やはり殴られていた
中をめくり、小さな子供のように、文字が読めないなりに絵を追ってストーリーを読む。
男性2人と女性1人の探検隊が森の中で蛇に遭遇し、太った男性が蛇に襲われている別の男性に銃を誤射し殺害、女性が太った男性を棒でたたくと、最後に聖人が出てくるという話だ。
中年太りの男性は決して悪役そうには見えないが、女性に殺された。それなのになぜ次ページで聖人が出てくるのか、その理由はわからない。
聖人が出てオチになったページの次からは、別のストーリーがはじまる。おじさんと若い男性が話し合ったのち、男性が飛び降り自殺してしまうストーリーだ。どうにも死ぬ話が多い。
生き残った女性の前に聖人が出て話が終わり、別の話が始まる
本探しの旅に出る
それからぼくはタイの街歩きをする途中、コンビニで涼んでジュースやお菓子を買う時についでに雑誌のコーナーに目をやるようになっていた。
タイの鉄道に揺られた日、電車がやってくるまで駅で暇をつぶすときは、駅の売店にも、やはり劇画チックな漫画が売られていたし、しかも駅のベンチでその劇画チックな漫画を読む若者もいた(一方でスマホを触る若者もいる)。
でもあの中年太り男性が目立つ漫画は1冊も見つからず、各店舗で異なる漫画が売られていた。どうもタイの漫画は一期一会の関係らしい。
いろいろあって悩む。
そんなこんなでいろいろゲットした
いろいろ読み漁った結果、それなりにこれらコンビニコミックの共通点が見えてきた。
1.だいたいホラーである
2.妖怪やゾンビが出ることもある
3.1冊5バーツ(15円)、32ページである
4.2つストーリーで1冊になっていてお得
5.作画は各ストーリーで違い、画力に相当なばらつきがある
ただタイ語が読めない以上、わかることはたかが知れている。そこで知り合いのタイ人に、コンビニコミックについて聞いてみた。
知り合いに読んでもらってます
大衆娯楽=ホラーというタイ
――そもそもこういう漫画本ってなんか呼び名ってあるんですか?
「英語でいうならバーツコミックっていうの。昔は漫画ってすごく高かったのよ。こういうのがいっぱい出たから安くなって」
「大人の男女のシーンとか、暴力的なのとかね、いろいろあって昔は子供に読ませちゃいけなかった。でも今は日本の漫画が人気で、いろいろ見せちゃってるからね。昔よりは子供も見れるようになったよ」
6.コンビニコミックではなくバーツコミックという
「だから中身も日本の漫画と比べると安っぽいよ。スクリーントーンとかも使ってないし、白黒2色でグレーもないし。」
7.値段相応の画質
ヘタウマ絵がある一方で、版画のような絵に遭遇し驚く
タイ人の描く情事もたまにあり、タイ語が読めるようになりたい欲求にかられる
――ホラーばっかりなんですけど、怖くないですか?
「ホラーがいいの!ホラーがタイでは人気でしょ?映画館での映画はホラーばかりだから、彼女作って行っておいき!喜ぶわよ?」
8.ホラーだからいい
「カズオーウメヅとか、ジュンジーイトーとか、日本のホラーも知られてるよ。本も出てたかな」
9.楳図かずおや伊藤潤二の知名度がある
「カルマよ、カルマ。カルマって大事なの。日本人カルマしらないの?仏教徒でしょ?」
10.カルマが重要らしい
確かにお坊さんがいる!
カルマを学ぼう
タイは萌えや日本食ばかりがクールジャパンとしてフォーカスされていたイメージがあったが、日本のホラー漫画やホラー映画もまた人気で、タイの現代のホラーコンテンツに影響を与えているようなのだ。
タイのコンビニコミックもとい「バーツコミック」は、大衆漫画だとなんとなくわかったものの、カルマがピンとこなかった。
どうも東南アジアとかインドではカルマという概念が大事らしいとも聞く。これからアジアに出張するビジネスマンは語学や現地情報のほか、カルマについて学習した方がいいかもしれない。
もっと絵柄を見たければ、「
バーツコミック」で画像検索するといろいろ出てくるよ。海外を繋ぐインターネットとやらは便利だ。
汗ばむタイだが、ホラー漫画で涼しくなっているわけではない