初プレイは流行から十数年後
ファミコンが流行っていた頃、私はファミコンが欲しくて欲しくて欲しかったが買ってもらえず……
5年間ほどねだり狂ったがダメだった
その思いをずっと引きずり、ひとり暮らしを始めて自由の身となったとき、まず買ったのはファミリーコンピューターだった。
世間はプレステ1だの2だのと言ってた99年のことだ。
15年前に買ったニューファミコン。箱の状態が意外と良い
私が「ポートピア連続殺人事件」をプレイしたのはこの頃だ。 このときは被害者の家の地下の迷路がややこしすぎて断念した。
その後、神戸に行く機会も何度かあり、ゲームの中に出てくる地名を見ては、「いつかあのゲームをやり切りたいなー」と思っていたりもした。
地名を見かけると思い出す
そして数年後、SNS上でファミコンの話になったときのこと、突然友人によって犯人をネタバレされるという事件が起きた。
このとき「むしろよくそのネタを今まで避けて通ってこれたな……」と多方面から言われる
犯人を知ってしまってもなお、「そのうち最後までやってみたい」と思っていたが、「そのうち」なんて言ってるうちは実際なかなかしないものだ。
今回、神戸に行くことになり、取材のネタを探してたところ「ポートピア連続殺人事件ネタでなにかやったらどうか」という話になり、これはゲームをきちんと完結させる機会が与えられたのだ! と本気で思った。
手元にカセットがなかったので500円で買った。ワンコインでこんなに簡単に手に入る時代がこようとは……
そんな訳で、今回はきちんとゲームを完結させた上で、神戸の「ポートピア連続殺人事件」の舞台へ行ってみたい。
その前に、部下の「ヤス」を編む
唐突だが、登場人物をひとり、毛糸で編んで連れて行こうと思う。
(ネタばれが嫌な方がもし居れば、
こちらをクリック! ネタばれなしゾーンにとびます。)
まずは頭と身体を編む
顔の中身を入れる(縫う)
今編んでいるのは、ゲーム内での主人公(プレイ者)の相棒で犯人の「ヤス」。
ヤス指人形できた! (ネクタイ長い……)
ゲームの終盤で、捜査本部の取調室でヤスの服を脱がすと「肩に蝶の形のあざがある」というのが犯人だという決め手となる。
なので、ヤスの服は脱げるようにしておかなければならないし、肩にあざを作ってやる必要もある。
「服をぬげ」コマンドを選択すると
……!! おまえだったのか!!
それはそうと、ゲームや漫画でたまに出てくる「○○形のあざがある奴をさがせ」みたいな展開って現実世界でもあるものだろうか。いや、ないか。
ウィキペディアで「
痣(あざ)」を調べてみたら、
「外傷によりできた後天性(紫斑)の痣の場合は放置していけば自然と元の色に戻っていくが、先天性(母斑)の場合は元々の色素異常が原因であるのでずっとそのままである。」とあるので、この場合きっと後者なんだろう。
そして、神戸……
編んだヤスの人形を連れて神戸に来た。ゲームに登場する神戸の町と言えば、 「花隈町」、「新開地」。あとは「神戸港」にも行ってみたい。当時のソフトは容量が少ないため、出てくるシーンもそれぞれ1シーンずつ。それぞれこんな絵で場所を表現している。
静止画で1シーンずつしかでてこない
いずれも実際はどんな町なのかまったく知らない。下調べなしで行って、ちょっと探検してみたい。そしてゲームに出てくるような風景を探してみたい。
花隈町へ
まずはゲームのスタート地点でもある花隈町に行ってみる。
「はなくまちょう」へやってきた
駅前の通り
ゲーム内に出てくる「はなくまちょう」では、海が見えている。通常、花隈町から海(神戸港)は見えないようだ。比較的高い場所へ行ってみたらどうか。
登ってみる
城跡もあるこの公園は高台になってるので登ってみたが、ビル群しか見えず。
そんなに遠くないはずだが海の気配も見当たらない
ゲームに出てくる花隈町みたいに、両脇に建物がある場所で、海の方角にヤスが背を向けてる写真を撮ってみた。
はなくまちょうです
リアルバージョンだとこうなるのか、花隈町。
リアルすぎて違和感……という場合はこれでいいんじゃないか、と自宅でティッシュ箱を並べてみたら、こっちの方が見慣れてる感があった。
これで充分
この辺りは住宅街だ。ゲームの中の被害者の屋敷も花隈町だったなー。ああいう屋敷(豪邸)はないのかな? と思いつつウロウロしてたら、予想外のものが現れた。
あの厳島神社があらわれた!
こんなところにもあったのか。思いも寄らず厳島神社に参拝したところで、小腹がすいてきた。
ちょうど昼時で、この辺りで何か食べようかと思っていたが、昼間にあいてる店が少ないので移動してしまおう。次の目的地の新開地は電車で2駅だ。
それはそうと暑い……
新開地で腹ごしらえ
ゲームの中では、聞きこみに行くスナック「ぱる」があるのが新開地だ。
駅に着くと、昭和の雰囲気がそのまま残る地下商店街とアーケード。 駅の中に立ち飲み屋街やゲームセンター、古書街、卓球場まであるという文科系も体育会系も飽きさせないラインナップだ。
メトロこうべ。ながーーーい地下商店街に盛りだくさん
なぜ「Zoo」……
駅なのに卓球場
古書街、何百メートル続いてるんだろう
星の広場……?
空腹と疲労具合からどうしても座りたい……と思い始めた頃、立ち飲み屋がいくつか出現。ほんとはここも気になる。
立ち飲み店も多い。だが今は座りたい……
なんとなく飲食店を吟味しているうちに地上に出てしばらく歩いていたところ、雰囲気のある喫茶店を発見。店頭にあったコーヒーの焙煎機につられて店に入る。
焙煎機が見えると美味しそうに感じて店内に吸い込まれる
カウンター席の客が煙草を吸っていたり、という昭和感を横目で見つつ、 たまごサンドとブレンドを注文したが……
しまった! どれもこれもホカホカ!
この真夏になにをこんなホカホカなものばかりを頼んでしまったんだろう……と思いつつも、食べてみるとフワフワのたまごにコーヒーも美味しい。
ゲームの中の新開地っぽい風景
お腹もふくれたところで、ゲームの中で登場する新開地っぽい風景を探したい。
ゲームに登場する「ぱる」みたいな名前の店でもあれば……と思いつつ散策してたが
「なる」でもない
「まる」でもない
気がつけば「る」が2文字目につく店名がとにかく目につくようになっていた。
「ぱる」!! スナックじゃないけど。
もちろん、「ぱる」だけじゃなくポートピアっぽい文字にも反応してしまう。
ポートピアと新開地の組み合わせ! と思ったら、「ポ」じゃなく「ボ」だな、これ。競艇の……
ついでにまったく関係ないが気になるゲームセンターも出現。
まったく関係ないけど、こ、これは……
やっぱりちゃんとスナックとか写ってたほうが、ゲームの中の新開地っぽくなるかなと思ったが、探してるのはこんな風景ではなく。
こんなごっちゃりとした感じではない
しばらく歩いて辿り着いたのがこの景色だ。
ゲームの中の新開地では左の手前に劇場(ストリップ劇場「シルバー」)が見える。
劇場と路地と他の建物の配置がゲームの風景とそっくり! と思ったがどうか。
これをゲームの中の新開地と似た風景ということにしたい。
この劇場は大衆演劇の劇場らしい
神戸港ってどこだ
さて、最後は神戸港だ。「神戸港」と検索しても、出てくる場所はなんとなく曖昧だ。「神戸港」という言葉だけを手掛かりにすると、すごく広範囲のことを指すからか。
どこへ行けばいいのか分からなくなってきたので、「神戸港 最寄駅」と検索して、最初にヒットする場所へ行ってみよう。
そんな流れで到着した「ポートターミナル」駅
電車から風景を眺めていたら、海の向こうに観覧車が見える!
ゲームでも海の向こうに観覧車が見える!
海沿いまで行けば、ゲームに出てくる神戸港っぽい写真が撮れるのでは! と期待して下車した。 (ゲームに出てくる観覧車と現在海沿いにある観覧車は別物ではあるのだが)
肉眼だと観覧車がハッキリ見えて、もうこれは良い写真が撮れるに違いない! という気分になってたが、今見るとどう考えても遠いなこれ……
駅から出たら海沿いに行く手段がなかった。渡れない……
ポートターミナルの付近には、客船がこないときには人がいないため、この日はガラガラ。作業員の人をたまに見かける程度で、基本的には自分以外人がいない。
人が居ないところに行きたいのならば穴場なのかもしれない
被害者宅の地下迷路気分を味わう
ここから海沿いまで行くルートがまったく見つからない。
その辺に偶然居合わせた作業員の人に観覧車を見たい旨を伝え、海辺への行き方を教えてもらい、
あの遠方の観覧車に乗りたいのに間違えてこんなところをひとりでウロウロしてる人だと思われた。そんなバカな……
そこからまた抜け方のよく分からない駐車場エリアへ入り、
薄暗い
行き止まりか!?
おおっ……!! なんだかこれ、ほんのちょっとゲームの中の被害者やまかわの屋敷の地下迷路っぽくないか!?
ゴールが見えない
周りには倉庫……
しばらく歩いてると…… ついに!! ゴーーーーーー
ーーーール ……あら? 観覧車がない……!!
迷路を抜けると、そこには観覧車もなにもなかった。こんなはずでは!!
そもそもの調べ方がザックリしすぎだったせいでまさかの展開だ。
観覧車はないけど、ほんのちょっとゲームの中の地下迷路に居るような気分が味わえる穴場スポット! っていうことにしとこう。
ほんとはここが正解
観覧車自体も埋め立て具合も、当時と今では異なるので、ゲームとまったく同じ場所というわけではないようだが、ゲームに出てくる「みなと」というのは神戸港の中突堤というところらしい。ゲームの港と並べると結構似ていた。
ポートアイランドの一角
今回の3か所を振り返ってみると、花隈町以外の町はそこそこ似た場所が実在するってことにしていいんじゃないか。
リアルな画質のアニメ・ゲーム・映画等の実在の場所を巡るのもいいが、ドット絵だと想像で補足できる範囲が広くて面白かった。
ふりかえり神戸ツアー
どこになにかあるかがほぼ分からない町を、少ない手掛かりで歩くとすごく時間がかかって、多分ムダな動き方をしてるんだろうな~と思いつつ歩いていた。これ、土地勘ある人がやったらきっと全然違うんだろうな。それも興味がある。
今回、「ポートピア連続殺人事件」をプレイした話をしてたら、何人かに「つぎはぜひオホーツクに消ゆを!」と言われた。やってみるか……そのうち。