東京拘置所×アイドル
葛飾区にある実家に帰ったとき、町の掲示板に貼ってあったチラシでイベントの存在を知った。
TVで見たことある有名アイドルの写真と「東京拘置所」「矯正」の固い文字が並んでいる違和感に興味がわく。いったい何が目的のイベントなんだろう。
違和感と地元感たっぷりのチラシ
ポスターの感じからして、あまり大々的に告知していないような地元のイベントとうかがえた。
しかし当日駅についてみるとどうだ。人がたくさんいるじゃないか。
当日。最寄の駅、小菅駅に多くのひとが
老若男女が拘置所へむかう
開催時刻は朝の9:30。
私は早めの行動を心がけ、10分前に拘置所に到着した。しかし、どうやらとっくに開場されていたようで入り口のところに多くの自転車がとめてあるのが見えた。早くついたつもりがむしろ出遅れたようだ。
駅からすぐの東京拘置所。その重厚感に、曇り空がよく似合う。
手荷物検査を通り
メイン会場へ向かう。アイドルめあての男性ばかり、というわけでもないぽい
近代的で冷たさを感じる拘置所の外観と手荷物検査に、ちょっとだけ緊張が走った。しかし、他の人たちを見ると近所のショッピングモールに来たようにカジュアルな雰囲気だ。そんなスタンスで入っていいのね。
いきなり一番の盛り上がり?テープカット
そういえばアイドルによるテープカットも9:30からだった。門からステージ会場まで少し離れているのを知り、急ぐ。東京拘置所は広いのだ。
会場についてみるとすでに人でいっぱい。みんな早起きだなあ
普段は入れない敷地ということもあって、東京拘置所と書かれている前でみんな記念撮影している。奥にうつる建物には収容されている人々がいると思うと、なんだか不思議な光景だ。
それにしても土曜の朝とは思えないこの活気。地元のイベントって徐々にもりあがって、お昼くらいがピークじゃないっけ。
元AKBの篠田麻里子さん登壇中。見えない。せめて写真だけでもとみんな手を伸ばして撮影
予定通りテープカットが行われたみたいだ。出遅れた私の所からはジャンプしてもまったく見えず、会話もほぼ聞きとれなかった。
我が葛飾区までわざわざやってきてくれたアイドルを見る貴重な機会を逃してしまって悔しい。
適当にとった写真にちょっとうつってた。かわいいのだこれが
さて、アイドルがいなくなってしまった後は何があるのだろうか。矯正展がいったい何だかまだつかめないが、もうこれ以上の盛り上がりは無いのでは、と勝手ながら心配になる。
しかしそんな心配は無用で、楽しめる要素はいっぱいであった。
いろんな車に乗り放題!
「矯正展てなに?」の疑問をぬぐえないまま、とりあえず乗った。楽しい。
テープカットをしたところから人々は各方面に分散。私は色々な乗り物に乗れるコーナーへ。この先乗る機会は無いだろうかっこいい白バイや、逆に、できればこの先乗りたくないパトカーにも乗ることができた。
矯正につながる広報活動
チラシをよく見ると、ここは警察・消防・自衛隊による広報コーナーだった。乗り物などに興味を持たせつつ、日ごろの活動を伝えたり、隊員を募集したり、振り込め詐欺などの犯罪の啓蒙活動をしているわけだ。なるほどー。
パトカー。どこでも乗っていいですよといわれ、当たり前のように後ろに乗った
ほか、自衛隊の車や
地震体験車。これは小学校で体験したことある。
ごつい消防車にも。ちなみに消防車はいすゞ自動車製が丈夫で良いらしい。
中ものぞける。いろいろな資機材が無駄なく収納
乗り物展みたい
町の安全のために働く車がこんなに集まる機会も珍しい。
広報の意図は深く考えず、ただただ乗り物に乗るのに夢中になってしまった。
一番人気だったのがコレ。消防車のはしご車だ
ぐんぐんと予想以上に伸びる
はしご車の人気ぷり
ヘルメットを装着したおじいちゃん(一般人)を乗せ、かなりの高さまで上がっていくはしご。建物の無い場所で天に向かって伸びる様子がとてもかっこよく、おもわずウオーと歓声をあげてしまった。これは乗りたい!
しかし2回の体験時間とも、すぐに人数制限されて残念ながら乗ることはできなかった。
テープカットをこの高さでやってほしかった
また、放水体験や、レスキュー隊訓練、それに子供向けだが消防隊員や刑務官の制服体験コーナーもあった。
おとなは顔はめで我慢
「開かずの門」の前でちびっこ刑務官
この「開かずの門」、ぶらさがってる鍵がハート型でかわいい
建物もおもしろい
和やかな雰囲気のイベントのため忘れがちであるが、そもそもこの場所じたいが普段は一般公開されていないためレアである。特に、チャップリンが訪問したとき絶賛したといわれる旧庁舎(管理塔のみ残ってる)は見応えがある。
たとえば明治12年にこの地に建てられていた東京集治監の象徴「開かずの門」が見れたりするのだ。
旧庁舎は基本とがってる
新庁舎は強化ガラスが使われているものの、見た目はオフィスが入っててもおかしくないような立派なビル、といった感じ。それにたいして昭和4(1929)年に建てられた旧庁舎はとがっている所が多くて近寄りがたさが半端ない。
触ると怪我しそうな格子
台形の窓。開けにくそう
正面から見ると鳥が羽を広げたように見える旧庁舎。受刑者の手で作られたそうだ。老朽化のため近々取り壊しの可能性があるとか。
そんな「拘置所らしさ」が残り歴史がうかがえる旧庁舎を見た後に新庁舎を見るとかなり未来的に見える。
そしていまその二つの建物の間には、地元のとれたて野菜や伝統工芸品、フードコートなどが並び、ワイワイと人で賑わっている。とても不思議空間である。
二つの建物の間では大勢の人が買い物。収監されている人たちはもちろんこの様子は見えないし(空しか見られない構造になってる)音も聞こえていない
飛ぶように売れる葛飾野菜。昼には完売してた
なぜかイトーキや富士通などの企業出展もある。庁舎内で使われている製品を扱っているからだそうだ
受刑者作品から車まで。出展がカオス
受刑者によって作られた製品や、地元の名産の販売、サーティワンや森永・銀だこといった有名フード出展、東北アンテナショップ、さらにはなぜか文具やTV、トイレットペーパー、衣料、車まで売られていたりする。
まったく「矯正」とは関係なさそうなお店が並ぶが、近隣のお店や拘置所とつながりのあるお店が出展しているようだ。
全部で91ものお店や刑務所が協賛。こちらは自衛隊ショップ
麻里子さまコーナーもあった
函館刑務所オリジナルの布製品には客が絶えない
全国の矯正施設からあつまった受刑者による製品。小物や靴、インテリアから家具まで。20万円近いソファもあった。
案外売れているのだ
拘置所レシピ弁当
フード店の中ではなんといっても人気だったのが拘置所の食事を再現したお弁当。安いというのもあってかすぐに完売していた。
1200食が1時間半で完売したそう(ニュース情報参照)。次いくときはテープカットの後にこの弁当を買ってからはしご車に並ぶ、が効率よいかも
かわりに拘置所レシピカレー(350円)と網走刑務所産黒毛和牛重(1000円)。普通においしいが1000円は高かったかな
ステージで行われているコンサート(演歌)や伝統芸能を見ながら食事を楽しむことができた。
キャラがいっぱいいる
葛飾区やお隣の足立区のゆるキャラも大集結。子供たちにたくさん殴られ人気だった。
無料わたあめが配布されてたり、木端やどんぐりなどをつかった簡単なワークショップも。ほんとに幅広い年代層に対応しているイベントである。
ゆるキャラ、10人くらいきてたかも
警察犬も登場。一瞬でニオイをかぎわける訓練が見れた。
このあと大きい口で顔をぱくりと甘がみされた。人なつこいのだ
警察犬たちの写真入り名刺をゲット。二匹とも舌を出しててかわいい
警察犬訓練の後には犬たちと触れ合う時間も設けてくれた。体が大きく怖いかと思っていたが、人に慣れているので触ってもぜんぜんOK。むしろ喜んでいる。犬好きとしてはテンションあがった。
最後に性格検査
実は一番気になっていた「性格検査体験コーナー」へむかう
庁舎とは別の小さめの建物内では、落語を見ることができたり、矯正施設を撮り続けたカメラマンの外山ひとみさんの写真展、東京拘置所の内部の模型、受刑者による生け花展示なんかがおこなわれていた。
独特の形になっている庁舎の模型
受刑者クラブ活動作品の展示。イニシャルで名前がふせてあるのが切ない(その割に表示が大きいような…)
そしてこの中でみんなが体験していくのが「性格検査コーナー」である。
高齢者の参加も多くて驚く。いくつになっても自分の性格が気になるのだ
矯正協会が作ったマークシートに答えてく形式
性格診断は、60問の質問に「はい」か「いいえ」か「?」で回答していくものだった。書き終えたシートを機械に通したらすぐに診断結果が出てくる。
ふだんから悩みやすく小心な人(私だ)にとってみると、回答するのさえ辛くなってくるような質問が並んでいた。あまり「?」は選ばない方が正しい判定ができるようなので2択で答えていった。
「自分の気持ちを素直に伝える努力をしてみませんか」とアドバイス。即座に反町隆のポイズンの歌詞が頭に流れた
こんな感じで、最後は本気で心にしみるアドバイスをもらい、ちょっとだけ矯正された気分でイベントを後にした。
矯正展は、簡単にいえば全国にある刑務所(矯正施設)、それに関わる活動や企業、地元名産の紹介を兼ねたお祭りのようなものだった。
実際行くまではピンとこなかったけど、そのぶん意外な体験ができ素直に楽しめた。もし次回いく時は、はしご車に真っ先に並ぼうと思う。
手前は無料わたあめに並ぶ人のほのぼのとした光景。奥に拘置所。やっぱ不思議!
実は全国でやってる矯正展
あとで調べたところ、各地の刑務所でも同じように「矯正展」は行われているようだ。
なかなか見所が多いしどの年代でも楽しめるので、各地の矯正展を周っても面白いかもしれない。