きっかけはラーメン用のチャーシュー作り
ブッシュドノエルを豚バラ肉で作るに至った経緯だが、この写真を見てもらえば一発でわかるだろう。
ほら、ロールケーキ!
ラーメン用のチャーシュー(煮豚)を作る際、煮崩れないように豚バラ肉をタコ糸で縛ったのだが、これがどう見てもロールケーキなのだ。
豚の脂肪と乳脂肪(生クリーム)の違いこそあれ、これはもうロールケーキ。皆さんも赤身部分がイチゴに見えてきたことだろう。
ロールケーキといえばブッシュドノエル。この方法を用いて、豚バラ肉による巨大なブッシュドノエルを作るべく、用意したのがこの肉である。
国産豚バラ肉1キロ1580円を4.8キロ購入。税別7584円也。
せっかくだから大きい方がおもしろいかなと、近所のお肉屋さんで売っていた一番大きなサイズの豚バラ肉を購入。これなら相当景気のいいブッシュドノエルができそうだ。
もう少し安い輸入物という選択肢もあったのだが、国産豚の方が厚みがあるということで、より太い丸太を作るべくこちらをセレクト。
1人前200グラムとして、ざっと24人前の量である。と思ったけど、普通チャーシューは200グラムも食べないか。
余裕の60センチオーバー。お相撲さんが優勝したときに持つマダイくらいの大きさだ。
クッキング用でも、あくまでタコ糸という安心のネーミング。
豚バラ肉を強引に巻く
さっそく4.8キロの豚バラ肉を巻く訳だが、これがなかなか難しかった。
厚みのある国産豚を選んでしまったこともあり、シャリを乗せすぎた巻き寿司のように、うまいこと一回転してくれないのである。
丸くならなーい!
脂肪というものは柔らかいイメージだけれど、冷えているとなかなか頑固なものである。
それでもあきらめずに豚バラ肉と押し問答をしているうちに、だんだんと室温と手のぬくもりによって脂身が柔らかくなり、どうにか丸く収まりそうな感じになってきた。
厚すぎる箇所には隠し包丁をいれ、どうにかこうにか丸め込む。
なんとか一回転してくれたところで、まず一番厚みのある部分をタコ糸で縛ってみたのだが、これが形状記憶合金のように戻ろうとする。さすが国産豚、素晴らしい弾力だ。
そこでさらに数か所を縛ると、ようやく豚バラ肉はおとなしくなってくれた。溶けた脂肪を触った手が、たっぷりとハンドクリームを塗ったみたいだ。
巻けば巻けるもんですね。
これを長時間煮ても崩れないよう、さらにグルグルと巻きまくると、そこには若干の猟奇的なエロスが感じられた。
いや、そんなことはないですよ。
白い脂肪に食い込むタコ糸、君は何を想うだろう。
スケール感がわかりにくいけど、CDよりも大きいよ。
豚バラ肉を煮る
今回作るチャーシューは、本格的に焼いて作るのではなく、煮るだけのタイプなので、作り方自体は至って簡単である。
まず家で一番大きな鍋にたっぷりのスープを用意し、縛った豚バラ肉を入れてみる。お湯ではなく豚骨でとったスープで煮ることで、バラ肉に豚の旨味を追加する算段だ。
鍋から3キロの豚骨をいったん取り出し、豚バラ肉を入れてみる。
予想はしていたことなのだが、シンクロナイズドスイミングをしているかのように、肉が水面から突きだしてしまった。
バレエレッグ!(シンクロで仰向けの水平状態から片足を垂直に上へ伸ばす姿勢)
この鍋は知人から譲り受けた業務用のそこそこ大きい寸胴鍋なのだが、さすがにこのサイズの塊肉を沈めるのは無理だったか。まあ肉を買う時から薄々気が付いてはいたのだが。
仕方がないので途中で上下を入れ替えることを念頭に入れつつ、よりチャーシューとスープがうまくなるように、野菜類を大量投入。これで寸胴内の水位もあがり、味もヘルシーになるはずだ。
うーん、まだまだか。
しかしやはり60センチオーバーの壁は厚い。ほぼ私の股下である。そこで秘密兵器の背脂肉を2キロ投入。脂身たっぷりの豚バラ肉を、脂身たっぷりのスープで煮るのだ!
これでさらに水位が上がり、スープで温められた豚バラ肉は観念したかのように態度を軟化。上から強めに押し込むと、まるでヤドカリが背負った殻に引っ込むように、鍋の側面に沿ってギリギリ納まってくれた。
何人前とかはもはや考えるだけ無駄である。
さて私がさっきからなにをしているのかというと、チャーシューと一緒にラーメン用のスープを作っているのである。
チャーシューといえばラーメンだろう。
チャーシューが煮上がった!
チャーシューは長時間煮込んだ方が柔らかくなろうだろうけれど、あまり煮込みすぎると、ブッシュドノエルとして盛り付けた時に崩れてしまう恐れがある。
妥協点として2時間半を過ぎたあたりでスープの中から持ち上げてみると、崩れやすい脂身部分もなんとか形を保ちつつ、十分柔らかく煮えているようだ。
引っこ抜こうとしたら、肉が記憶よりも長くて焦った。
あんなに艶めかしかったお肉が、歴戦の猛者みたいになって帰ってきたよ。
これだけ煮込めば生煮えということもないだろう。ローストビーフとかに比べると、細かい火の通り加減を気にする必要はないから失敗は少ない。
このタコ糸で縛った状態のまま、厚手のビニール袋に入れて、醤油ダレを1リットルほど注いで、肉に味を染み込ませる。
気を許すとブッシュドノエルを作っているということを忘れそうになるが、とにかくうまそうな塊肉ができあがった。
大きさが伝わらないと思うので、携帯を置いてみました。ちょっとした枕くらいかな。
新年会に持ち込んでみました
ここから肝心の仕上げに入る訳だが、その前にレンタルキッチンスペースへと移動。
地球のココロというサイトの新年会がここであり、なにか料理を一品持参したり作ったりするというルールだったので、それに合わせてこの豚バラノエルを用意したのだ。
会場で火が使えて人数も10名以上いる会が開催されなければ、さすがにこのサイズで作る気はしなかっただろう。そしてこのサイズじゃないと作る気もしないのだ。
寸胴をそのまま持ってこようと思ったら重くて持ち上がらなかったので、スープは二回り小さな鍋で持参しました。
ブッシュドノエルとなる豚バラ肉の巨大チャーシューは、やはりラーメンの上に乗せて食べたいところ。
そこでクリスマス料理らしく(新年会ですが)、白、緑、赤のクリスマスカラーをした麺を用意してみた。白はそのまま、緑は抹茶、赤はトマトジュースである。肉を煮込んでいる間に生地を作ったので、時間の無駄がまったくない。
水ではなくトマトジュースで麺を打ってみた。トマトのグルタミン酸が豚肉のイノシン酸と相性いいかも!
こちらは抹茶蕎麦ならぬ抹茶麺。お茶のカテキンが脂肪の吸収を抑えてくれたら幸いだ。
もちろん製麺が面倒くさければ、生麺を買ってくるか、ご飯をたくさん炊いて、チャーシューと白米を合わせるのもよさそうだ。
華やかに盛り付ける
盛り付けで使用する皿だが、さすがにこのサイズを乗せられる大皿は持っていないので、100円ショップで焼きそば用だという使い捨てアルミバットを購入してみた。このアルミの質感は、なんとなくクリスマスっぽい気がする。
お皿に深さがあると盛り付けた時に格好悪いので、角をキッチンバサミでカットして開いてみた。
ここからどうやって盛り付けるかが難しいところ。料理において一番苦手なパートである。
とりあえず肉を真ん中に置き、その両サイドに麺を並べる。
ここで肉にタコ糸が巻かれたままであるということにようやく気が付き、一人こっそりテープカット気分で封印を解く。もちろん楽しい。
縛っていたタコ糸を切ると、ブルルンと肉が喜んだ気がする。
そして断面がしっかりと見えるように、両端をカット。この部分はタレが染み込んでいて一番うまいところ。麩菓子でいえば最初と最後だ。
デーンと置かれた肉の塊に、包丁が吸い込まれるように入っていく。食べる前からついニヤニヤしてしまった。
ブッシュドノエルらしいかどうかは置いておいて、うまい肉であることは間違いあるまい。
豚バラ肉のブッシュドノエル、完成!
そんなこんなでできあがったのが、このブッシュドノエルである。えっへん。
ケーキの方のブッシュドノエルよりも、丸太っぽさとカロリーなら上かもしれない。どちらかというとブッシュドノエルよりはミートローフっぽいけれど。
パーティー料理というよりも、なんだかジオラマっぽいリアルさが出た。
これが俺のブッシュドノエルだ!
手前は薪をイメージしたメンマ。麺の打ち粉が舞い落ちる粉雪をイメージさせる。
ラーメンといえば煮タマゴだが、あえて煮ないで雪だるまを作成。もちろんウズラではなくニワトリの卵だ。目玉は胡椒、口は唐辛子。マジパンで作るサンタの代わりですね。
クリスマスっぽい飾りを一つ載せるだけでブッシュドノエルっぽさがさらにアップ!まだまだ盛り付けのセンス次第で伸びしろはありそうだ。
とりあえず会場でウケてよかった。
盛り付けのイメージとしては、うっすらと粉雪の振った庭先で、ストーブ用に薪割りをされる丸太である。
肉の細くなっていた側をカットして上に乗せたことで、木が枝別れてしている部分をリアルに表現してみた。
ただ麺が鳥の巣に見えたようで、茹で玉子で作った雪だるまをヒヨコかと思ったという意見もあったが、それもやぶさかではない。
食べてもおいしかったです
さてたっぷりと観賞していただいたところで、ここからはセルフサービスでラーメンを作ってもらおう。
麺を食べたいだけとって茹で、その間にスープの味をお好みにあわせて調整しつつ、チャーシューを好きな厚さに切って盛り付けるという、年に一度だけ許されるクリスマスの贅沢タイム。とかいって、クリスマスの要素はゼロだけど。
肉が柔らかすぎて薄く切れない!だから厚く切ってもOK!という免罪符!
溢れ出る肉汁が醸し出すシズル感!
ロールケーキとしても嬉しい厚さなのに、チャーシューがこの厚さなのである。
ちょっと遠くから見れば、普通のブッシュドノエルに見えなくもないこともなくはないかな。
麺は茹でることで打ち粉が雪解けをして、とても鮮やかな色になった。純和風な色だけど。
豚の旨味がたっぷりと出たスープと腰のある自家製麺の組み合わせをお楽しみください。
クリスマスに七面鳥もいいけれど、豚バラ肉もいいですね。
程よく脂の抜けたチャーシューだと、このサイズでも食べ切れてしまう。
要するにチャーシューが大きい自家製ラーメンを作った訳だが、ブッシュドノエル的な盛り付けをしてやろうという無駄な野心がある分、モチベーションが全然違った。
気合と道具さえあれば一日で全部できてしまうわりに、ちょっとしたマグロ解体ショーや子豚の丸焼きくらいのインパクトがあるので、作る側として大変満足度の高い料理となった。
背脂をチャッチャして丼に脂肪の雪を降らせるのもいいでしょう。
また作るかも知れません
豚バラ肉で作るブッシュドノエルは楽しくて美味しかったので、今後も今年のクリスマスパーティーはもちろん、シャレオツなホームパーティーなどにお呼ばれした際は、積極的に持参していこうと思う。近いところでは恵方巻きとか。
というのはもちろんウソだけど、機会があったらまた作ってもいいかなとは思わせる料理だった。丸太じゃなくて切り株型の盛り付けならば、数人分でも作れそうだしね。
詳しいレシピは
こちらのブログに書いたので、興味ある方はどうぞ。
残ったチャーシューはスタッフがおいしくいただきました。