ベトナムの巨大すぎる給水塔をご覧あれ
ベトナムの巨大すぎる給水塔をご覧あれ。
木陰からいきなり現れる、
巨大な押しピン!
と…これはこれで趣があるのだけど、電線が邪魔なので角度を変えてみた。
押しピンというかゴルフのピンがはみ出しているようだ。
そもそもこれ、何かと言うと、ベトナム戦争の前からある「給水塔」。今では下水道のインフラ整備が機能していることに加え、亀裂が入って水漏れも発生しているため、使い物にならずこのまま放置されているらしい。
目測で20mはありそうだ、お台場にあったガンダムが18mなのでそれより大きい。
ま、ガンダム、見に行ってないけど。
それにしても、デカイものはただそれだけで「ゴゴゴゴ…」というオノマトペが聴こえる。
給水塔「ゴゴゴゴ…」
洗濯物と巨大給水塔のある風景、ウン異様。
それでも何だか既視感があるなーとよくよく考えていたら、西東京市にある西武柳沢という街を思い出した。駅前に二つの大きなガスタンクがある街だ。
都内での社会人生活二年目の終わり頃に会社の寮が無くなることになり、引越し先を探す中で候補に挙がってきた街。ガスと水、ものは違えど貯めるという意味ではどちらも共通点がある。やっぱり貯めるなら大きい方がいいよね! 当たり前だよね!
しかしコレ、カメラ越しで見てもサイズ感がいまいち分からない。人間の両目の重要性を思わぬところで気付かされる…などと考えていたら何かの啓示か、ヘッドライトのくり抜かれたトラックが路上に停められていた。
こえーよ!
給水塔は距離を置くと、
かえってその巨大さが際立っていた。
これ、ホーチミン市内にあと4つか5つあるらしい。全部引っこ抜いたらどうなるんだろうか、ホーチミンが浮かんで空中都市になるんじゃないだろうか。そうなったらおもしろい、いやそれ大惨事だから。
さて実は、今回の主題はこの給水塔くんではない。彼は前座のようなものだ。
所用があり、シンガポールへ行くことになっていた。初めて行く国で、やはりひとつでも多く変わった観光がしたいと思い、周りの友人に「何か変わったところがあれば教えてほしい」と聞いてみたのだ。
そうすると一人が「『The Interlace』という建物を見てくれ」と言う。
『The Interlace』? はて?? 一体何なのか全く見当も付かないが、とにかく行けば見られるのだろう。
シンガポールの謎建築物・「The Interlace」を見に行く
「The Interlace」は、ラブラドールパークという駅から15分ほど歩いた先にある。シンガポールは外資企業を誘致するために緑化政策を取っているため、何処に行っても街路樹や公園で溢れている。
何処でだってランニングできそうだ。
えーっと、確かそろそろこのへんだけど。
あ、あった…って!
何じゃこりゃーーーーーーーー!!?
ジェンガだ!ジェンガだよコレー!!
もはや建物という概念を叩き壊している、壊すというよりバラバラか。ジェンガでなければ子供が凹凸を無視して積み上げたLEGOブロックだ。どっちにしろブロックだ。
パッケージの完成像にこれが載っていても、困る。いや、落ち着け、落ち着け私。それいけ私。違う。
下から見上げてみると、その異様さがより際立った。
だってさコレ!
裏側見えてるやん…!?
耐震設計はもちろんされているとは思うけど、だとしても日本人が日本でこんな物件に進んで住むとは思えない。
じゃ、台風とかないのかな。そう思って調べてみるとシンガポールには地震も台風も発生しないらしい、大自然の死角か。
でもそもそも国土が小さいので(淡路島くらい)、その分だけ影響範囲が小さいって訳だ。小兵力士みたいなもんだ、舞の海だ舞の海、東南アジアの舞の海。絶対違うなー。
しかし、この世に絶対はない訳で、台風が来ようものなら戦々恐々だろう…。そんなことを考えていると、ふと母親の実家にまつわる昔話を思い出す。
場所は奄美大島の離島で(奄美大島は奄美大島だけではないのだよ)、思い切り沖縄を通過した台風がギュギュギュギュギューン!とやってくる。今でこそ島内の住居はシッカリとしたものだけど、母親が子供の頃は台風というものは命がけの戦いで、必ず避難していたそうだ。
そんな幼少時代を過ごした母親にとっては、仮に私がこの「The Interlace」に住もうものなら常に落ち着かないだろうなぁ。ベトナムに住んでしばらくも心配していたそうだし。まぁ、それが、親の務めのようなものなのか…。
ま、でも、そんな状況はしばらくなさそうだ。何故ならこの「The Interlace」の正体は…一部屋数億円する高級住宅なのである。よし、この建物の存在を教えてくれた当の友人に話を聞いてみよう。
竹森さん「『The Interlace』は、OMAという建築事務所による設計で、北京でCCTVを担当したオーレ・シェーレン氏が担当したコンドミニアム(高級住宅)です。昨年9月に完成したばかりなんですよ」
竹森紘臣(ひろおみ)さん。ベトナム・ハノイにある設計事務所『03』の一級建築士。
ネルソン「素人から見るとかなり大胆な設計ですけど、こういった建築物は専門家の中でも珍しいんですか?」
竹森さん「アイデア自体は60年代後半からありました。『Marina Bay Sands』の設計で有名なモシェ・サフディの名作『
アビタ'67』と考え方は近いし、日本であれば『
西新宿空中都市計画』の規模と近いです」
ネルソン「『西新宿空中都市』…って、日本の話ですが、初めて聞きますね」
竹森さん「都市計画のみだったので。当時はアンビルド、つまり建てないことを前提として未来都市を描いていたところもあるのですが、『The Interlace』はそれが部分的であれ実現しているところに凄さや面白味を感じます」
「アビタ'67」と「西新宿空中都市計画」の写真はここには載せられないのでやりとりの中のリンクを見てほしいが、「The Interlace」を見て面白いと思う人ならきっと一見の価値アリだ。特に後者は、計画段階とはいえ、その外見に「2001年宇宙の旅」に登場する宇宙船のような、SF世界を感じずにいられない。
なお、記事冒頭で地震について触れたが、もちろん「The Interlace」は耐震設計をされている。ただ、日本でこのようなマンションに好んで住む人は正直いない気がする。そういう意味でも、やはり地震のない(少ない)国だからこそ実現できるデザインだと言えるだろう。
シンプルな巨大建築物は、ちょっと近未来を思わせる
「The Interlace」を見た帰り、小学生の頃によくやっていたゲームを思い出していた。「シムシティ2000」という街をつくるゲームだ。
人口が一定数を超えるとアルコロジーという、まるでSF映画の「ブレード・ランナー」に出てくるような巨大住宅用建造物を建てることが出来る。「The Interlace」ってそんな感じだ。
ベトナムの巨大給水塔もそうだけど、シンプルな巨大建築物って近未来を思わせるのかもしれない。
これは「アート・サイエンス・ミュージアム」。これも近未来的だが、その前にバナナだ、漂白したバナナだ。