そんなわけで、Sとともに、「酒舗 石塚」までやってまいりました。
街の酒屋さんなんだけど、とんでもない実力派の店、イシズカ。
若旦那、石塚博康さん「今回は難問ですねえ。まず大前提で、ドクターストップの方は飲んじゃだめですよ。」
――それは分かっております。
「まず、大まかに説明しましょう。
基本的にお酒のタイプは、2種類ありまして、ウイスキーや焼酎のような蒸留したお酒、ワインや日本酒のような醸造したお酒があります。そのほかに混成酒っていう、梅酒みたいなお酒もありますけれど。
基本的に、成人病に気をつけている人が飲むのは、蒸留酒ですね。
お酒の中のカロリーって、糖分に由来するカロリーと、純粋なアルコールに分かれるんです。
糖分に由来するカロリーは問題ですが、アルコールのカロリーって、ほとんど肝臓で分解されて、残らないんです。つまり蒸留酒はアルコールだけなので、身体に残らないんですね。
簡単に言うと、蒸留酒って風味のそれぞれ違うアルコールなんですよ」
――なるほど。
「お酒は、簡単にご飯一杯以上のカロリーがとれますけれど、身体に蓄積するのが多いのは、食べ物のほうなんですよ。ビール腹とか言いますけれど、ビールで太るというよりも、ビールによる食欲増進で太ってしまうんですね。
……でもツマミなしでお酒飲んだら身体に良くないんですよねえ」
Sさん「正直、私は糖尿ぎみになるまでは、蒸留酒には興味なかったんですよ。実際になってみて、糖質を避けるためには、糖質ゼロのビールとか、焼酎しかないのかな、と思うようになって。
焼酎を自分で選んで飲んでみたんですけど、やはり芋とかクセのあるものが楽しめるのかなあ、と思っている感じなんです。でもよくわかってなくって。」
「麦焼酎で香ばしいのを炭酸で割って、ビール風に飲んでいる方もいますよ」
――そんなのもあるんですか。
「いま、焼酎メーカーも頑張ってますよ。焼酎は糖質ゼロです! って押し出してます」
焼酎は、糖質ゼロ。
「……うまみとかコクを求めているのなら芋焼酎とか、香ばしさを求めているなら麦とか、女性の方でやさしく飲みたいのなら黒糖焼酎とか米焼酎とか、ですかねえ。」
――黒糖焼酎って糖質入ってないんですか。
「はい。名前のイメージでそう思う方も多いんですけど、糖質は入っていません。
……ではちょっと、おすすめのお酒を考えてみます。」
若旦那のおすすめ
「燃島 どんぶり仕込み」(萬世酒蔵株式会社)
「これは昔からの仕込み方を再現した、『どんぶり仕込み』っていう、およそ100年前、明治時代末期までの製法で作られています。2種類ありましてすごく濃厚でどっしり感のある芋焼酎ですね。『どんぶり仕込み』っていうのは、タンクの中に米麹から芋の原料からいっぺんに入れる方法なんですけど」
――これは香りが強いんですか。
「そうですね、芋の膨らみのある香りが前面に出てて、さらに、濃厚な味わい(ワインで言えばフルボディタイプ)です」
「栗黄金芋焼酎 風憚」(吹上酒造)
「クリコガネっていうサツマイモを使っていて、クリのような、芋の旨味を全面に出した芋焼酎です。甘い濃厚な風味で、味わいもとろっとしています。原酒だと、好きな濃さに割って飲めます。みなさん原酒はアルコール度数が高いって敬遠されるんですけど、自分の濃さで薄められるので、おすすめなんですけどね」
――原酒を水で薄めてアルコール度数を下げたのが、通常の焼酎ですよね。
「そうですね」
――芋は印象的な味がしますけれど、米焼酎ってどんな特徴があるんですか。意識して飲んだことがないのですが……。
「いろいろあるんですけど、薄めてしまうと日本酒っぽくなるものが多いですね。
最近流行っているのは、米焼酎を、そのまま飲むとスッキリし過ぎてしまうので、ウイスキーやブランデーの空いた樽に入れて、洋酒風にするのが、どんどん増えてきています」
米焼酎「大石」(大石酒蔵造)
「これは、米焼酎をブランデーの空いた樽に入れて、5年以上熟成させたものです。
華やかで甘い香りと、米の旨味を感じられ、米焼酎のイメージを変える味わいです」
――パッケージだと分からないですね、洋風な瓶に入ってるわけでもないし。
芋焼酎「紅一点」(老松酒造)
「これは、芋焼酎を、ウイスキーみたいに樫樽で、熟成させた焼酎ですね。芋の甘い風味が樫樽と交わっている感じです」
麦焼酎 「小野屋」(小野酒造)
「これは麦焼酎ですね。原料が『はだか麦』っていう麦を使っているんですが、香ばしくするために、麦の段階で焦がす感じにして、仕込んでいるんですよね。それを手透き濾過っていう、原酒の上澄みをひしゃくですくい、布で濾すんですけど、それをやると、香ばしくてコクのある麦焼酎になるんです。飲み慣れてない方には、スモーキーなウイスキーに似てるな、と思うかもしれません。
麦のフルボディタイプですね。こういうのを炭酸で割ると、味も薄っぺらくならないし、おすすめです」
球磨焼酎 「杜人(そまびと)」(大石酒造場)
「米焼酎で香りが華やかな飲みやすいタイプはこちらになりますね。これを水割りにすると、日本酒のような味わいになります。ロックでもソーダでも飲めますか、今の季節だと、お湯割りにしたら、お嫺したような味になりますね」
――お燗! 飲んでみたいですねえ。
「黒糖酒(さとうきびのお酒)」(土佐の菊水酒造)
「あとこれはイレギュラーなお酒なんですけど。
黒糖焼酎っていうのは黒糖から作っているんですけど、これはサトウキビから作っているんです。
黒糖焼酎は奄美大島の米麹で作ったお酒でないと黒糖焼酎と名乗れないのですが、このお酒は四国で作っていて、米麹も使っていないので、スピリッツなんですよ。
でも中の味は焼酎です。
これも樽の中で寝かしてるんで、サトウキビの甘い香りととろみ感が、すごくいいですよ」
ちょっと試飲したりして。
黒糖焼酎 「まんこい」(弥生焼酎醸造所)
「こっちは黒糖焼酎なんですけど、黒糖焼酎の中でも、これも、樽で寝かせたお酒です。
一般的に黒糖焼酎っていうのは甘い風味があってやわらかい感じで、樽で寝かすと樽の甘い風味も加わるんですよね。」
「古玄泉 ふるげんごーいじゅん」(奄美酒類)
「これは、黒麹を使っているので、口にふくんだ時は甘い風味がするんですけど、香ばしさを出した、黒糖焼酎ですね」
――なんだか、クセを求めていくと、洋酒に近くなりますね。
ところで樫樽貯蔵熟成って、全国的に流行ってることなんですか。
「昔からあったんですけど、ちょっと変わったお酒を出したい酒造さんが多くて、最近だんだんと増えています。
最初に樽に入れていたのは麦ですね。ウイスキーと原料が同じなので、樽で香りをつけるのは相性がいいわけです。次に黒糖焼酎と米焼酎、つまり味としてシンプルな焼酎に、香り付けとして樽に入れる、っていうのも多かったです。
芋焼酎も、以前までは樽熟成っていうのは、ほとんどなかったですね」
黒糖焼酎 「FAU ファウ」(奄美大島開運酒造)
「これは黒糖焼酎で44度あります。蒸留して、いちばん最初にたれてきたのがアルコール度数が高いんですよ。それを『はなたれ』と呼ぶんですけど。それだけを瓶詰めして。これがいちばん、濃縮感、濃度感、抜群の濃さです。
飲み方としては、出来ればこれを、ワイングラスでもショットグラスでもいいんですが、少し口に含んで、舌でころがすと、口の中であったまるじゃないですか、今度は香りが鼻から抜けていくんです。そうやって楽しむといいお酒です。
ぎゃくに夏の暑い時は、これを冷凍庫に入れて、キリっとして飲むのもいいですね。
――美味しそうです……。これ限定1万本のお酒なんですね。
「数は少ないです」
「黄金ハツダレ 明るい農村」(霧島町蒸留所)
「芋焼酎の『はなたれ』だとこれおすすめですね。
一時期、『はなたれ』ブームがあったんですけど、手間とかが大変なので、どこのメーカーもやらなくなってきちゃいましたね」
「カスクストレングスウイスキー」(モンデ酒造)
「焼酎以外にも、ウイスキーもおすすめです。25年ものの64度あるウイスキーです。うちの店が企画したウイスキーです。飲んでみます?」
――はい………うわー! 強烈な味ですね! 美味しい。
「DOHKAN」(太田酒造)
「あとブランデーをひとつご紹介します。滋賀県のワイナリーで作られたものなんですけど。樽の中で10年以上寝かせています。
滋賀県の自社畑産の葡萄で造った蒸留酒ということですね。このブランデーもすっごいいい香りです、肉厚で」
蒸留酒としては、ラム酒もおすすめだそうです。
楽しい蒸留酒ライフを
Sさん「今日ナビゲートして頂いて、楽しい蒸留酒ライフがおくれるような気がしてきました。本当に嬉しいです。有り難うございます!」
石塚さん「いえいえ、でも本当にお身体に気を付けて飲んでください。
しかし、休肝日を、出来るだけもうけてきください。毎日飲酒していることは、それだけ胃や肝臓に負担がかかりますから。週に2日は、お酒を飲まない休肝日の設定をしてくださいね。
おつまみにも注意です。
食べながら飲むことは、肝臓や胃にやさしく、飲酒量もおさえることができるので大切です。
でも、おつまみの選び方には注意が必要です。
油っこいものや脂肪分の多いもの、塩分の多いものは控えるようにして、たんぱく質、ビタミンの豊富なもが良いと思います。」
――なるほど………私は糖質制限ダイエットの役に立てます………!!!!!!
(協力)
酒舗 石塚
店内で常時、いろんなお酒の試飲が出来ますし、
何でも、お酒の相談に色々とのって戴けますので、お酒でお困りの方は、ぜひ。
(自分はお酒を飲まないので、何を贈り物にしたら良いとか、
初めて、ワインや日本酒、ベルギービールを飲みたいのですが、どの様なのが良いのか。 など。)
また、事前に、四代目の若旦那に予約しておくと「若のナビゲートによる試飲」もやって戴けるそうです。
4月頃からは、お店の駐車場で、毎月、気軽な雰囲気の「お酒の会」も、開催しています。