特集 2014年4月22日

スパイダーマンとクモさがし

「わースパイダーだー」おい、ちょっとじゃますんな!
「わースパイダーだー」おい、ちょっとじゃますんな!
春が来た。虫達もゆるやかに活動をはじめ,あたたかい陽光をあびながら公園を散歩するのが楽しい季節だ。しかし今は雨。探しているのはクモ、隣には......スパイダーマン!

自分の人生にスパイダーマンと野原を徘徊する日が来ようとは思わなんだ。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:貝殻でファンシー!

> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

雨の野鳥公園(そしてさむい)

しとしとと冷たい雨が降り、空気の色も気温も冬に戻ったかのような薄暗い朝。都内有数の自然観察スポットである東京港野野鳥公園である企画が発動していた。
まだちょっとはやいだろという気持ちと共に。
まだちょっとはやいだろという気持ちと共に。
あいにくの雨ですが、文一総合出版「日本のクモ」を持ってクモを探します!
あいにくの雨ですが、文一総合出版「日本のクモ」を持ってクモを探します!
探しますよー。
探しますよー。
クモのような敏捷さでフレームインしてきたのは皆さんおなじみのスーパーヒーロー、スパイダーマンである。

当サイトでクモの記事に登場したり、クモ記事を書いたりしている私に提案された企画「スパイダーマンと一緒にクモを探す」が、ここに実現したのだ。
なんの相談だ。そしてなんで具体的に進むんだ。(場所は都合で変更しました)
なんの相談だ。そしてなんで具体的に進むんだ。(場所は都合で変更しました)
編集部の安藤さんが自作のタイツを着ているわけではなく、ちゃんと作られているスーツに身を包んだスパイダーマンである。
いいハエトリグモだね。尊敬するクモ達の写真で興奮。
いいハエトリグモだね。尊敬するクモ達の写真で興奮。
幼い頃、東映がキャラクターの使用契約だけ結んで好きに作ったテレビシリーズを観て親に絵本をねだり、劇場版3部作に加え新シリーズ「アメイジング・スパイダーマン」も鑑賞したスパイダーマンファンとしてはうれしいながらも、このあまりの親近感にいささか戸惑いを隠せない。
「好きなヴィラン(敵)はドクター・オクトパスなんですよ」 「あーあれ手強かったですよー。アームがガーッ!て向かってきましてね」(本当はしゃべってません)
「好きなキャラはドクター・オクトパスなんですよ」
「あーあれ手強かったですよー。アームがガーッ!て向かってきましてね」(本当はしゃべってません)

スパイダー探索開始

スパイダーマンで雨といえば豪雨の中、暴漢に襲われたキルスティン・ダンスト演じるヒロインとその窮地を救ったスパイダーマンとのロマンスが思い起こされる。あのシーンでは2人ともずぶ濡れだった。

この悪天候の中でクモを探さなければならない私もある種の危機といえる。助けて、スパイダーマン(もりあげて)
おっさんの危機の時はさすのか傘を。
おっさんの危機の時はさすのか傘を。
まずは広場の木々を見て、樹皮を歩く徘徊性のクモを探す。網を張らずに俊敏に動き回り、虫を捕らえるアクティブなクモだ。特殊能力を駆使してビルの壁を駆け巡るスパイダーマンはこちらのタイプの方が共感できるのではないか。

なにより「この雨で薮に入って探すとかなり濡れますからこっちがいいですよね」と提案するとスパイダーマンはゆっくりと大きくうなずいた。
「目立たないからじっくり探してね」という指示を忠実に守る。
「目立たないからじっくり探してね」という指示を忠実に守る。
お、いた!
お、いた!
ちっさ!下の赤いのはスパイダーマンの指。スパイダーフィンガー。
ちっさ!下の赤いのはスパイダーマンの指。スパイダーフィンガー。
けだるそうにのそのそ歩くクモを発見。イナズマハエトリという小型のハエトリグモである。
シャープな黒ボディがかっこいい!樹皮のギャング!あくまで樹皮の。
シャープな黒ボディがかっこいい!樹皮のギャング!あくまで樹皮の。
スパイダーマンとそのへんのクモのツーショット撮影(指だが)という、すごいのかすごくないのかよくわからない偉業を成し遂げた。今年こそは5月病に打ち勝てそうだ。

建物があったらスパイダーチェック!

公園の公衆トイレの天井にクモががっさがっさ網を貼っている光景をよく見かける。やはり建物は欠かさずチェックしたいポイントだ。
奥にいるぞ!
奥にいるぞ!
スパイダーマンはその特殊能力で壁に吸着できるが一般の方は危ないのでマネしないでいただきたい。
結局降りて手伝う。糸すら使わない。
結局降りて手伝う。糸すら使わない。
シモングモ。一般的にはきもい系のクモなのだがスパイダーマンうれしそうだから黙っていよう。
シモングモ。一般的にはきもい系のクモなのだがスパイダーマンうれしそうだから黙っていよう。
この時期にこの雨で心配していたが、予想より多くのクモが見つかって少しほっとした。
壁ぎわに網をはっていた。ヒメグモの仲間かな?クモの同定むずかしい……
壁ぎわに網をはっていた。ヒメグモの仲間かな?クモの同定むずかしい……
クサグモの幼体だろうか。雨に濡れた網が美しい。
クサグモの幼体だろうか。雨に濡れた網が美しい。
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ものすごく心強い味方が!

「クモならあっちにいっぱいいるわよ」
スカイブルーのジャケットに身を包んだボランティアガイドさんの案内を受け、西側の自然観察園へ向かう。
だんだん色が叛乱してきた。
だんだん色が叛乱してきた。
雨の中、おっさんと仮装パーティーからはぐれたみたいなクモ男が下をむいて歩き回っているのを怪しんで遠巻きに眺めていたが、頭が悪いだけで人畜無害だとわかるとクモ探しに協力してくれた。
「なんだなんだ」
「この人達クモ探してるんですって」
「こっちによくいるぞ」
協力してくれるガイドの方が一人増え二人増え…
山狩り状態に。スパイダーマンが完全にいちスタッフ。
山狩り状態に。スパイダーマンが完全にいちスタッフ。
誰も違和感を感じていない。
誰も違和感を感じていない。
同行の林さんも薮を探索していたが……
同行の林さんも薮を探索していたが……
スパイダーマンを連れ出して何やら打ち合わせ。
スパイダーマンを連れ出して何やら打ち合わせ。
後日「写真を送ります」と送られてきたのがこれだ。
後日「写真を送ります」と送られてきたのがこれだ。
じわじわくる。
じわじわくる。
お、網張ってる。
お、網張ってる。
「ほら、ここにいるわよ」
ガイドさんの指差す先にはコガネグモの幼体がきれいな丸網を貼っていた。去年のクモ記事で酔っぱらってもらったあのクモである。
幼くても立派な網を張る。
幼くても立派な網を張る。
ここにもいた!クモ探しのスキルがやけに上がっている。
ここにもいた!クモ探しのスキルがやけに上がっている。
野鳥公園といってもガイドの方すべてが野鳥マニアというわけではなく、虫に詳しかったり、花に詳しかったりアベンジャーズのように個性豊かだ。とにかく皆さん好奇心が強く、クモを探しながらも話がはずむ。
「この前ここらへんでこんなクモ見つけたのよ」
「あーそれアシナガグモじゃないですかねえ」
「そんなに珍しい種類じゃないのねえ」
珍しいのならいますよ、ほら、僕の横に。
珍しいのならいますよ、ほら、僕の横に。
みなスパイダーマンともすっかりうちとけている。
物語では当初、その奇異な風貌から民衆に受け入れられず、新聞社のネガティブキャンペーンにもさらされるが、最初から草原でクモ探しとかしていれば好感度は天井知らずだったのではないか。
「おお、ここにもいるぞ」「え、まじですか」もはやスパイダーマンのほうが前のめり
「おお、ここにもいるぞ」「え、まじですか」もはやスパイダーマンのほうが前のめり
イエオニグモの幼体とかかな?それにしても写真がダメだな。
イエオニグモの幼体とかかな?それにしても写真がダメだな。
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スパイダーインタビューはじまるよ

ひとしきりクモ探しを満喫したところでスケッチブックとマジックインキを渡される。林さんの提案により、クモ好きVSスパイダーマンのクモに関するアンケートタイムが始まった。雨足は強くなる一方だった。

Q.好きなクモとその理由は?

今見返すと雨の中でなにドヤ顔してスケッチブック持ってんですかね。
今見返すと雨の中でなにドヤ顔してコガネグモとか言ってんですかね。
やはりここは日本を代表するザ・クモを挙げた。前の記事にも書いたが、家の中で飼おうとしておじいちゃんに激怒されたというノスタルジックな感傷も想起される、私にとっては特別なクモだ。
対するスパイダーマンの答え。
スーパース・パイダーと読んだぞ最初。
スーパース・パイダーと読んだぞ最初。
「スーパースパイダー」とは主人公ピーター・パーカーをスパイダーマンたらしめた遺伝子改良クモである。ピーターはこのクモに咬まれ、スーパーパワーを手に入れる。フリップでは我がクモ人生悔い無しみたいな事を言っているが、劇中ではその能力故の苦悩に直面しながら、成長を遂げてゆくのだ。

Q.クモのいいところは?

これほんと大事ですよ。
これほんと大事ですよ。
その外見から嫌われがちなクモだが、ハエ、蚊などの害虫をがっつり捕食する益虫として社会に貢献している。まあ、ミツバチとかの益虫も食べるのだけど。
その答えを見たスパイダーマンは「イッツ、マイターン」と私の書いたスケッチブックに上書きをはじめた。
おまえだけ傘かよ。
おまえだけ傘かよ。
自己PRかよ!
自己PRかよ!
ヴィランとはスパイダーマンはじめアメコミに登場する悪役のこと。2回繰り返すとイギリスのロックバンドみたいになるので注意が必要だ。
どうやら常軌を逸した身体能力やウェブシューター(手から糸を出す)に加え新しいスーパーパワー「スケッチブック大喜利」を手に入れたらしい。
「でもさあ、ひとくちに悪役といってもみんな人間くさかったり哀愁があるよね」「まー確かに倒すのがしのびなかったりしますけど建物壊したりして法律的にはアウトですからねー」
「でもさあ、ひとくちに悪役といってもみんな人間くさかったり哀愁があるよね」「まー確かに倒すのがしのびなかったりしますけど建物壊したりして法律的にはアウトですからねー」
「あとアメコミのヒーローってたいがいなんかうまいこと言いながら戦うよね」「あれカンペ見てんですよ(うそ)」
「あとアメコミのヒーローってたいがいなんかうまいこと言いながら戦うよね」「あれカンペ見てんですよ(うそ)」
「他にもクモのいいところを教えてください」
オニグモの仲間は夕方網を張り、朝に片付けたりします。べつに誠実ってことはないか。
オニグモの仲間は夕方網を張り、朝に片付けたりします。べつに誠実ってことはないか。
スパイダーマンも負けてはいない。
「ちょっとこれ持って待っててください」宣伝かよ!
「ちょっとこれ持って待っててください」宣伝かよ!
いちいち返し。まあ、クリーニング出せないよね。
いちいち返し。まあ、クリーニング出せないよね。
クリーニングだけでなく、洗ったら日干しができないのがスーパーヒーロー故の不便さだろうか。なんとなくタンブラー乾燥不可っぽいし。

糸のかわりにスケッチブックとフライヤー持ったスパイダーマンが「告知」というスーパーパワーを発揮した。雨が止む気配はなかった。
いつの間に!「アメイジング・スパイダーマン2」は4月25日より公開です。
いつの間に!「アメイジング・スパイダーマン2」は4月25日より公開です。

今日のこれがスピンオフになる日は近い

あいにくのコンディションだったが、ガイドさん達のあたたかい協力もあって、充実のクモ探索ができた。スパイダーマンには「ゴブリンサーファー」という有名なヴィラン(敵)がいるが、今回の話が本国に伝わって「デイリーポータルライター」というヴィラン(敵)が誕生しないだろうか。信じていれば、きっと夢はかなう、はずだ。

アメイジング・スパイダーマン2は4月25日(金)公開
ほら、こんな感じでポスターにして
ほら、こんな感じでポスターにして

【告知】5月10日、カルカルでイベントに出演します。

その名も「ふぁんしーナイト」
社会人となり実家を出た後の私の部屋を模様替えしたのは会社では設計畑から経理を歴任し、歌謡曲と日本文学が好きな父でしたが、カーテンが一面の花畑になっていました。このようにいつしか自意識を浸食する「ふぁんしー」について、むしろ私客席で観たいんだけどみたいな豪華メンバーに挟まれて語り合います。
きっとかわいくて楽しいことになりますので、どうぞゴールデンウィーク明けのブルーなフィーリングのままお越しくださいませ。

最後にスパイダーマンからお知らせ

『アメイジング・スパイダーマン2』
【4月25日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほか全国3D&2D、IMAX他ロードショー!】
公式HP:http://www.amazing-spiderman.jp/
一人カラオケでいとしのエリーを歌う感動のラストを見逃すな!
(たぶんそんなシーンありません)
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