公園の遊具はけっこうきれい
「一拭き目」でごっそり気持ちよく汚れを取るには、汚れた遊具が必要である。仕事が終わって自宅に帰り、私服に着替えてから汚れた遊具を求めて歩き回った。
歩き回って気づいてしまったのだが、なんか公園って思っていたよりきれいなのである。
なんの動物か分からないが、すでに光を放っている。
最近の砂場がフェンスに囲まれていることも知らなかった。公園に関して無知であった…。
「汚れた遊具」はないのか。歩いて歩いて8ヵ所ほど公園を回ったが、「一拭き目」の快感を与えてくれそうな遊具は見つからなかった。
「今はまだ下見だけど、試しに、ちょっとだけ…」と思い雑巾とマイペット(リビング用洗剤)を用意していたのだが、使う機会は訪れなかった。
比較的汚れていた遊具。しかし近づいてみると古いだけでまあまあきれいだった。
この公園では、近くのベンチでカップルが寄り添って楽しそうにしゃべっていた。
2人ともスーツを着ていたので、会社を出た後この公園で落ち合ったのかもしれない。もしくは会社の飲み会の後、二次会に向かう輪から2人でそっと抜けて、この公園で休憩しているのかもしれない。
とにかくすごく楽しそうであった。
その傍らで、かばんからマイペットをのぞかせながら、遊具を指先でそっとこすってみる俺である。
洗車用の洗剤を買う
後日、インターネットで調べても人に聞いても目ぼしい汚れた遊具は見つからなかった。
どうすれば気持ち良く磨けるのか、考えた結果「いい洗剤」を買うことに決めた。
SONAX!!
原産国:ドイツの車用洗剤、『ソナックスグロスシャンプー』である。
Amazonのレビューでとても褒められていたので買った。パッケージに「40台分」と書いてあるが、もちろん車の数のことだ。
本社の人が見かねて磨いている設定
そして当日、気持ち良く遊具を磨くためのもう一つの策として、当日はネクタイ、ワイシャツの上に作業着を羽織って行くことにした。「本社の人が視察に来て、あまりの遊具の汚さに見かねて自ら磨いている」設定である。
現場の方に疎ましがられるタイプの中間管理職のコスプレである。
日本代表のようなポーズだが、作業着に会社のロゴがあしらわれているので隠している。
遊具は理想的な汚れ方でないが、準備だけはねちっこく入念にしてしまったので、とりあえず磨いてみることにする。
「俺が現場にいた時代の働きっぷりを見せてやるか」と意気込む本社の人
手始めに、ここ数日で急速に仲良くなったマイペットを使って磨いてみます。時間は朝の9時ぐらい。
一拭き目はこんな感じ。やはり求めていた汚れではない。
しかし、一拭きしてしまったからにはしっかり隈なく磨く。
そのうち、甚兵衛を着崩したおじいさんがゆっくり歩いてきて、すぐそばのベンチに座りタバコを吸いだした。
毎朝の散歩のコースなんだろうな…、思いつつもこちらから目を合わせることはできず黙々と磨く本社の人。
「こっち、見てるんだろうな…」とドキドキしながら磨く本社の人。
おじいさんに見られている恥ずかしさと誇らしさで、必要以上にアクロバティックに磨いてしまった気がする。恥ずかしい。おじいさんは散歩から帰って家族に何か話すのだろうか。
「今日、いつものすべり台に本社の人が来ててね」
とか言ってくれるのだろうか…。
その隣のベンチでは、撮影係をしてくれている嫁が、写真を撮りながら自分の仕事をこなしていた。旦那が本社の人のコスプレをしながら公園の遊具を磨き、嫁がその写真を撮りながら仕事をする。21世紀が示す新しい夫婦の形である。
『おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に』の時代から、ずいぶんと長い時間が経ったものだ。
嫁は朝ごはんにパンを食べていたので、ハトがいそいそと集まってきた。すべり台のステップにある足が本社の人である。
そんなこんなで、一通り磨き終わった後の雑巾がこちらである。
地面の砂の色と同じくらい。結局、なかなかの汚れっぷりに。
変わってない!
磨く前がこちら。何度でも言える。「変わってない!」
本社の人、結果を出せず
こんなことでは、現場の若手から後ろ指を指されてしまう…。
しかし、当時の本社の人は達成感でいっぱいだった。見た目が変わらなくても自分で磨いた経験があると、遊具もすごくきれいになって喜んでいるように見えるのである。
磨くと、磨いた対象にとても愛着が湧くことが分かった。
去り際に振り返って写真を撮ってしまった。
さまよう本社の人
さらなる汚れた遊具を求めて、本社の人は住宅街をさまよった。この付近は公園が多いことが事前の調べで分かっているので、あとはどんどん磨いてみるだけである。
なんの動物か分からないが、この子を磨くことにする。
磨く前には親子連れが遊んでいたので、見えるか見えないか、ぐらいの位置で順番待ちをしていました。
順番がきたので磨く。隣の遊具で別の子供達も遊んでいたが、一切興味を持たれなかった。
お察し頂けると思うが、こちらも見た目は変わらなかった。2枚前の写真のような状態で磨き終えた、と思っていただいて構わない。
ちなみにこれは食器用洗剤で磨いた。柑橘類のいい香りがした。
本社の人、少し結果を出す
次はステンレスのすべり台
SONAX!!
満を持して洗車用洗剤、ソナックスを投入。相手はすべり台だ。
初めての車用洗剤なので注意書きをよく読む本社の人。
クリーミーな泡立ち。
ピカー!SONAX!!
「私が磨きました」
「磨きハイ」で趣旨を忘れる
ステンレスは照り返しが熱く感じるほどにピカピカになった。気持ちがいい。
当初の話と少し変わってきてはいるが、磨いてピカピカにできるってが気持ちいい。このぐらいの時間から天気も良くなってきて、「磨きハイ」状態になりつつあった。
で、ガードレールを磨いた。
一拭き目がどうの、という話も忘れてタワシでガシガシ磨いてしまった。汚れがみるみる落ちるのでもう夢中である。息つく暇もなく汚れを落とす。
今日一番の集中力を発揮する。横のバケツのカーネルサンダースの笑顔。
裏側も磨く。
磨いていない隣のガードレールがこれで、
磨いたガードレールがこれである!なんということでしょう!
真っ白である。新品のプラモデルみたいだ。舐めても構わないとすら思う。
タワシで汚れが水に溶けて、それを雑巾で拭き取って、乾拭きした後に現れるピカピカを迎えるのがとても嬉しかった。
掃除の快感を楽に得たいと色々考えて試行錯誤した結果、いつの間にか、ただただ一生懸命掃除していたのである。
今僕は、「掃除をすると清清しくて気持ちがいい」ということを一生懸命語っているのだ。
相手が縄文人だったら感心して聞いてくれる情報かもしれない。
真ん中のガードレールだけが白い。これが本社の人の気まぐれである。
「私が磨きました。真ん中だけ」
実は、公園に行く予定になっていた日はずっと前から天気予報が雨で、「もし雨の中、レインコートのフードかぶって遊具を磨いていたらかなり訳ありな感じなるなあ。それって楽しいかなあ…」とかなり心配していたのだが、当日は気持ちよくカラッと晴れて、最高の遊具磨き日和だった。
お昼ご飯にラーメンを食べて、帰って昼寝をした。
天気がいい日に掃除をすると気持ちがいい、というとことん普通の話。