函館から八雲町に入る。UFOの姿はまだない
道南地方、酪農と木彫の熊の町
函館空港から車で一時間半、八雲町に入る。酪農が盛んな町で他の名物といえば木彫の熊。UFOらしき要素はなにもない。
高速道路の八雲料金所にて高速道路の料金を払い、早速UFOを見たことがあるかを聞いた。
話を聞く。彼は八雲町住民ではないのかもしれない
「見たことはない」
「いや~(笑)見たことはないですね」
記念すべき町民とのファーストコンタクトであったがUFOを見たことはないと断言されていた。
もちろんこの方が見たことがない残りの2割だったのかもしれないし、八雲の人ではないのかもしれない。なかったことにしよう。
私達は八雲町に入った。
UFOを見た人の割合…0人/1人中 0%
UFOがいるかどうかは役場にきけ
UFOは役場に聞け
それがUFOだとしても町の見どころは町の観光課に聞くべきではないかと思いあたり、八雲町庁に行った。
庁舎の奥に進んでいき、商工観光労政課の机のシマまできた。
「すみません、UFOを見たことがありますか?」
そのとき私達取材班は職員の顔に一瞬動揺が走ったのを見逃さなかった。
「とりあえずどうぞこちらへ」
UFO以外のことが書かれたパンフレットを渡される
UFOが下火らしい
「昔はそういう話もありましたけど今はさっぱりきかないですね。盛んだったのは矢追さんのころ」
応対してくれた商工観光労政課の三坂さんによると、昔はUFOの町としてテレビ番組にも取り上げられていたようだが、10年くらい前からUFO番組が下火になりそういった話も聞かなくなったという。
三坂さん自身もUFOを見たことがなく周囲の職員もやはりみんな見たことがないと言っていた。
見えなかった2割にあたる強運がつづいたのか。もしくは公務員にはUFOが見えないか。
UFOを見た人の割合…0人/5人中 0%
「昔、目撃情報が多かったのは冬だったらしいんですね……」
そう言って唐突に三坂さんはUFO騒動の真相を語り始めた。このあと早くもUFOの正体が明らかになる…
酪農の町だという。私達の頭のなかはキャトルミューティレーション(牛が宇宙人に内蔵とられるやつ)のことでいっぱいだ
UFOの正体とは…!?
「夜10時とか11時から山の中をスノーモービルが走るんですね。でこぼこの上を飛び跳ねて、すごく明るいライトが雪を照らす。その明かりだっていう話がありましたね」
納得のいく話が出てきた。雪国ならではのスノーモービルがUFOに見えたという話。
「それと自衛隊の基地があるんですよ。戦闘機だっていう話もあるしUFOが来てるなんて話もそのせいだなんて聞いたことありましたね」
スノーモービル説に自衛隊の戦闘機説。どちらも納得できるだけにあきらめがつく。この町にUFOはいないのか……そう思っていた我々取材班の前に思いもよらぬ情報が飛び込んだ。
「駅前にまるみ食堂っていう食堂があるんですよ。そこの店主が子供のころUFOを見たっていう話をラジオでもしてましたね。夕方に見たって言ってましたよ」
ついに目撃情報に辿り着いた。八雲町に着いて30分。あまりにも早い。
駅から一番近い店にUFOを見たことがあるというご主人がいる。
目撃者にあたる
「『11PM』でUFOの町としてとりあげられてたからもう35年以上前か。
スノーモービルだっていう話もあったでしょ。たしかにそうなんだけど、目撃例は冬だけではないんですよね」
まるみ食堂の店主篠原さんによるとスノーモービル説も絶対ではないらしい。
そして我々の前にある一人の人物が浮かび上がった。
食堂と民宿のまるみをとりしきる篠原氏
UFO研究家なる人物
「町にもUFOを見たっていう人がけっこう現れたんですよ。研究家を名乗る人もいたりしてね。そのころ小林さんっていう設計事務所の人がUFO研究家を名乗ってテレビに出てやってましたね」
なんとこの町にはUFO研究家がいる。専門家がいるならまずそこにあたるべきだ。我々の前に大きな道が拓けた。
「今ですか? もういないですねえ。話もきかない。そのときで65とかだったからいたとしても今はもう100とか」
手がかりはとだえた。せめて篠原さんの目撃談をと思ったところ「社長、ちょっといいですか?」と奥から社員の方が。突然の訪問だったがお忙しいようだ。
「最近はきかないなあ。ぼくのほうでも誰か探してみますよ」
連絡先を渡し、新たな情報を待つことにした。我々の方でも情報を探す。
UFOを見た人の割合…1人/7人中 14%
その後聞き込みをくりかえす
そもそも歩いている人も多くないが…
誰も見たことがないという
その後は町を歩いている人に声をかけて「UFOを見たことがありませんか?」と聞いていく。
しかし誰も見たことがないし見た話も聞かないという。
UFOを見た人の割合…1人/12人 8.3%
水曜日の昼前であったが駅前を歩いている人は少なかった。年をいったおばあさんに「UFOを見たことありませんか?」ときいてみたところ、失礼ねと言わんばかりの態度で「ありません」とピシャリ。たしかにレディにいきなりかける言葉ではないが。
UFOを見た人の割合…1人/13人 7.6%
「UFO見ませんでした?」警察に聞く
UFO探しは交番にきけ
町の分からないことがあったら交番かなと思って警察にUFOを見たか聞きにいくことにした。
「UFOを見たんですが…という電話が警察にかかってくることはないからね」
応対してくれたベテランの警察官の言葉にハッとした。警察はいつだって私達の味方であるわけではない。
「たしかにそういった話も昔あったけどね。ここにこれだけ人数がいてUFOを見たなんて話は聞いたことがないからね」
UFOを見た人の割合…1人/18人 5.5%
誠実な答えだ。ただ一つ気になるのは我々取材班に対するしゃべり方が社会見学に来た子供に対してのそれと似ているのではないかという点だ。
手がかりが何もない。しかしその後途方にくれていた私達の前についに新たな目撃情報が入った。
町の情報通、タクシーの運転手なら……ついに引き当てた
そしてこのあと我々は実際に見たUFOの姿に衝撃を受ける!
タクシー運転手のグループで目撃者が
「あたし見たことあるけど、だれも信じないから言わない」
駅前で休んでいたタクシーの運転手のグループに聞いてみると一人の女性がそんなことを言い出した。周囲の運転手も少し驚いている。
「信じてもらえないから言わないもん」
一体この女性に何があったのか。その後交渉を経て、私達取材班はこの女性のインタビューに成功した。
ついに町でも目撃者を発見できた
あまりにも正しいUFOの姿が…
「小学校5年生くらいじゃなかったかしら。家の近くでね。そう、もっとあっちの方だったけど八雲町の中。昼間でね。天気がいいときだった。草むらでみんなで遊んでいるときにね、そしたらこう見えて、光が下にビーって」
――昼間でもUFOだとわかったんですか?
「形は円盤みたいな形をしててね。形でわかった。周りにいた人が見てたかどうかわからない、私はびっくりして何も言えなかったから」
想像図。こんな典型的なUFOの目撃談が出てくるとは…
「でも今もう忘れかけてた、そんなことあったの」という運転手さん。同じようにこの町もUFOのことを忘れているのかもしれない。
UFOを見た人の割合…2人/22人 9.1%
駅前にいる人も少なくなってきたので聞き込みは一旦やめることにした。さあこの先どうしたらいいのか……
悩んでいた私達の前に見たことがないものが飛び込んできた。
ご覧頂きたい。太平洋と日本海ふたつの海に面するという八雲町の二海カレーであるが、提案型B級グルメにしてこの味のたしかさは……。牛乳の入ったホワイトカレーがいいのかこの町の養殖ホタテがいいのか。
今回の取材は放っておくとすぐ北海道の魅力にやられ観光化するので注意が必要であった
これは函館のコンビニで買った寿司が美味くてつい笑ってしまった写真。観光にとりこまれた悪い例である
話はまるみに戻るがここで目撃例が
腹ごしらえに再びまるみ食堂に。二海カレーというホワイトカレーがうまい。しかし先は依然として暗い。
会計をすませた我々取材班の前に先ほどの篠原氏がやってきた。
「ちょっと来てください。お客さんで一人UFOを見たことがあるという人がいらっしゃるんですが…」
篠原さんは独自にUFOの目撃談を探していてくれたのだ。
そして我々取材班は今まで聞いたことのない衝撃的なUFOの存在を知る…!
「さだかではないんですが…」というがその目は終始確信に満ちていた。これは信用できる
衝撃の目撃例だった
――UFOを見たそうですが本当ですか?
「ええ、見ました。(周囲から「ほんとかよ」の声)ほんとほんと。UFOか輸送機かはさだかではないんですがね、見ました」
――さだかではないんですか?
「いや、UFOだと思いますけど。自衛隊の駐屯地があるじゃないですか。あそこのちょうど真上あたりに」
――自衛隊の駐屯地ですか。それはどういう形をしてるんですか?
「輸送機ですね、形は輸送機です」
――輸送機というと?
「はい、プロペラが2つあって」
――円盤型ではない?
「はい、前後にプロペラが2つ」
――色は?
「輸送機ですね、輸送機の色」
――自衛隊の輸送機のような暗い色の?
「そうそう」
――それが自衛隊の駐屯地の上に
想像図。輸送ヘリ型という新しいタイプのUFOかもしれない
限りなく輸送ヘリに近いUFO
――ひとつ分からないことがあるんですよ。UFOかなと思われたのはどうしてなんですか?
「おかしいなと思ったのはそれがですね。ずっとその場に浮かんでるんですよ」
――ヘリコプターだからというわけではなく?
「浮かんでるんですけど、音はしてなくて。おかしいなと思って職場に戻ったら誰も見てないっていうんですよ。そんなはずないんですよね」
たしかにこの町は空中を飛来する物体が少ない。大きなヘリコプターが来れば気づいた者がいてもおかしくないはずだ。
いる。この町にUFOはいる。それも擬態している可能性がある。輸送ヘリ型という新たなUFOの発見により、我々の調査対象は「空を飛ぶもの全般」にまで広がった。
UFOを見た人の割合…3人/26人 11.5%
一体この町はどうなっているのか。私達はとある場所に車を走らせた。
役場の三坂さんの勧めもあり、この町を見渡せるという育成牧場に行くことにした
そしてこのあと我々は本当の怪現象に出会うことになる!
この町で一番高い場所へ
役場の三坂氏が教えてくれた八雲育成牧場へ。高い展望台があるとのことだった。
聞き込みによると昼間の目撃例が多い。我々は展望台から空を観察することにした。
ここからは我々とUFOとの持久戦である。この先に手がかりはない。ここで何かをつかんで帰ってみせる。
そういえば三坂氏は私達を呼び止めて「育成牧場に行くなら今この辺で熊が出没中だから注意してください」と言っていた。早く帰りたい気持ちもある。
育成牧場にはこの町で一番高いであろう展望塔が建つ
展望塔自体が何かの施設であることがうかがえる
薄暗い螺旋階段の途中には
古い写真が飾られていた
何かの研究と思われる一枚の写真
番号をとりつけられた牛たちが一同に集められている
展望台から噴火湾を眺めて。この町にはなにかがある
この町で一番高い場所へ
展望台に立つと広い空と大地が見渡せた。一時はこの町にUFOの基地があると噂されたという。この広さにはそういった未確認の情報が未確認のままでいられるような余白を感じる。
さあここで持久戦だと思っていた私達に思いもよらないアクシデントが発生した。
なんと塔の上は風が強めに吹いていたのだ。
しかしここで思いもよらないアクシデントがあった。塔の上は風が強くこの北海道の気温の低さを甘く見積もった薄着の私達の健康を害する危険性が生まれた。我々は撤退を決意した。
牧場内にあった古い碑の感触をたしかめる藤原調査員。さわった感触によるとこれが隕石である可能性も否定できないという。
帰り道、ふらっと降り立った草原でこの広さである。空と大地が広い。あまりにも広い。
その広さに観光側にとりこまれそうになる
そのときである。「ちょっとこれを見てください」と取材班の藤原調査員が突如足元をふみしめはじめた
一体何がはじまるというのか、固唾をのんで見守っていると…
なんとミステリー・サークルが出現した。簡素な模様ではあるが自然に起こったとは考えにくい形状である
一仕事終えた顔の藤原調査員
そしてこのミステリーサークルが後に本当のUFOを呼ぶ!
この町の歴史を知りに郷土資料館へ
何かがある。そんな気はずっとしているのに、手がかりが見つからないでいる。
牧場には行った。残りもう一つの名物である木彫の熊周辺のことを調べに郷土資料館に来た。
ちなみに職員の方もUFOに関しては全く知らないということだった。やはり関係のない場所なのか。そう思ってはいたが……
UFOを見た人の割合…3人/27人 11.1%
郷土資料館と熊の木彫の展示がセットになっている
我々の前に巨大な熊が現れた
八雲町について書かれた本を持ってきてくださった。そこに書かれていたのは…
ここで一つの重大な文書が
先ほど入り口でUFOについてきいた職員さんが「これを見てください」と八雲町について書かれていたある本を持ってきてくれた。
その中の文章『八雲のトワイライトゾーン』著者の名前は「やくもUFOフォトライター 小林丈夫」……あのUFO研究家の小林氏だ!
あのUFO研究家といわれていた小林氏の文章だった
私達はこれを小林文書と名づけた
記念スタンプもあるのか、記念に押していこう
紙がない、そうだ小林文書だ
ここからは手がかりがなく難航した
さらに一人の目撃談が
このあと取材は難航する。ホテルのスタッフ、寿司屋の大将、ソフトクリーム屋の店員、出会う人にはUFOについてきいてみたが誰も見たことがないという。
UFOを見た人の割合…3人/31人 9.7%
だが見たものもいた。バーのマスターによると子供時代に見たことがあるという。怪しい光が並んでいて明らかに普通の光ではなかったらしい。
だがアルコールの入った我々を喜ばせようとしたウソであるかもしれないし、彼自身も酒を飲んでいたことだろう。
UFOを見た人の割合…4人/32人 12.5%
唯一新たな目撃情報があったのはバー
噴火湾パークエリアでは「UFOなら鹿部町のことではないの?」という。ここから車で一時間くらいの場所だ。駒ケ岳という山がありUFOスポットなのだという。
翌日念のため鹿部町に行ってみたが有力な情報は得られず
この回転するイカをUFOと見間違ったのではないだろうか
あまりにも手がかりがない
ない。手がかりがない。なくてもおかしくはないはずだが違和感がある。なさすぎるのだ。UFOの墓場というにはそれなりの目撃例があっていいはずだ。そもそもUFOの墓場とは一体何なのだ。
あのバーテンがウソをついて私達を喜ばせてくれたようにもう少しくらい目撃例があってもいいではないか……そうか、そうだったのか。
私達は一つの可能性に思い当たった。
もしかしたら町ぐるみで隠しているのではないか……!?
町ぐるみで隠しているのではないか
今から考えると町ぐるみで隠していたような気がしないでもない。
次はあそこに、その次はあそこに、と探索ルートを誘導されていたように思うし、突如小林文書をいただいたり、かと思えば「熊が出没中だ」という情報だったり。
八雲町の日本海側、熊石方面には円空上人滞洞跡という史跡がある。この円空上人というのはUFOのことを指しているのではないか。そんな風に指摘したところ「いやいや、お坊さんですよこれは」と役場の職員さんは笑っていたがその目は笑っていなかったのを私達は見逃さなかった。
まるみ食堂の店主に住民の8割が見たことあるってほんとですかと尋ねると「8割もUFO見たら日本の国防に関わる!」と笑っていたが、どうして国防という言葉が出てきたのだろう。
この町にはなにかがある。
自衛隊駐屯地
ここで藤原調査員が異変にきづいた「吐く息が白くないですか?」
それは自衛隊駐屯地付近を探索してたときだった
私達がひとつの確信にいたったのは自衛隊の駐屯地付近を探索していたときのことだった。
辺りは夕暮れから夜に変わるころ。藤原調査員がなぜかしきりに上を向いている。何かに気づいたようだ。
「なんか吐く息が白くないですか?」
思えばこのときに異変に気づくべきだった。何もないから帰ろう、と私達が車に戻ろうとしたとき、西の空に私達を取り囲むかのように怪しい光の群れがあったのだ!
そのとき私達ははっきりと見た。空に無数に光る謎の物体を。
この写真は藤原調査員がフラッシュを焚いて撮影したのだが…
空との間に偶然蚊柱があった。残念ながら今回のUFOは蚊であった可能性が高いが、この町にUFOの噂はたえない
8割もいないが1割くらい見ている
さすがに8割は言いすぎだった。32人に聞いて4人、ただしくは12.5%の人が見たことあると答えた。
1割である。たしかに多いかもしれない。(UFOを見たことがあるか?なんて統計をとったことがないので比べようもないが)
「八雲町でUFOが発見されてから既に十年も経過しているのに、その活躍は一向に衰えていません」からはじまる小林文書は1988年ころに書かれたものだと思われる。
となるとはじまりは1978年ころ。まるみ食堂の篠原さんが言ってた35年前というのと合致する。『11PM』あたりが発端となり、UFO番組の衰退とともに目撃例も落ち着いていったことになる。
その後も八雲町のUFOのことを検索したりしていると、とあるブログを発見した。あの小林氏に案内してもらってUFOらしきものを見たというコメントがあるのだ。
参考 運勢上げる占いはTAMAKO占い 2013年10月07日
そのコメントによると中学生の突然の訪問にもかかわらず、小林氏はあの育成牧場に案内してUFOを一緒に目撃する。また、その方は後日同じ場所で小林氏が一人で車のライトを空にあてている姿を目撃している。
この町にはなにかがあるというよりは、なにかがあったという方が正しいのだろう。
たくさんの言いがかりをつけましたが、役場の三坂さんによると酪農が盛んでペコちゃんのモデルになった人がいたりおもしろい話もたくさんあるとのこと。次は観光しにきます。