商人地域に伝わる「ウルルン油」
島根県津和野町の山の中にある、商人(あきんど)という地域に伝わるウルルン油。
衝撃的な名称であるが、「ウルルン油」で検索(もちろん変換前の名前で)しても情報はほとんど出てこない。
一部地域ながら今でも日常的に使われているものなのに、その気持ち悪いイメージからなのか、世間には広まっていないのだ。
今回はそのウルルン油を持っているという役場の方に協力していただき、実物を見せてもらうことになった。いったいどんなものなのだろうか。
津和野町商工観光課の藤山さん「こなれたやつ持ってきました」
藤山さんはあまりグロいのは良くないだろうと、10年ものの熟したウルルン油を持ってきてくれていた。
ほかにもあるのだが以前にTV局に取材されたときグロくて使えない、とお蔵入りになってしまった経験がるのだそうだ。
あやしい黒い液体
・・・いる!
ここでちょっと一休み。津和野はのんびりできるいい街ですよ
みんな「マイ・ウルルン油」を持ってる
瓶の底からよく見てみると、沈殿物が確認できた。あんまり想像力を働かせてはいけないやつである。商人に住む人はみんなこの「マイ・ウルルン油」を持っているのだそうだ。
中は強烈なにおいがするそうだが、こうして蓋をしていればさすがににおいはしない。
もちろん開けるけど
すぐに後悔
藤山さんもけして慣れているわけではない
珍味のにおい
物凄く生臭いにおいだった。
瓶から離れ、10秒くらい気持ちを落ち着かせてからにおいを分析したところ、2ヶ月くらい洗っていない犬にイカの塩辛を塗ったようなにおいだった。
野生のにおいと魚を発酵させたようなにおいなのだ。藤山さんはクサヤみたいな感じかな、と短く表現していた。
うん油だ。においも慣れてくると日本酒に合いそうだな、と思うようになってきた
かゆみには効かない
虫刺されにきくといってもかゆみにはきかない。あくまで効くのは痛みに対してだ。
一番古い由縁を知る現在98歳の方の話によると、その方のおばあさんがマムシに噛まれた時にこれを塗って病院に向かったが、痛みが引いたので途中で帰ってきたという。すごい!
蚊にさされてた所に塗ってみる。しかし痒みに効果は感じない
いつから、なぜウルルンを油に入れたのか、なぜそれを虫に刺された後に塗ってみたのか、その理由を知る人はもういない。
ただとにかく痛みに効くから臭くても気持ち悪くても作るのだ。
山の中に入る時にはコスメ用の小さい入れ物に油を入れ持っていくそうだ。
5年前に特許取得済み。商人の住民が前代未聞の21名連名で取得
なかばノリで特許もとっている。ただ商品化まで考えると莫大な費用と薬事法などのハードルが高くて無理。製薬会社などから声がかからないかな、と待っている状態だ。
ウルルン油レシピ公開!
商品化までの道のりはどうやら厳しそうだが、誰でも作れるものである。
作り方を教わったのでハチやムカデ、アブ、ブヨ、マムシなどが出るような地域に住んでいる方は参考に作っておくといいかもしれない。(ただし効果の保証をするものではありません)
1、菜種油を小瓶に入れる。※キャノーラ油はウルルンが溶けにくいらしいので避ける
2、見つけたウルルンをササっと水で洗って生きたまま入れる
3、何匹かてきとうに入れる
4、流しの下など暗所に置いておく
5、3~4年熟成させる
6、あめ色になったらできあがり!
これは途中過程。ウルルンの溶解したところと分離されているのが分かる。藤山さんに写真を送ってもらったのだが、「怖くて開けられません」とのこと
商品化を期待
できあがり! と書いたが、無理だ。自分では作りたくない。でも今後ハチなどに刺された時にウルルン油があればなあ・・・と悔しがる気がする。
いつかどこかの製薬会社が商品化し、いちごの香りのするウルルン油が出るのを期待したい。
くさいと言いながらもこのあとお風呂に入るまで何度も嗅いだ。案外クセになるにおいなのだ
津和野は夜も綺麗です
広まらない薬
お話を聞いた藤山さん、持ち主なのに瓶の蓋を開けると嫌そうな顔をしていたのがおかしかった。それにしてもウルルンのどこに痛みを緩和させる成分があるのだろう、興味深い。
「ジメジメとしたところにいて気持ち悪い」だけのウルルンだったが意外な効能を発揮すると知って、ちょっとだけイメージはよくなった気がする。
ただ、観光課である藤山さんは津和野のイメージアップにはならないだろうね、と苦笑いしていた。
ほかの津和野町職員の方も全員は知らなかった。まったく広まっていないのだ