特集 2014年6月6日

卵たちは巨大な女子寮からやってくる

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卵のパッケージに載っている「あの人」のことがずっと気になっていました。

そんなきっかけから、鶏卵工場のなかを見せてもらうことになったのですが、とにかく工場がめっちゃくちゃおっきい!「ここには、○○万羽のニワトリがいるんですよ。」ってさくっと言われてもその風景、どうにもこうにも想像がつかない。

そんな、小学校以来20年以上ぶりの工場見学のもろもろを、書き記してみたいとおもいます。
1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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あの人が気になる

卵のパッケージに載っている「あの人」とは、この人のことです。
「卵重計量責任者」さん。ものにもよりますが、だいたい記載があるようです。
「卵重計量責任者」さん。ものにもよりますが、だいたい記載があるようです。
なぜでしょう。実名をどんとそこに載せられた途端に異様にその人の「像」というやつが、気になってきてしまうのです。日常で見る頻度の高い「卵」とういう食材なら、なおさらにその気持ちは募るばかりで。
イメージは超・早寝早起き。
イメージは超・早寝早起き。
あと、手に触れた瞬間に卵の質量がわかってしまうかんじなのかなー?とか。
あと、手に触れた瞬間に卵の質量がわかってしまうかんじなのかなー?とか。
プライベートでは、ニワトリとは似ても似つかないペットを飼っていそうだなーとか。
プライベートでは、ニワトリとは似ても似つかないペットを飼っていそうだなーとか。
勝手な妄想は膨らむ一方で、できれば会ってみたいとすらおもうのです。

そんなわけで、卵の大手メーカーであるイセ食品さんへ、出向いてみることにしました。
目的はもちろん、その卵の人のことを聞くためなんですけど……
目的はもちろん、その卵の人のことを聞くためなんですけど……
ええっ。ほんとうに?
ええっ。ほんとうに?
い、行きますとも。ぜひ行かせてください。

卵の工場を見学する

というわけで、茨城へ行くことになりました。

上野7:30発のフレッシュひたちに乗って出発です。
ニワトリといったら、早起きですからね。正直わたしはちょっと眠いんですけど。
ニワトリといったら、早起きですからね。正直わたしはちょっと眠いんですけど。
鶏卵工場の中は、ものすごーくざっくり言うとこんなかんじです。
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さて、上記の図の黄色い部分「生産部門」。こちらを順を追って見ていきましょう。まずはニワトリの産卵の現場から!………とおもったのですが、
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なるほどたしかに。思い当たるふしが沢山ありすぎます。
なるほどたしかに。思い当たるふしが沢山ありすぎます。
と、いうわけでニワトリのみなさんにはモニターを通してのご対面を。
うっすらと白く見えるのがニワトリ。そしてモニターに写り込んでいらっしゃる黄色い作業着を着たおじさまが、ニワトリのご担当さんです。
うっすらと白く見えるのがニワトリ。そしてモニターに写り込んでいらっしゃる黄色い作業着を着たおじさまが、ニワトリのご担当さんです。
そして、わたしの肉眼での見学可能ゾーンはここからです。
と、その前に。白衣にお着替え。
と、その前に。白衣にお着替え。
送風にあたってほこり諸々を飛ばして (カメラしていないと、給食のおばさんぽい)
送風にあたってほこり諸々を飛ばして (カメラしていないと、給食のおばさんぽい)
さらに、コロコロ。
さらに、コロコロ。
コロコロ。(た、たのしそう)
コロコロ。(た、たのしそう)
そして室内に入った途端、折り目正しく運ばれてくる産まれたての卵たちと対面。
そして室内に入った途端、折り目正しく運ばれてくる産まれたての卵たちと対面。
丸みを帯びた白の羅列って、ほうっとする美しさがありますよね。
丸みを帯びた白の羅列って、ほうっとする美しさがありますよね。
卵たちは、続々と厳しい検査をくぐりぬけていきます。
よく見ないと見えないのですが、綿棒のような白いぽんぽんが卵をたたいていて、それで発する音によって中身をチェックしているんだそう。
よく見ないと見えないのですが、綿棒のような白いぽんぽんが卵をたたいていて、それで発する音によって中身をチェックしているんだそう。
身体測定と人間ドックが、同時進行で進んでいるかんじとでもいうんでしょうかこれ。
身体測定と人間ドックが、同時進行で進んでいるかんじとでもいうんでしょうかこれ。
そしてサイズ別の数を計上している機械がこれ。テプラがめっちゃ大きい。
そしてサイズ別の数を計上している機械がこれ。テプラがめっちゃ大きい。
そしてこの行程のなかで発見された、異常のある卵(内部に血が混ざってしまっていたりとか)はここで機械から、ばすっと振り落とされます。
そしてこの行程のなかで発見された、異常のある卵(内部に血が混ざってしまっていたりとか)はここで機械から、ばすっと振り落とされます。
と。振り落とされてもなお、その仲間にすらなれなかった卵を発見しました。いったい、どうやって落ちるとそうなるのか……。
と。振り落とされてもなお、その仲間にすらなれなかった卵を発見しました。いったい、どうやって落ちるとそうなるのか……。
はみ出しものの中の、さらなるはみ出しもの。

うおお。卵を見ていたはずが、なんだか社会の縮図を見ているような気分になってまいりましたよ。
そしてこちらもまた、はみ出しものたちの集合。外面に小さいキズなどがあるようです。
そしてこちらもまた、はみ出しものたちの集合。外面に小さいキズなどがあるようです。
とはいえ、いびつな集団って、妙にいとおしく思えてしまうんですが、そんなことはないですかね。なんていうか、こう、「放職員室に呼び出しをくらったりもするけど、ほんとはあいつ、いいやつなんだぜ。」っていう不良たちの集まりのような。

ちなみに、さらに付け加えますと、「雨の降った日に捨て犬を拾って愛でてる」みたいな漫画のテンプレート的な良心さではなく、こう、「ニガテな固形チーズが給食に出てきて困っていたら、そっとそれをかわりに食べてくれたりもする。」みたいな、そんなかんじの良心的不良なんですけども……、イメージわきますかね。いや、わかないかな。
いびつさにいとおしさを感じて、つい手にとってしまいました。なんだろう、このいびつへの愛着。
いびつさにいとおしさを感じて、つい手にとってしまいました。なんだろう、このいびつへの愛着。
ちなみに工場内の卵は衛生管理上、基本素手で触れないそうなんですが、わざわざ許可をとってまで触ってみてしまいました。どんだけ触りたかったんだよわたし。
おお。はみだしても、ちゃんと別の生きる道が用意されているんですね。
おお。はみだしても、ちゃんと別の生きる道が用意されているんですね。
その一方で、行程をクリアした合格者たちは、ゴールに向かって着々と突き進んでゆきます。
これ、左側に見えるグレーの装置が、空気で卵を吸い寄せているんだそう。
これ、左側に見えるグレーの装置が、空気で卵を吸い寄せているんだそう。
さて、パッケージの中に無事はいれました。彼ら(たまご)的にはほっとひと安心ってとこではないでしょうか。
さて、パッケージの中に無事はいれました。彼ら(たまご)的にはほっとひと安心ってとこではないでしょうか。
イセ食品さんのトレードマーク的な存在のピンクのシール。たぶん集めてもなにももらえないんですが、時々無性にあつめたくなるサイズ感とかわいさ。
イセ食品さんのトレードマーク的な存在のピンクのシール。たぶん集めてもなにももらえないんですが、時々無性にあつめたくなるサイズ感とかわいさ。
そして右にも左にも卵、前方にも卵。四方八方が卵にまみれている。
そして右にも左にも卵、前方にも卵。四方八方が卵にまみれている。
と。ここまでの行程をていねいに紹介してくれたのがなにをかくそうこの人。
卵重計量責任者・高橋さん!
卵重計量責任者・高橋さん!
あのパッケージの人、ご本人。ご本人ですよ。

誰がなんといおうと、これにはわたしものすごい興奮を覚えております。
高橋さんと卵。さりげなく、さりげなくですが超レアなショット。
高橋さんと卵。さりげなく、さりげなくですが超レアなショット。
ちなみに。卵重計量責任者とはけっきょくのところなんだったのか?といいますと、「この卵が農水省が決めた規定に基づき、きちんとした管理のもと製造されていますよ。」っていうことのもろもろに対する責任者、という意味合いなんだそう。
どうやらこういう人ではなかったようです。
どうやらこういう人ではなかったようです。
ところで、高橋さんに直にお会いすることができた今、かねてからあたためていた質問を孵化させてみたいとおもうんですが……
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ありゃ。
ありゃ。
そ、そうなのか。こんなに大々的に名前を晒していても、周囲がどばっと露骨に反応をしたりするというわけでは……ないものなんですかね。

大きすぎる数は想像がつかない

ところで。この工場見学によってますます混乱してしまったこと、というのがひとつありまして。

それは規模。


ええとまず、この工場の卵の生産量。
わかりやすくしようとしてみたら、余計にわかりにくくなってしまいました。
わかりやすくしようとしてみたら、余計にわかりにくくなってしまいました。
そして、ここにいるニワトリさんたちの数。
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ちなみにこちらが、総勢120万羽ニワトリのいるところの外観。
ちなみにこちらが、総勢120万羽ニワトリのいるところの外観。
なお、1人あたり、10万羽のお世話をしているんだそうです。
10万羽って。10万羽。10万羽……。を、ひとりで!!

わたしのパソコンの変換キーも「まんわ」っていれると
まさか「万羽」だとはおもわないらしく、何度も「万話」って
変換をしてきますが、その気持ちわからなくもないなぁ、と思いつつ。


ところで。
よく考えるとわかることではあるのですが、わたしはすっかり忘れていました。
な、なにをいまさら。
な、なにをいまさら。
「まあ、そりゃそうでしょうよ。」としか切り返せないと思うんですけど、ここでぜひあらためて考えてみていただきたいのです。


ニワトリの女子だけが大量に集うこの空間、しかも人間の歳に換算するとちょうど18歳ごろとおぼしきうら若き乙女たちが一同に集められ、ばい菌・雑菌を所有していそうな輩からは隔離をされた場所で、折り目正しい生活を日々送る。

これって、まさに女子寮的。そう、女子寮ではないでしょうか。
(イメージ図)
(イメージ図)
今度から、卵を見たらこう思ってしまいそうです。
このこたち、あの巨大な女子寮からはるばるやってきたんだと。
フレームにまったく納まりきらない女子寮の巨大さ。その一方でわたしの姿(真ん中よりちょっと右にいる)はまるでミニチュア。
フレームにまったく納まりきらない女子寮の巨大さ。その一方でわたしの姿(真ん中よりちょっと右にいる)はまるでミニチュア。
近づいてもなおミニチュアなわたし(身長167センチ)。
近づいてもなおミニチュアなわたし(身長167センチ)。

実は。あんまりにも数字が膨大すぎるものの、どうにか自分の身におきかえて理解を深めることはできないものだろうか?と、急におもいたってたまごをたくさん描いてみたりもしていました。
出先でも、すきあらば描いていました。わりとたのしくて。
出先でも、すきあらば描いていました。わりとたのしくて。
原稿の〆切の前までにせめて10000個は描きたいぞ!とおもっていたのですが、3520個描いたところで時間が。

ちなみに、A4サイズ1枚に描ける、原寸大の卵の数は16個。
その16個を描くのにかかる時間は約30秒(元気なとき)。
つまり、1分あたりにわたしが描ける卵の数は約32個、1時間だと1920個でつまり工場の生産量の約80分の1……という計算も産出でき、そしてただ数字だけで聞いていたときよりも工場の規模の大きさ加減を、しっくり感じとれてきた気がしました。
紙のくせに、わりと重みがあります。
紙のくせに、わりと重みがあります。
にしても、この3520個の卵を描いた220枚の紙。これからどうするかが悩ましいのです。メモ用紙にしたら、半年くらい使えそうですけど。
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