インターンが生んだ奇跡
まずはきっかけから聞いてほしい。今日は当サイトの一日インターンの日だったのだ。
学生さん達がやってきておのおの工作を作り、その様子を記事に書く。
工作のお題は選択式。用意された選択肢から、パイプ椅子やチリトリなどの対象物、それから「かわいい」「せつない」などの形容詞をひとつずつ選び、たとえば「かわいいチリトリ」といった具合に自由にテーマを決める。
学生たちは自由に選んだ
みんなが選び終えたあと、僕の上司であるところの編集長 林さんに「石川くんもやってよ」といわれた時点で、残った選択肢は「ペットボトル」「かっこいい」しかなかった。
選択の余地ナシ!!
目の前に鎮座するのは、かっこよさとはほど遠いペットボトル
一応、指導役の立場である。先に選んだインターン生相手に「ずるい!」とは思わない。ただ、みんなが選び終わってから急に僕に参加を命じた編集長には思うところがある。
軽くパワハラである。工作ハラスメント、工ハラといってもいい。
しかし、学生に無様な姿を見せるわけにもいかない。この意地が、のちのち奇跡を生むことになる。
ペットボトルとかっこよさ
ペットボトルは基本的に消耗品である。一日で飲み干して捨てられてしまう短命なものだ。それ自体をかっこよくしてもあまり意味がないように思った。
では、それを使うことによって自分がかっこよくなれるというコンセプトはどうだろう。
飲めば飲むほどかっこよくなるドリンク。これを幻覚成分や麻薬成分を配合することなく、合法的に実現したい。
しかし、どうしたらそんなことが。
そのときふと視線を落とすと…
ペットボトルの表面に水が滴っていた。
俺は水も滴るいい男
買い出しに行くとだいたい金具ばかり買ってしまう
まずは巻く。メタリックな風合いが加わり、これだけでかっこよくなったのではないか。
アームが延びてこれだけでかっこよくなったのではないか。
穴を開けて完成
説明しよう。上部のビンにはあらかじめ水を入れておく。
このペットボトルをラッパ飲みしようと口をつけ、傾けると……!
顔面に水が流れてきて、そこにはさっきまでとは違う自分が。
「水も滴るいい男」と化した自分の姿が現れるのだ。
ショータイムの始まりだぜ
みんなの制作作業が終わり、外に撮影にやってきた。ここで一人ずつ、今日の作品を披露しつつ、実践シーンの撮影をしていく。
みんな自分の撮影に夢中だ
これから何が起こるかは、まだ誰にも話していない。みんな僕のペットボトルを、「あれ、かっこいいか?」と疑問の目で見ているに違いない。
ノンノン、若者達よ、かっこいいのはペットボトルじゃなくて俺のほうなんだよ。
まだ誰も俺のポテンシャルには気づいてないようだな
とはいえまだ水に濡れていないので、この時点の僕は単なる三十代半ばのしがない編集者である。みんなが気づかないのも無理はない。
そしていよいよ、僕の番が回ってきた。
みんな、心の準備はいいかな?
水が滴り始めた決定的瞬間
この潤い!
みずみずしさ!!
(メガネを外しますので少々お待ちください)
俺って、滴ってるだろ?
そこには、紛れもなく、一人の「水も滴るいい男」がいた。
視界に入ってくるのは、みんなの「なるほどね」「ああ、そういうことね」という、美的感覚ではなく理屈で納得した表情。ハハァン、さてはみんな左脳派だな。
しかし、しかしである。僕の顔から水が滴っているという圧倒的な事実は誰にも変えられない。この瞬間、僕は誰がなんといおうと、いい男だったのだ!
以上、ペットボトルでかっこよくなった、一人の男の物語でした。
メガネ
以上が本日の模範記事となります。
前途ある学生のみなさんの参考になれば幸いです。
写真で改めて見ると、お好み焼き用のマヨネーズ(細く1本で出てくるやつ)みたいだなと思いました。