「いらっしゃいませ」を演奏するのだ
レコーダーを持って女性服のお店をうろうろした。
以前「
『いらっしゃいませ』を鑑賞する」という記事を書いたことがある。デパートの婦人服ファッションフロアをめぐり、店員さんの「いらっしゃいませ~」という歌声を録音し、それをタイプに分類したものだ。
大きな特徴としては、「いらっしゃいませ~~~~~え」というふうに語尾がやたら長く伸ばされ、音程がうわずる点だ。
短い尺に「いらっしゃいませどうぞこらんくださいませ」を詰め込んだ高度な歌。
こうやって聞けば「なるほどこれね」と理解していただけると思う。特に女性はよく耳にしているはずだ(なぜか男性ものの服やではこういう歌うような「いらっしゃいませ」はほとんどない)。
鼻声だけど、よく通る声。そしてイントネーションの独特さ。これは歌だ。ならば楽譜におこしてみよう、とがんばった結果が冒頭の五線譜だ。
左手の和音は雰囲気に合わせて添えてみました。
歌い手さんは拍子など気にしていないだろうが、いちおう4/4拍子として書いてみた。そうしないと「
雰囲気五線譜」になっちゃうからだ。
ちょっと前半が甘い。「いらっしゃいませどうぞごらん」までがすごく速く、音程も微妙に変化し、ぼくの能力では追い切れなかった。
三土さんによる記事「
まちの音階をしらべる」に登場する絶対音感の持ち主ならばもっと正確に音を拾えるのだろうと思う。くやしい。
でもまあ、これでやりたいことは分かってもらえただろう。この調子で女性向け服やの「いらっしゃいませ」を演奏していこう。
ソウルフルいらっしゃいませ
次の「歌」を聞いてもらおう。
「いらっしゃいませ」と「ごらんくださ~い」のあいだにたぶん「どうぞ」が含まれていると思うのだが、ほどんど聞き取れない。そしてその部分で急に音程が下がる。これはなかなかソウルフルだ。ソウルフル?
まずはメロディラインを追ってみよう。
「さ~」の部分の音が違うようにも思えるが、ぼくにはこれが限界だった。人の声の音程を探るのって本当に難しい。
そういえばぼくの妹はぼくと違って絶対音感の持ち主なのだが、それでも人の声の音程を特定するのは難しいと言っていた。ピアノとフルートの音ならすぐわかるという(学生の頃フルート吹いていたので)。
かようにただでさえ難しい人の声なのに、この場合さらに歌い手が音程の正確さを全く気にしていないのだ。だから多少ずれていても大目に見てほしい。
以上、言い訳でした。
さて、これにてきとうにコードをつけてみよう。
聞いた瞬間「ソウルフル」だと思ったためか、ブルージーな響きになってしまったがどうだろう。最後引っ込みがつかなくなってへんに余韻を残した終わり方になってしまった。
「
雰囲気五線譜」のときもそうだったが、基本的にアドリブ一発録りでお送りしている。ぼくはちゃんと音楽教育受けているわけではないので、検討を重ねて考え込んでもろくなことにはならないのだ。
以上、言い訳でした。さあ、次行くぞ。
弾いてみて分かった「終わらせるのが難しい」
さて、次はこの歌だ。
ピアノで旋律弾いてみると、おや!と気づくことがあった。
さっきのに似ている。違いは、後半の「ごらんくださ~い」の部分がより高めになっているという点だ。これはピアノで音拾ってみなければ気がつかないことだった。まあ、べつにふつう気がつかなくてもいいんだけど。
ともあれ、これにも伴奏をつけてみよう。
分かったのは曲は「終わらせるのが難しい」ということだ。なんかやぶれかぶれでブルージーにしてしまった。そしてさっきの歌に似ていたので、和音の選び方も似ている。
自分では思いもよらないようなメロディラインだから、一曲一曲違うものになるだろうと思いきや、困ったあげくにむしろアレンジが似てくる、というのは面白い。
面白いけど、もっと変えてみたい。
「いらっしゃいませ」の法則が見えてきた
ならば、かなりメロディラインが違うこの歌はどうだ。
メロディラインが大胆なので、ハーモニーはふつうにしてみた。三土さんがやったみたいに実際店頭にピアノ持って行って生演奏したい。「いらっしゃいませセッション」だ。
さて、最後はこれだ。
「いらっしゃいませ」を音程にしていくうちに、「ごらんくださ~い」の部分はたいてい同じだということがわかってきた。前ページの専門的に言うと「短3度上がった後、1音あるいは半音上がる」というパターンだ。階名でいうと「ミ・ソ・ソ~ラ」って感じだ。
まあだからなんだ、って話なんですが。でもこれ、地域によって違ったら面白いよね。大阪では5度上がる!とか。
ともあれ、これにも伴奏をつけてみよう。
なんとなく最後の曲という点を意識してみましたがどうでしょうか。
ちゃんと音楽勉強したくなった
小学生の頃ピアノ教室に通っていたけれど、レッスンが憂鬱だった。ぜんぜん練習しなかったので。
今回このしょうもない音拾いとアレンジをやってみて、初めて「ちゃんとレッスン受けたい!」って思った。まさかこんなことでねえ。
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お母さんという存在はなぜファンシーになりがちなのか。子供の頃ふりふりのレース飾りがついたティッシュケース見て「ないわー」って思ってたけど、もしかしたらぼくも気が緩んだ隙にファンシーなことをやらかしているかもしれない。役所が貼り出す「防災訓練」の見出し文字にポップ体が使われちゃうように。もっとシリアスなフォント選ぼうよ。
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