“上京した”鳥取県民限定のあるあるネタ
「
群馬のおきて」シリーズのヒット以降、各県のあるあるネタをまとめた二番煎じの本がたくさん出版されている。
というわけで、その人気に便乗しつつぼくの上京19周年を記念し、東京に出てきた鳥取県民限定のあるあるネタをまとめてみたいと思う。
上京した鳥取県民あるあるその1
世田谷区の人口(83万人)を聞いてビビる。
世田谷区より人口が少ない鳥取県
鳥取県は、日本の都道府県でいちばん人口の少ない県(58万人)として有名だ。
「人口が少ない」ということは「その県に生まれる」という確率も低いわけで、この世に鳥取県民として生まれるということは、宝くじに当たるよりも難しいことである。
したがって、鳥取県民はその「人口が少ない県に生まれた」という希少性をもってそのプライドのよりどころとしているひとは少なくない。
しかし、上京し、何かのはずみで世田谷区の人口を知った時の衝撃はすごい。「え? 区なのに、県より人口が多い? ということは鳥取県民として生まれるより、世田谷区民として生まれる確率の方が高いのか?! くそー、おれも世田谷区民として生まれたかった……せめて狛江でもいい……」
そんなことを思った上京した鳥取県民はぼくだけではないはず。
上京した鳥取県民あるあるその2
鳥取にスタバが出店と聞いても「いまさら要らないんじゃないの?」って思う。
日本の都道府県のうち、ゆいいつスターバックスのなかった県、鳥取県。
しかし、ついに今年(2015年)の初夏、鳥取駅の南に鳥取県一号店が開店することになった。
上京した鳥取県民にとってはどうでもいい、というか、むしろ「47都道府県の中で唯一スタバがない」という持ちネタが無くなってしまうことの方が残念で仕方がない。
芸人がハゲてたりデブだったりしたほうが「おいしい」と思う心理と同じである。
今、鳥取県在住のひとには申し訳ないけれど、おそらく上京した鳥取県民はみんなそう思っている。はず……。
上京した鳥取県民あるあるその3
上京してはじめて「鳥取と島根の区別がつかない」という定番ジョークがあることを知る。
もう、なにがなにやら
「鳥取と島根の区別がつかない」というよくある定番のジョーク。
なにかのはずみで自己紹介するとなったとき「鳥取出身です」というとかなりの確率で言われるのだが、そういう定番の冗談があるということは、鳥取に住んでいる頃は知らなかった。
なぜなら、鳥取には「鳥取と島根の区別がつかない」なんて人はいなかったから。
鳥取県民であれば小学生でさえ自分の住んでいる県が鳥取県で、西隣の県が島根県だということは簡単に区別がつけられる。
もっとも、東京都民のいう「鳥取と島根の区別がつかない」というのが「冗談」だと思っているのは上京した鳥取県民だけかもしれないけれど。
上京した鳥取県民あるあるその4
日本の代表的な昔話といえば「桃太郎」「浦島太郎」「因幡の白うさぎ」←これ
鳥取県民なら誰でも知っている「因幡の白うさぎ」
日本の代表的な昔話を三つあげろといえば、何を思い浮かべるだろうか?
まず「桃太郎」は外せないだろう。それはよいとして、その次である。「浦島太郎」や「かぐや姫」「さるかに合戦」あたりを思い浮かべる方が多いかもしれないが、鳥取県民なら必ず「因幡の白うさぎ」を入れるはずだ。
因幡の白うさぎで一番盛り上がるシーン
上京した鳥取県民が、何かのはずみで東京のひとと昔話の話になったとき、桃太郎、浦島太郎と同じようにメジャーな昔話として因幡の白うさぎの話をすると「そんな昔話知らない」と言われショックを受ける。
「え? 聞いたことない? ほら、大雨で沖の島に流されたウサギが、本土に帰るためにサメを騙して並ばせて、その上をわたって帰るけど、それがバレてサメに毛をむしり取られて泣いてると、通りかかった大黒様に蒲の穂にくるまったら傷が治るっていわれてその通りにしたら治ったっていう昔話」
「知らないし、蒲の穂って何?」
さすが東京生まれ、蒲の穂が通じない。
蒲の穂これです
鳥取市から少し離れた場所には「白兎海岸」という海水浴場があり、この昔話ゆかりの神社や、ウサギが体を洗ったとされるガマ池、流されたとされる島などがある。
鳥取県の保育園や幼稚園では、読み聞かせや紙芝居でも定番の昔話である。(少なくともぼくが子供のころはそうだった)
そのため、鳥取県民は、因幡の白うさぎが日本を代表するような昔話だと思い込んでいるけれど、全国的にみたら世田谷のダイダラボッチ伝説程度の昔話でしかない。
上京した鳥取県民あるあるその5
夕刊を見て「これが、あの、夕刊というものか……」となる。
鳥取には夕刊がない
鳥取県ではほとんどの家庭が県紙の「日本海新聞」を購読している。しかし、日本海新聞には夕刊がない。
日本海新聞だけではなく、全国紙の朝日や読売、毎日といった新聞も統合版とよばれる夕刊の無いバージョンが配達されるため、鳥取には夕刊というものがない。
都会の新聞は、朝と夕の2回配達されるものだと、知識としては知っているのだが、実際に上京して、なにかのはずみで夕刊を読むことになったとき「これが、あの、夕刊というものか……おれは今、東京にいる」と実感した鳥取県民はぼくだけではないはずだ。
ちなみに日本海新聞は、数年前まで1ヶ月月極で1995円で日本一安い新聞だったらしいが、今調べたら2260円に値上がりしていた。
上京した鳥取県民あるあるその6
テレビ朝日は1ランク格下のテレビ局のような気がしている。
テレビ局は鳥取と島根で共有
鳥取県と島根県は、合わせて民放が3局しかなく、テレビ朝日系列の局とテレビ東京系列のテレビ局がない。
そのため、ドラえもんは土曜日の夕方の放送だったし、戦隊モノは金曜日の夕方に放送していた。
※編集部注 西村さんはこのようにいっておりますが、スーパー戦隊シリーズの放送時間が朝になったのは1997年以降で、それ以前はテレビ朝日系列の放送も夕方でした。
「1ランク格下」というのは確かにちょっと言い過ぎたかもしれない、でも、鳥取県民にとって「テレビ朝日」は全くなじみがなく、そんなに思い入れがない。西部警察と言われても、なにそれ野球チーム?警察?どっち? といった感じである。
テレ東の位置づけはよくわからない。
上京した鳥取県民あるあるその7
成城石井で白バラ牛乳を見つけると買ってしまう。
うっかり買ってしまう
白バラ牛乳は「大山乳業農業協同組合」の牛乳ブランド名である。鳥取県民は「白バラ、白バラ」と呼んで愛飲している牛乳である。
鳥取県には白バラ牛乳以外に牛乳メーカーが無いため、牛乳といえば白バラ牛乳しかなかった。
給食の牛乳は白バラだったのはもちろん、産湯から末期の水まで全部白バラ牛乳だった。キリストと川島なお美は血がワインらしいが、鳥取県民の血は白バラ牛乳である。
子供の頃から変わってないデザイン
鳥取県民は上京すると「東京では白バラ牛乳売ってないのか……」と落胆するものの、成城石井で売っている白バラ牛乳を見つけると、狂喜乱舞して購入するのである。
上京した鳥取県民あるあるその8
同郷のひとがあまりいないので、島根出身の人でも偶然会うとちょっとうれしい。
島根県の牛乳(木次牛乳)とパン(バラパン)
鳥取県民にとっての進学先や就職先としてはまず大阪、神戸、京都があり、わざわざ遠い東京まで出て行く人間というのはなかなかいない。
さらに、日本一人口が少ない県であるため、東京で偶然知り会ったひとがたまたま同郷……なんてことはあまりなく、たまに「◯◯さんも鳥取出身だよ」という情報をもらっても、よくよくきいてみると島根出身。ということも少なくない。
ただ、知らない人ばかりの東京で、島根県民と「猪口ひとつ思わずふたつ三櫻」のキャッチフレーズ(※1)や、音楽の風車(※2)の話を共有できたりすると、もはや他県民という気はしない。
そういう意味で、島根県民とは言うほど仲が悪いということもない。
※1.島根県浜田市の三櫻酒造のキャッチフレーズ。十数年前までテレビCM、ラジオCMで頻繁に放送されていた。
※2.BSSラジオで1954年の開局当時から放送されているリクエスト番組。鳥取、島根県民は津村謙の「赤いマフラー」を聞くと「音楽の風車」を思い出す。
あくまでぼくの意見です
以上、えらそうに鳥取県民を代表しているかのようなことをいくつか書いたのだが、あくまでぼく個人の印象です。