特集 2014年12月23日

島原半島の棚田と段畑が凄い、あと「トリ弁当」がうまい

島原半島にこんな棚田や棚畑があるなんて、うまい弁当屋があるなんて、知らなかった
島原半島にこんな棚田や棚畑があるなんて、うまい弁当屋があるなんて、知らなかった
今年の9月中旬から10月中旬にかけて、約一ヶ月に渡り九州を旅行してきた。

その際に訪れた場所の中で、特に印象的だったのが「屋久島」、「阿蘇」、そして「島原半島」である。

そのうち旅行の終盤に訪れた「島原半島」は、海沿いの高台や山の斜面に拓かれた棚田や棚畑が素晴らしかった。あと、「トリ弁当」がうまかった。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

前の記事:屋久島は温泉までもワイルドだ

> 個人サイト 閑古鳥旅行社 Twitter

ダイナミックな景観が多い九州

九州では、他ではちょっと見られないような景色を数多く目にすることができる。

私はこれまで、九州以外の日本各地をそれなりに周ってきたつもりであったが、今回の旅行では「こんな場所があったのか!」と幾度となく驚かされた。

それは屋久島しかり、阿蘇しかり、島原しかり、である。
巨大な花崗岩と屋久杉がダイナミックな屋久島
巨大な花崗岩と屋久杉がダイナミックな屋久島
先月は屋久島のワイルドすぎる温泉について書かせて頂きました(参考記事:「屋久島は温泉までもワイルドだ」)
先月は屋久島のワイルドすぎる温泉について書かせて頂きました(参考記事:「屋久島は温泉までもワイルドだ」)
こちらは阿蘇のカルデラを縁取る外輪山
こちらは阿蘇のカルデラを縁取る外輪山
崖の上からパラグライダーで飛び立つ人がいて、注目を集めていた
崖の上からパラグライダーで飛び立つ人がいて、注目を集めていた
屋久島は縄文杉などの巨木はもちろんのこと、剥き出しになった花崗岩の岩肌や、海からストーンとそびえる山容など、自然の濃さが素晴らしかった。

一方で、断崖絶壁の外輪山に取り囲まれた阿蘇は、スケール感が半端ない。外輪山の縁に立つと、カルデラ地形がどういうものなのか理解できる。訪れた時の天候がよろしくなかったのと、写真だとスケール感があまり伝わらないのが残念だ。

ざっくり一周、島原半島

さて、いよいよ島原半島である。今回の主題である棚田・棚畑の前に、まずは島原半島の主な見どころを紹介しておこう。
島原へは天草下島からフェリーで渡りました
島原へは天草下島からフェリーで渡りました
島原を象徴する雲仙普賢岳
島原を象徴する雲仙普賢岳
江戸時代の前期に築かれた、石高と比べて立派すぎる島原城
江戸時代の前期に築かれた、石高と比べて立派すぎる島原城
重税に耐えかねた人々がキリシタンと共に蜂起し、立て籠もった原城
重税に耐えかねた人々がキリシタンと共に蜂起し、立て籠もった原城
島原といえば、江戸時代前期に勃発した「島原の乱」が有名だ。

キリシタン青年の天草四郎を旗頭に掲げていたこともあって、キリシタンへの弾圧という面で語られがちな島原の乱ではあるが、その背景には有馬氏の後釜として島原藩に入った松倉氏による必要以上に立派な島原城の建設と、それに伴う重い年貢の取り立てがあった。

島原や天草には有馬氏や小西氏の旧臣などの浪人が多かったこともあり、それらの浪人が生活に窮した人々を率い、反旗を翻したのである。反乱軍はかつての有馬氏の居城であった原城に立て籠もり、結果的には幕府軍の総攻撃により壊滅させられた。

重税を課し反乱を招いた責任により松倉氏は処刑。幕府は島原の乱をキリシタンの反乱とあえて位置づけ、これを口実に禁教と鎖国の政策を推し進めたのである(これには日本の植民地化を防ぐ目的があった)。

とまぁ、少々退屈な話をしてみたが、実際に現地を訪れてみると、島原城の豪華さや海沿いの断崖絶壁に位置する原城の堅固さなど、自分の目で実感できるというものである。
島原半島北側の神代町には神代鍋島家(佐賀藩)の武家町も残る
島原半島北側の神代町には神代鍋島家(佐賀藩)の武家町も残る
島原半島の北側は、島原藩の領土ではなく佐賀藩の領土であった。

その支配拠点であった神代町の国見小路には、島原北部を統治していた神代鍋島家の屋敷とその家臣が住んでいた武家屋敷が残っており、古いモノ好きとしてはもうウホウホである。

ちなみに、この辺りの地域には「鳥刺し踊り」なるユニークかつ衝撃的な郷土芸能が伝わっている。一度見てみたいものだ(どういう踊りなのかは、各自ご検索を)。
いったん広告です

海を望む「白木野棚田」と「谷水棚田」

屋久島ほど険しくはないが、島原半島もまた海岸から内陸へ山がそびえる地形である。

特に南部から西部にかけては平地が少なく、土地を有効活用すべく斜面に棚田や棚畑を開発している。
島原半島南部、白木野地区にどどんと広がる棚田
島原半島南部、白木野地区にどどんと広がる棚田
島原湾を見下ろす素晴らしいロケーションである
島原湾を見下ろす素晴らしいロケーションである
棚田越しに雲仙岳が見えるのもグッド
棚田越しに雲仙岳が見えるのもグッド
この白木野地区の隣には、農林水産省が認定した「日本の棚田百選」に選ばれている「谷水棚田」が存在する。

なんとなく谷水棚田の案内看板が目に留まった私は、せっかくだから見に行ってみようと急な坂道を上って行ったのだが、程なくして現れたのがこの白木野の棚田であった。

この棚田の規模はかなりのもので、すわこれこそが谷水棚田かと思いきや、案内板によると谷水棚田はこれよりさらに先に位置していた。
白木野地区の南に広がる谷水棚田
白木野地区の南に広がる谷水棚田
立派な石積の棚田である
立派な石積の棚田である
やはり、海が見える棚田は良いものだ
やはり、海が見える棚田は良いものだ
谷水棚田もまた素敵な棚田ではあるが、狭い谷間にあるため日が傾き始めている時間では影になってしまう部分が多く、あまり良い写真を撮ることができなかった。

周囲が開けて開放的な白木野棚田と、谷間に位置する閉鎖的な谷水棚田、なかなかに対照的な二つの棚田であった。

雲仙の山中にひっそり「岳の棚田」

次の棚田は島原半島西部、沿岸部から雲仙岳へと向かう途中に位置する岳集落の棚田である。
雲仙は車道とロープウェイで手軽に山の上まで行ける
雲仙は車道とロープウェイで手軽に山の上まで行ける
これは余談であるが、雲仙岳はかつては「温泉岳」と書いて「うんぜんだけ」と読んでいた。昭和9年の国立公園の指定をきっかけに、「雲仙岳」という漢字に改めたらしい。

個人的には「温泉岳」の方がシンプルだし、火山という土地の性質が良くわかるし、なによりカッコ良いと思うのだが。ダメですか、温泉岳。
雲仙岳から下っていくと、整然とした石積の棚田が現れた
雲仙岳から下っていくと、整然とした石積の棚田が現れた
展望台も整備されており、集落を見渡せる
展望台も整備されており、集落を見渡せる
後で調べて分かったことだが、この岳集落の棚田もまた「清水棚田」という名で「日本の棚田百選」に認定されていた。

集落は上岳と下岳の二つに分かれており、清水川に沿って棚田が連なっている。隠れ家のような雰囲気の集落と棚田だ。
山間のロケーションということもあり、静かで良い雰囲気だ
山間のロケーションということもあり、静かで良い雰囲気だ
棚田の石垣に加え、カカシがまた良い味を出している
棚田の石垣に加え、カカシがまた良い味を出している
いったん広告です

島原西岸の段畑に驚いた

島原半島の西岸は海岸が切り立った段丘状の地形が多く、その上に段畑が拓かれている。
海に向かって突き出す段丘上にみっちり棚畑
海に向かって突き出す段丘上にみっちり棚畑
雲仙岳から下ってきた私は、光景を見て思わず「なんじゃこりゃぁ」と声を漏らしてしまった。

生まれてこのかた、見たことのない不思議な畑の光景である。
どうやらレタスやジャガイモなどを作っているようだ
どうやらレタスやジャガイモなどを作っているようだ
もっと良く見える場所はないものかと原付を走らせていると、「棚畑展望台」と書かれた標識を見つけたので、行ってみた。
辺り一面、どこまでも段畑が広がる
辺り一面、どこまでも段畑が広がる
こちらは石積が直線的なので、おそらく昭和に入ってから拓かれたものだろう
こちらは石積が直線的なので、おそらく昭和に入ってから拓かれたものだろう
崖以外、全ての土地を利用してやろうという意気込みが感じられる
崖以外、全ての土地を利用してやろうという意気込みが感じられる
湾曲した石積が美しい辺木・小竹木地区の段畑
湾曲した石積が美しい辺木・小竹木地区の段畑

くま屋の「トリ弁当」が本気でうまい

私は旅行中、定期的にTwitterで訪れた場所などを報告していたのだが、私が島原にいる事を知ったある方から、島原西部の小浜にある「くま屋」という弁当屋の「とり弁」を食べてみて下さいと強くオススメされた。

雲仙岳の帰りにちょうど小浜を通ったので、どんなものかと買ってみたのだが、これがとてつもなくうまかった。
外観はどこにでもありそうな、ごく普通の弁当屋である
外観はどこにでもありそうな、ごく普通の弁当屋である
弁当のラインナップは充実しており、地元密着型という雰囲気。イートインもできる
弁当のラインナップは充実しており、地元密着型という雰囲気。イートインもできる
「トリ弁当」は定番レパートリーのひとつという感じだ
「トリ弁当」は定番レパートリーのひとつという感じだ
お店へ入ると、「いらっしゃいませ」という言葉と共に、店主らしきおじさんが厨房から出てきた。

「何にします?」と聞かれたので、「それじゃぁ、トリ弁当で」と答えると、おじさんは口元にニヤリと不敵な笑みを浮かべ、「トリ弁ね」と繰り返した。

その表情からは「うまいモン、食わしてやるよ」という自信がありありとうかがえた。そして、実際、うまかったのである。
大きなカラアゲが弁当箱からはみ出さんばかりである
大きなカラアゲが弁当箱からはみ出さんばかりである
まずは箱から落ちそうなカラアゲをつまんで齧る。……うまい。カリッとしたから揚げに、甘辛のタレが絡んでいる。肉は柔らかく、しかもひとつひとつが大きいので食べ応え十分。

「ふむふむ、これは確かにうまいカラアゲだ」と納得していたのも束の間、カラアゲの下のご飯を一口食べて驚愕した。そして悟った。この弁当はカラアゲのみならず、ご飯と一体となって初めて完成するのだ、と。

ご飯の上にはふわっふわの煎り卵とノリが半々に敷かれており、ノリの下にはおかかをまぶした昆布が敷かれている。この煎り卵の甘みと、昆布の旨みがポイントだ。
一気にかっこんでしまったよ
一気にかっこんでしまったよ
いや、ホント、ひと口食べた途端に旨み爆発といった感じである。しかも、それがカラアゲと抜群に合う。煎り卵とコンブが互いに協力し合い、わっしょいわっしょいと主役のカラアゲを担ぎ上げ、最高に引き立てているのだ。

「ご飯うまっ!」「カラアゲうまっ!」を何度も繰り返し、あっという間に全部をペロリとたいらげごちそうさま。間違いなく、今回の九州旅行で一番うまかった食べ物であろう(一番うまかった焼酎は、屋久島の三岳)。

絶対、また食べに行く

いやはや、本当、麻薬的なうまさがある弁当であった。購入からキャンプ場までの移動で冷めてしまった状態でもこれだけうまいのだから、きっと出来立てはもっとうまいことだろう。

幸いにも、今回の旅行では長崎県を十分周り切れず、近いうちにまた長崎県に行くことが確定している。その時にはぜひ、イートインでアツアツのトリ弁を食べたいものである。

棚田や棚畑も含め、島原半島は私の想像を遥かに超えていた。
今回の旅行で訪れた棚田では、日本一高い石積の「蕨野の棚田」や――
今回の旅行で訪れた棚田では、日本一高い石積の「蕨野の棚田」や――
直線的な石積が特徴的な、「坂元棚田」なども面白かった
直線的な石積が特徴的な、「坂元棚田」なども面白かった
▽デイリーポータルZトップへ

デイリーポータルZを

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓