近江町市場は「このえまち」ではなく「おうみちょう」と読む市場
まず最初に説明しておくと、私は近江町市場のことをずっと「このえまち」だと思っていたくらい、この市場についての知識がなかった。正解は「おうみちょう」で、今でもよく間違える。
そんな我々が訪れたのは、8月の土曜、日曜の朝9時くらいからだったのだが、築地場外やアメ横のようなゴミゴミした感じがない。
市場といっても一般人向けの要素が強いため、朝よりも夕方の方が混み合うのだろう。のんびりした気分で観光したいなら、比較的空いている午前中がおすすめだ。
市場らしくない広々とした通路。朝9時から営業の店が多いので、早朝に訪れないように注意。
なんでもこのあたりは大規模な再開発がおこなわれ、それが2009年に完成したばかりとのこと。「近江町いちば館」という地上五階地下一階建てのビルが市場の中心となっている。
そのため昔からの活気は残しつつも、建物が新しかったり、通路の幅が広かったりと、なんとなくテーマパークっぽい感じの空間なのだ。
楽しいポイントその1 鮮魚店が素敵
そんな近江町市場の魅力的なポイントだが、一番はやっぱり鮮魚店の充実だろう。当たり前すぎるポイントだが、これはやはりはずせない。
やはり日本海側だけあって、店頭に並んでいる魚は太平洋側の関東とはちょっと違うし、同じ魚でも名前が違ったりしておもしろいのだ。
魚屋っていいですよね。
新鮮な魚に圧倒されてしまった。左上にウスバハギが売られているのがポイント高い。
見慣れているイカやイワシも、ここでみるとなんだかおいしそうに見えるんですよ。
コッペってなんだろうと思ったら、エイのことなんですね。煮付用に人気があるそうです。
大型のシロギスが刺身用として売られているという魚力の高さ。
養殖と天然が並んで売られているアユ。値段は3倍だが、せっかくなら天然ものを買うべきかと悩みまくる。いや、今日は買えないんだけれどさ。
アワビにも「上り」とか「下り」があるのかな。
能登のタコが1500円!これは買いだ!いや、買えない!くやしい!
こそくらというのは、ブリの幼魚のことかな。初めて聞く名前だ。
キラリと光る新鮮なニギスを発見。これはなかなか関東では手に入らないクオリティだ。
金沢で人気の高級魚といえば、やはりノドグロ(アカムツ)だろう。地元産の大型はなかなかのお値段だ。
最近は九州方面からたくさん流れてくるようで、それなら私でも買えそうな値段である。こちらは土佐のカツオならぬノドグロ。
小さなサイズなら安いけれど、やっぱり刺身にするならある程度の大きさが欲しい。うーん、迷う。
冷凍の干物は、実物じゃなくて写真が飾られていた。ライター乙幡さんのホッケース(
参照)かと思った。
夏場でもカニはたくさん売っていた。冬になればもっとカニであふれるんだろうな。
カニは値段と品質がピンキリなので、一番買うのに迷いそうだ。あきらかに観光客相手みたいな店もあるみたい。
そして忘れてはならないのがエビの存在である。質のいいアマエビ(ホッコクアカエビ)は本当にうまいよね。
お金に糸目を付けなければ、ボタンエビは買いだろう。このエビの甘さとブリンブリン感はすごいのよ。
ちなみにボタンエビの本名はトヤマエビで、石川県で獲れてもトヤマエビなのだが、富山県以外では本名であまり呼ばれない。ここは富山ボタンと表記されていますね。
これはモロトゲアカエビ、通称シマエビかな。手ごろな値段でうれしい。
金沢の魚、素晴らしい。ちなみに漁がおこなわれない日曜よりも、土曜の方が品揃えは断然良かったので、できれば今度は平日に来たいところだ。
それにしてもである。今回の旅では日程的にここで生魚を買うことができなかったのがとても悔しく、今度ここを訪れるときこそは、宿泊先に調理場を確保するか、ここから自宅へ直帰するスケジュールにして、魚をたっぷりと買いたいと思う。
来年、北陸新幹線が金沢まで開通したならば、ここまで夕飯の買い物のためだけに来るのもいいかもしれない。
楽しいポイントその2 八百屋も素敵
さて次に紹介するポイントだが、魚屋だけでなく、八百屋にもぜひ注目していただきたいのである。
魚に比べれば野菜は比較的全国共通のものが多いけれど、金沢には加賀野菜と呼ばれる独特の野菜があるらしく、それが普通に売られているのだ。
近江町市場で八百屋の店先を見ていると、なんだか海外に来たような気分になってくる。
金沢の食文化、奥が深いね。
カボチャ(なのかすらよくわからない実)の種類がとても多かった。ここはどこの国だという気分になる。
金沢の人は、これらをどうやって使い分けるのだろう。
「金時草」と書いて、「きんじそう」と読む加賀野菜の代表。まるで観葉植物みたいで、まったく食べ方がわからない。
加賀野菜とは違うけれど、「エロークイン」という名前がちょっと気になったメロン。
そして八百屋とはちょっと違うけれど、豆を使った店ということで紹介してしまうが、和菓子屋の品ぞろえも独特だった。
豆板本舗の和平さん。豆板ってなんだろう?
ヒョウ柄のおねえさんに試食を勧められた、これが豆板というものらしい。そのまま食べたり、炙ったり、豆ごはんにするらしい。
和菓子というか、ほぼ豆だ。豆がまとまるギリギリの量の餅で固めているという感じで、素朴でうまい。甘くない和風スニッカーズという感じで腹に貯まる。これならお土産に買える!
そして衝撃的なヴィジュアルの餅を購入。黒くてツヤツヤして平べったくて台所にいるアイツの卵を想像してしまったが、ささげという豆だそうです。
金沢の夏といえば、このささげ餅なのだとか。あんこが入っていそうだけど、なにも入っていなくて驚いた。あっさり塩味の珍しい和菓子。
魚介類だけではなく、野菜も楽しい近江町市場。訪れる季節によっても、また違う出会いがありそうだ。
楽しいポイントその3 その場で食べられる店が多くて素敵
さあ最後となるポイントだが、魚屋や八百屋の店先に、うまそうな食べ物が並んでいると、「これをこの場で食べさせてくれ!」と思う人も多いだろう。
近江町市場には、そんなストレートな欲望をかなえてくれる店がとても多いのだ。その場ですぐに食べられれば、買って帰れない観光客も大満足である。
訪れたのが8月だったので、イワガキをたくさん並べている店がたくさんあった。夏季のカキといえばイワガキだ。
カキの山を前にして、「これをどこか食べられる店はありますか?」と聞いたら、「ここ!」という答えが返ってきた。この場で食べられるのだ!
そして特大のボタンエビまで食べられる!
「Eat Here」なのである!
イワガキは500円から1200円まであったが、せっかくなので一番高いのをいってみた。
これが1つ1200円のイワガキである。この写真だと大きさがわかりにくいか。
こっちの方がわかるかな。携帯とカキの遠近感が狂う大きさなのだ。
このイワガキがすこぶる美味しく、翌日も訪れて食べてしまった。この身の張り具合が素晴らしい。
ちなみに他の店には1500円の超特大サイズまでラインナップされていた。
もちろんボタンエビもいきますよ。600円。卵はとても美しいけれど、味は特にない気がする。
ボタンエビをリフトアップ!ブリンブリン!酒が欲しい!
ついでにウニもいってしまえ。500円。日本酒が欲しい!
こういうつまみ食いみたいなことばかりしていると、酒が欲しくなってきてしまうのだが、そんな要望に応えてくれる店もしっかりとある。
その名も刺身市場!
ここはイワガキやウニ以外に、ホタテや魚の刺身があって、それをこの場で食べられるのである。
お酒の値段も良心的。ただし私は運転があるので飲めないという罠なのだが。
こちらは焼き物やお寿司も揃っている店。
憧れのノドグロを発見!さすがにちょっと高いけれど、これはいっておくべきだろう。
炙られた皮からにじみ出る脂がうまいんだよね。
ノドグロといえば、海鮮丼の店に食べ歩き用のノドグロ手巻き寿司が売っていた。
そして食べ歩きといえば、ドジョウの串焼きなんていうのも売っている。
ずいぶん高いダンゴだなと思ったら、ホタテの串焼きだった。
そして恐るべきことに、その場で食べられるのは魚介類だけではなく、デザートとしてフルーツも用意されていたのだ。
イチゴやメロンを串に刺して売っているのはたまに見かけるけれど、フルーツ坂野はちょっと違った。
ここでまさかの丼に出会いました。
オレンジジュースという名称で、オレンジにストローを刺したものが売られていた。
揉んで果汁を出して吸うタイプの生ジュースだそうです。もちろん果汁100%。
そして近江町市場で一番の衝撃だったのが、このメロン丼。300円とリーズナブル!
丼を名乗るくらいだから、もしやご飯をタネのところに詰めるのかとドキドキしたけど、そんなことはなかった。
まさか近江町市場まできて、最終的にメロンを食べることになるとは思わなかったが、よく熟れて食べ頃だった。
さっきまで買い物をするために近江町市場まで来たいとか言っていたけれど、その場で食べられる刺身や寿司をつまみに一杯やるだけというプランも、もしかしたらありかもしれない。
夜行バスで行ける天国があるとすれば、それはきっと近江町市場だ。
「このえ」じゃなくて「おうみ」だよ
しっかりと地域に密着しつつ、観光客を迎え入れる懐の深さも持った、このえまち、じゃなくて近江町市場はとても楽しい場所だった。
とりあえず、いつか次に訪れるその日までに、その名前をしっかり覚えようと思う。おうみちょう、おうみちょう、おうみちょう……