あの段々のやつ、「ティースタンド」という
アフタヌーン・ティーの象徴ともいえるあの段々の収納器具はその名を「ティースタンド」というらしい。
ネットで4000円見つけたのでおお、と買ってみてしまった。
よく考えたらそこそこ高い。が英国式茶道具界ではかなり安いほうであった。さすが貴族のあそび。
障子は破れ、畳もかすかすの我が家に来ていただいてしまった。当惑の表情が隠しきれないティースタンドさま
ちなみに買ったのはスタンドだけで丸皿は自前のもの。19cm~24cmの丸皿であれば乗せられる。便利である。いや、便利なのかどうかからして分からない。
まずは本式を学ぶ
冒頭にどかんと写真を載せてしまったので、やらんとしていることがどんなことなのかは薄っすらご了承いただけているかなとは思う。今回は優雅な英国文化であるアフタヌーン・ティーに自由な風を吹かせられないかという試みだ。
その前に、やはりまずは本物の「アフタヌーン・ティー」というものを体験せねばなるまい。
もちろん、オラそんなハイカラなもん食べるのはじめてズラ、である。
これがアフタヌーン・ティーずら!
駆け込んだのは英国式の喫茶室。ホテルなど行かずしてアフタヌーン・ティーが楽しめる。ホテルなど行かずして、と書いたがそれでも1人前で2500円した。
さっきから値段の高さばかりを書き連ねてしまいお恥ずかしいが、しかしやはりなかなかにハードルの高い世界である。
みにあまるクラシカルに恐縮が止まらない。そして「みにあまるクラシカル」って「なんとなくクリスタル」っぽい。
それにしてもこれで1人前だ。量、多くないか。
基本的に1Fがサンドイッチ(6切れ)
2Fがスコーン(2個)
そして3Fがケーキ(2切れ)
そもそもアフタヌーン・ティーとは
そもそもアフタヌーン・ティーというのは、たんなる「ちょっとお茶しよっか」というのとは違う。夜の観劇などの前に行う喫茶習慣なのだそうだ。
オペラとか長いのだ。見終わると夜もふけている。鑑賞中にお腹がなるのも恥ずかしいし、じゃあまあ夕方ぐらいにある程度は食べておこうよねということらしい。
お茶にしちゃずいぶん量食べんのな、とは常々思っていたがそういうことだったのか。とはいえ観劇のあとには夕食もちゃんと食べるようでもあり、優雅と平行するガツンとした食欲旺盛さがたくましい。
お紅茶が輝く
観劇の予定はないのでこの日は昼ごはん代わりにいただいた。混む前にと11:30には入店したので、「アフタヌーン」じゃなさ100%である。
ああこれ「お昼に祗園を歩いている舞妓さんはほとんど観光客の体験舞妓さんなんですよ、だって本物の舞妓さんがお座敷に上がるのは夜でしょう」的なのと一緒だと思いながら紅茶をすすった。
日本にいながらにして、観光でアフタヌーン・ティーを体験している感覚だ。
プチトマトの底が転がらないように切ってあった。見るものすべてが珍しい、観光マジックである
おなかいっぱい、それがアフタヌーン・ティ
さて、感想であるが、ありていにいうと「おなかいっぱい」だった。だって1人前でサンドイッチ6切れにスコーン2個にケーキ2個である。
一応作法を気にしたり、普段味わえないようなものをじっくり味わって食べようという気概も働き(だって2500円だからな)時間がかかるのも満腹感に拍車をかけたようであった。
食べるときは下の段から順に1皿全部食べてから次の段へうつるものらしい(同席の人がいたら、全員が1段食べ終わるまで次の段には行っちゃだめなんだそうだ)。スタンドからは手でとっていいそう。守るべき作法もいろいろあるようです
欧風のステキさを隠れみのに甘味をそれなりに大食いできる、アフタヌーン・ティーというシステム。
紅茶も大変においしくなにしろ恐れ入ったという思いであった。
その名を冠した日本発の雑貨ブランドまであるくらいだから、やはり憧れの対象でしかないのだ
……よし。
本物を体験して実態への畏敬の念は存分に抱いた。これで異文化への礼は尽くしたといえよう。
さあ、壊そう。アフタヌーン・ティーをわが手で勝手に解放しよう。
自宅は生活感がひどいので芝生の公園へやってきた
アフタヌーン茶
アフタヌーン・ティーを体験しながら考えていたのは、これを全部そのまま和食に置き換えたらなにがいいか、ということ。
サンドイッチはまちがいなくおにぎりだろう。あとは……と考えながらセッティングしてみたのがこちらだ。
アフタヌーン茶、メンバーはこんな感じでどうでしょう
小麦粉を使いつつ甘めに焼いたもがスコーンならば、それに対応するのは米を使いつつ甘い団子にした。ジャムとクリームはみたらしとあんこで異論はないところだと思う。
ケーキにあたるのは、やはり和菓子の中でも茶道的に「主菓子」とよばれるものが良いだろうと、和菓子屋さんにも相談して季節の練りきりであるあやめと岩根つつじを模したきんとんを選んだ。
きれい!
練りきりがありながら濃茶を用意しなかったのはうっかりだ。
お茶の準備にぬかったとはいえ、ふつうにいい感じになってしまったぞ
思いのほかのしっくり感
もっと違和感でどひゃー! やっぱり和には和をあわせないとね! という結果になるかと思いきや、思いのほかしっくりきてしまった。こんな茶道具ありそうだ。
実は調べてみたところ、「和風アフタヌーン・ティー」と銘打ってこのようなもの(の1000倍あかぬけさせたやつ)を提供している和菓子店の喫茶室なども実際あるらしい。
実際このティースタンド、狭いスペースでコンパクトに食事からデザートから乗せられるのは素直に便利だ。すでに実用されているとしても驚くことではない(頭をかきながら)。
では調子にのって、続いてはお弁当箱みたいに使ってみようか。うまくいったらピクニックに便利そうだ。
新しいタイプのお弁当。いい感じとすら言える
お弁当に詰めるつもりで選んだメニューをそれぞれ皿に盛って収納した。
これもそれほど違和感がないと思うのだがどうだろう。こんなお弁当、食べてみたいと思わせる魅力までかもし出してきた。
ティースタンド、思った以上に許容範囲が広いぞ。サンドイッチとスコーンとケーキしか乗せたことがなかったとは思えない度量の深さである。
お味噌汁を添えてもゆるぎなくしっくりきている
もっと壊そう
しっくり感にへえ! と感激してしまった。いやしかし、せっかく記事にしているのだがら急展開も欲しい。
伝統の文化に胸を借りると思って、よし、もっと壊していこう。
続いてはゴリラのえさだ。
食パン、ゆで卵、りんご、バナナ、水。動物園のホームページを参考に
急にゴリラのエサまでメータを上げたのはやりすぎかとも思ったが、いやいや、これまたなんだかすてきな朝食になってしまっていないか。
当サイトのウェブマスター林が常々「どんな食事にも隣にバナナを丸ごと1本置くとゴリラのえさっぽくなる」と提言していて納得していたのだが、ティースタンドのすてき力は完全にゴリラっぽさを打ち消した。
貴族VSゴリラ、今回の勝負は貴族が勝った格好だ。まさかの結果である。
ステキ
出でよ中2
ティースタンドというヨーロッパの風に和菓子、惣菜、そしてゴリラで戦いを挑んできた。今のところはどれも思いがけぬ許容力ですっきりまとめられてしまっている。ステキ防御力の高さたるや、である。
ううむ……。もう手加減せず「ぶち壊す」くらいの暴力性をもって挑まないことにはこのステキの壁は超えられないのかもしれない。
たとえばもう、中2のおやつを乗せるくらいの破壊力をもって対抗してもいいのではないか。
頂上、ナイススティック
中段、コロッケ(2個)
下段、ナポリタン
ナポリタンスパゲティサラダ、としてサラダ売り場に売られていた。これをサラダといえるうちこそが中2である
そして良く分からない500ml紙パックの甘いお茶(草木をバックに撮影したら擬態した)
お昼を食べてから午後の授業を受けて、部活の前に中2が食べると想定して買い集めてみた。当然、部活の後には夕食をとる。
オペラの観劇の前に行うのがアフタヌーン・ティーなのであれば、状況としてはかなり似ているのがこの中2のアフタヌーン・ティーだ。
なんだこれ
これまでにない違和感はうまいこと出せているのではないか。
これは何なんだろうと考えてみると、お母さんがまたどっかIKEAだとかコストコ的なとこに行って衝動買いしちゃったティースタンドが思ったよりも便利で日常使いされている、という感じだろうか。
見れば見るほど、見慣れてくる
生活感の台無し力
最初は「なんだこれ(笑)」という面白みがあったのだが、5分もすれば見慣れた。このまま自宅にあったらティースタンドのステキさなど忘れて日常使いしはじめそうだ。
それで気づいた。「芝生の上」という助けを借りてたとえゴリラのエサであろうとステキさを補完していたティースタンドも、やはり生活感には弱いのだ。
「生活感」というものの恐るべき強さよ
非日常のステキさは、日常の生活感によって容易に覆される。
うっかり最後はインテリアの基本に立ち返らされた。
今後このティースタンド、どうしよう。とりあえず、日常使いしてステキをすり減らさないようにしていきたいと思います。
貴族にナイススティックを食わす
この日、久しぶりにナイススティックを食べた。
その他にもたくさん食材を用意したので休日の家族のお昼ご飯を巻き込んで撮影したのだが、一番の引っ張りだこだったのがナイススティックであった。
休みの日、外で家族でナイススティックを奪い合う。
これが我が家のアフタヌーン・ティーそのものであった。
ナイススティックはおいしいので貴族のみなさまにもぜひ食べてみていただきたい一品である。