親(60代後半)が中学生の頃にとってた雑誌です。
「これって素晴らしいでしょ?」と無邪気に迫ってくる。
「オートメ」。
「無責任」と書いたがそれは今の視点からの話で、当時は「放射線保存庫」などもまさに夢の設備だったはずである。
そうした「これからの未来は今より素晴らしい、バラ色のような世界になる」と信じていたころの未来観を、ミニチュアの世界で表現してみたいと思うのだ。
まず、未来の家といえば、アレだろう。ドームである。ドームの中に、家の模型を収めたい、のだが・・・
あまりにモジュールを小さく作ってしまうと、見えづらいし表現も難しくなる。かといって家を大きくするとなると、それ以上にでかいドームを買って収めなければならぬ。
自宅の広さとお値段とを考慮すると、現実的なものとしては40cm径のものが最大だった。
ある日でかいダンボールが届く。ああ、でかい・・・
もちろんこの梱包は緩衝材込みの大きさなので、恐れることはない。開けて、早速制作の準備にとりかかろう。
王蟲の子供の目、くらいか。
買っておいたジオラマ用人体の出番だ!
恐れることはない、なんて威勢よくしてみたけれど、ドームと人体が揃ってもどこから手をつけていいかわからない。えーと、最初にサイズの基準となるべきは、ドームか、人体か・・・
まあ、人体だろう。人体組み立てて、それに合わせて設備を作り、それに合わせて家を作り、・・・ってやってると限りある大きさのドームに思い切りしわ寄せが行きそうであるが、それでもついつい始めてしまうノープラン野郎である。
このまま上から服を描いていいように、つるりとパテで補修。1人は性転換しておいた。
「吹き付け服」はここで成就。
未来の服、となるとつい「銀色の全身タイツ」を想像してしまいがちだが、それってどっちかというと宇宙人だな。タイツ風になるにしても、昔の図絵を見ると青や赤、緑といった「スタートレック」風のものがよく見受けられる(映画に影響されたのだろうが)。今回はあくまで「昔の人の描いた未来」にこだわりたい。
それ以上に、モジュールにも気を使わないといけない。なぜなら予想される家の天井高・面積がこんな感じだからだ。
スチレンボードで計ってみる。この写真では上のほうが地面となる。
天井を高くすると床面積は小さくなり、広くしたいとなると天井がすごく低くなってしまう。
まるで地道な不動産選びだ。全然未来っぽくない。
今思えば円形の家でよかったかもしれないが、後の祭りだピーヒャララ。
ドームと人体、最大と最小の構造物の比がトンチンカンなのは仕方がない。これで作るしかない。未来の家は「8畳一間」大に決まった。
コンセプトぶれまくり
もう迷っている時間はない。次々に設備(家具)を作っていこう。
手持ちの本を始め、ネットで見た画像も参考にいちおうラフを描いてみた。
描いたあとでいつもその存在意義を疑うことになるラフ。
ええとですね。左上から時計回りに、「ホームコンピュータ(パソコン的なもの)」「何かのモニタ」「何かの役に立ちそうなロボ」「勉強メカ(サボると叩く)」「でかいコンピュータ(結局不要に)」「テレビ電話付きソファ」である。
うっかりすると「レトロフューチャー」だの「デザイナーズ」だのといったかっこいいキーワードでデザインを固めそうになるが(と書くとさも自由にデザインできるかのようだが後々察してほしい)、極力「あの頃の僕ら」的視点を失わないようにするのが大変である。要は適度なダサさだろうか。
材料はスタイロフォームで簡単に。卓上スチロールカッター、大活躍の2014年。
他、未来の家を再現するのに必要なものはこんなところだろうか。
電送新聞!パソコンあるのに。
壁掛けテレビは現代でも実現したけど、ここにも必須でしょうね。
テレビ電話。ケータイ・スマホは登場しないのである。
夢の、自動調理機!「パンチカード」入れればビフテキもオムレツも出てくる!
こういう図絵を見ていて面白いのは、「予想していた未来」とは違う形で技術や社会が進歩した、その違いを見ることである。
上のイラストでの「自動調理機」は、さすがに現代でも「全自動」では叶えきれてないが、冷凍食品やコンビニの充実ぶりを考えると、違う形で叶っていると言っていいかもしれない。コンビニ飯なんて当時は考えられなかったわけだし。
「エイリアン」の舞台が2122年なのに、宇宙船内のコンピュータが黒画面に緑文字だった、みたいな快感である。
イメージでは、各設備の角は丸い。面取りは必須である。
ソファの色、ポップにし過ぎた。もっと昔の目線に合わせあとで塗りなおし。
ペットボトルを切って、チューブトンネルに・・・と思ったが細くて断念。別の部品に。
そうそう、この色合いですよ!
設備や家具の色合いで散々悩む。単純にシルバーやホワイトばかり使うと、当初のイメージからは遠ざかって、宇宙船ぽくなってしまう。
一番悩んだのは、家の大半を占める壁と床のカラーリングだ。やっぱりシルバー?シースルー?
原点に帰って、本を参照する。床は緑だし、壁は水色だったりする。家具の色も実に統一感なく、派手である。
そうか、これでいいんだな。昔見てた70年代のアニメにイメージは近い。なんかもう、とにかく色を使っている。
内装完了。チカチカする~。
壁に小窓や扉を設けて、せめて外の景色で出来の悪さを補完しようという。
壁に穴を開けて、書き割り(外の風景)を裏から接着。
皆が考える「あの頃の未来」を再現したくて、でもその結果非常に紆余曲折してしまった。計画の芯となるものがなかなか決められなかったという感じだ。
もっと単純に行くかと思っていたが、未来(過去)なめてた。
でもロボは裏切らない。
目にリベット打ったらそれらしくなった。
ドームに目いっぱい詰め込まれた家
リノベーションが終わって、あとは引越しを待つばかりである。未来の引越しもあれか、階段とか養生するのか。見積もりサイト登録で大量の連絡が来ちゃうのか。
未来の設備、重そう。
人形と家具を配置して、その上なぜかドームをかぶせて完成である。
なんでもこのドームかぶせれば未来っぽくなるのではないか(写真中央上の「田」印の光は乙幡の部屋の蛍光灯が写りこんでるだけです)。
それじゃ、そーっとドームを取ってみよう。中の人らの邪魔をしないように・・・。
壁の角が丸いのは、案の定、ドームに入りきらなかったからだ。
全天候型ドームのせいで、ベッドルームや風呂・トイレが作れなくなってしまった。便利さと引き換えに失うものもあるのですね。
仲のいい、お手伝いロボたち。赤いのはルンバの先祖(子孫?)、自動掃除機のつもり。
テレビ電話付きソファから立ち上がり、朝食の準備。カード差し込むだけだけどね。
お父さんは電送新聞の受信中。狭い家に受信機が幅をとる。
窓からは、隣のドームが見える。
「コラ、ツクエニ ムカイナサイ!」勉強嫌いの息子を叱る、勉強ロボット。コンピュータの画面が黒いのも、媒体がテープなのも見てほしい。
8畳一間風呂トイレ無し物件に親子3人がロボット3台と共に暮らすという、非常に慎ましやかな未来の家となった。
この色合い、やはり昔見ていたアニメに出てくる研究所の色合いみたいだ。
その辺、当時の未来観における色彩感覚を研究すると面白そうだが、細かい設備作りに力尽きたので今日はここまで。
今も「未来」は造られている
一部屋でここまで力尽きるとは思わなかったが、ぜひ皆さんも「チューブ道路」や「球体ビル」などに挑戦してほしい。
各時代で未来図を立体に残すと面白かろう。もう自分はやらないが、ぜひ誰か。
完成してから設備や家具を置くときはとても楽しかったが、あまりに自由度が高すぎて箱庭療法みたいだ。読者のどなたかに自分の深層心理など見抜かれていないといいが。