特集 2015年3月12日

砂糖大量消費県の底力を計測する

これさえあれば…な測定器を用意しました
これさえあれば…な測定器を用意しました
ネットで「○○消費量1位」などの統計データを見るのが好きだ。

そのサイトで先日、気になるデータを見つけた。私の故郷である秋田県が「砂糖消費量2位」だったのだ。(ちなみに1位は長野県)

「なんで?」と訝しんだが思い当たるフシはある。考えてみれば、実家の食事は総じて甘い。しょっぱさ以前に、とにかく甘いのだ。

しかし実感してるばかりでは人に伝わらない。きちんと計測することで甘さを数値化してみようではないか。
1968年秋田県生まれ。食べたり飲んだりしていれば概ね幸せ。興味のあることも飲食関係が中心。もっとほかに目を向けるべきだと自覚はしています。

前の記事:ハタハタだらけのハタハタフェスティバルがあった!


糖度計を借りる

先の年末、故郷である秋田に帰省した。糖度を調べるにはいい機会である。

というのも、おせち料理は保存性を高めるため砂糖がふんだんに使われることが多い。あの甘い味付けを計測するにはいい機会だ。
当サイト編集長の林氏(計測マニア)所有の糖度計を借りることに。初めてなのでマニュアルを熟読。
当サイト編集長の林氏(計測マニア)所有の糖度計を借りることに。初めてなのでマニュアルを熟読。
この糖度計、買うとなると高い。今回借りたものも、ネットで調べると2万円以上する。

たかが思いつきに2万は払えない…と企画が頓挫しかけたが、林さんのおかげでどうにかなった。いろんなマニアがいるサイトで本当によかった。

時節柄「紅白なます」で調べてみた

噂によると、同じ秋田でも砂糖を大量に使うのは県南部に多いらしい。あいにく我が家は県北部に位置するが、同じ秋田県内ということに変わりはない。

というわけで、実家に帰るなりスーパーに直行、 そして選んだ食品がこちらです。
お正月くらいしか目にしない、紅白なます。
お正月くらいしか目にしない、紅白なます。
なんせ糖度計は液体(汁)でなければ計測できないという制約がある。その意味でも、甘酢に浸かったツユだく状態のなますはうってつけと言えよう。

ところで、実家のなますはとても甘かった記憶があるが、スーパーの物もしっかり甘いのだろうか。

そこは「地元のスーパーで売られているお惣菜=その地域の平均的な味」と勝手に判断させてもらった。

さあ、震えが来るほどの甘さに期待しようじゃないか!
初の計測。16.4だそう。最初なだけに「へえ」としか言えないし、なんとも判断のしようがない。
初の計測。16.4だそう。最初なだけに「へえ」としか言えないし、なんとも判断のしようがない。
実際に食べてみると、思っていたよりずいぶん爽やかな甘みだ。…あれ?

調べたところ、果物で一番糖度が高いのは「ブドウ」だそうで、だいたい17くらいとのこと。

ということは、このなますはブドウ並みの甘さなのか。思ったよりも甘くない。「なますは甘くて酸っぱい食べ物の筆頭」と思っていたのは幻想だったのか?

では、いよいよ私が世の中で一番甘いと思っているなますを登場させよう。
母の作る、干し柿入りの紅白なます。
母の作る、干し柿入りの紅白なます。
このなます、とにかく甘くて酸っぱくて、子どもの頃は本当に苦手だった。アクセントとして入っている干し柿が、甘さにターボをかけている。

果たして、どんな数値が出るんだろう。
でた。オーバー30!
でた。オーバー30!
甘いはずである。納得の数値である。

ちなみに、大阪出身の夫にも感想を聞いてみたが、ひとこと「甘い…」であった。でも「嫌な甘さではない」とのこと。
干し柿部分だけを計ってみても、同じような数値に。
干し柿部分だけを計ってみても、同じような数値に。
つまりこのなますは、全体が干し柿の甘味に浸食されているということなのだろう。

おそるべし干し柿。

次に、場所を秋田市内(県中央部)へと移し、またしても惣菜として売っている紅白なますを購入してみた。サンプルをどんどん増やしたい。
ずいぶん「紅」の多いなますだった。
ずいぶん「紅」の多いなますだった。
最初のスーパーで購入したなますが期待外れだっただけに不安を感じないでもなかったが、まずまずの数値が叩き出された。
お? きっちり甘いぞ?
お? きっちり甘いぞ?
計測場所を変えて数回計測。干し柿が入らなくても、この数値。
計測場所を変えて数回計測。干し柿が入らなくても、この数値。
よかった。やっぱり秋田のなますは甘かった。

このまま南下して、砂糖大量消費地域だという県南部でもなますを買いたかったのだが、あいにくこの日は大晦日。行ったところでスーパーも早じまいであろう。残念だが県南なますは諦めざるを得なかった。無念である。

大阪、そして東京はどうだ

大きな声で「秋田は甘かった」と言うためには、他の地域のなますも計測する必要があろう。比較してこそ数値に説得力が出るというものだ。

そこで翌元旦、秋田から大阪へと飛び、義理の実家にて姑の作ったなますをごちそうになった。

義母の目を盗み、隠れるようにコソコソと糖度計を取り出してサッと計測。(だいぶ手慣れてきました)
確かにさっぱりしております。ゆずの風味も爽やか。
確かにさっぱりしております。ゆずの風味も爽やか。
場所によって数値が変化するので何度か計ったが、これ以上は出ず。
場所によって数値が変化するので何度か計ったが、これ以上は出ず。
オーバー30のなますを食べた後だけに、やけにさっぱりと感じられる。

鷹の爪も入っており、同じ名前のついた食べ物とは思えないほどのあっさり具合というか、まるで野菜サラダのようだ。おかげでもりもり食べられる。うまい。

さらに東京へ戻ってから、お正月の売れ残り商品として半額になっていたなますを購入。これも調べてみた。
時期が過ぎると半額シールが貼られる潔さよ。
時期が過ぎると半額シールが貼られる潔さよ。
あれ? 最初に秋田で買ったやつより高い。
あれ? 最初に秋田で買ったやつより高い。
何度か計測してみても同じ。
何度か計測してみても同じ。
確かに、食べてみると甘みが感じられる。まさか秋田北部の惣菜なますより甘いとは…。

もはや、秋田が特別甘い県だという当初の目論見などどこへやら、単になます食べ比べの全国行脚となってしまっている。いいのか。

お正月じゃなくても売ってた!

あっという間に松が明け「紅白なますを店で買えるのは、あと約1年後か…」と思っていたところ、なんとスーパーの漬け物コーナーにて「柚子なます」の名称で売られているのを発見!

なるほど、自分が興味のないものは視界に入りづらいとはよく言うが、まさにそれであった。
君ら、年中売られてたのか!
君ら、年中売られてたのか!
商品を手に、思わず「今までまったく気付かなかったよ! いたの!?」と口から出たほどである。

さて、正月以外に売られているなますの甘みや如何に。
え。
え。
君ら、ホントになますか!?
君ら、ホントになますか!?
スーパーの店頭で「糖度12」のポップ付きでアピールされているミカンより低いってどういうことだ。

確かに、食べてみるとまったく甘くない。甘みゼロ。砂糖も入ってはいるのだろうが、酢が勝ちすぎて気配すら感じられない。

おもわず「酸っぱい!」と叫ぶほどのなますを食べたのは生まれて初めてだ。
なるほど、よく見ると品名が「酢漬」だもの。
なるほど、よく見ると品名が「酢漬」だもの。
それにしても「なます」と一口に言っても、よくまあこれだけ違うものである。

調味料がほぼ「砂糖・酢」だけなのに、いや、だからこそ、砂糖の量によって味の印象がグッと変わる。

気になったのでネットでレシピを調べてみると、砂糖は「大さじ1」の人から「大さじ4」の人までさまざまであった。

これに地域性があるのかどうかは不明だが、とにかく言えるのは「私の実家のなますは甘い」ということだ。激甘だ。無事に数値化されて嬉しい。

ちなみに我が家は煮物もゴマ和えも甘い。

(おまけ)玉子焼きこそが問題だった

実は秋田では、なますの他に玉子焼きも買っていた。かねてより「秋田の玉子焼きは甘い!」と思っていたので一緒にスーパーで買ってみたのである。

そしてこの玉子焼きが、予期できない事態をもたらしたのであった。
いきなりのハイスコア。
いきなりのハイスコア。
砂糖の溶け残り部分だろうか。さらに上昇。
砂糖の溶け残り部分だろうか。さらに上昇。
汁が少ない食べ物だけに、場所によって数値にバラつきが出るので計測は複数回していたのだが、それにしてもバラつきすぎだ。

ついにはこんな表示が出た。
なんだこのトリプルHは。どういう意味だ。
なんだこのトリプルHは。どういう意味だ。
「あれ? 乗せ方が悪かったのかな?」とマニュアルを見たところ、
「測定範囲外(高い)」とあった。…こ、これは。
「測定範囲外(高い)」とあった。…こ、これは。
こんなことってあるのか。甘い甘いと思ってはいたが、まさか針が振り切れるまで甘かったとは。

いったい砂糖をどれくらい入れたらこんなことになるのか…。

いや、しかしこれはあれだ。たぶんなんらかのエラーに違いない。汁の足りなさにより誤作動したというか、そもそも玉子焼きを糖度計で計ろうとしたこと自体が間違いなのだろう。

たしかに玉子焼きは甘かった。「甘い玉子焼き許すまじ派」の人が食べたら憤死するレベルに甘かっただけに、正確に数値化できないのがもどかしくてならなかった。

次こそは秋田県南部へ

いまいち「秋田の甘さ」を実証できなかったのが悔やまれる。もしも次回があるのなら秋田県南部へ是非とも行きたいところである。

県南出身の友人に「甘いってホント?」と聞いたところ、

「あー、なんか『美郷町と横手市の間でグッと甘くなる境目がある』って聞いたことありますね。酢飯に入れる砂糖の量が倍になるらしいんですよ」とのこと。

なんだその魅力的すぎる場所は…! 行きたい。行って計りまくりたい。しかもスーパーじゃなく、それぞれの家庭で作られる惣菜の数々を。そして酢飯を。

しかし酢飯は糖度計では測れない。一体どうすればいいのだろう…。次回、横手へ行くときまでの課題としたい。
実家近所で買ったお稲荷さん(揚げ部分)はこの数値。ずいぶん甘いが、これより甘いものが横手にはあるに違いない…!
実家近所で買ったお稲荷さん(揚げ部分)はこの数値。ずいぶん甘いが、これより甘いものが横手にはあるに違いない…!
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