特集 2014年10月28日

江戸時代の体験型アトラクション「地獄極楽」で昇天体験

地獄洞窟と極楽洞窟を巡って極楽浄土に辿り着くという、江戸時代の体験型アトラクション
地獄洞窟と極楽洞窟を巡って極楽浄土に辿り着くという、江戸時代の体験型アトラクション
大分県は別府の近く、安心院(あじむ)というところを通った時に、「地獄極楽」というなんとも愉快な字面の看板を目にした。

なんとなく気になったので立ち寄ってみたところ、そこは江戸時代に作られた体験型アトラクションであったのだ。

なにを体験するのかというと、昇天である。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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地獄といえば別府である

古来より、地獄は死後に罪人が苦しめられる場所とされ、ネガティブなイメージがもたれてきたと思う。

一方で、この世にある地獄のような奇怪な場所という意味で、ポジティブに地獄と称する場所もある。たとえば、別府だ。
湯煙もくもく立ち昇る、別府の鉄輪(かんなわ)温泉
湯煙もくもく立ち昇る、別府の鉄輪(かんなわ)温泉
温泉の蒸気を利用した蒸し釜は地獄釜と呼ばれている
温泉の蒸気を利用した蒸し釜は地獄釜と呼ばれている
かなり積極的に地獄という名称が使われているようだ
かなり積極的に地獄という名称が使われているようだ
あの世っぽさはあるが、あまり地獄っぽくはないかな
あの世っぽさはあるが、あまり地獄っぽくはないかな
お湯が赤い血の池地獄。こちらは割と地獄感あるが……
お湯が赤い血の池地獄。こちらは割と地獄感あるが……
硫黄などが付着した温泉設備の方が、より地獄っぽい感じがする
硫黄などが付着した温泉設備の方が、より地獄っぽい感じがする
鉄輪温泉から山を登ったところにある明礬(みょうばん)温泉
鉄輪温泉から山を登ったところにある明礬(みょうばん)温泉
ここもまた明礬地獄を名乗っている
ここもまた明礬地獄を名乗っている
煙が出ているというのが地獄ポイントなのだろうか
煙が出ているというのが地獄ポイントなのだろうか
藁葺の小屋が並んでいるのが印象的な温泉だ
藁葺の小屋が並んでいるのが印象的な温泉だ
昔ながらの製法で、湯の花(入浴剤)を作っているらしい
昔ながらの製法で、湯の花(入浴剤)を作っているらしい
とまぁ、別府では比喩的なイメージで地獄という名称が使われているが、安心院の「地獄極楽」はもっと直接的に地獄と極楽を表現している。

崖に洞窟を掘り、その中に地獄と極楽を作り出してしまったのである。
安心院竜王(あじむりゅうおう)、なんとも強そうなラスボス感ある地名だ
安心院竜王(あじむりゅうおう)、なんとも強そうなラスボス感ある地名だ
さぁ、いよいよ「地獄極楽」へ
さぁ、いよいよ「地獄極楽」へ

廃寺に残る地獄極楽洞窟

「地獄極楽」は桂昌寺というお寺の跡地にある。

このお寺は明治になる前に廃寺になり、現在は地域の人々によって管理されているようだ。
公民館みたいな礼拝堂がポツンと建っている
公民館みたいな礼拝堂がポツンと建っている
とりあえず拝観料を賽銭箱に入れ、裏手へ進む
とりあえず拝観料を賽銭箱に入れ、裏手へ進む
なかなか雰囲気ある寺の跡だ(少し怖い)
なかなか雰囲気ある寺の跡だ(少し怖い)
その片隅に、入口があった
その片隅に、入口があった
入口から入ってすぐにコレである
入口から入ってすぐにコレである
まず最初に閻魔大王の裁きを受けるらしい
まず最初に閻魔大王の裁きを受けるらしい
横にあるのは人の頭がついた杖だそうだが、どう見てもさらし首だ
横にあるのは人の頭がついた杖だそうだが、どう見てもさらし首だ
とまぁ、要は地獄と極楽をストーリー仕立てで体験できる洞窟なのである。

廃寺になる少し前の江戸時代後期の文政3年(1820年)に掘られたそうで、江戸時代のこの手の施設は全国的にもかなり珍しいものである。
左手は極楽道、右手は地獄道(まず最初は地獄から)
左手は極楽道、右手は地獄道(まず最初は地獄から)
赤鬼と青鬼がいる血の池地獄
赤鬼と青鬼がいる血の池地獄
血の池という割には水は澄んでいて清らかである
血の池という割には水は澄んでいて清らかである
赤鬼の顔もなんかアンニュイな感じだ
赤鬼の顔もなんかアンニュイな感じだ
現在は洞窟の中に電灯が設置されているものの、かつては灯りを手に進んでいったのだろう。

入口の閻魔大王とか、この鬼たちが、僅かな灯りに浮かび上がるのである。かなり怖かったに違いない。
這いつくばって進まなければならない胎内くぐりもある(が、真っ暗だし、水も溜まっていて、とてもじゃないけど入れない)
這いつくばって進まなければならない胎内くぐりもある(が、真っ暗だし、水も溜まっていて、とてもじゃないけど入れない)
地獄道を一周したので、極楽道へ
地獄道を一周したので、極楽道へ
極楽道は壁のくぼみに仏像が並ぶ
極楽道は壁のくぼみに仏像が並ぶ
地獄道の胎内くぐりは極楽道に続いていた(中を覗き込んだら、コウモリが飛び出してきてドギモを抜いた)
地獄道の胎内くぐりは極楽道に続いていた(中を覗き込んだら、コウモリが飛び出してきてドギモを抜いた)
そうこうしているうちに外へと出た
そうこうしているうちに外へと出た
これで終わり……かと思いきや、案内の矢印は別の洞窟へと続いていた。

最後に待ち受けていたのは、そう、昇天である。

5メートルの竪穴をよじ登って極楽浄土へ

地獄を体験し、極楽を体験した後は、さらなる浄土へと至る昇天体験である。

もはやなんのこっちゃという感じもするが、とりあえず案内に従い洞窟へ入る。
極楽浄土へ通じているらしい
極楽浄土へ通じているらしい
……って、なんか物凄く高いところに出口があるんですが
……って、なんか物凄く高いところに出口があるんですが
洞窟の奥で待ち受けていたのは、なんと5メートルの竪穴であった。これを鎖一本で上ることで、昇天を体験するというのだ。

なんともユニークかつ力技的な発想である。
穴の底は真っ暗で、鎖を握る手が見えない
穴の底は真っ暗で、鎖を握る手が見えない
呻きながら壁を蹴り、全身を使ってよじ上る
呻きながら壁を蹴り、全身を使ってよじ上る
いやはや、まさか最後の最後に「ファイト一発」な難所が待ち構えていたとは。

もちろん落ちたら怪我をする高さなので、最後の方は必死になりながら竪穴をよじ登った。

昇天とは、実に汗臭いものなのだ。
なんとか竪穴から抜け出せた
なんとか竪穴から抜け出せた
そこで待ち受けていたのは、数々の仏像
そこで待ち受けていたのは、数々の仏像
なるほど、極楽浄土を表現しているのだ
なるほど、極楽浄土を表現しているのだ
そしてその最も高いところに鎮座するのは……
そしてその最も高いところに鎮座するのは……
極楽浄土の主である阿弥陀如来
極楽浄土の主である阿弥陀如来
後ろを振り返ると、良い感じの景色が。なるほど、これが極楽浄土か
後ろを振り返ると、良い感じの景色が。なるほど、これが極楽浄土か

なかなか楽しい地獄と極楽巡り

「地獄極楽」という名前に惹かれてちょっと立ち寄ってみたのだが、これが思いの他に面白かった。

この先にはなにが待ち受けているのか、どきどきしながら狭い洞窟を進んで行くと、ドドンと現れる不気味な石像。そして最後の竪穴上り。

元は文字の読めない人に仏教の教えを説くために掘られたのだそうだが、廃寺となった今でも、お化け屋敷的なアトラクションとして十分楽しめる洞窟である。
あの竪穴を降りなきゃならないのかと思いきや、ちゃんと階段も用意されていた
あの竪穴を降りなきゃならないのかと思いきや、ちゃんと階段も用意されていた
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