる

疲れたので休もう、さっき買ったバンチャンチョンもやわらかくなってるし、ということになった。若者たちがそうしているように、芝生の縁石に座ったら…。

ダダッ
すぐにおばちゃんが駆け寄って新聞紙を持ってきた!
すぐにおばちゃんが駆け寄って新聞紙を持ってきた!
え?要らないよ新聞なんて…読めないし。
「バサッ」「!?」
「バサッ」「!?」
実はこれ、カフェだ。縁石に座ろうとするとすかさず新聞紙を持ってきて、尻の下に敷け、そして飲み物を注文しろ、と言ってくる。拒否したことはありません、あとが怖いから。ま、何より大した値段ではない。
これがテーブルです。
これがテーブルです。
そしてこれがほかの客席。
そしてこれがほかの客席。
それにしても、新聞紙を持ってきたおばちゃんがさっきから定位置で動かない。ドラクエの村人って、リアルにいたらきっとこんな感じなんだろうなと思った。
定位置で。
定位置で。
動かない。
動かない。
とりあえず、やわらかくなったバンチャンチョンを食べる。
とりあえず、やわらかくなったバンチャンチョンを食べる。
今更ながら通訳をしてもらっているユエンさん、一児の母。
今更ながら通訳をしてもらっているユエンさん、一児の母。
目の前にはサイゴン大教会、ひっきりなしに人が往来する。
目の前にはサイゴン大教会、ひっきりなしに人が往来する。
これがカフェだと聞かれると縁石に座っているだけと答えるが、それでもロケーションとしては最高だ。後ろには緑が広がるし、教会を目の前に据えているので眺めもいい。都市開発が進む今のベトナムだが、こういうところはいつまでも変わらないでほしい。が…。
いててっ、お尻いてーっ!
いててっ、お尻いてーっ!
…望んで二度と座ることはないな。

最後の最後に、ベトナムを代表するストリートフード!

公園を離れて「あるもの」を売っている店を探した。ベトナムのストリートフードといえば、おそらく最も有名だろう。日本でも食べられる…生春巻きだ!
ホワイティ!
ホワイティ!
見た目も美しく品を感じる料理だが、これもおもいっきりストリートフードだ。一個5000ドン、なんと23円くらい。豚肉、エビ、ニラ、香草、レタス、もやし、ブン(米粉麺)が入った、栄養バランスよしで歴史あり、ストリートフード界のミリオンセラーだ。

付け合わせのピーナッツと生玉ねぎが入ったゴマダレもうまい、バターの風味が効いている。たとえ価格帯がチョコバットと同じでも、遠足に持っていくなら生春巻きを選んでほしい。何故なら、栄養バランス的に、遭難をしたときに生存確率がグッと高まるからだ。一体何の話だっていうんだ。
しいて欠点を挙げれば食べ方がどうしてもアホっぽくなるところ。
しいて欠点を挙げれば食べ方がどうしてもアホっぽくなるところ。
当然だが、美味い。これまで食べたストリートフードはジャンク寄りだったけど、こちらは健康的な食事を巻いてみましたという感じ。最後に食べたの大正解。そして全然関係ないけど、売っているおばちゃんの服の柄がとんでもなかった。
さぞかし…。
さぞかし…。
さぞかし花の良い香りがするんだろう。
さぞかし花の良い香りがするんだろう。
夜中にはち会ったら、蝶の隊列が一糸乱れずこっちに向かってくるように見えるんだろうな。きっと叫んで逃げて、虫取り網抱えて一晩震えちゃうな。俺は。
メン・イン・ブラックが宇宙人を探していると思ったら、
メン・イン・ブラックが宇宙人を探していると思ったら、
折り返して生春巻きを買っていた。
折り返して生春巻きを買っていた。
友人「奥で生春巻きをつくってますよ」
私 「奥で?」
あ、本当だ。
あ、本当だ。
早業。一日200~300本つくるらしい。
早業。一日200~300本つくるらしい。
このあとで、なかなか衝撃的な光景を目撃した。それは私にとって今後のベトナムを暗示させる内容だったので、まとめにおいて紹介したい。

ベトナムのストリートフードよ永遠に!

文中で「こういうところはいつまでも変わらないでほしい」と書いたが、実はそんなに心配する必要はないかもしれない。このベトナムという国が変わっていくというよりも、これからもずっと、良いものは良いと、あくまで今をベースにしてすべてを取り込んでいく気がしたからだ。何故ならば…。
生春巻きを巻きながらソーシャルゲームやってますもん!
生春巻きを巻きながらソーシャルゲームやってますもん!
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