5分で感涙! 親孝行は遠隔肩たたきで


お、おお。
「したくないっすか?」と聞かれて「したくねえや」とは答えにくい質問である。親孝行か。うん、まあでも実際したいかなあ。大人になった今も父母には常々世話になっているのだ。
すると同僚が目を輝かせた。古賀さんはボタン押すだけでいいです。そしたら自動でお父さんの肩をたたく機械を、俺たち作りますから。
んんっ?

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会社から、実家にいる父の肩をたたく
2人とも日々の業務に追われながらもいろいろと準備を進めてるなあと横目で感じてはいた。で、気づけば私は会社で青いボタン2つを前にしていた。





電話が鳴って、出ると石川である。
「いいですよ、ボタン押してください」
「えーなに、大丈夫なの?」
「大丈夫です!」








「お父さん? ほんとに肩たたかれてんだねこれ」
「おお」
「気持ちいい?」
「気持ちよかないよ~、なんか猫になめられてるみたいな感じだな」
なんでもいいが本当に同僚たちは私の実家におり、そして父は肩たたきマシンにより肩をたたかれているようだ。(同僚実家にいるの)まじか。(遠隔で肩たたかれてるの)まじか。まじかの二重奏である。
そしてマシンが肩をたたく力はめっぽう弱いらしい。マッサージの効果としてはゼロのようである。重ね重ね意味がわからない。
……。
しかし、しかしなのだ。
父が喜んでいるのが電話口から異常なまでに感じられるのだ。うわ、喜んでる、父喜んでるわこれ。



父の喜ぶ声に驚いて電話を持つ手から汗がふき出した。



労せずしてなにこの感慨。あわてながらもボタンを右、左とゆっくり押す(あんまり連打するなと石川にいわれている。壊れるらしい)。
こんなにお父さん喜んじゃってなんか恥ずかしいし、もう終わってもいいかなと思う反面、多忙のなか仕組みを作ってくれた同僚たちの努力に少しでも報いねばという思いもありしばらく肩をたたき続けた(ボタンをゆっくり押し続けた)。
そしてたたくほどに、父の喜びがさらに電話口から伝わる。わー!


橋田が泣いた
父が泣くというよりも、あれ、これもしかして私が泣いちゃうやつじゃないの、うわあどうしよう思っていた。するとボタンを押す私の様子を撮影してくれていたこれも同僚、編集部の橋田が
「だめだ、泣けた」
と。本気で涙をぬぐったのだった。ちょっと橋田さん!



電話でそれを実家側に伝えたら、スピーカーフォンにしているらしい電話先の全員が笑ったのが聞こえた。
どうなってんのかよくわかんないけど、同僚が全部作ってくれた仕組みでお父さんの肩たたいて、したらそれ見た同僚が泣いた。
ボタンを押し始めてからものの5分しか経ってないが、なんかこう非常にいい雰囲気である。5分だぞ。感動のコストパフォーマンス良すぎだろう。
だって私も泣きそうなんだぞ。

畳み掛けて、礼儀正しい後輩だ



実習といわれ派遣された先で急に先輩社員の実家に行き、やることはへんな機械がギーコギーコと知らんおじいさんの肩をたたく様子をながめることである(あとおじいさんへの土産を買う)。
謎すぎる業務を体験させてしまい新人育成中の人事部の目がおそろしいが、後日聞いたところ父は私に礼儀正しく若い後輩社員がいるという事実がまた嬉しかったらしい。
結果的に親孝行になっている。
親孝行が親孝行を生む親孝行スパイラル。言っていいですか。
なんなんだこれ!



危なくアップルパイまで食べるところだった
みんなで食べる流れにするはずが、父が包丁のありかを知らなかったため切り分けられずそのまま引き上げたと連絡があった。
これでみんなで一緒にアップルパイでも食べられたら不在の私にはいよいよ意味不明な事態になっていたと思う(同僚と新人が私のいない実家で父とアップルパイを食う?!)。
包丁がみつからなくてよかった。



青いボタンをひとしきり押し私は前述の橋田やさらなる同僚の藤原らと淡々と後片付けをしそして平常心で帰宅した。
肩をたたいて父と電話口で話したのはものの5分くらいだったと思う。あの5分、深い感動が訪れたのは間違いないのだが…それにしても5分だ。なんだったんだろう。
時間の長さと感慨の深さがまるでつりあっていない。こういうタイプの感動ははじめてである。

「IoT肩たたき」って言いたかった(だけ)
IoTというと「Internet of Things」「モノのインターネット」とかいういまネット界隈で話題のやつだろう。肩たたきをインターネットでやるからIoT肩たたき、だ。
なんとこの企画、もともとはニフティのセキュリティサービスである「常時安心セキュリティ24プラス」の広告目的だったのである。
「常時安心セキュリティ24プラス」があれば、遠隔地からセキュアに肩がたたけるという超未来が実現するというわけだ。
というかこれ絶対「IoT肩たたき」って言いたかっただけだ。




正直何がどうなっているのか。聞かせておくれよ。

「ここはコサインですよ」だと?(石川大樹)



しまいには安藤さんが「ここはコサインですよ」等と難しいことを言い出したので、怒ってボタン操作にした。社交の場で政治と宗教の話はタブーといわれるが、文系出身者の前で三角関数と微積分の話をするのもタブーである。



あとは安藤さんの、腕の完成を待つばかりだ。
安藤が「コサインですよ」といって石川が「ああん?」となってる現場には実は私もいた。
明らかに空気が悪くなっており、あれ、これもしかして「私の(父の肩をたたく)ためにケンカしないで…!!」って言う千載一遇のタイミングか?! などと思っていたが、さすがにケンカするまでには及ばず残念であった。
「私のためにケンカしないで」なんて万が一言ってたら、言わせてもらった謝礼金としてポチ袋に入れて1000円ずつくらい2人に渡してもいいと思ってたのだが。

設計図は手帳に書いたメモのみ(安藤昌教)
最初はモーターに孫の手を直付けしたらいいかなとも思ったのだけれど、それではあまりにも味がなかろうということで、ステンレスの部材を組んでリンク機構を作ることにしました。ちなみにこのために書いた設計図がこちら(実物)。



設計図は手帳に書いたメモのみ。「かたたたき」という言葉に過剰に反応している様子もうかがえる。サーボモーターの動きをリンク機構で大きくして伝える仕組みである。さほど難しくはないだろう。
しかしこれに沿って組み上げた初号機は失敗する。当時のタイムラインがこちら(実物)。



最初に作ったリンク機構はモーターが動くたびになぜか鋼鉄の部材が勢い良く上に向かって動いた。もうリンクの先を刃物に変えてお父さんの散髪マシーンにしようか。いやそれでは古賀さんのお父さんが危ない。
ここで古賀さんのお父さんと約束していた撮影日が先方(お父さん)都合で延びた。やった!と思った。延びた2日で完成させたのがこのマシーンである。



つまりもし予定通り撮影が進んでいたら、肩たたき機が散髪機に変わっており、それにより大きな事故が起きていたかもしれないのだ。そうならなくて本当によかったと思う。
あとは古賀さんのお父さんが喜んでくれたらいうことない。
安藤がせっぱつまって肩たたきを散髪に変更しようとしているということはこの原稿をもらって初めて知った。
危ないな。
危ないな!
思わず2回危ながってしまったじゃないか。前ページのとおり石川・安藤両名の苦労は完全に報われたわけだが、これかなり奇跡に近かったのではないか。
かっちりやって大成功したのではなく、うっかり成功して「はー、冷や汗かいたけどよかったわ~」的な状況だったことが分かる。
感動50%減である。



ネットワークはセキュアでありたい
先ほどもご説明したとおり、今回の企画は「常時安心セキュリティ24プラス」というサービスのバックアップを受けている。このサービスを利用することでこのIoT肩たたきもセキュアに行えるわけだ。
せめてそこだけはきっちりさせておきたい。



ルーターとPC等の端末といったセキュリティ保護対象の間にサービスアダプターをかませて設定すればいいらしい。










実家のインターネット環境がへぼい
…そ、そうか…。「常時安心セキュリティ24プラス」陣営になんていえばいいんだろうこれ。
すると石川からフォローがあった。
肩たたきマシンを作動させるにあたり急遽マシンに角度をつける必要に迫られその台座としてサービスアダプターが強烈に機能したらしい。
こんなにうってつけの台座はこのサービスアダプター以外に考えられなかったという絶賛の声が現場から上がっていたそうだ。
「常時安心セキュリティ24プラス」の担当メンバーはこれで喜んでくれるだろうか。この記事がこのまま公開されていれば、喜んでくれた(もしくは大人な対応をしてくれた)と思って欲しい。



知見を得たのだ。いろいろあったが結果がオーライである。
ここまでが遠隔肩たたき活動の一部始終だ。
なんだかんだいって私は実家で父の肩たたきに立ち会ってはいない。実際の現場の様子はどうだったんだろう。
同僚の実家を、当の同僚抜きに(しかもなぜか新人を連れて)訪れるという謎の記録を最後に写真中心に振り返りたい)。

ロード トゥ 同僚の実家



























お父さんへ
あ、あとお父さん、アメリカ出張中だったので上の写真には載っていませんが、私は同僚や後輩だけじゃなく上司にも恵まれてます。安心してください。






IoTは家族にたどり着け

安藤「今回のはIoTの最たるところだよね」
石川「やっぱ家族なんですよ」
遠隔肩たたき活動を終了し、安藤・石川の両名は大変に満足気である。やっぱ家族なのか。インターネットが?! ほんとに?!
実家の父の肩をたたいてインターネット。こんな未来で未来怒らないかな。






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