特集 2014年8月19日

長岡の厳しい風土が生んだ健康法、それがヌンチャク健康法

長岡の医師、樋口裕乗さんが開発したヌンチャク健康法
長岡の医師、樋口裕乗さんが開発したヌンチャク健康法
考えてみれば体を動かすと健康になるので世の中に健康法は数多くある。道路工事の器具で整体をしたり、びっくりするようなものも中にはある。

新潟県長岡市にはヌンチャク健康法なるものを考案したお医者さんがいる。

一体どんなおもしろ健康法なのだろう。見せてもらった。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

雪国で生まれたヌンチャク健康法

樋口先生がヌンチャク健康法を実践する場所は長岡駅前にある。

冬には雪が多くふるのかアーケードがしっかりして薄暗い商店街の一角にその場所はあった。樋口皮膚科医院。なんと病院だ。
指定された場所が病院だ
指定された場所が病院だ

病院は営業まっただ中

お医者さんだとは知っていたが道場も病院だとは。そして取材を申し入れた時間はまさに開院中。診察前のように待合室のソファで待っていた。
しかも開院中だ。いいのか。
しかも開院中だ。いいのか。
医院に飾られている写真がヌンチャクふりまわしたおじいさんだ
医院に飾られている写真がヌンチャクふりまわしたおじいさんだ
とりあえずこれ持って上の階へ上がっていけという。ファミコンのRPGゲームみたいな展開だ。
とりあえずこれ持って上の階へ上がっていけという。ファミコンのRPGゲームみたいな展開だ。
よくわからないものが飾ってある広い部屋へ
よくわからないものが飾ってある広い部屋へ
的らしきものとウルトラマンの人形が…
的らしきものとウルトラマンの人形が…
この時点で今回はマッドサイエンティスト系なんだろうなと思っていた
この時点で今回はマッドサイエンティスト系なんだろうなと思っていた

診療中のお医者さんが

しばらくして「お待たせしました」と樋口裕乗さんがやってきた。

お時間は大丈夫ですかときいてみると「ええ、患者さん来ますからあんまりゆっくりもしてられないんですけどね。せっかく来ていただいたから」と。心配は的中、おもいっきり開院中だ。

患者さん来て先生が上でヌンチャク振り回してていいんだろうか。
ヌンチャク健康法を考案した樋口裕乗先生
ヌンチャク健康法を考案した樋口裕乗先生

くわしくはウィキペディアを

「ヌンチャクの知識ありますか?」と樋口さんがいう。まったく知らない。

「まったく知らない人に説明するのはむずかしいけど、まあウィキペディア見たらわかります」と。

たしかに。その後ウィキペディアを読むとよくわかった。

ヌンチャクはもともと沖縄の古武術の武器。1945年に東京で流派として立ち上げた荒川武仙氏が樋口さんの持つ45cmヌンチャクを考案。ヌンチャクを世界的に有名にしたブルース・リーはフィリピンのヌンチャクを参考にした説が有力。今は「フリースタイル」と呼ばれる個人演武が盛んである。
(参考 wikipedia"ヌンチャク"

さすがウィキペディアは勉強になる。

いや、ちがうんです、樋口先生。ヌンチャク健康法とは何んなんですか?
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ヌンチャク健康法はこれといってルールはなく、112の振り方を好きなだけ振って健康になろうという考え方
ヌンチャク健康法はこれといってルールはなく、112の振り方を好きなだけ振って健康になろうという考え方

ただヌンチャクを振る健康法

樋口先生はそれまで少なかったヌンチャクの振り方を112に分類したそうだ。

「ヌンチャク自体が未知のスポーツなので振り方がわからないって人が多い。こういう振り方でやれば楽しいし健康になりますよって」

112通り振ると約15分、一日15分ヌンチャクを振って楽しみながら健康になりましょうというのがヌンチャク健康法らしい。

その振り方一つ一つには効用があるわけでなく、いってみればただヌンチャクを振りさえすればいいようだ。

健康のためにヌンチャクを振れ。それが一体どういうことか知りたかったのに、ここにあるのはただその事実のみである。
ヌンチャクの振り方を112に分けたのがヌンチャク健康法
ヌンチャクの振り方を112に分けたのがヌンチャク健康法

ヌンチャクが上手なおじいさんがいた

樋口先生はそもそも武術に無縁だったらしいが毎日やってるというだけあって上手にヌンチャクを振る。

「私はフリースタイルもやってます。こうして逆手、順手と持ちかえる技を開発したんですよ。バトントワリングみたいにできます」

バトンみたいにヌンチャクをクルクル回す樋口先生。おじいさんが新技を開発したり、ヌンチャク業界はまだまだブルーオーシャンが広がってるとみた。
この写真を見てヌンチャクを持ってるとは予想しにくい。孫の手を持ってそうだ。
この写真を見てヌンチャクを持ってるとは予想しにくい。孫の手を持ってそうだ。

とくにどう効くとかじゃないようだ

樋口先生は高齢のお医者さんらしく落ち着いた話し方である。

ヌンチャク健康法の効用もはっきりとは教えてくれない。適当にあたりをつけて、筋肉周辺が柔らかくなりそうですよねときいてみると、

「筋肉もやわらかくなるし、肩こり、腰痛も治るね」

ほんとですか、ぼく最近ヘルニアになったんですが治りますか?

「それはわからないけどね。でもあなたもせっかく来たんだから振ってみなさい」
「あなたもやってみなさい」といわれてチャレンジ。適当に振ってみたら当たって痛い。
「あなたもやってみなさい」といわれてチャレンジ。適当に振ってみたら当たって痛い。
君も振ってみなさいというわりにはなにか教えてくれるわけでもないので、とりあえずこんな感じかなと振ってみたら体に当たって痛い。これ、痛いですね、先生。

「まあ肩に当たるのは肩たたきみたいなものだよ」ほんとですか、先生。

お医者さんは健康オタクにくらべて物言いが細かくない。とにかく体を動かせば健康になる。そんなざっくりした信念も医師発の健康法だからかなと思う。
「このヌンチャクはカレンダーでできてるんですよ」おばあちゃんが小物いれをチラシで手作りしたりしているが、まさかヌンチャクもその感覚で
「このヌンチャクはカレンダーでできてるんですよ」おばあちゃんが小物いれをチラシで手作りしたりしているが、まさかヌンチャクもその感覚で

発端はヌンチャクの先生と知り合ったから

しかしそもそもなぜヌンチャクなのだろうか。

「それは吹き矢の縁で荒川先生と知り合いになったんです」

樋口さんはそもそもスポーツとしての吹き矢を最初に考案したそうだ。その書籍の広告を武道雑誌に載せたところヌンチャクの先生と知り合ってその縁ではじめたという。特に武術に興味があったわけでもなんでもないそうだ。

さあ、謎を追うと謎がひろがるパターンきたぞ。吹き矢ってなんですか?
国際吹矢道協会、以下手広すぎる樋口先生
国際吹矢道協会、以下手広すぎる樋口先生

スポーツとしての吹矢の考案者らしい

――スポーツとしての吹き矢ってあるんですか?

「当時は全くなかった。ウィキペディア見てくださいよ、私のことが書いてますから。

今は国際的になりました。ほらこの写真はフランスの市長の祝辞。みんな私のルールを採用してくれてるんです」


(参考 wikipedia"スポーツ吹矢"

またウィキペディアである。たしかにスポーツ吹き矢の項を読んでみると樋口先生が考案したようだ。しかしウィキペディアへの誘導が二回目となると先生自らが執筆してるのではという疑惑も生じてくる。

まあ真実であれば誰が書いたかは問題ではないのだけれども。
吹き矢にヌンチャク……だれでもできるからこのセレクトらしいが、おじいさんがやるものなのだろうか
吹き矢にヌンチャク……だれでもできるからこのセレクトらしいが、おじいさんがやるものなのだろうか
かなり遠い距離の的に当て、その数秒後に風船が破裂しあたりに火薬の匂いがした。何が起こったのかさっぱりわからない。
かなり遠い距離の的に当て、その数秒後に風船が破裂しあたりに火薬の匂いがした。何が起こったのかさっぱりわからない。

吹き矢の腕前となぞのからくり

吹き矢をデモンストレーションしてくれた樋口先生。10mくらいだろうか、部屋の端の的に見事に当てた。

だが問題はそのあとである。

すごいですねと話しかけた瞬間に背後で破裂音がして火薬の匂いが残った。……はてなマークがいくつも浮かぶ。どうやら的の近くの風船が割れた音のようだ。残ってるゴミからしてクラッカーで割ったのか。

全く説明しない樋口先生。一体なんなんだ。とにかく吹き矢でない何かを仕込んだようだ。
一体何が起こったんだ…
一体何が起こったんだ…
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どうやら昔の文献にあったカラクリ吹矢童子というのにヒントを得て風船が割れる仕組みを考案したそうである
どうやら昔の文献にあったカラクリ吹矢童子というのにヒントを得て風船が割れる仕組みを考案したそうである
それがこの人形と風船。これか…
それがこの人形と風船。これか…

ふつうのおじいさんなんだけど大事になっている

昔のからくりを再現したんですよ、と樋口先生はいう。他にやってるメンコ射撃に響き独楽もそうだが、からくりの再現のように機械じかけでない工作品が好きなようだ。そういうおじいさんは多い。

ただそれが他の人とちがっているのは、幟が立っていたり「国際メンコ射撃会」と名乗ったりプロジェクト化している点だ。
メンコ射撃とはゴム銃でメンコを飛ばすもの。あの的を当てる。子供はけっこう喜びそうだ
メンコ射撃とはゴム銃でメンコを飛ばすもの。あの的を当てる。子供はけっこう喜びそうだ
響き独楽はこの独楽がフィンフィン鳴る。作り方教室を主催しているらしい。
響き独楽はこの独楽がフィンフィン鳴る。作り方教室を主催しているらしい。
そして残る指導は指笛であるが「あなたが帰るころにきかせてあげますよ」とかたくなに最後を指定していた。なんなんだろう
そして残る指導は指笛であるが「あなたが帰るころにきかせてあげますよ」とかたくなに最後を指定していた。なんなんだろう

なぜこんなことをしているのか?

樋口さんは色々なことをやっている。そのすべてに共通しているのは室内でできることである。それはこのあたりの気候に関係している。

「この辺の気候はちょっと理解できないと思うけど、いい天気はほんとに少ないんですよ。夏でも非常に厳しい。外でスポーツできる天気なんて数えるほどしかないんです。それは住んでみなきゃわからないですよ」

なんと。長岡の厳しい気候がヌンチャク健康法を生んだのだ。

北欧の人々は気候が厳しいので家にいることが多く、だからインテリアデザインが発達したという話がある。これと同じことが起こってる。長岡が生んだスポーツ作家がこの樋口先生なのだ。
長岡の街。商店街のアーケードがしっかりしてるなと思ったらこういう気候がヌンチャク健康法を生んだのだ。
長岡の街。商店街のアーケードがしっかりしてるなと思ったらこういう気候がヌンチャク健康法を生んだのだ。

なぜスポーツを立ち上げるのか?

しかし樋口さんはなぜスポーツを立ち上げるのだろう?

「それは中高年の健康法のためですよ。中高年にとって健康法をなにかやらなければボケるし体は弱るし、社会的なニーズがあるんですよ。

でも医者のなかで健康法としてスポーツをやりましょうという人いないもんね。私は医学的な見地からなんでもいいからスポーツをすすめてるわけですよ。だけど適当なスポーツがないですよ。パワーがなかったりスポーツに縁がない人でもできておもしろいようなもの、それで行き着いたのが吹矢」
吹き矢の矢は手作り「これは納豆の包装紙でできてる。3パック包んでるやつ」厳しい時代を生きてきてこんなおもしろジャンルにも使えるものは使うのだろう
吹き矢の矢は手作り「これは納豆の包装紙でできてる。3パック包んでるやつ」厳しい時代を生きてきてこんなおもしろジャンルにも使えるものは使うのだろう
「まあもっといいスポーツがあったらぜひきかせてもらいたいと思うね。私も研究したり探してるけど今ないね。

今新しいのは指笛だけど、これも健康法としていいんだけど、指笛自体認知度が低い。あなたに帰りにきかせてあげるよ」


長岡のお医者さんの社会奉仕の心からすべて生まれていたのである。まさか、まさかこんなことになってるとは。ヌンチャク健康法、さあ笑ったやつはだれだ。
いよいよ帰ろうとなったそのとき、部屋の外で指笛がきこえてくる……練習しているのだ!
いよいよ帰ろうとなったそのとき、部屋の外で指笛がきこえてくる……練習しているのだ!
階段で見送りながら指笛をしてくれる樋口先生。なんなんだろう、この演出は

変わったおじさん道は深い

壁にウルトラマンの人形がぶらさがっている。狂気しか感じない。

しかし話をよくきいてみるとからくりを再現したくてただ身近にあったものを使っただけなのだ。

樋口先生の志は立派だ。手軽にスポーツができなくて困っている長岡の中高年にむけて健康法を提示している。

体が動いて楽しければそれはなんでもいいんだという。なんでもいいから新しく知り合ったヌンチャクをスポーツにしたり。身近にあったものを使う。

おじいさんがヌンチャクを振り回している姿はやはり見たことがないし、目にもいびつに映る。しかしそれでもやる。志があるからだ。

なんだこれは?というおもしろ案件に対して私達は敬意をもって接するべきだ。

そして逆をいえば志のある人からおもしろ案件は生まれてきやすいので、身の回りの熱い人をどんどん応援しよう。
著書「国際吹矢道スポーツテキスト」宣伝しておきますよと言ったら「いや、むだです。インターネットの時代は終わりましたよ」と宣言していた。早い…!
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取材協力

国際スポーツ吹矢協会
http://www.sportsfukiya.net/
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