特集 2015年4月21日

いかなごの釘煮と赤ワイン以上に不幸せな出会いがあろうか

赤ワインとイクラ、合わない! 赤ワインと数の子、合わない!
赤ワインとイクラ、合わない! 赤ワインと数の子、合わない!
いかなごのくぎ煮を食べて、何気なく赤ワインを飲んだらおどろいた。なんてまずいんだろう…。合う合わないというレベルではないぞこれは。

ワインと料理との奇跡的な組み合わせをマリアージュ(結婚)と呼ぶらしいがその逆だ。

だめなマリアージュを探そう。だめな奇跡を起こそう。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

赤ワインと魚はだめ

一般的に赤ワインは肉料理と、白ワインは魚料理と相性がいいらしい。一本400円だからという消極的な理由でワインを消費してる筆者でもこれは知ってる。

問題となったのはいかなごのくぎ煮(こうなごの佃煮)でやはり魚のものだ。だめなマリアージュはやはり海産物にひそんでるのではないか。
寿司をたべてワインを飲み、思ったことをすべて口に出して録音する
寿司をたべてワインを飲み、思ったことをすべて口に出して録音する

寿司でしらべればいいのでは

海のものをちょこちょこ食べるのには寿司のパックが便利だ。魚のネタだけたべて赤ワインと合わせていく。

マグロ、イカ、数の子、イクラ、ぶり、白身、エビ、カニ、玉子。魚卵系とのマリアージュが期待できそうだがはたして。

なお、レビューは思ったことをすべて口に出すというサトラレ方式で行なった。
その結果がこれだ。魚卵、次に甲殻類。だめなマリアージュ認定である
その結果がこれだ。魚卵、次に甲殻類。だめなマリアージュ認定である

ふつうの魚はすこしだめなくらい

基準となるのは玉子だろう、ここを合わない点数5点にした(ぴったり合ったら0点、最強に合わないと100点)。

白身の魚やマグロはどれも10点から15点。すこしなまぐさいかなというレベルだった。イカはそこからもう一段あがる。そのままだと気にしないなまぐささがワインであぶりだされた感じ。

さあ問題はこれからだ。匂いのつよい甲殻類である。ゆでたカニは40点で生のエビは45点。

■サトラレ方式によるカニの感想
「カニいってみようかな、細長いなカニ、カニってカニカマみたいだな、(食べる)うまいなあ、カニはカニだな、えらいな、(ワイン飲む)、くさっ、えらくないな、くさくて恥ずかしいな、カニは、全く変わるな、カニくささが別のカニくささになるな、40点」

■サトラレ方式によるエビの感想
「エビいってみようか、(食べる)あ、エビの匂いってあるな、エビってエビくさいんだな、(飲む)うん?、あ、ちょっとくさいな、あっ、くるなあ、エグミくるな、やっぱりくせえ、このやろう、くさいな、生だからかくるな、くせえ、エビ、くせえ、45点」
エビやカニがくさい。エグくてくさい。これが赤ワインのマジック
エビやカニがくさい。エグくてくさい。これが赤ワインのマジック

生魚<甲殻類<魚卵

甲殻類の後味はエグみに変わり、匂いがぬりかわる感じがする。エビくさくカニくさいものが角度を変えて急にイヤなものになってくる。

甲殻類、なかなかのだめなマリアージュ。結婚はすべてよいものとはかぎらない。

そして上には上がいる。魚卵である。イクラと数の子、この二つは甲殻類を上回った。

■数の子のサトラレ方式レビュー
「本命の数の子いってみようかな、(食べる)きそうだなこれ、(飲む)うん、わっかんねーな、あ、きた、くさくさくさ、くさ、なんの匂いだろうなこれ、きた…、きた…、65点くらいつけとこうかな、エグみ、数の子の後味と赤ワインの渋みがまじってエグミがすごいな、匂いはくさいとしか言いようがないな、あ、寝たいな、全部やめてもう寝たいな
魚卵のくささが急激に変化する。ふだんうまい棒食ってるソムリエが選んだ逸品
魚卵のくささが急激に変化する。ふだんうまい棒食ってるソムリエが選んだ逸品

特徴はそのままに印象がガラリと変わる

■イクラのサトラレ方式レビュー
「(食べる)イクラだなやっぱり、うまいうまい、(飲む)くせえ…、 くっせえ、くっせえ、生ぐさいな、あれだけうまかったのにすごいな、落差すごいな、化けの皮がはがれたような、付き合いたてのカップルのお互い好きなところが10年後イヤなところに変わってる感じかな、 お菓子の家をたべさせてくれたおばあさん家に泊まったら自分たちを太らせて食べようとしてきた感じあるな

魚卵はすごかった。もともと匂いがあるものだが、その匂いがイヤなものにかわる。魚卵がというより自分の舌がかわったような感じだ。あれだけ好きだったのにどうしてこんなにくさいのかと。

もしかして実際の結婚も……そんなことを思いついたが、うちの妻もこの原稿を読んでいる。
さあ、そもそもの発端であるいかなごのくぎ煮(こうなご佃煮)である
さあ、そもそもの発端であるいかなごのくぎ煮(こうなご佃煮)である

いかなごのくぎ煮が高得点

寿司がおわってかなり酔っ払ったが、ここで事の発端となったいかなごのくぎ煮を食べてみよう。

■いかなごのサトラレ方式レビュー
「(食べる)うん、甘いな、ごはん欲しくなるなあ、ごはんなら合うんだけどな、(ワイン)くっせえ…、くせえ、おもしれえ、くせえ、くさい、くさいよう、口の中がパリだとしてパリは燃えているな、消防車早くこないかな、魚が急にくさったみたいな感じだな、おもしろさはあるなこれ、白ワインならどうかな、くせえ…、くさいな、白ワインでもかわらずくさいな、これ数の子超えてるな、85点」
「街が燃えている」というなぞのコメントを残す
「街が燃えている」というなぞのコメントを残す

いかなごのくぎ煮が高得点

さすがこれを企画にしようと思っただけのことはある。魚卵よりパンチがきいている。

甘辛く炊きあげたいかなごのくぎ煮をくさいなんて言う人は少ないだろう。それがくさいのだ。だめなマリアージュもここまでくるとおもしろい。結婚式で柴犬がウェディングドレス着ておすわりしている感じがある。

すごい研究があった

ここで検索をしよう。「赤ワイン 合わない」である。するとまさにこれだというものがすでにWebにあった。メルシャン(株)の研究所がすでに解明してるのである。なんと!

参考 「世界が注目! 魚介とワインの組み合わせで発生する生臭い「におい」のメカニズムを解明――KIRIN

なんでもワインの鉄分が魚介類と反応してくさい化学物質を生み出すらしいのだ。そうか、一気に変わる感じはそれか! おもしろい。もうこれ以上ここでくささを探る必要はなくなった。

しかし体験は別である。こっちはくさいマリアージュ体験がしたくてやってるのだ。

研究所がくささの指標として使ってたのがホタテの干物。加工されるとなぜか生よりくさいらしい。

それだ、ホタテか。試してみよう。そしてホタテの干物を超えるものはあるのだろうか?
ホタテはボイルからためそう
ホタテはボイルからためそう

白ワインもくさい

■ボイルホタテのサトラレ方式レビュー
「(食べる)うん、うまいな、(飲む)あ、くさいな、ホタテすごいな、60点あげていいな、メラメラって燃料を投下して火が燃えるような感じがするな、化学反応ってこれだな、なるほどなあ、白ワインいってみようかな、くさ、真綿に水がしみこむようにくさいな、くさくさくさくさって一気にカードが裏返るような感じだな」

研究によると白ワインも鉄分ががあればくさいらしい。同じ銘柄の白ワインを買ってきたらたしかに。なるほどなあ。研究ってまちがったこといわないな(アホみたいな感想だな)。

ホタテはボイルでも(実験では生だったが売ってなかった)くさかった。これが干物となると……強い奴に会いてえ、オラ、ワクワクしてきたぞ、という気分になってきた。
これは絶対にダメだろう、ホタルイカの醤油漬け
これは絶対にダメだろう、ホタルイカの醤油漬け

ふつうの生ぐさいとは別なのか?

ホタルイカの醤油漬けが生ぐさくて苦手なのだが、これもよりきつい匂いになるのだろうか?

■ホタルイカの醤油漬けサトラレ方式レビュー
宇宙人かな、宇宙人じゃないのかなこれ、この時点でもうくさいもんな、(食べる)うん、なまぐさい、これにワインか、怖いな、おそろしいな、本当におそろしいな、(飲む)くせえ、あー、でも化学反応っぽさはないな、ぶどうが匂いを塗り替えるような感じ、45点くらいじゃないかな、なるほどね、なるほど、ほ~、やっぱりそうなんだ、ホタテとかきびなごがすごいんだ、へえ~

生ぐさいと思っていたホタルイカだがワインと合わせるとそこまでではなかった。くさい部分をワインが流していく感じなのだ。

やはり化学反応が起こってるのか。なるほど、おもしろいな~と感心してばかりいたが実験が進むにつれ酔いが回ってきている可能性はある
「ほー」実験が進むにつれ酔ってきただけかもしれない
「ほー」実験が進むにつれ酔ってきただけかもしれない
加工食品がダメらしいので加工食品にうつろう。イカのくんせいももともとの匂いがきつい。しかしホタルイカと同じくイカの変化はなかった。30点。
加工食品がダメらしいので加工食品にうつろう。イカのくんせいももともとの匂いがきつい。しかしホタルイカと同じくイカの変化はなかった。30点。
つぶ貝燻製。ホタテのように貝だし加工食品だがそれほどでもなかった。だめなマリアージュは見られない。30点くらい
つぶ貝燻製。ホタテのように貝だし加工食品だがそれほどでもなかった。だめなマリアージュは見られない。30点くらい
あじの醤油漬け。これはなかなかきた。魚の脂っぽさ×加工食品はいいのかもしれない。70点。「奥からおばあちゃん出てきた感じがある」と感想にある。どういう状況なのかよくわからないがまあくさいかもしれない。
あじの醤油漬け。これはなかなかきた。魚の脂っぽさ×加工食品はいいのかもしれない。70点。「奥からおばあちゃん出てきた感じがある」と感想にある。どういう状況なのかよくわからないがまあくさいかもしれない。
食べきれなくて翌日になったサンマの干物も60点。なかなかのマリアージュだった。青魚の加工食品、あじの醤油漬けと同じことか。
食べきれなくて翌日になったサンマの干物も60点。なかなかのマリアージュだった。青魚の加工食品、あじの醤油漬けと同じことか。
ちなみに口いっぱいに明太子をほうばった場合は80点。「モンスターじゃあ…モンスターじゃあ…」と感想にある。村のお祭りだたいへんなことになったのだろう。
ちなみに口いっぱいに明太子をほうばった場合は80点。「モンスターじゃあ…モンスターじゃあ…」と感想にある。村のお祭りだたいへんなことになったのだろう。
さてホタテの干物である。これが研究所がいう一番らしいが…?
さてホタテの干物である。これが研究所がいう一番らしいが…?

やはりナンバーワン級のだめなマリアージュ

■ホタテ貝柱干物サトラレ方式レビュー
「(食べる)うん、うまいなあ、口の中が解凍フォルダみたいになるな、口いっぱいだな、味が終わらないなこれ、(飲む)くせえ、おおくせえ、神の怒りかなこれ、昔なら神の怒りって言ってたかもな、奥からどんどん匂いがふくらんでいくな、いかなごと同じくらいかな、85点かな、くせえなあ、あ、いかなごと味も匂いもちがうのに赤ワイン後の匂いはおんなじな気がする、やっぱりそうなんだ、同じ物質が出てるんだこれ、へー、おもしろいなあ 」

さすが研究所イチオシのホタテの干物、だめなマリアージュだった。先ほど新婦側に柴犬が座っていたが、こんどは新郎側にトーテムポールが置いてあるくらいの結婚式である。いいインパクトだ。

そしておどろいたのはいかなごと同じ匂いを感じたこと。もともとの匂いは全然ちがうものなのに。やはり同じ物質なのか。

笑えるおもしろさから興味深いおもしろさまで出てきた。さてこのだめなマリアージュ界の2トップ、自分だけかもしれないので他の人にも体験してもらう。
妻とその友人が飲んでるところに持っていくと二人ともいかなごの勝利を支持。妻よ、それが結婚の味だ!
妻とその友人が飲んでるところに持っていくと二人ともいかなごの勝利を支持。妻よ、それが結婚の味だ!
デイリーポータルZの林さん、べつやくさんの2人はどちらも「くさいけど合わないというわけじゃない」とのこと。あれ?
デイリーポータルZの林さん、べつやくさんの2人はどちらも「くさいけど合わないというわけじゃない」とのこと。あれ?
この人もダメな感じがわからないという。あれ? もしかしたら人によるのか? それともワインが違ったので鉄分が足らなかったのだろうか
この人もダメな感じがわからないという。あれ? もしかしたら人によるのか? それともワインが違ったので鉄分が足らなかったのだろうか
いや、やっぱりこのワインでもくさい人はくさいらしい。ホタテが強烈にダメと。未婚の人、それが柴犬とトーテムとの結婚の味ですよ!
いや、やっぱりこのワインでもくさい人はくさいらしい。ホタテが強烈にダメと。未婚の人、それが柴犬とトーテムとの結婚の味ですよ!

そして最もだめなマリアージュが決定する

いろいろな人に試してもらったところ、ピンと来ない場合もあるようだ。(ふだんお酒を飲まない人は2人とも反応してなかったのでそこも関係してるのかもしれない)

ところでこの実験を行う前に料理人のひろさんという方に相談したところ「やっぱりマグロの血合いとかかつおの肝とか」ともともとの匂いがきついものを挙げていた。

そういやうちには石垣島で買ったカツオの腹皮の塩辛がある。
もともとの匂いがつよくてなかなか減らない。石垣島で買ってきたカツオの腹皮塩辛
もともとの匂いがつよくてなかなか減らない。石垣島で買ってきたカツオの腹皮塩辛

元々くさいうえに化学反応するのが最強

■カツオ腹皮塩辛サトラレ方式レビュー
「(食べる)これくさいんだよな、もともとこんなにくさいのに、こわい、こわいよ、こわいよう、本当にこわいな、(飲む)くせえ、くっせえ、くっ、くっうぅ、やっぱり、だからおれがいっただろあれだけ、おれがいったんだけどなあ、いわんこっちゃないな、90点あげたいな、もともとがくさいところにプラスされてるな、くせえなあ、参ったなあ、ぐうの音も出ないな

元々のくさみが60点くらいあるところにカツオの加工でプラス30点、合計90点で第一位に。

決定、だめなマリアージュはカツオの腹皮の塩辛が暫定1位。
合わない…これは決定的に合わない…90点
合わない…これは決定的に合わない…90点

合わないのはおもしろい

はじめに感じた、これはちょっと度をすぎて合わないのではないかという感覚。あれはやはり正しかった。科学的にも解明されていた。

試してみると興味深いし、体験としても笑えるものばかり。考えてみれば、そもそも合うものでお酒を飲むのがいいとはかぎらないのではないか。合わないこと自体おもしろいんじゃないか。

だめなマリアージュは酒飲みのねるねるねるねだ。高収入高学歴高身長の結婚ばかりがすばらしいわけではない。だめなやつとの結婚がおもしろいじゃないか。

とワイン1本近く開けたときに思ったのだが、合わないもので飲んでいるとものすごく気分がわるくなった。やはりからあげくらいが一番いいのだろう。
すべて終わった後に食べたからあげの安心感といったらなかった
すべて終わった後に食べたからあげの安心感といったらなかった
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