コラボ企画 2014年9月29日

プロジェクションマッピングでアイスを山手線にする

最終的にこのくらいのクオリティに落ち着きます。
最終的にこのくらいのクオリティに落ち着きます。

チーズスティックというアイスがある。

白くて細長くて、その名の通りスティック状のシンプルな見た目のアイスだ。

シンプルな白の…

ということは流行りのプロジェクションマッピングの土台として使えるんじゃないだろうか。

長いんだったら電車になるぞきっと。
行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

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DAY1:まずどこにも売っていない

プロジェクションマッピングという技術が流行っている。

なんでもないところにプロジェクターで絵を写して、あたかも実物がそこにあるかのように見せるのだ。

今回、森永のチーズスティックとのコラボにこの最新技術を使おうと思う。チーズスティックは白い直方体(棒状)なので、プロジェクターで光を当てたら電車になるんじゃないかと思ったのだ。

こういう思いつきはたいてい失敗するか、うまくいくまでに恐ろしく試行錯誤が必要になるものなのだけれど、今回はそのどちらも経験したので順を追って報告したい。
これがチーズスティック。
これがチーズスティック。
上の写真がチーズスティックなのだが、いきなりカタログからの転載である。

なぜ実物を載せないかというと、売っていなかったからだ。
売ってないのだ。
売ってないのだ。
どこにもない。
どこにもない。
コラボ企画なのにこんなこと書くのもどうかと思うが、ないものはないのだ。

この話が決まってからというもの、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど、アイスを売っていそうなお店を手当たり次第にまわって探したのだけれど、チーズスティックは1つも見つけることができなかった。

森永の担当者にこの話をすると

「あー、確かにこの時期は売っていないかもしれないですねー。」

と。

しっとりと濃厚な大人のアイス、チーズスティックは秋冬がメインなのだ。つまりこれから生産が本格化する。加えてチーズスティックは好きな人はものすごく好きらしく、売られているのを見つけると買い占めちゃう人もいるのだとか。

理屈はわかる、でもそれでは記事が書けないだろう。森永の担当者になきついてなんとか送ってもらえることになった。

現物が届くまでにできるところから始めよう。

DAY2:紙粘土でモックを作る

写す対象がないのでひとまず写す画像から作ることにする。今回はチーズスティックを山手線にするのが最終目標なので、山手線の写真を撮ってくる必要がある。
こうなるのがゴール。
こうなるのがゴール。
線路とホームには鉄道模型用のパーツを使った。肝心の車両部分がチーズスティックである。これに映像を写す。

だけど今はないから他で代用する。
紙粘土である。
紙粘土である。
チーズスティックがないので紙粘土で作ることにした。ボーカルがいないからとりあえずおまえ歌っとけ、と無茶なこと言われたマネージャーみたいである。

チーズスティックは一度も見たことがないのだけれど、食べたことがあるという人のブログを読むとおおよその大きさがわかってきた。だいたい長さが13センチ前後、幅が3センチ前後のようだ。

ということはきっとこんな感じである。
まだ見ぬチーズステックに思いを馳せながら。
まだ見ぬチーズステックに思いを馳せながら。
なんだろう、この明らかなこれじゃない感。やってみなければわからない、とかそういうレベルにすら達していないような気がする。ボーカルがいないならおとなしくインストバンドにしておくべきなのだ。

ひとまずこれは置いておいて(紙粘土なので乾かす意味合いもある)、今度は投影する画像を撮りに行くことにした。


チーズスティックと書いて濃厚と読むのが
おれのスタンダード。


チーズスティックは濃厚が売りのアイスです。

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DAY3:電車の写真を撮りに行く

この日はチーズスティックに投影するための画像を撮りに行くことにした。

ちなみ今回のコラボ企画でこれ以外に候補に上がっていたのは、チーズスティックの売りである「濃厚」をテーマにして濃厚な食べ物ばかりを食べ歩く、という企画である。まともだ。なぜまともじゃいけなかったのか。

とはいえ何を言ってもいまさらである。きれいな電車の写真が撮れたらそこに光も見えるだろう。

山手線はずっとぐるぐる走っているんだからいつでも撮れるよね、くらいに考えていたのだけれど、これが意外とたいへんだった。
向かいのホームに止まっている電車を撮るとこんな感じ。最大に引いても全部が写らない。
向かいのホームに止まっている電車を撮るとこんな感じ。最大に引いても全部が写らない。
車両の画像をチーズスティックに投影するため、できれば一両まるごと撮影したかったのだけれど、そんな場所がなかなかない。

きっと常々電車の写真を撮り慣れている人には思い当たる場所とかノウハウもあるのだろうけど、必要にかられて、くらいのにわか鉄道ファンにはいささかハードルが高い。
遠くを走る京急線。こちらは全体が見えるが遠すぎて素材にはならない。
遠くを走る京急線。こちらは全体が見えるが遠すぎて素材にはならない。
いろいろな電車が見られるといえば品川駅。ということで品川駅周辺を歩きながら山手線を撮影できる場所を探した。
ちょうどいい距離感を保ちながら線路に並行に走っている道はないものか。
ちょうどいい距離感を保ちながら線路に並行に走っている道はないものか。
駅周辺はいろいろな電車がいろいろなアングルで走っていた。きれいに撮影できるポイントはあるのか。

あてもなく駅の周りを歩いていると、どうも電車の写真を狙っているらしき一団を見つけた。みんないいカメラを持ちながらしきりに時計を眺めている。これはきっと僕が求めていた電車撮影のノウハウを持つ人たちであろう。便乗させてもらえばかなりいい写真が撮れるに違いない。
それぞれ個々に活動している様子なのだが、狙っている電車はたぶん同じ。
それぞれ個々に活動している様子なのだが、狙っている電車はたぶん同じ。

待つこと2分。

集団の中でも最も貫禄のある男性が線路に一歩近づき、腰を落としてカメラを構えた。

(来るのか!)

現場に緊張が走る。近くにいた若者たちもおっさんに続く。まねして僕も続く。

く、来るんですか!
く、来るんですか!
来た!
来た!
これは珍しい、黄色い京急だ!
これは珍しい、黄色い京急だ!
チャチャチャチャチャ…(シャッター音)。
チャチャチャチャチャ…(シャッター音)。
赤がシンボルカラーの京急線において、黄色い車両は非常に珍しく、「京急イエローハッピートレイン」という名称で愛好家に人気なのだとか(帰ってから調べた)。僕みたいなにわかファンがたまたまこの幸運の車両を見ることができたのはラッキーという他ない。
いや待てよ、僕は山手線を狙っていたのではなかったか。
いや待てよ、僕は山手線を狙っていたのではなかったか。
期せずして黄色い京急を撮影することができたのでハッピーに帰ろうかと思ったのだがちょっと待て、違うだろう。今回はチーズスティックを山手線にすると決めていたはずだ。

どこか山手線の車両がきれいに撮影できるポイントはないものか。
高架の上から撮ると横がきれいに写らない。
高架の上から撮ると横がきれいに写らない。
こういう時に頼りになるのはインターネットである。

「品川 山手線 撮影」で検索するといっぱつで情報が出てきた。すばらしい。最寄りの山手線撮影ポイントは、なんと品川駅の京浜東北線発着ホームとのこと。まさに灯台下暗しである。
このホームの端の方から狙うときれいに撮れると書いてあった。
このホームの端の方から狙うときれいに撮れると書いてあった。
これまで、ホームの電車が停まる部分より先にあるこの空間がなんのためにあるのか不思議に思っていたのだが、そういうことだったのか。

写真を撮るためなのである(たぶん本当は別に目的があるんだと思います)。

一番端から向かいのホームに入ってくる山手線を待つ。
来た!
来た!
いいアングルで停まるなー。
いいアングルで停まるなー。
おかげでほぼ狙いどおりのアングルから山手線を撮影をすることができた。この趣味、やってみるとすごい興奮するのでみんなにも勧めようと思ったのだが、今さら僕が勧めるまでもなくたぶんすでにメジャーな趣味ですよね。

さて素材はそろった。いよいよプロジェクションマッピングに挑戦だ。


この濃厚さを体験したらさいご、
とんこつラーメンですら薄く感じる。


チーズスティックは濃厚が売りのアイスです。

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DAY4:撮ってきた電車を紙粘土に投影する

ここからいよいよというかようやくプロジェクションマッピングっぽくなってくるぞ。

まずは撮影してきた電車の写真を必要な部分だけ切り抜く。

結局面白くなっていろいろな電車を撮ってきてしまった。
結局面白くなっていろいろな電車を撮ってきてしまった。
背景はリアル品川駅ホームからの眺めである。
背景はリアル品川駅ホームからの眺めである。

電車の形に切り抜いた画像をチーズスティック代わりの紙粘土に投影する。

紙粘土を工作で使うと急に夏休みの宿題感が出るが、しかたがない、これも人生である。

さあ、いよいよですね。
さあ、いよいよですね。
電車用と背景用でプロジェクターを2台使った。
電車用と背景用でプロジェクターを2台使った。

投影には電車用と背景用で2台のプロジェクターを用意した。

いよいよスイッチオンや!

どうだ!紙粘土は電車になったのか。

なるわけないよね!
なるわけないよね!

残念ながらならなかった。

そんなに簡単なものではないとわかっていたが、当たり前のように失敗するとそれなりにへこむ。

どうやら電車の縦横比がチーズステック(を想定した紙粘土)の縦横比と合っておらず、結果、はみ出た部分が側面に回りこんで像がゆがんでしまうのだ。

本来ならば写す対象のサイズをちゃんと測って、それにあった画像を生成する必要があるのだろう。しかし今測ることができるのは紙粘土である。こいつにきっちり合わせたところで、チーズスティックに合うかどうかわからないだろう。ガラスの靴はシンデレラにしか合わないのだ。

模型を写すことにした

こうなったらなるべく像が歪まないよう、正面から撮影した写真を投影に使いたいものである。

しかし本物の車両だと真横から撮影することが難しいため、どうしても歪みが出てしまう。そこで模型を正面から撮影して、その画像を使うことにした。

模型を真上から撮影。
模型を真上から撮影。
それをやはり真横から投影する。
それをやはり真横から投影する。
なかなかいい感じである。

周囲のいらない部分を黒く塗りつぶしてみると完成度があがった。
これはもうまぎれもなく山手線である。
これはもうまぎれもなく山手線である。

これは実写よりもリアルに見える。

同じ方法で撮影した京急も投影してみた。

京急。
京急。
いい感じである。電車を撮りに行ったあの日がいよいよ無駄になってしまったが、新しい趣味を見つけたと思えば安いものだ。

唯一不安なのは、これがチーズスティックではなく紙粘土だということだろうか。そこ一番大切、という気もするがいま僕ができることはここまでである。あとはおとなしくチーズスティックが届くのを待つしかない。
こういう作業って夜が明けると一気に冷静になる。
こういう作業って夜が明けると一気に冷静になる。
チーズスティックが届いたら紙粘土と置き換えようと思う。

この日、届いたチーズスティックを開けたら中からたくあんみたいな円柱が出てきて線路に乗せても乗せても転がり落ちる、という夢を2回見た。


「味噌汁の味が薄いと激怒していたじいちゃんに
食べさせたかった」


チーズスティックは濃厚が売りのアイスです。

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DAY5:満を持してチーズスティックが届く

次の日、会社から帰るとクール便が届いていた。

実は前日にも不在連絡票が入っていたのでチーズスティックかと夜中に郵便局まで取りに行ったのだが、ヤフオクで買った古本だった。松本清張5冊セットである。

今日のはどうか。間違いないだろうか。

やった!
やった!
待ちに待ったチーズスティックである。

この時点で原稿の締め切り3日前なわけだが、ようやく初対面を果たすことに成功した。

ようこそ、はじめまして!チーズスティック。本当ならばいろんな人と喜びを分かち合いたいところだが、今はそんな時間も精神的余裕もない。一本取り出して確認する。
へー、これがチーズスティックかー。
へー、これがチーズスティックかー。

チーズスティックを初めて見た感想は「意外と平たいな」だった。

想像で作った紙粘土に比べて少し高さが低いように思う。スティックというよりも厚いプレートといった印象である。

実物を見ずに作った紙粘土製と比較してみる(上が実物)。なかなか良い線いっているが本物の方がエッジが立っていて平たい。
実物を見ずに作った紙粘土製と比較してみる(上が実物)。なかなか良い線いっているが本物の方がエッジが立っていて平たい。
それからチーズスティックが意外と黄色いのも予想外だった。考えてみたらチーズだから黄色くて当たり前なのだけれど、そこまで気が回らなかった。これらツメの甘さがプロジェクションマッピングにどう影響するのか。

不安要素を上げ始めたらきりがないが、チーズスティックを線路に置いてみてそれらすべてが杞憂であることがわかった。
なるほど、線路にアイスを置くとこうなるわけか。
なるほど、線路にアイスを置くとこうなるわけか。
だって色とか形とか、そういう細かいこと言っていられないほどの違和感なのだ。
ちょっと見たことない光景である。
ちょっと見たことない光景である。
正直なところ、チーズスティックを線路に置いた時点で「これはないな」と思った。ゴジラでも乗ってる方がまだ説明がつく。

最初からチーズスティックを知っていたらこの企画は提案していなかったかもしれない。そのくらい遠くまできた。

しかしである。

イノベーションの敵は常に常識である。チーズスティックを知らなかったからこそ、僕は常識にとらわれることなく「じゃあそれ電車にします」なんて森永に提案することができたのだ(森永は物を知っていてゴーサインを出したわけだが)。

可能性という言葉を信じてみようではないか。新しい風は常に僕らの上を吹いている。

前だけ向いてスイッチオンである。
どや!
どや!
僕の中で何かが弾ける音がした。それはきっと「アイスは電車じゃない」という常識が崩れた音である。
しながわー、しながわー。
しながわー、しながわー。
完全に電車だ。
簡単操作で京急線にも早変わりだ。
簡単操作で京急線にも早変わりだ。

これまで紙粘土を相手に積み上げてきたノウハウは確実に生きていると信じたい。僕の目にはもはやこれは品川駅に停まった電車にしか見えないのだから(涙でぼやけているからかもしれないが)。

同情はいらないから思い出してほしい

これからのシーズン、きっとチーズスティックを見かけることも増えるだろう。その時は思い出してもらいたい、これを電車にしようと試みた一人の男の存在を。

以上、プロジェクションマッピングでアイスを電車にしようと努力した5日間の記録でした。


アイスは食べる物

よくあるプロジェクションマッピングはたいてい動画で紹介されているが、今回はあえて静止画である。なぜなら特に動画にするほどのこともなかったからだ。

結果はともかく、撮影の後食べたチーズスティックは確かに濃厚で美味しかったので、みんなも見つけたら買うといいと思うよ。
銀河鉄道風。
銀河鉄道風。


濃厚生まれチーズスティック育ち。
濃そうなやつはだいたい友達。


チーズスティックは濃厚が売りのアイスです。

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