コラボ企画 2014年9月24日

シュモクザメをおいしく食べるには

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夏の大阪湾ではシュモクザメが釣れるらしいという噂を耳にした。大きく張り出した頭部が特徴の、いわゆるハンマーヘッドシャークというやつだ。

しかも今回の企画は大阪ガスのスマートコンロとのコラボのため、最新の調理機器が借りられるという。これは生きたシュモクザメを観察し、その上おいしくいただけるまたとないチャンスではないか。

いざ大阪へ!
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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サメポイントは港からたった40分

秋の足音が聞こえてきた8月31日。関西空港からほど近い泉佐野の港へとやって来た。

シュモクザメ釣りへはこの大阪の玄関口から出発するのだ。意外である。

しかも、驚いたことにサメが出現するポイントまではわずか40分しかかからないのだという。そんなに近場で!シュモクザメが!
大阪湾でシュモクザメ釣りのサービスを提供してくれる唯一の釣り船「SeaRide」。
大阪湾でシュモクザメ釣りのサービスを提供してくれる唯一の釣り船「SeaRide」。
予報では風が強く、前夜まで出船が危ぶまれたが、祈りが通じたのか当日朝にはなんとか釣りができる程度にまで落ち着いてくれた。

これは天が味方してくれているの違いない。きっとシュモクザメも釣れるだろう。
手とり足とりサメ釣りをガイドしてくださるSeaRideの野田船長。爽やかなナイスガイだ。
手とり足とりサメ釣りをガイドしてくださるSeaRideの野田船長。爽やかなナイスガイだ。
工場地帯を眺めながら、いざ出発!
工場地帯を眺めながら、いざ出発!
ポイントに着くと、さっそくエサを投入する。

スルメイカを丸ごと1パイ釣り針に掛け、潮の流れに任せて波間を漂わせるのだが、ここでサメ釣りの豪快なイメージにはふさわしくない面白い仕掛けが登場する。
エサにはスルメイカ、ウキにはゴム風船を使う。
エサにはスルメイカ、ウキにはゴム風船を使う。
ゴム風船である。しかも色とりどりのポップなやつ。これを釣糸に付けておくと、風の影響を受けやすくなるので、潮が動かない時間帯でも仕掛けがスムーズに流れてくれるのだ。

サメがエサに食いついたことを、水面で動いたり破裂したりすることで視覚的に知らせてくれるという副次的な役割もある。
なんだ、このファンシーな釣りは…。
なんだ、このファンシーな釣りは…。
ただし、潮が十分に速い場合は極力ゴム風船を外しておく。船長が言うには、シュモクザメはエサを咥えても風船の抵抗を感じると警戒してすぐに吐き出してしまうことがあるのだそうだ。意外と繊細だな。
よっしゃー!釣ったるぞー!!
よっしゃー!釣ったるぞー!!
個人的な話になってしまうが、僕がまだ小学生だった頃に父の知人が地元の海でシュモクザメを釣り上げたことがある。シュモクザメなんて図鑑か水族館でしか見られないものだと思い込んでいたので、非常に羨ましく思った。

僕もあのT字の頭をこの手で触ってみたいと思い、子供ながらに工夫して釣りに臨んでみたが、結局姿を見ることはできなかった。あの時の願いが今日叶うかもしれない!気合は十分だ。さあ、釣るぞ!触るぞ!食うぞ!
…ごめん、酔った。
…ごめん、酔った。
そんな具合に鼻息も荒く釣りを開始した直後である。突然まともに立っていられなくなった。気合が空まわって船酔いしたのだ。酔い止めまで飲んでおいたのに。

人生で3回目の船酔いである。僕が船に酔うのは決まって仕事が絡むような重要なシチュエーションである。「ここぞ!」というときに酔うのだ。勘弁してほしい。
3つの仕掛けが海面に漂う。メルヘンな光景だが、狙っているのはサメ。
3つの仕掛けが海面に漂う。メルヘンな光景だが、狙っているのはサメ。
釣りを初めて1時間ほど経ったが、サメはまだ釣れない。船長が言うには本来ならば背ビレを水面に出して泳いでいる姿がちらほら見えるらしいのだが。

「今年はもう群れが外洋に抜けちゃったのかもなー…。」と船長。海の魚を狙うのは、これがあるから怖い。

イカに噛み跡が!そして!

だが、あきらめるわけにはいかない。一旦仕切りなおそうと仕掛けを回収すると、同船していた友人のエサに異変が…!
イカが齧られている!この歯形は…サメだ!!
イカが齧られている!この歯形は…サメだ!!
針にしっかりと刺していたスルメイカがボロボロになっている。魚に齧られたのだ。しかも、かなり鋭い歯で噛み切られた跡がある。

この海域の水面直下でこんな芸当ができるのは奴しかいない!船酔いも一気に醒め、全員でただちに仕掛けを入れなおす。

すると…!
友人の仕掛けに掛かった!
友人の仕掛けに掛かった!
友人の流した黄色い風船が、引き波を立てて水面を走り出した!サメだ!シュモクザメが来たのだ!
カナヅチのくせに泳ぐの上手いじゃねえか!
カナヅチのくせに泳ぐの上手いじゃねえか!
友人が手に取った釣り竿が大きくしなる。しっかり針に掛かったようだ。

僕には応援しかできないが、どうか頑張ってくれ!これが最初で最後のチャンスかもしれないんだ!
無事にタモの中へ!
無事にタモの中へ!
格闘数分。サメは意外とスムーズに船のそばへ寄ってきた。竿を持ったのが僕なら、こうはいかなかったろうな。いやー、釣りの上手い友人を招集してよかった。

絶妙なタイミングで船長がタモを差し出すと、見事に入った!その頭の形は…T字だ!

食材を捕まえるところからがコラボ企画。

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かっこいいぜ!ハンマーヘッド!

そんなこんなで釣れたシュモクザメがこちら!
イカすねー!サメも釣り人も!
イカすねー!サメも釣り人も!
うーん、いい魚だわー。文句なしにかっこいい。

そして思ったよりも肌が黒っぽい。褐色系のサメだというイメージを持っていたのだが、実際に生きた姿を見ないと分からないこともあるものだ。
T!丁! 鼻先の形から判断すると、これはシロシュモクザメという種類だろう。
T!丁! 鼻先の形から判断すると、これはシロシュモクザメという種類だろう。
そして、やはり注目すべきは頭の形だ。ハンマーヘッドの名の通り、上から見ると金槌のようなシルエットをしている。

ちなみに、和名の由来になっているしゅもく(撞木)とは仏事で鐘を打ち鳴らす際に用いる木槌の一種。和洋を問わず、このサメを見て人の考えることは同じなのだな。

ちなみに、張り出した部分は意外としなやかで、触るとグニグニ曲がることが判明した。
イケメンだわー。歯はさほど大きくないが、やはり鋭い。
イケメンだわー。歯はさほど大きくないが、やはり鋭い。
ちなみに、この左右に大きく張り出した部分には「ロレンチーニ器官」という生物が発する微弱な電気を感知するための器官が多数並んでいる。エサとなる生物を嗅覚や視覚だけでなく電気をも頼りにして探すのだ。

ロレンチーニ器官自体は多くのサメが保有しているが、シュモクザメのそれは群を抜いて発達している。それだけ電気に敏感だということだ。

ならば、もしかすると今回のように死んだイカではなく生きたエサを泳がせれば、もっと早く釣れたりもするのかもしれないな。結局、僕は自分では釣れずじまいだったので、来年また生きエサを持ち込んで再挑戦してみようと思う。
サメの下処理はすみやかに!
サメの下処理はすみやかに!
なお、サメ類の多くは釣り上げてから長く放置すると、全身にアンモニアが回って極端に味が落ちてしまう。それを防ぐためにはすぐに活締めにし、血液と内臓を綺麗に抜いてやることが肝要となる。

さあ、船上で三枚におろしたらこれで一段落!あとは調理して食べるだけだ!

もし大阪でサメが釣れなかったら沖縄か北海道に飛ぶ予定でした。釣れてよかった。

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あとは任せた!

調理と試食は、大阪ガスのイベント会場で行われることになっている。

しかも厨房や調理器具を借りられるだけではなく、調理そのものもプロのスタッフにお願いできるというのだ。おお!素晴らしい!
身は綺麗なピンク色でおいしそうだが…。
身は綺麗なピンク色でおいしそうだが…。
極めて新鮮なので傷んでいるということはまず無いはずだが、スタッフさんたちにお渡しする前に、念のため編集部・安藤さんと僕とで生の身を味見。というか毒見。
安藤さん、どうですか?
安藤さん、どうですか?
「生だと独特の酸味がありますね…。」
「生だと独特の酸味がありますね…。」
うーん、ちょっとすっぱい。だが、これは饐えているわけではない。サメの血中に含まれる尿酸に由来する酸味である。刺身がすっぱいというのはサメ料理あるあるの一つなのだ。

シュモクザメ自体が元々こういう味のサメだという可能性もあるが、ひょっとすると僕の血抜きが完全でなく、わずかに血液が体内に残ってしまった結果なのかもしれない。

ハイテクvsワイルド 未来vs古代

これは刺身やマリネなど、生のままではちょっと野趣にあふれすぎて人を選ぶかもしれない。この手の酸味は加熱するとウソのように和らぐので、ぜひ火を通して調理したいところだ。

この日おじゃましたのは、大阪ガスの最新ガス調理器「スマートコンロ」の展示会場。ハイテクコンロにシュモクザメをぶつけるわけだ。
これが「スマートコンロ」。
これが「スマートコンロ」。
サメ肉というと、我々日本人にとってはあまり馴染みのある食材ではないように感じられる。

しかし、実際は地域によってはごく普通にスーパーに並ぶし、かまぼこの材料として知らずに口にしたりもしている。決して食べられない魚などではないのだ。

意外なところでは縄文時代の貝塚からも当時の人々がサメを食べた痕跡が見つかっている。

縄文時代…。

器具や調味料に乏しい古代においてもなんとか食べられていたのだから、ハイテクコンロとプロの料理人がいればきっとおいしく食べられるに違いない。

これで万が一にも完成した料理がマズければ、我々は(というか大阪ガスは)縄文人に敗北したことになるだろう。これは負けられない。負けられませんよ、大阪ガスさん!!
というわけで唐突に縄文人に登場願いました。「コレ、シュモクザメ。オマエ、コレ、オイシクスル。」
というわけで唐突に縄文人に登場願いました。「コレ、シュモクザメ。オマエ、コレ、オイシクスル。」
と、責任を人に押し付けたところで、食材も押し付けた。

さあ、あとはよろしくお願いします!
「いきなりサメ持ち込んで女性に料理させるとか、ハラスメント感ありますね」と安藤さん。まったくです。
「いきなりサメ持ち込んで女性に料理させるとか、ハラスメント感ありますね」と安藤さん。まったくです。
よし、アンモニア臭はまだ出てない!イケる!
よし、アンモニア臭はまだ出てない!イケる!
ちなみに、ザラザラした鮫肌は熱湯をかけると砂粒のように剥がれ落ちる。
ちなみに、ザラザラした鮫肌は熱湯をかけると砂粒のように剥がれ落ちる。
みるみるうちに今夜のおかずっぽさを獲得していくシュモクザメくん。
みるみるうちに今夜のおかずっぽさを獲得していくシュモクザメくん。

スマホで点火、グリルで揚げ物

サメを渡すや否や、調理担当のスタッフははじめて扱う食材であるにもかかわらず、鮮やかに下ごしらえを終えてしまった。さすがである。

でもまだまだ調理過程は残ってますぜ。引き続き頑張ってくださいよ!…と思ったら、あとはスマートコンロに任せたらいいらしい。どういうことか。
パン粉をまぶされたシュモクザメがグリルの中へ
パン粉をまぶされたシュモクザメがグリルの中へ
シュモクザメをプレートパンに乗せ、スマートコンロにセットすると、スマホをいじりだす料理人。画面にはレシピが。

……。

まさか今から調べるのか…?
「スマホでメニューを選んで送信するだけで最適な調理モードや時間を設定してくれるんですよ。」
「スマホでメニューを選んで送信するだけで最適な調理モードや時間を設定してくれるんですよ。」
と思ったが、どうやら違うらしい。専用アプリのレシピからメニューを選んでデータを送信して、点火ボタンを押すだけで、自動的に加熱調理を行ってくれるらしい。未来だ。

ただ一点気になるのは、彼女がチョイスしたメニューが「サーモンのチーズフライ」であること。フライなのにグリルでいいのか。そして、それサーモンじゃなくてシャークなんですが…。
ハンマーヘッドのチーズフライ。おいしそう!
ハンマーヘッドのチーズフライ。おいしそう!
心配をよそにしばらくするとグリルから香ばしい匂いとともに見事なチーズフライが出てきた。最近はやりのノンフライ調理というやつだろうか。よく知らないけどすごいことはわかる。

なお、「サケじゃなくてサメですが?」という問いには「シュモクザメのレシピはアプリに入ってなかったのでしょうがなく…。」とごもっともな御回答。そりゃそうだ。
まさか未来がコンロから来るとは思わなかった。
まさか未来がコンロから来るとは思わなかった。
原始人は取り外しできる点火スイッチに一番驚いていた。
原始人は取り外しできる点火スイッチに一番驚いていた。
今日のメニューはチーズフライだけではない。さまざまな魚料理を応用したシュモクザメ料理が次々にグリルから出てくる。
ブリの照り焼きあらためシュモクザメの照り焼き。
ブリの照り焼きあらためシュモクザメの照り焼き。
シュモクザメのホイル蒸し
シュモクザメのホイル蒸し
シュモクザメのアクアパッツァ
シュモクザメのアクアパッツァ
シュモクザメづくし、あるいはハンマーヘッドのフルコース!
シュモクザメづくし、あるいはハンマーヘッドのフルコース!
会場のテーブルに並んだのはチーズフライ、照り焼き、ホイル蒸し、アクアパッツァの計4品。

どれも見た目と香りは抜群だ!だが肝心の味はどうだろう?さっそく試食させていただこう。

この記事、原始人出てくる必要あるんか、という疑問はいったん置いておく。

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いわゆる『普通に美味い!』

いただきます(原始人と)!
いただきます(原始人と)!
…美味い!!
…美味い!!
おいしい。若者言葉で言うところの「普通においしい」というやつだ。不安材料だった酸味も、しっかり加熱したおかげで完全に消えている。

僕と安藤さんがガツガツ食べ始めると、遠巻きに怖々と見ていたスタッフの方々も近づいて箸を伸ばし始めた。
スタッフの方々も試食。「サメでしょ?本当に?大丈夫…?」という声が聞こえてくる。
スタッフの方々も試食。「サメでしょ?本当に?大丈夫…?」という声が聞こえてくる。
「確かに『普通においしい』ですね!」
「確かに『普通においしい』ですね!」
はじめのうちはおっかなびっくりながらも、何口か食べるうちに「イケるイケる。」とか「あ、ちゃんとした魚の味するんだね。おいしい。」といった声も聞こえ始めた。

そうですよ。サメって結構おいしいんですよ。…まあ今回は自分で調理してないんだけど。
アクアパッツァが特に人気
アクアパッツァが特に人気
ちなみに、一番人気のメニューはアクアパッツァだった。どうやらシュモクザメの身には脂が乗っておらず非常に淡白なので、このようにオリーブオイルなどで油脂分を補ってやるレシピが有効であるように感じられた。

上には上がある

そんな具合にシュモクザメ料理を囲んで歓談していると、隣のテーブルにも別の料理が運ばれてきた。

シュモクザメは欠片も入っていないキノコのリゾットと、デザートのケーキとプリンである。どれもスマートコンロで調理したのだという。

グリルでケーキ焼けるのかよ。
キノコのリゾットに
キノコのリゾットに
ケーキにプリン。やはり全部グリルで作ったものだとか。グリル選手の登板回数がいくらなんでも異常である。
ケーキにプリン。やはり全部グリルで作ったものだとか。グリル選手の登板回数がいくらなんでも異常である。
あれ?
あれ?
あれれー…?
あれれー…?
すると、みんな吸い寄せられるようにそちらのテーブルへ行ってしまった。

もうシュモクザメを食べているのはいつの間にやら僕一人である。

こらキミたち!そんなにリゾットとかプディングとかチャラチャラした料理が食いたいか!シュモクザメよりそういうおしゃれなものが食いたいか!

料理人もコンロもすごい

…と思ったものの、リゾットを一口食べて納得。…こりゃ美味いわ。

食材のチョイスから調理まで、プロが作ったものである。おいしいに決まっている。

でも、逆に考えれば、突然持ち込まれた未知の食材(サメ)をあれだけおいしく仕上げたのはやはりたいしたものだ。

いやー、ごちそうさまでした!
会場では女性陣にモテモテでした。シュモクザメの頭がね。
会場では女性陣にモテモテでした。シュモクザメの頭がね。

スマートコンロがあればサメもフルコースに。

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