「生ガキのドロっとした」ってなんですか?
たしかに日本海あたりでたべる生牡蠣はウマいが東京の安い居酒屋でたべるとマズい。魚屋を名乗る居酒屋で「今日のおすすめは生牡蠣です!」と言っててもきっちり生ぐさい。これはもともと東京で食べるものでもないのかもしれない。
さてここで元となった発言をふりかえってみよう。
「僕は元々、あのスタジアムは嫌だった。生ガキみたいだ。(現行案の2本の巨大アーチは)合わないじゃない、東京に」と語った。
参考:
新国立、建設計画抜本見直しへ 安倍首相が午後表明:朝日新聞デジタル
うっ。きっちりカッコ書きされていて合わないのは巨大アーチとある。ぼくがネット上で見たときはカッコ部分がなかった気がしたのだが……
だがそんなことはどうでもいい。もう止められないんだ、このプロジェクトは。おれの悲願と言ってもいい。生ガキが東京に合わないことを証明して森さんの思いをかなえたい……!!
東京の有名オイスターバー、オストレアさんの恵比寿店で話をうかがいました
産地ごとに生牡蠣が並んでいる。今日は15種類あるらしい
「"ドロっとした"生ガキ」ってなんですか?
オストレアを運営する(株)バル.ジャパンの広報を担当している遠藤さんに話をきいた。遠藤さん自身お店でずっと働いていて元店長なので牡蠣にもすごく詳しい。
――そもそもドロっとした生ガキってなんですか?
遠藤「毎日扱ってる側からすると"ドロっと"というのはよくわからないですね。生きてて動くくらいなので弾力もあります。鮮度がよくないものとかでしょうか」
――ここにドロっとしたのはないんですね
遠藤「どの牡蠣も生産者さんに紫外線殺菌処理をしてもらって検査も行った安全な牡蠣をご提供してますし、海外の牡蠣であっても一度海で休ませて元気にしてお店に出してます。オストレアでは新鮮さや安全に対しての品質も徹底的に管理して創業以来集団食中毒も出してません」
うーむ、早くも"ドロっとした"という表現がゆらいできた。生ガキは生きててプリっとしてるらしい。しかしあれでしょ? プリっとしてても東京に合わないんじゃ?
オストレアの広報の遠藤さん。ずっと現場にいて店長もしてたので牡蠣にくわしい
かっこいい牡蠣ないですか?「これですね、糸島サウンド」名前が!
そもそもオイスターバーは東京にむいている
――東京の消費者が生ガキと合わないということはないですか?
遠藤「オイスターバーは生ガキを食べ比べられる場所なんですが、食べ比べてみると全部ちがうことがわかるんです。産地や時期や種類でちがうのでワインやコーヒーみたいに奥深いんですね。
こういったものは地方でなく大都市向きだと思うんです。実際数年前からオイスターバーや牡蠣小屋が東京にすごく増えてますね。量だけでなく質も。東京のオイスターバーのクオリティは世界にも通用します」
日本は牡蠣の名産地でもあり、東京はすごく生ガキが盛り上がってる場所ではあるらしい。だがしかし、合わないなりに盛り上がってるというケースもあるかも……(いや、ないだろうな)。
牡蠣はそのままたべる。レモンを絞ってたべると栄養を吸収しやすいらしい
白ワインやスパークリング、日本酒が合うらしい。知らんうちに牡蠣と名のつく酒がドカドカ並んでたよ
今の時期が生ガキと合わないのでは?
――暑い夏に生ガキは合わないといってるのかもしれないですよね
遠藤「Rのつかない夏場の月に牡蠣をたべるなということわざは数百年前の欧米のことわざなんですね。今では通用しないのと、日本は通年牡蠣がとれて夏場は岩牡蠣が旬です。
夏は塩分が必要だし冷たいものがおいしいので生ガキは合いますね」
――いや、そもそもカキフライの方が東京にむいていると言ってるのかもしれない。フライもの盛り上がってるのでは?
遠藤「オストレアでいうなら生ガキの方がよく出ますね。調理するものも同じ生ガキを使ってます」
フライも生ガキからということか。うーん、これはひょっとするとひょっとするかもしれない。生ガキは東京に合うかも……いかんいかん、森さんの思い森さんの思い。ちょっと試食させてください。
カキを傷つけると旨味が流れ出てしまう。カキを剥くカキ場は修練をつんだ職人が配置される花形らしい。むき何年ですか?「そういうのはないです」とのこと。
あっさりしたものからいきましょう、と志津川。おお、おお、うめえよう、(太郎、泣いてるだか?)おらこんなうまいもの、村のみんなに食わせてやりてえよう…(『龍の子太郎』より)
アメリカ代表ピュージェットサウンド。代表制にするとオリンピック感出てきた。フルーティな牡蠣といわれてるそうだが果物のような牡蠣とは……わかる。日本酒の飲み比べと同じような感じだ
やさしい甘みの知内かき。うまい。うまいなあ。水などで流さずできるだけその海の味をさせるらしいのだが塩っ気もちょうどよかった。だが、東京に合うかはまだだ!
森氏のお膝元、石川県の岩牡蠣。こういうものをたべて育ったら生ガキは石川のものであって東京には合わないと言うかもしれない。しかし今やこちらでもたべられるんですよ、森さん!
今東京に一番合う牡蠣はなにか
「牡蠣部長の小澤の方がくわしいので」と、お店を運営されてる小澤さんに"今東京に一番合う牡蠣"をえらんでもらった。
――ちなみに小澤さんは新国立劇場のデザインを生ガキみたいだなあと思いました?
小澤「いや、全く。思いもよらなかったですね」
――じゃあ実際に地図の上に生ガキちょっと置いてみましょうか。こんなデザインだったらどう思います?
小澤「うーん、お客さん来てくれそうだしいいんじゃないですかね」
――東京に生ガキのようなデザイン合ってますか?
小澤「合ってます。ばっちり合ってます」
――ほんとですか!?
今の東京に合う牡蠣はこちら。糸島です。岩牡蠣なので今の時期美味しいです。デザインもばっちり。ばっちり合ってます。
小澤さんにばっちりと言われると、たしかに合わなくもない気がしてきたぞ。問題は代々木の森と牡蠣殻をどうマッチングさせていくかだが、それはゼネコンと詰めていけばいいだろう。味はどうなんだろうか?
問題は味である。これで合わなかったら森さんの思いが証明されるはずだが…
うまいわぁ……「海からクリーミー方面抜けて深海潜ってってください」とタクシーで行ってもらうような体験でした。濃厚で複雑で芳醇なんだなー。はっ、合ってるのではないかこれは、いや、ちょっと待て
よし、これで白ワインと合ったら森氏にはあきらめてもらおう
クワーッ、合う合う合う合う、合うよ、生ガキと東京と白ワイン! 森さんごめん! 森さんごめん! ほんとにごめん! ほんとにごめん!
オイスターバーで一杯やりたいという森氏の思い
ラグジュアリーだし場違いな世界だなと思っていたオイスターバーであったがきっちり型にハメられて骨抜きにされて帰っていった。
しかし森さん……くうっ、森さん。すいません、森さんの思いをかなえられませんでした。でも、森さん、生ガキおいしかったです。ありがとう、森さん。
森さんの思いをかなえられなかったむなしさの中、原稿を書こうとニュースを確認したところ勘違いにきづく。
(……そうか、森さんはそもそも生ガキが東京に合わないと言ってたんじゃなかったんだ!)
すぐさま、おれは右手で森さんの手をとり、左手でオイスターバーの手をとって挙げる! バンザイ! バンザイ! バンザイ! 東京に生ガキは合うし森さんの思いもかなえられそうだ。さあやってくるぞ世界の国から、こんにちは! 森さんと生ガキと握手をしよう!
遠藤さんによるとメディアから生ガキの取材5件くらい来たとのこと。バカな取材をした分お知らせを引き受けました