大人になっても恥ずかしい
小学生の水泳の着替えはなんであんなに恥ずかしかったのだろう。大人の銭湯の10倍くらい恥ずかしい。
と思っていたが先日パンツの記事の撮影があり、居間で下着を履き替える機会があった。
「じゃあみなさん後ろをむいて着替えましょう」と声をかけたのは元ヨット部の安藤さん。ヨット部ではその場で着替えるのが当たり前だそうだ。だがヨット部以外の我々はまごついた。
恥ずかしかったのだ。
銭湯などの裸が慣例となってる場ならいい。だがそれ以外だとまだまだ恥ずかしい。小学生とかわらないではないか。ここらで克服しよう。何も見せずに着替えられるようになっておこう。
見せてはいけない部分をタイツの上にフェルトで作成。その上からトランクスを履き、水着に着替える
どうすれば見えないのか? さぐっていく
一体どうすれば見られずに着替えられるのか。答えもないので試行錯誤していくしかない。
見せてはいけない部分をフェルトで形作り、それを着たうえでパンツから水着に履き替える。見せてはいけな部分を写真に撮られたらアウトということにしよう。
まずはデイリーポータルZ編集部の藤原が挑戦。カメラに緑の部分を撮られたらアウト(見えてはいけないものが見えた)だ。
看板を利用して
藤原に概要を説明するとなにも言わずに「路上喫煙禁止」の看板にむかった。なるほど、壁やなにかで隠す方法か。
藤原がまずとった方法は看板にはりつくこと。変質者っぽさがすごいな
壁にはりついたままゆっくりとトランクスをおろす藤原。こういうの理科の実験番組で見たことがある。さなぎからの脱皮だ。
「つる…つる…」この人は人類ではじめて着替えで死んでしまうかもしれない
完成! だが壁にたよれない場合も多い
方法1 壁着替え
ゆっくりした動きながら成功した壁着替え。ただし変質者っぽさはすごい。企画をわかっていながら通報しようかと思ったほどだ。
ただ壁が使えない場合も多いし、「あいつなに貼り付いてるんだ」と思われてしまうのもデメリットだ。
足をクロスして
「壁はなしで」とつたえられた藤原がとったのは足をクロスして隠す方法。ギリシャの彫刻っぽいのでギリシャ着替えと命名した。
立体としての力強さはすごい。水着なども必要としてなさそうだ、葉っぱでいいだろう
だがこちらから見ると完全にアウトだった。失敗だ
壁がなくとも地面がある
壁着替えを成功させた藤原がハッと気づいてはいつくばった。そうか、地面があるじゃないか。
藤原がはいつくばった。水泳の着替えでこういうやつがいたらびっくりする
ものすごくゆっくりした動きでトランクスをおろしていく藤原。たとえこれが成功したとしても、こんな動きで着替える人間に人はついてこないだろう
ヒザから下は手が届かずむずかしい。となったところでアウトだった
小学生男子定番中の定番
こどものころにやった有名な着替え方がこれ。パンツの上から水着を履いて、パンツだけスルッと脱ぐもの。あの頃はブリーフだったが、今もできるのだろうか。
トランクスの上から水着を履く。猛烈なノスタルジーがやってくる
すそからトランクスを引っぱり出す。海外の人が「amazing!」と感動しそうなニッポンの技がここにある。
大人でもトランクスでも足が通った。ポイントは水着もある程度下にずらすこと
成功。なぜかおじいさんたちがじっと見ていた。魔法だと思ったのだろうか
方法2 二重着替え
子供のころのあの技は今でも使えた。これを考えたやつはえらい。ノーベル物理学賞をあげたい。
ただ大人がこの二重着替えをやってることの違和感はすごい。どれだけ見られたくないんだという衝撃がある。
体育座りのまま着替える
ここで藤原の考えが尽きたので私、大北にバトンタッチ。前を隠せばいいのだから体を折ってみた。
体育座りのまま着替える。徹底的に体を折る
この角度、アウトなのではないか
結果は一応成功。こんなものでもできるとうれしいものである
方法3 座り着替え
体を折ったまま着替える座り着替えは成功。着替えの時間にとつぜん座りだすことの違和感はある。
見えない着替えはどれもかっこよさを犠牲にする。スマートな着替えはないものだろうか。
腕で隠す
意外とこれでいけるのではないかと思い。腕をクロスさせて隠してみた。
ずっとこの角度で着替える。かなりゆっくりした動きになるがその間、後ろはすっぽんぽんである
成功。世の中的にはなんにも起こってないように見えるが、北京の蝶の羽ばたきが米国の嵐となることもある。
方法4 十字着替え
腕をクロスさせて隠す方法。腕を前に置いたままで着替える難しさがあるので時間はかかる。十字を作ることで特定の宗教への人気も期待できる。
獣気分で着替えられるのではないか
手を地面について体をたたんだ状態のまま着替えられないだろうか。獣の気分だ。
生まれたての仔馬のギャグがあるが同じような格好だ
アウトだった
舞踏家を呼ぼう
我々の知恵ではもう限界をむかえてしまったので身体的な分野の専門家に話をきこう。元山海塾の舞踏家・ダンサーであるトチアキタイヨウさんを呼んだ。
かっこいい水着の着替え方を一緒に考えてもらおう。
舞踏家を呼んできた。かっこよく着替えたいんですが…
事前に考えてきてくれた
トチアキさんがこの企画をきいて事前に考えてきてくれた着替え方。ジャンピングして着替える方法。
とにかくかっこよさを追求したようだ。
ジャンプして水着に着地し、一気に着替えるらしい。瞬間的なので大丈夫とのこと
アウトである
完全に見えた
ジャンピング着替え、完全なアウトだったがかっこいいのはかっこよかった。大きな目的は恥ずかしさを消すことなのだからこれはこれでいいかもしれない。
前転で着替える
もうひとつトチアキさんが考えてきたのが前転して着替える方法。たしかにかっこよさはあるが、うまくいくのだろうか。
だが正確にいうとこの直前に正面にまわればアウトかと思われる
方法5 回転着替え
アクロバティックな回転着替えも成功。角度によってはアウトとなりそうだが、一連の動きがかっこいいのでうやむやにできそう。
問題はスペースをとることと、われにかえること。信じきる心の強さがもとめられる。
こんな風に着替えてる人がいたら小銭置きたい
藤原が失敗した脱皮着替え再び
脱皮着替えもうまくいくかもしれないとトチアキさんはいう。
ヒザ下は手が届かないはずだが…なるほど手でカバーしつつ体をおりまげて脱皮完了
履くときはできるだけコンパクトに。たしかに完了。だが着替えのときにこんな人がいたら一発でアウトな気もする
方法6 うつぶせ着替え
うつぶせの着替え方でも成功した。ただこの着替え方はかなり遅く、そこまでして見られたくないのか感がすごい。
着替えてる最中、トークで間をもたせる技術が必要だろう
踊りとして着替えを考えてもらう
トチアキさんは舞踏家なのでここらでひとつ「舞踏っぽい着替え」をやってもらおうとお願いした。踊りとしてのかっこよさで押し切る作戦だ。
メイクとかないと笑ってしまうのでどうしようかなと悩んでいたトチアキさん。メガネだけ外してのぞんだ。申し訳ないです! おねがいします!
じゃあやります、と
めちゃめちゃゆっくりした動きでトランクスに手がかかる。ふだんの動作が拡大して強調されるのが舞踏っぽい動き
あ、見えた。しかしそれでもゆっくりおろしていく
脱いだあともぶわっと大きな動きに
トランクスを頭上にかかげる。しかし見えているな
ふわっと落とす。なんらかの心情表現だろうか。見えているが
脱いだトランクスを遊ぶようにトスする。しまったな。トチアキさんずっと見えているな
何度かくりかえしてトランクスを落とす
落としたことがショックなのだろうか。見えている
自分を大きく見せるような動きも舞踏っぽい。見えているが
水着をひっかけて大きな円を描くような動き。見えている
ついに履くときがきたと見せて
履かない。また見えた
履きそうで
履かない。こういう「やりそうでやらない」動きというのも舞踏でよくあるらしい。そして完全に見えている
何度かくりかえしてついに…。その間ずっと見えているが
足をかける
両方ゆっくり足をいれて着替え完了。残念、見えている。アウトだ
着替えではなく踊りだ
かっこよかった。完全に見えていたが、芸術表現なので見えてもOKかなという気がしてきた。
ただだれでもできることではないので方法としては認めにくい。トチアキさんは今後これで着替えてください。
どこでも着替えられる6つの方法
恥ずかしいのはなぜ恥ずかしいのかと考えたらその場の規範から外れるから恥ずかしいのだ。居間で裸になる恥ずかしさはそこからきているのだろう。
だとしたらそこで局部が見えなかったとしても恥ずかしさに変わりはないのではないかと今思いあたった。
「じゃあ着替えましょうか」といわれて、全員でゴロゴロ回転しはじめたりうつぶせになったり舞踏をおどりはじめたらそれはやっぱり規範から外れてしまう。
やっぱり恥ずかしい。私たちははいつまでも恥ずかしい。
悩んでるとき後ろでおばあちゃんたちによる輪投げ大会がはじまった。公園の磁場が完全に狂っていると思われる