特集 2015年9月29日

仮想現実の大会で君もゴキブリになれるしおもらしもできる!

仮想現実の世界でゴキブリの体を手に入れました
仮想現実の世界でゴキブリの体を手に入れました
人工的に現実をつくりだす仮想現実の世界。その学生コンテストが行われるらしい。

なんでもゴキブリ体験や失禁体験の再現に成功したのだとか。すごい……夢のようじゃないか。もちろん悪い意味でだ。

行くしかない。IVRC2015(国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト)の予選会場に行ってきた。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

こうした取材ものにおいて大学取材はむずかしい。キャンパスをまちがえるからだ。今回も芝浦工業大学の豊洲と芝浦キャンパスをまちがえて大幅に遅刻。
こうした取材ものにおいて大学取材はむずかしい。キャンパスをまちがえるからだ。今回も芝浦工業大学の豊洲と芝浦キャンパスをまちがえて大幅に遅刻。
2部屋ある教室にぎっしりVR装置が。やばい、時間がない
2部屋ある教室にぎっしりVR装置が。やばい、時間がない

全部体験すると4時間かかるらしい

2部屋にわかれた教室にVR装置がぎっしり。各大学のゼミだったりサークルだったり授業だったりでチームを組んでコンテストに参加してるらしい。

全部体験すると4時間かかるんだとか……とりあえず一番近くにあるものをやってみる。
とりあえず1つ体験させてもらった。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をつけてヒーローに変身体験をするもの。 【REAL METAMORPHOSE チーム:REAL METAMORPHOSE製作チーム (多摩大学)】
とりあえず1つ体験させてもらった。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をつけてヒーローに変身体験をするもの。 【REAL METAMORPHOSE チーム:REAL METAMORPHOSE製作チーム (多摩大学)】
パンチをすると腕からビームが出て敵を狙えるのだが……
パンチをすると腕からビームが出て敵を狙えるのだが……
当たるとめちゃめちゃにほめられる。いい大人がこんなにほめられることなんてない。仮想よりも現実がすごいな!
当たるとめちゃめちゃにほめられる。いい大人がこんなにほめられることなんてない。仮想よりも現実がすごいな!

仮想現実は現実もすごい

ここでは変身ヒーローになって必殺技で敵を倒す体験をした。

ポーズで認識して変身するようで「そうです、いいですね、そのポーズです」とスタッフからほめられる。変身してからも敵をたおすごとに拍手でほめられる。

こんなにほめられるのはいつ以来だろうか。仮想現実はもとより、現実もけっこう変わったことになっている。
つづいて自分がゴキブリになる装置。手をペタペタはわせると… 【Cockroach-Human Interaction (CHI) チーム:くらかちゃ (東北大学	)】
つづいて自分がゴキブリになる装置。手をペタペタはわせると… 【Cockroach-Human Interaction (CHI) チーム:くらかちゃ (東北大学 )】
カメラを積んだゴキブリ型ラジコンが動く。このゴキブリの体験をするわけだ
カメラを積んだゴキブリ型ラジコンが動く。このゴキブリの体験をするわけだ

ゴキブリになってそして死んだ

つづいて行ったのはゴキブリの体験装置。ゴキブリ型ラジコンにカメラがついていて、その視点と操縦を自分の体の動きでやるのだ。

やってみるとなかなかおもしろい。ゴキブリかどうかはわからないがミクロな世界の主人公である気はする。(実際のゴキブリも自分がゴキブリだとは思わないだろうし)

と思っていたら、目の前にある巨大な足がふみつぶそうとしてくる。やめろ! 死ぬ! これはゴキブリの視点だ! 死んでいくゴキブリの視点だ!
ゴキブリの目の前でふみつぶそうとするスタッフさんたち。やめろ! 死ぬ!
ゴキブリの目の前でふみつぶそうとするスタッフさんたち。やめろ! 死ぬ!
ゴキブリになって死ぬ! そういう人生が今終わりました!
ゴキブリになって死ぬ! そういう人生が今終わりました!
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実際にはやりたくないことをやる!

そして企画のインパクトがもっともすごかった電気通信大学の失禁研究会(※彼らは装置制作のためのチームであってそういう方々ではないそうだ)によるおもらし体験装置。

一体だれがおもらしを体験したいというのだろう。しかし安全を保証された恐怖体験がジェットコースターであるように、あらたなエンターテイメントが生まれるかもしれない。

席につくと係員が2人ついてベルトを巻く。今この人達はおれにおもらしをさせようとしてるのだと気づくと基本的人権というものを意識せざるをえなかった。
腰巻きを巻いて水を飲む。水は直接関係ないのだがこれで気分が一気にたかまる。 【ユリアラビリンス チーム:失禁研究会 (電気通信大学)】
腰巻きを巻いて水を飲む。水は直接関係ないのだがこれで気分が一気にたかまる。 【ユリアラビリンス チーム:失禁研究会 (電気通信大学)】
ここからは体をかたむけて先ほど飲んだ水を膀胱まで落としていくというゲームに入る。画面と体は連動してるのだが、自分の体に合わせて動くだけで、自分の体のように感じられる不思議!
ここからは体をかたむけて先ほど飲んだ水を膀胱まで落としていくというゲームに入る。画面と体は連動してるのだが、自分の体に合わせて動くだけで、自分の体のように感じられる不思議!
スタッフ一丸となって「うまいですよ」と褒めてくれる。恥ずかしいよ!
スタッフ一丸となって「うまいですよ」と褒めてくれる。恥ずかしいよ!

関係ないとわかっていても高まってくる

まず水を飲む。すると体内を模した画面上にその水が現れるのでこの水を膀胱まで誘導する。

体内を撮影しているわけではない。画面の水も体も自分とは無関係だ。しかし自分の体をゆらして操作していくと、さっきの水が実際に体内を通っていく気がする。不思議だー!

「うまいですよ、うまいですよ」

そしてなぜかスタッフが一丸となって膀胱まで水を送る自分を褒めてくれる。なんだこれは、狂った介護サービスか! なんて恥ずかしいんだ、なんて恥ずかしいんだろう!
そして水が膀胱まで落ちると……ダムが決壊する!!
そして水が膀胱まで落ちると……ダムが決壊する!!
「アー! アー! アー!」下腹部に圧力がかかりじわっとあたたかさがやってくる。すごい! 水分はないものの気分はかなりくる!
「アー! アー! アー!」下腹部に圧力がかかりじわっとあたたかさがやってくる。すごい! 水分はないものの気分はかなりくる!
熱いお湯を通すためにけっこう大掛かりなことになっている。白鳥の水面下…
熱いお湯を通すためにけっこう大掛かりなことになっている。白鳥の水面下…

もはやもらしたといってもいいだろう

実際に水が出るわけではないが、お腹に圧力がかかり、ジワーっとあたたかい感触がある。なかなかにおもらしだ。世が世ならぼくも「あっぱれ!」といったと思う。「これ一休、わしにおもらしさせよ」そんな課題をみごとにクリアした。

すごい。おもらし体験もすごいが、数人がかりでおもらしを褒められたりする現実もふくめてすごい体験だった。彼らは今回の表彰式では観客賞を受賞していた。

おもらしの企画は先輩の提案をうけついだらしい。そして今後も改良を重ねていくという。こういう青春もあるのか!と感動した。
表彰式が終わったあとに記念撮影をしている「みんな、横は入ってるからオクルージョンだけ気にしてくれたらいいよ」VR用語で写真撮ってないか?
表彰式が終わったあとに記念撮影をしている「みんな、横は入ってるからオクルージョンだけ気にしてくれたらいいよ」VR用語で写真撮ってないか?
あれ何言ってたんですか? 写真撮ってた人をつかまえて話をきいた「オクルージョンは手前の物体によって奥が見えなくなる状態。3DCGでよく出てくる用語。でもあんまりウケなかったですね」……し、知らん!
あれ何言ってたんですか? 写真撮ってた人をつかまえて話をきいた「オクルージョンは手前の物体によって奥が見えなくなる状態。3DCGでよく出てくる用語。でもあんまりウケなかったですね」……し、知らん!

その辺の人をつかまえて話を聞く!

コンテストの表彰式後にみんなをまとめて写真撮ってる人がいたのでつかまえて話をきいてみた。ボランティアスタッフとして参加する野田さんだ。

――このコンテストはいつからあるんですか?

「コンテスト自体は23年前かな。たぶん世界で一番古い。ぼくも12年前に学生として参加してそこからずっといます。

当時は優勝したんですよ。10m級のブランコの体験装置で。ブランコって手放しでも乗れるでしょ。力の向きは上下だけなんですよ。ひもを垂らして上下に力を加えてスクリーンに景色を映して。

当時はオキュラス(※ヘッドマウントディスプレイ)なんてなかったですから。オキュラスみたいなものを作るチームがあった時代ですね」


――あ、みんなあのオキュラスというものを使ってますね!

「流行るんですよ。オキュラスは3年くらい前かな。任天堂Wiiリモコンを使うのが流行ったこともありますね」
HMDが流行ってるという。これは階段が「もう1段ある」と思わせる装置。たった1段の仮想現実がクールだ。しかしあると思った階段がないのはなかなかにむなしいぞ。 【ステステ チーム:クオリティーオブエイト (早稲田大学)】
HMDが流行ってるという。これは階段が「もう1段ある」と思わせる装置。たった1段の仮想現実がクールだ。しかしあると思った階段がないのはなかなかにむなしいぞ。 【ステステ チーム:クオリティーオブエイト (早稲田大学)】

本物とそうでないものが本物がある

――VR的には本物に近いものがよしとされるんですか?

「本物にも2種類あって、メロンはメロン味ですけど、メロンソーダってメロン味じゃないですよね。VRが実世界を作り出せばいいかというとそういうわけではないんです。

たとえば『やったことない』ものを体験するもの。今回だと缶コーラを振って開けるやつとか。やってみるとアニメみたいにブシューッといかないらしいんですよ。でもアニメみたいなことをやりたければそれが本物ですよね。そのやりたいことが実現できてるかどうかが評価されます」


現実を再現するといっても現実そのままである必要はないのか。

わざわざなんでそんな生活感あふれる題材を…と思えるものでも、現実を超えたものが表現されていたという。おもしろい世界だなー。
コーラを振りまくって圧力を高めて開けると… 【絶対振るなよ! チーム:炭酸噴火隊 (大阪大学)】
コーラを振りまくって圧力を高めて開けると… 【絶対振るなよ! チーム:炭酸噴火隊 (大阪大学)】
プシューッという。あ、出たんだなという感じがする。愛おしいムダさ。君、すばらしい発明だからこの開発に大学の4年間をささげるべきだよ!
プシューッという。あ、出たんだなという感じがする。愛おしいムダさ。君、すばらしい発明だからこの開発に大学の4年間をささげるべきだよ!
楽しかったもの。自分が凧に乗って少女に引っ張られていくという仮想現実 【他己揚げ チーム:凧 揚太郎 (慶應義塾大学)】
楽しかったもの。自分が凧に乗って少女に引っ張られていくという仮想現実 【他己揚げ チーム:凧 揚太郎 (慶應義塾大学)】
その装置がこれ。大掛かりな装置に乗ってみるとたしかにぶわーっと風に吹かれて浮かび上がる感覚が。敬老の日に贈ってじいさんばあさんの生活をダイナミックにしてあげたい。
その装置がこれ。大掛かりな装置に乗ってみるとたしかにぶわーっと風に吹かれて浮かび上がる感覚が。敬老の日に贈ってじいさんばあさんの生活をダイナミックにしてあげたい。

味が変わるのも仮想現実

――ちなみに野田さんのおすすめはどれですか?

「体感系が好きなんで個人的に好きだったのは羽根で飛ぶもの。羽根をやってるチームは2つあるんですけど、羽根の根本でグリッとなる感覚と、ギュッと体が引き上げられる感覚、その2つを表現しようとしていて。マッサージのモミ玉が入って背中がグリッ、グリッてなる。

あとは(これがVR?)と思うかもしれないですけど、チョコレートとジュースのやつ、食べたら味が変わるもの」
マシュマロを特定の色の光にあてると食感が変わる 【Chocolat Display チーム:フォンデュ大作戦 (筑波大学)】
マシュマロを特定の色の光にあてると食感が変わる 【Chocolat Display チーム:フォンデュ大作戦 (筑波大学)】
アセロラジュースをまず飲んでから、仮想現実としてジュースの色を変えて飲む。すると味も変わるという感覚 【色めがねで見る チーム:クオリティーオブエイト (早稲田大学)】
アセロラジュースをまず飲んでから、仮想現実としてジュースの色を変えて飲む。すると味も変わるという感覚 【色めがねで見る チーム:クオリティーオブエイト (早稲田大学)】

うなぎのヌルヌルをバーチャルリアリティで

――うなぎヌルヌルを再現するのもありましたね

「そういう触覚系はひとつの分野でちょこちょこ出ます。ヌルっとした感覚とかサラサラって感覚とか、工業に使おうと思うと特定の感覚を再現できるって重要なんです。

たとえばポツポツの突起が何箇所あるとサラサラした感覚になるってことがわかると、雨にぬれてもサラサラしてるズボンができる。

VRは理学的な真理を突き詰める側面もあるし工学的な応用の側面もある。芸術でもあります。フランスなんかでは芸術系の学生がVRやってることが多いですね」


あー、なるほど。現実を再現するというのは役に立つのとおもしろいのと両方あるんですね。
たらいの中にうなぎがいるというVR。くそう、これが江戸時代にあればなあ…! 【バーチャルうなぎ チーム:箱入りナマズ (大阪大学大学院)】
たらいの中にうなぎがいるというVR。くそう、これが江戸時代にあればなあ…! 【バーチャルうなぎ チーム:箱入りナマズ (大阪大学大学院)】
黒いビニールから水流が出てきてぬるぬる感を表現。たしかに、ぬるぬるといえばそうかも。でもこれも仮想現実なのか。シュワルツネッガーとか出てこなくてもいいんだな
黒いビニールから水流が出てきてぬるぬる感を表現。たしかに、ぬるぬるといえばそうかも。でもこれも仮想現実なのか。シュワルツネッガーとか出てこなくてもいいんだな
IVRC2015 決勝大会
※一般公開があるので体験できるみたいです
2015年10月24日25日開催
日本科学未来館 7階 INV (イノベーションホール)
http://ivrc.net/2015/visitors/#final

これは人が作った現実だ

ゴキブリになる現実、おもらしをする現実。体験した装置の数だけ現実がここにある。夢なんて見ずに現実を見ろと言われながら育ってきましたが、ここには夢みたいな現実がたくさんある。

あー、仕事やだなーとか、あれ謝らないとなーとか、今の現実が辛くなったらこういう現実に浸りにいくのがいいのではないだろうか。

そして何度も何度も缶コーラをプシューップシューッと開ける現実を体験する。くだらない現実を抜けだして、もう少しだけくだらない現実に飛び込むのだ。

それの何がいいのかはわからない。しかし今ある現実とちがうというだけで、ちょっといいもののような気がする。
失禁後の放心
失禁後の放心
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