ホームセンターに芝生を求めて
「布団を芝生にする」
さっくりと言ってみましたが、方法もわりとさっくりしています。
「人工芝を、布団(ベッド)にとりつける」
聞くところによれば人工芝、さいきんでは種類もだいぶ多岐にわたっているという話。
もっとも芝生っぽい人工芝……見た目もそうですが、おもに顔付近の肌が「芝生だ!」と錯覚してくれそうなものを、じっくり探してみようとおもいます。
うーんこれ、わりと芝生っぽいんだけど、残念ながらモップだ。
このホームセンター内では追随を許さないレベルに芝生。
おお、枯れた芝生まで再現している……
1メートル×1メートルのシート状になってます。うん、これに決めた!!
「多めに買っておいたほうが安心!」と4枚買おうとして、同行の友人に止められて3枚購入しました。芝生への気持ちが高ぶって、財布の紐がだいぶ緩んでいます。
芝生と毛並みの悪い犬は似ている
さて。持ち帰ってきた芝生を布団にしていきます。
のせてみて3枚が妥当な枚数だったことを確信。買いすぎなくてよかった。
どう加工しようか。
芝生の下には分厚いゴムが張り巡らされているので、複雑な加工方法が向かなそうなんですよね。
あ、なら布のガムテープで貼り合わせるのはどうだろうか。
単に家にあったというのが決め手なんですけども……
「見えないとこは、どうでもいい」の精神。
……と。あら、あれれれれ。ぜ、ぜんぜん粘着をしない!!
あっさり敗退しました。
そして。出ばなをくじかれたことで、さっそく思考を停止しかけている頭。
「も、もういい。張り付かないなら……そのまま置く!!」
置く。つまり配置以外には何もしないということ。
ただ、弾力性のあるマットレスの上でだと、置くだけではすぐにずれてしまう。
なら、いっそマットレスを外せばいい。
マットレスの下に足付きの土台があるから、その上に芝生を置けばどうにかなる。なるはず。
ああ、どんどん雑になっていくジャッジ。
まあ、せめて背景くらい何かしとこうかな。
そして、マットレスは先述どおり移動をさせつつ……
おおーーっ、芝生!!芝生だ!!!
雑さはスピード。ものの1時間も経たないうちに完成しました。
ああ、あのざらざらっとした、やんわりと刺す刺激が全身に広がってゆきます。
外界に晒されていないぶん、ゆったりその感触を噛みしめる余裕もあり、なんとなく昔飼っていた毛並みの悪い犬の背中を何度も撫でていた時の気持ちを思い出しました。
ざらざら、すんなり気持ちのいい肌触りとは言えないのに愛着をかんじてしまうという点で、芝生と毛並みの悪い犬は似ているのかもしれません。(わたしの中で)
そして頭上には、ビニールシートで表現した安そうな空。
素材選びですでに失敗しているところを、夏休みの絵日記テイストな雲描写が追い打ちをかけています。
とはいえ、うつぶせになってしまえば空なんぞ視界に入らず。
乳搾りの映像(テレビ)効果で、まずます芝生感は高まる。
それにしても芝生よ。なぜそんなにも、部屋にあることに違和感がないのか。
そう、完全にアウェイな飲み会にしれっと参加して、やたらその場に馴染んでいる人って時々いませんですかね。
もし心当たりがなかったら、イマイチ共感性のない例えになってしまうんですが、我が家に配置された芝生は今、まさにそんな感じなのです。
芝生が早々に部屋に馴染んでくれたおかげで、わたしも早々に芝生に馴染んでゆき……
芝生でゴロゴロしながら顔パック。家ならでは。
漫画雑誌も好きなだけ両脇に置いてゴロゴロ。家ならでは。
自由気侭さが時間を追うごとに増していく気配しかしません。
そして、ついにお酒セット購入に至る。
「この空間には、ワンカップがいちばん似合う!」
撮影をしてくれていた友人の一言から、「悪酔いをしそうだ」という勝手な先入観で敬遠をしていたワンカップにはじめて手を伸ばしました。
茶色だらけのおつまみも、緑の上に置けば気にならない!
思わず笑みがこぼれている。
テレ東のアニメ見ながら、かんぱーい。
で、撮影に呼んでいた友人も芝生の世界に勧誘する。
花見をしているような気分になってきました。お酒がぐんぐんすすんでしまう。
はじめて見た「アイカツ」に感化をされ、「このままアイドルが増えつづけたら、お客さんの数よりもアイドルが多くなってしまうんじゃないだろうか。」そんな話も盛り上がっています。
そしてまたゴロゴロ……っていうか寝る。
やっぱりもうちょっと、着実な芝生布団にしよう
深夜。ふっと目が覚めました。
「あれ、なんでこんなに体が痛いの!?」という衝撃とともに。
そう。マットレスを失った台は、長時間寝るのに適すわけがない。だって「台」なんですから。
マットレス「お前そんなことも考えてなかったのか。」
やっぱり、置くだけじゃだめだ。だめなんだ。
長期的にゴロゴロできてマットレスの居場所も取り戻せる方法を考え直そう!
布ガムテでは太刀打ち出来なかった芝生と芝生の結合には、太い針と糸を用意して……
このぶっとい針、「特殊針」っていうカテゴリーらしい。
ぐいぐい押し込んで、通します。
土の断面に見えるように、根っこの絵を描いて……
アロマスプレーもかけてみます。たっぷり!
なお、このスプレーのにおいは店頭のおねいさんセレクトです。「え、芝生のにおい?」と戸惑いながら真剣に選んでくれている姿にはちょっと胸が痛みました。
で。完成です。
おお、前作よりも、明らかに布団っぽさが倍増している。
左下のiPhoneは「充電が、芝生の上でもできちゃうよ!」的な売りポイントとしてあえて入れています。どかし忘れじゃない。
近写すると手塗り感まんさいの根っこ。
わたしにも、根が生えそう。
安定感も3倍くらいアップしているから
高校野球にも、がぜん集中できます。
画像からは一切伝わってこないとおもいますが、アロマ効果で非常に草っぽい香りもしていて
香りと安定のダブル効果は、もう無敵な気がする。
芝生ーーーーっ!!!
ああ、夢のようです。
インドアライフに、命の芽吹きを感じる!
この話、ドリーミーなままでは終われませんでした。
正直にいうと、がっちりマットレスと芝生を結合しすぎてしまい、それを剥がすのが面倒くさくって、その後2週間ほどはそのまま芝生の布団で寝起きしていたんですよ。
そうしたら……
なんかやたらに背中が凝る!!
どうやら。日を重ねるとじわじわ体に影響があるみたいなんですね。芝生の下地についている分厚いゴム、あれがマットレスのクッション効果を届かなくする模様で。
むかし整体師に言われた「君の背中は亀の甲羅のようだ。」っていう台詞が、脳内でリフレインをしはじめました。これはいけない。
ということで、そろそろ従来の布団生活に戻ります。
さよなら芝生、また会う日まで。
別れを惜しむため、アレンジもしてみた
当初このままずっと続けてみようかとおもっていた宅内芝生ライフですが、そうはいきませんでした。夏に終わりがあるように、芝生との共生にも、限りはあるのですね。
最終日。ふと思い立って芝生をサッカーコートにしてみたりしましたが、これはなかなか興奮しました。
よく見ると白いテープがよれよれなのは、気にしないでほしいです。
芝生シート。いつかまた活用したいとおもっています。たぶん、布団以外で。