特集 2014年6月17日

超きれいなカメムシ「ナナホシキンカメムシ」を探せ

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沖縄と聞くと、まず色とりどりのサンゴや熱帯魚をイメージする人も少なくないと思う。

だが、沖縄において色とりどりの生物が暮らしているのは何も海の中には限らない。陸上にもトロピカルでカラフルな昆虫が溢れている。しかも、その中でもぶっちぎりの華やかさを誇る虫はなんとタマムシでも蝶でもなく、あの「カメムシ」なのだ。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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別に珍しい虫ではない。はずが…。

そのカメムシは名を「ナナホシキンカメムシ」といい、その名の通りなんとボディーが金ピカに輝くのだ!

沖縄に住んでいたころは何度となく見かけたが、その度にあまりの煌びやかさにため息を出していた。今年はちょうど昆虫の活発な暖かい時季に沖縄を訪問することになったので、久々に彼らに会いに行こう。
沖縄在住の頃は本島中南部の森でよく見かけていた。
沖縄在住の頃は本島中南部の森でよく見かけていた。
ナナホシキンカメムシを探すのに離島やいわゆるやんばるなど、特に秘境めいた場所へ行く必要はない。今回も訪れたのは沖縄の中心地である那覇市内の森だ。ここにはナナホシキンカメムシが集まるオオバギやアカギという木が多く、以前は訪れるたびにこの虫を見かけていた。
オオバギと
オオバギと
同じく好まれるアカギ。アカギは本島中南部の石灰岩質の土壌を好むらしい。
同じく好まれるアカギ。アカギは本島中南部の石灰岩質の土壌を好むらしい。
探し方は簡単。ひたすらアカギやオオバギの葉を見て回るだけだ。経験上、一時間もあれば見つかるだろうと思う。
まずは地味なカメムシに
まずは地味なカメムシに
わずか数ミリととても小さなカメムシも発見。オオコウモリの糞に来ていた。
わずか数ミリととても小さなカメムシも発見。オオコウモリの糞に来ていた。
赤いド派手なカメムシも!でも目当てのナナホシキンカメムシの前ではこれでも霞む。
赤いド派手なカメムシも!でも目当てのナナホシキンカメムシの前ではこれでも霞む。
…おかしい。全然いない。他のカメムシは見つかるのにナナホシキンカメムシだけ丸1日かけても探し出せない。時季も場所も正しいはずなのに釈然としないが、相手は生き物なのだからこういう不測の事態も仕方ない。ここはあきらめて、次回沖縄を訪れた際に再チャレンジしよう。
翌日、夜のコンビニでまさかの出会いが。
翌日、夜のコンビニでまさかの出会いが。
しかし惨敗の翌日、友人らと素潜りへ出かけた帰り道に立ち寄ったコンビニで奇跡は起こった。
ああ!こいつっ!
ああ!こいつっ!
コンビニの前、本来ならヤンキーが溜まっているはずのポジションにナナホシキンカメムシが鎮座していた。コンビニの明かりに寄ってきたらしい。

喜び勇んで撮影するが、蛍光灯やカメラのフラッシュでは全然綺麗に写らない。

どうやら太陽光の下でないと魅力を引き出せないようだ。一時的に捕獲し、翌朝撮影することにした。

金属光沢+三原色

ではご覧いただこう。これがナナホシキンカメムシだ!
タマムシにも負けない。
タマムシにも負けない。
綺麗としか言いようがない。
綺麗としか言いようがない。
体色はメタリックグリーンが基調で、ピカピカのキラキラだ。眩しい。そして脚は鮮やかな赤とメタリックブルーで塗り分けられており、スパイダーマンのよう。
脚の赤と青も見逃せないチャームポイント。
脚の赤と青も見逃せないチャームポイント。
顔もかわいい。
顔もかわいい。
ちなみに背中がつるんとしていて翅が無いように見える。これは本来翅の付け根にある背盾板というパーツが発達してそれこそ亀の甲羅のように背中を覆っているためである。翅はきちんとその下に格納されているのでちゃんと飛ぶこともできる。

なお、この背盾板には「ナナホシ」の名の通り七つの黒い点が入っている。
裏側まで派手。
裏側まで派手。
大きさはこんなもん。
大きさはこんなもん。

死ぬと青くなる。水に浸すと緑に戻る。

ちなみに、那覇市内の森でも一応死骸は見つけていたのだ。
同じ虫とは思えない姿。
同じ虫とは思えない姿。
ナナホシキンカメムシは死ぬと濃い青に変色し、光沢も弱くなってしまう。それはそれで渋い色合いが綺麗なのだが、やはり生前の輝きには敵わない。

一応、生きた個体が見つからなかったときの保険として回収しておいたのだが、今となっては必要ない。元の森に帰してやろう。

…と思った矢先に面白い話を聞いた。青くなった死骸を水に浸けると、元の緑色を取り戻すというのだ。なんで?本当か?
本当に元に戻るのか…?
本当に元に戻るのか…?
本当なら最高に面白い。捨てなくてよかった。
水に浸してみると…
水に浸してみると…
うおっ、本当に緑になった!
うおっ、本当に緑になった!
見ずにしっかり浸して取り出すと、なんと確かに緑色に戻っている。さすがに生前のような輝きと鮮やかさは無いが、それでも見違えてしまった。

ナナホシキンカメムシの体色は「構造色」というものらしい。構造色とは「それ自体がそういう色をしているわけではなく、特殊な構造が光を受けると“そういう色がついているように見える”」というもの。ああ、よくわからん。

つまり、死んで水分が失われることで体表の構造が変化して色が変わって見える。そこに再び水分を加えると構造が修復され、色も元に戻る。ということっぽい。面白い。

さすがカメムシ。やっぱり臭い!

ところで、このカメムシに関して妙な噂がある。「カメムシなのに臭くない」というのである。ネットで検索しても、確かにその手の記述がちょいちょい見られる。

カメムシが嫌われる所以である臭いが無く、しかもこんなに綺麗だなんて虫のいい話があるだろうか。事実ならナナホシキンカメムシはカメムシ界の親善大使になれるぞ。

確認せねば。
指先で刺激しながら鼻に運ぶと…
指先で刺激しながら鼻に運ぶと…
やっぱり臭いじゃん!!
やっぱり臭いじゃん!!
臭い!見た目がこれだけ綺麗なのだからもしかすると…と思ったがやっぱ臭い!カメムシ臭が鼻腔へ突き抜ける。予想通りだが話が違う。

まあそれもそうか。あんなに目立つ姿をしていながら防衛手段を捨てているという方が不自然なのかもしれない。

綺麗な薔薇にはトゲがあるのだ。

沖縄へ行ったらぜひ探してみよう

臭いに関しては確かになかなか出さない個体もいるらしい。危機感が鈍いのかなんなのか不思議な話だ。

今回は苦戦を強いられたが、この虫はタイミングが合えば一本の木で何十匹と見ることができ、その様子は圧巻だ。虫が好きな人は沖縄へ行ったらぜひ見てほしいと思う。

ただし、いくら綺麗でも手に取るのはおすすめしないが。
安藤さんの記事「腕立て伏せをするトカゲがいる」より。
安藤さんの記事「腕立て伏せをするトカゲがいる」より。
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