見間違えた才能に嫉妬
唐突なリード文、しかも万人が「T2ファージ」を知っているかのような物言い、誠に失礼しました。が、つい最近このことがある方によって判明し、私もそれを見て驚愕したといういきさつがある。順を追って説明しよう。
この8月、十和田市現代美術館というとても素敵な美術館からワークショップの依頼があり、出かけていったときのこと。消しゴムはんこのワークショップが2日目にあり、彫る以外にも私自作のはんこを押し放題できるコーナーを設け、お客様をはじめ職員の方々もいろいろと押してくださったのだが…ワークショップ担当Sさんの手帳にはんこが押してあるのを見かけ、おや?と思い聞いてみた。
「なぜ、この阿修羅像は逆さに押してあるんです?」
Sさんいわく、「他にも何か押そうとはんこを探してて『あっ!でかいファージがある♪』と思って押したら、阿修羅像だったんですよ…」。
Sさん「いや、このT2ファージが好きなんでいくつも押してたんですけどね」
「これもファージかと思ったら、阿修羅像だった」
「でかいファージかと思ったら逆さになった阿修羅像だった」
ブレーメンの音楽隊もびっくりな話である。
しかしたまげた。確かに似ている。
ちなみにこの2枚の画像はツイッターでもいち早くつぶやかせてもらったが、なんと5000RTを超え、今も拡散中である。Sさん…恐ろしい子!
足(というか手、というか尾)も6本だし、その間から構造物が突出していたりして、遠目に見たら本当にクリソツだ。頼まれたオカンが間違って買ってきてしまう、ってレベルだ。
しかし、はんこでの表現だから似ている、ということもあるかもしれないので、この相似ぶりを立体物でも検証してみたい。1ネタ助かりまして、Sさん本当にありがとうございます。
とはいうものの、ファージの立体をそれっぽく1から作るのは、単純に見える分けっこう難しそうだ。かといってフィギュアがすぐには手に入らなそうな物件でもある。
おっと、そもそもT2ファージとは、細菌(バクテリア)にとりついて増殖するウイルスの一種です。とにかくウイルスです。あとは各自ご検索ください。
昔モール手芸の記事で作ったT2ファージ。ある意味、電子顕微鏡で見るアイツに似てなくもない。
検索すると、T2ファージのペーパークラフトを作って公開している方がいらっしゃったので、ここで使わせていただくことにした。
「
生物教材製作所」には他にもグッと来るペーパークラフトがたくさんで本当に楽しい。
細かいところはハサミで…。
長めの直線は定規で。丁寧に進める。
丁寧に丁寧にと思うと、切り出すのにもけっこう時間がかかる。一仕事終わった気分だが長い長い道のりが待っている。
工作用ボンドでこれまた慎重に貼り付け作業。
立体を紙に落とし込んだ過程に感心しつつ進める。
おおーT2! (ところではんこのほうは頭部を正30面体で作ったが、先のサイトの管理人・土屋さんによれば正しくは正20面体とのこと。よってこちらが正しいのです)
阿修羅像はネットで最安のを探して手に入れた。さあ並べてみよう。
おお、質感もディテールもまるで違う。ってそりゃそうだ。
ほとんど似てないように思われる。足(というか手、というか尾)が6本、お股の間の構造物、というエッセンスのみが共通だ。
この2体をどうにかして近づけてみたいというのが今回の主旨である。とはいえ、どこからどう始めればいいのやら。
どこから攻めよう…(仏像にこんな思いを抱く日が来るとは)
阿修羅→T2改造計画
とにかく1体ずつ手を付けていこう。手を動かしながら考えていこうか。阿修羅像をT2ファージにする方法、なんてどこにも載ってないからな。
この土台はまず外してよかろう。
手もだいぶ付け替えねばなるまい。
木工用パテで埋めながら手の角度や付く位置を変える。
ひじ・手首に至るまで変えねばならないことが判明…。
途中経過。こういう遊具が公園にあったら泣く。
片や大腸菌に感染して増殖の踏み台にするウイルス、片やこちらは神様である。神様の腕を全部切り離すのも畏れ多いが、構造的に足先も切ってしまいたいところ。だがなんとなくそれはやはりためらわれたので(最初からためらえって話だが)、足の間をパテで埋めるにとどめた。
どこまでT2ファージに近づけるか、匙加減が難しい。やりすぎてしまっては比較にならないし…。なので足(というか手)をそれらしく付け替え、彩色するまでにとどめてみる。
足の間を埋めて、造型は終了。
なんとなくイメージでシルバーにしてみる。
T2→阿修羅改造計画
次はT2ファージを阿修羅像にする。この言い回し、何度聞いても釈然としない。
さてどうしよう。とにかく阿修羅像の色に塗って、そこからは…
まずは見た目から、ということであの衣装の柄を採用。
先のペーパークラフトに色と、少しの柄を足した。あとやはり顔もつけたい。
胴体、最初やはり上下逆に付けてしまった!(これをひっくり返すのが正位置なので)わかっていたのにやってしまう。そんな40代半ばです。
こうなったら手も付けましょう。
折り線など見えやすくするため明るめの色にしたが、もっと濃いほうがよかったかもしれない。まあそんなレベルの後悔、焼け石に水かもしれないが。
手・足・尾が6本、なーんだ?
ようやく2体の改造を終えた。それぞれ並べてみよう。果たして、2次元ほどの相似形を見せてくれるのだろうか?
似て見えない場合は、画面より思いっきり遠いところに目の焦点を合わせるか、自分が画面から5mほど遠ざかるか、いっそ心の目で見てください。
多少冒涜気味のペーパークラフト。何卒ご容赦ください。なんだか谷岡ヤスジ風。あと蟻にも似てる。
もう、あれだな。足(というか手、というか尾)が6本ある時点で相当アドバンテージがあったんだな。やれやれ。
それと、T2ファージを阿修羅風にするより、阿修羅像をT2ファージ風にしたほうがより似ている(つまり最初のはんこでの見立てのとおりだ)。
まあ、限定的条件下において両者には相似が見られる、ということでまとめていいだろうか。
「こんなに頭下げてんすから」「何それ面白そう」。
「たのんます。いくらか貸してくださいよ」「Oh, No」
シャッフルしたら余計わからなくなってきたので、寸劇で締めたいと思います。ありがとうございました。
【ペーパークラフト・資料ご協力】
SOIL-SHOP生物教材製作所
【Special Thanks】
十和田市現代美術館 Sさん
【告知】
蚤の市イベントに出店します。
今週末19・20の土日、長野県上田市で開催される蚤の市イベント「Loppis Ueda[ロッピスウエダ]」に出店します。いろいろ売ります。ずっと店番してますので、お近くの方もそうでない方もぜひお越しいただけたら幸いです。
ロッピスウエダ
http://loppisueda.jp/