何を大きくするか
子どものときの気持ちになって考えると、普段慣れ親しんでいるものほど大きさが変わると嬉しかったと思う。
たとえばミックスナッツに入っているジャイアントコーン。大人がおつまみで食べている乾き物には魅力は感じなかったのに、コーンが巨大化しているジャイアントコーンはなぜか心惹かれて、ナッツの中を探して独り占めして食べた。
それから、観光地のパーキングエリアに売っている、巨大化しているご当地ポッキーも大好きだった。
今回は何を大きくしようかなー、普段よく食べているものがいいなー…と、ぽりぽりとお菓子を食べながら考えた。
そしてふといま食べているお菓子に視線を移した。
ビスコ。最近毎晩食べている。
もともと冬場に毎晩みかんを食べていた。みかんのオフシーズンに手軽に食べられるおやつとして夫が導入したのをきっかけに、我が家に定着したビスコ。
ついには私の実家まで飛び火して、両家庭で在庫を切らさないよう買ってはせっせと食べている。
この小ささゆえに、手軽に食べられるのが魅力だったけれど、これが大きくなったらどうだろう。普段慣れ親しんでいるあいつの、違う一面が見られるのではないか。
ビスケットを焼く
ビスコとは、サクサクのビスケットにクリームをサンドした一口サイズのお菓子である。多くの人が一度は食べたことがあるのではないだろうか。
まずはどのくらい大きくするかを考える。
といっても無制限に大きくできるわけではなく、我が家のオーブンで焼けるサイズでなければならない。
本物のビスコのサイズを測ったところ、縦2.5センチ、横4.2センチだった。
以前の
安藤さんの記事で、ビスコの箱が黄金比1:1.6ということだったので、 ビスコ本体はどうかと思っていたのだが、1:1.68だった。
これをもとに、我が家のオーブンのターンテーブルぎりぎり、縦13センチ、横22センチで作ることに。
大きさは決まったので、次は材料である。
ビスコの原材料表示を見てみた。
小麦粉、砂糖、ショートニング、乳糖、加糖練乳、 全粉乳、食塩、小麦たんぱく、でん粉、乳製品…と続く。
油脂はどうやらショートニングだけらしい。
ショートニングか…。普段家に常備しているものではない。
お菓子作りで特にサクサクさせたいときに入れると聞いたことがあったが、ウィキペディアを見てみたら、「さっくり」という食感を表す意味の英語"short"が語源なのだとか。
確かに、あのビスコのサクサクはただものではないと思っていた。
ただなー、個人的な好みのだけれど私はバターが好きなんだよなー。好きな食べ物としてバターを挙げるくらい。なんとかバターでサクサク感を出して作れないものだろうか。
試しにやってみよう。
サクサク感をだすため、粉は小麦粉とコーンスターチを半々で用意。
バターに砂糖を混ぜ、そこに粉類を混ぜクッキー生地を作る。
そこに、ビスコといえば乳酸菌ということでヨーグルトを混ぜてみた。
焼成後も乳酸菌は生存しているのだろうか…。
右上に本物のビスコを見本として置いている。
2組作りたいので、ビスケットは4枚焼きたい。
1枚予備で5枚焼くことにして、生地を5等分した。
丸めた生地の上に目標サイズにカットしたクリアファイルを置いている。
わかりにくい写真ですみません。
クリアファイルに合わせてはみ出した部分をカットした。
ちなみに見本のビスコは作業中にお腹が空いて食べてしまったため、 前の写真とは別のビスコである。
周りはヘラで切れ目を入れて、中は竹串でハートとビスコの文字を書きいれ、先端で刺して穴をあけた。
なんだかパイ生地を作っているように見えてきたが、ビスコを作っている。
オーブンから出す瞬間からビスコが 「割れやすいよ!取扱注意だよ!!!」と訴えてくる。
焼きあがったビスコはすごくいいにおいでおいしそうなのだが、それ以上に見るからに割れやすそうなのが気になる。
どのくらい割れやすそうかというと、片手持つのは危険、両手でも左右の端を持つのも危険、全体にまんべんなく力がかかるよう上下を注意深く持って持ち上げなければならないというレベルだ。
慎重にターンテーブルから持ち上げ、ケーキクーラーに乗せた。
この作業を4回繰り返した。
やった、ビスケット部分ができたぞ!と思ったら、
冷ましているうちに自然に最初の1枚が割れていた。
何も手を触れず置いておいただけなのにひびが入っていた…。
でも、これは練習を兼ねていて形もきれいじゃなかったし!予備で5枚焼けるように材料を用意しているし!と心を強く持って、さらに追加で焼く準備をする。
5回目なのでだいぶ慣れ、もう見本も必要ないということで食べてしまった。
4枚並べると焼き色の違いが目立つ。
なんとか4枚そろった。
保存用の袋に入れて、平らな場所に置いておく。
クリーム作り
今度はビスケットに挟むクリームを作る。
ビスケットの方は原材料表示を参考にする姿勢を少しは見せたが、クリームについては表示を見てもどう作るのかさっぱりわからない。
ここはもう、大好きなバターでいかせてもらう。
バターを練り混ぜたところに、材料を加えて行く。
篩った粉砂糖を加え…
原材料にあった加糖練乳を入れてみた。
さらに、ここはやはり乳酸菌を追加しておこうとヨーグルトを加えた。
ビスコには乳酸菌が1億個入っているらしい(5枚当たり)。
バタークリームができたところで、次はこの大きなビスコを入れるパッケージを作る。
パッケージ作り
せっかく作った大きなビスコなので、これが入る大きなパッケージを作ってあげたい。
あの割れやすい大きなビスコだが、そっと優しく包みこんであげるパッケージを作れば、気持ちを強く保ってくれるのではないだろうか。
材料を買いに100円ショップに行ったら、 母校の女子高生が文化祭の準備らしく楽しそうに 買い物に来ていた。文化祭でチョコが溶けたままの チョコバナナを売って、お客さんも自分もチョコま みれになったことを思い出した。
といっても、ビスコの原材料表示にないバターをばんばん入れたくらいなので、ここは本来の素材感を無視して、模造紙で作成している。
模造紙を切り取って、拡大したパッケージのプリントを貼るだけという簡単すぎる工程だが、それらしくなった気がする。
本物と違って光沢がないので、個包装パッケージではなく、 ビスコの箱に近くなった。
あとは中身を入れて封をして、両端をギザギザにカッティングしたら完成だ。
放っておいただけなのに…
順調だった気がしていたが、ここで悲しいお知らせがある。
言葉で語るより、実物を見てもらった方が早い。
幸せな毎日、こんな日がずっと続けばいいと思っていた、 でもいつかこんな日が来ると頭の片隅で思っていた。
こうなる運命ということはわかっていた。
とまで言ったら言い過ぎだが、あの割れやすさだ、時間が経って水分が抜けたら状態が変化して割れるということは十分ありうる。
もちろん1枚だけではない。ほかのものも割れていた。
そして、保存袋から出したり写真を撮るため場所を移したりしているうちに、無事だった最後の1枚も割れた。
3枚割れていた時点では、どうしよう、もう一回焼くか…?なんて考えていたのだが、全部割れた時点で心が決まった。
もう一回やったところで同じだ。きっとまた割れる。
このあとクリームを塗って2枚ひと組にするのだ、割れていてもなんとかなるだろう。
ましてや最後は自分が食べるのだ。
クリームを挟んで仕上げる
割れたビスコを慎重に並べて、クリームを塗った。
移動させるときは下に敷いたキッチンペーパーごと持ち上げることにした。
思った通り、クリームを塗って2枚ひと組にすればなんとか形になりそうだ。
面積比で言うとおよそ26倍のビスコができた。
ジグソーパズルのようだが、持ち上げることも可能だ(後ろのキッチンペーパー込みだが)。
パッケージに入れる際に崩れないようラップで巻いたらさらに痛々しくなった。
これを先ほど作ったパッケージに入れて、ついに完成した!
両端のギザギザはひとつずつはさみで切った。
完成しただけでかなり嬉しい。
大きなお菓子を前ににんまりしたいという初期衝動だったが、食べる前から笑みがこぼれる。
食べてみる
せっかくなので外に出て食べることにした。
嬉しくて思わず掲げ持った。
通り過ぎた小学生に二度見された。
本物のビスコにはない、ラップをはがすという工程。
自分で作ったものだけれど、このパッケージが説得力を与えてくれている。
脳内で、大きいけれどほんとにこれはビスコなんだという思い込みが強くなっていくのがわかる。
勝手に自分の中で盛り上がりは最高潮を迎え、かじりつく時を迎えた。
かじって、にんまりするぞ!
食べづらい…。
確かに笑ったのだが、それは食べづらさから思わず漏れた笑いだった。
おいしいんだけど…
確かにおいしい。だけど、これはビスコではない…。
クリームも全然違うし、ビスケットの風味も異なるのだが、なによりビスコ特有の軽いサクサク感が足りないのだ。
やはりバターで作ったからだろうか。
でもこれはこれでおいしい。ビスケットにバタークリームが挟まっているのって、そうだ、これはレーズンウィッチのレーズン抜きだ。
私はレーズンウィッチ(レーズン抜き)を大きくしたのか。
サクサク感を出すには
今回作ったビスコ改めレーズンウィッチ以下略は、これはこれでおいしかったのだが、やはりサクサク感も追及してみたい。
今回私が作ったビスコの断面。
本物のビスコの断面。
本物のビスコの方が穴が多くて、パイ生地のような層になっている。
そうか、この層がサクサクの秘密か。
というわけで、ショートニングを購入した。
アマゾンで購入。680g入りで998円。
バターをショートニングに置き換えて、後の工程はすべて同じように作った。
今回は1枚だけ焼いている。
オーブンに入れて、焼けたので冷まそうとケーキクーラーに乗せたらこうなった。
やはりそうなるよねー。
でも断面は層がすごい!
食べてみると、これはまさにサクサク!
本物よりサクサクしていると言っても過言ではないくらいで、バターびいきの私にショートニングの力を見せつけられる形となった。
とはいえ、味はやはりまたビスコとは別物だ。
既成のお菓子を再現することの難しさを実感する結果となった。
大きい食べ物は嬉しい
今回作った大きいビスコは、味は本物とは別物だったけれど、
食べるたびにパッケージに戻して毎回食べたので、
パッケージの説得力に支えられて楽しく食べられた。
そして、大きいビスケットは必ず割れるということを学んだ。
大きいビスケットが流通しない理由がよくわかった。
特に考えず注文してしまったが、680gはかなりの大きさだった。 ビスコと比較するとその大きさがよくわかる。 大きいショートニングは嬉しい…かは微妙だが、 届いた瞬間テンションが上がった。しかし何に使おう…。