特集 2014年9月9日

人間には二種類ある。サングラスをかける者とかけない者だ

サングラスと私達の間にある溝
サングラスと私達の間にある溝
タモリ、そしてエグザイル。サングラスをかける者がいる。

なにを当たり前のことをとお思いだろう。しかし私はふざけて以外でサングラスをかけたことがない。かける者はかけるし、かけない者はかけない。

だが最近になってサングラスを買った人が周囲に出はじめた。あっ……もしかしてあれは良いものなんじゃないかと思い当たった。

かける者とかけざる者、私達はわかりあえるのか。かける側の方は何を大層なとお思いでしょうが、私サングラス、かけてみます。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

メガネ屋の意見をきこう

あれはやっぱりいいのだろうか。そう思ったらサングラスを売る人に説明してもらうのが一番いいだろう。

サングラスはこんなにいいんですよ。そんなサングラスのよさシャワーを全身に浴びて私の(あれはタモリなどの選ばれし人々のもの)という洗脳をといてもらうのだ。

さあサングラスに一体どんなよさがあるのか。新宿のメガネ屋をめぐった。
「そういえば昨日、こんな夢を見たんです。メガネをかけた桃太郎の背中に赤い文字で『信用』と書かれているんです……」 「あなたそれは夢ではありませんよ。メガネドラッグです」
「そういえば昨日、こんな夢を見たんです。メガネをかけた桃太郎の背中に赤い文字で『信用』と書かれているんです……」
「あなたそれは夢ではありませんよ。メガネドラッグです」

夢のメガネ店、メガネドラッグ

メガネをかけた桃太郎がいる。背中には大きく「信用」と書いてある。メガネドラッグである。

麻薬的にやめられないメガネなんだろうなと思っていたが、薬局がメガネを置きはじめたからメガネドラッグなんだそうだ。へ~。

しかしまさかはじめてお世話になる日がサングラスだとは。桃太郎を信用してまずはメガネドラッグにきた。

店内に入るとサングラスコーナーがすぐそばにあった。感じる。サングラスのよさをびんびん感じる。サングラスのよさが滝のまわりのマイナスイオンのようにただよっている。

はたしてそのよさの正体とは。店員をよびとめてきいてみた。

「すいません、そもそもなんですがいいですかね…」
「はい」
「あの……サングラスってやっぱり良いんですか?」
「はい?」
紫外線から目を守るという機能がある。タモリとかエグザイルのことばかり考えてたけど機能もちゃんとあるのだ。
紫外線から目を守るという機能がある。タモリとかエグザイルのことばかり考えてたけど機能もちゃんとあるのだ。

みんなふざけてかけてるわけではない

店員が言うにはサングラスは紫外線から目を守ってくれると。紫外線は目に、とくに網膜によくないらしい。なるほどなあ。みんなふざけてかけてるわけじゃなかったのだなあ。

しかし紫外線が目に悪いといわれても今までの人生すべてそれですごしてきたわけだし……一体どのタイミングでみんな紫外線が気になるのだろうか。
パリにも店があるパリミキ。めーがーねーの♪ミーキー♪である
パリにも店があるパリミキ。めーがーねーの♪ミーキー♪である

パリミキ

二店目は高級感ただようパリミキ。西日本でいうメガネの三城。パリミキはちゃんとパリに店があるそうだ。それも40年前から。今ではロンドンにもディッセルドルフにもある。あと中国にむちゃくちゃある。HPで見た。

パリミキでもやはり機能としては目の保護が一番じゃないかという。そして「あとは圧倒的に楽です」と。楽なのか。タモリとかあれ全部楽だったのか。

「まぶしさっていうのは疲れちゃうんですよね、やっぱり」

ほほう。たしかにあれは疲れそうな気がする。目をぐわっと細めているわけだし。

「これなんかが一番有名な形ですけどね、かけてみますか?」
ふざけているのではない、試着をしているのである
ふざけているのではない、試着をしているのである
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なるほど、たしかに楽かもしれない

かけたのはレイバンのレイファーラーという形。これ知ってる。ブルースブラザーズだ。

屋内ではあるが楽だという感覚もわかる。刺激が圧倒的に少ない。そしてお姉さんは私のめがねを洗ってくると言ってどこかへ行ってしまったのだ。

不安だ。このまま帰ってこなかったらどうしよう。この気持ち、インドで経験したことがある。パスポート渡した店員が外へ出て行ってしまったのだ(追っかけた)。
ブランドごとにディスプレイされている場合が多い。レイバン社、オークリー社、POLICE社など
ブランドごとにディスプレイされている場合が多い。レイバン社、オークリー社、POLICE社など

今サングラスの人は増えている

しばらくしてお姉さんは鼻あてがつぶれてたから直しましたと帰ってきた。なんて気が利く人なんだ。急激なムチからのアメの落差に、秀吉を見る信長のような気持ち。城をやろう。

「『これ変じゃない?』って(サングラスをかけることを)気にされるお客さんはやっぱりいますね。でも今増えてきてますからね」

それだ。周囲にサングラス出てきたなというのはやっぱり増えてるんだ。子乗せチャリで通園するお母さんとかサングラスしてるけど、あれ一昔前はおばちゃん枠だからなあ。
眼鏡市場、ALOOKともにメガネトップ社のお店
眼鏡市場、ALOOKともにメガネトップ社のお店

サングラスは一年中かけてもいい

つづいては眼鏡市場。ALOOKという同じメガネトップ社の眼鏡店と一緒になっている新宿のビル。超一等地のこのビル全フロアでメガネを売っている。そんなに買う人いるのか、メガネって。

もう三店目になると話はだいたい同じになってくるが新しい情報としては西日。

「これからの季節、日が低くなってきて目に差し込むように日光が入ってくる。とくに西日がすごく目に疲れるんですよ」という。

これでサングラスを通年でかける理由ができた。西日にはサングラスだ。

そしてここでは普通のフレームに数千円足せばサングラスのレンズを入れられるという。無限だ。ここにきて選択肢が無数に増えた。

眼鏡の数だけサングラスがあるのだ。涙の数だけ強くなれる感じがある。
メガネスーパーのキャラクターはフクタンとその妹のフクリン。妹なんているのか?
メガネスーパーのキャラクターはフクタンとその妹のフクリン。妹なんているのか?

サングラスは人々の役に立っていたのだ

「やっぱりまぶしさが楽ですよね」

四店目、メガネスーパーの店員もそう言う。あとは紫外線の話、うんうん。悪いんだよな。

「紫外線が目に弱い方もいますし、白内障にもなるんですよ。その予防ですよね」

白内障。こりゃたいへんだ。ロックマイソウルのようなこの響き。まさに今、魂を揺り動かされた。

タモリとかエグザイルとかを見て私達はグラサングラサンといっていた。しかしサングラスはちゃんと人々の役に立っているのだ。
外に安売りのコーナーがあった…これなら買えるな
外に安売りのコーナーがあった…これなら買えるな

サングラスのおじいさんがいるわけ

メガネ店に勤める友人がいる。彼にメッセージを送り、サングラスをどう薦めているのかきいてみた。

「だいたいお客さんには『白内障の手術したから医者にサングラスかけるよう言われたんだけど安いのないかね』と言われるんでとりあえず安いのを差し出してます。

説明は『色が濃い方がよりまぶしくないですよ』と言ってます(※あたりまえだ)」


そうか、それでおじいさんがサングラスかけているのか。ロックバンドの彼の昼間は介護士だったような気持ち。そのギャップがたまらんです。
思い切ってスポーツタイプのものを買ってみました
思い切ってスポーツタイプのものを買ってみました

サングラスを買ってみた

そろそろいいかと思い、メガネスーパーの外の安売りコーナーで3500円のサングラスを買ってみた。

大門系やカート・コバーン系塩沢とき系もあったがここはあえてなじみのないスポーツ系を選んだ。レンズの色は玉虫色。世が世がなら螺鈿細工として国宝ものだろう。
なるほど、たしかに目が楽だ
なるほど、たしかに目が楽だ

圧倒的に楽な世界だ

これがサングラスか。たしかに楽だ。目から受ける刺激が少ない。これはやさしい世界だ。

映画『ゼイリブ』ではあるサングラスをかけると地球人に化けた宇宙人を見破ることができる。サングラスでだ。なんてチープな仕組みなんだと笑っていた。

しかしそれはかけざる者の意見だった。世界が変わるという感覚はたしかにある。色が変わるだけではなく刺激が少なく平坦な世界である。

こういったちがう世界であるという感覚は芸能の世界においても有効なのではないか。芸名もそうだ。もう一人の自分をもつことによってアクセルを目一杯踏み込めるのだろう。

わかったわかった。かけたとたんに溢れ出るわかった。そして雨がふりはじめた。サングラスをかけると雨がふることもわかった。
スターバックスに入ってもいいのだろうか
スターバックスに入ってもいいのだろうか
なんせこの見た目だ。やばい。どこのプロだ、どこの。
なんせこの見た目だ。やばい。どこのプロだ、どこの。

世間の目が気になる

しかしこの見た目、大丈夫なのだろうか。

なにかプロな感覚が出てないだろうか。大北プロ(45)と名札をぶらさげているような。なんのプロかは知らないが。

雨が降ってきたので喫茶店に入ると買い物中の女子大生グループと相席になった。彼女たちがかわいそうだ。

そしてこの後、義母をむかえてごはんに行く予定があった。義理の息子がプロのような見た目に。お義母さん、ちがうんですこれは。
子供が喜ぶサングラス。
子供が喜ぶサングラス。
日暮れ時がより夕焼け色になる
日暮れ時がより夕焼け色になる
夜は暗い。絶望的なほどだ
夜は暗い。絶望的なほどだ
料理はまずそうに見える
料理はまずそうに見える

夜のサングラスというのは相当変だ

サングラスをかけたまま秋田から出てきたお義母さんと晩御飯を食べに行く。

電車の中などはかけていても問題はない。サングラスを外すとまぶしさを感じる。照明が相当明るいことに気づく。

ただ夜は別だ。夜にサングラスをかけている人を見ると私達は違和感を覚え、タモリなどの顔にサングラスがこびりついてしまった人なんだろうなと思う。

これがやってみると違和感どころではない。世界の終わりみたいな夜の暗さだ。気分がそれだけで落ち込んでしまう。

またごはんを食べるときもサングラスは厳しい。色が暗く地味になって色鮮やかな野菜サラダもぬか床みたいに見えてくる。見るからにまずそうだ。
これが義理の息子か
これが義理の息子か

あれはやっぱりいいものだった

考えてみれば私達は「グラサン」という省略語を持っている。それほどなじみ深いのにサングラスをかけたことがなかった。これは省略ではなく蔑視だったのではないか。そこには溝があった。

実際にかけてみるといろいろなことがわかった。かける者とかけざる者との垣根を越えた。もうベリーロールあたりで華麗に飛び越えた。

タモリよ、エグザイルよ、釣りのプロたちよ。あなたたちに見えていたのはこんなにやさしく平坦な世界だったんですね。

そんなわかり合えた気持ちで、そもそもの発端となった私の周りのサングラスを買った人になぜ買ったのかを訊いてみた。
え? アーユルヴェーダ? 謎はまだつづく
え? アーユルヴェーダ? 謎はまだつづく
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