うどんの食卓へのアプローチが激しすぎる!
シマダヤという食品メーカーの商品で「流水麺」というものがある。
流水で洗うだけですぐに食べられる麺のシリーズだ。1988年発売の商品だが、その後も脈々と改良が進み2009年以来CM放送も手伝ってまたヒットしているらしい。
でもうどんって、つゆをかけるだけのものがコンビニにも売ってるし、レンジにかければ食べられるチルド商品や冷凍品もあるじゃないか。
乾いて、生で、冷凍で売られる麺、麺、麺
乾麺があれば冷蔵の生麺があり、すでにゆでてあるチルド麺があって冷凍の麺もある。カップ麺もあるしお惣菜のコーナーに行けばつゆをかけるだけの麺があって、レンジにかけるだけの麺もある。アルミカップに入って直火にかけるものもある。そして冒頭で紹介した洗うだけで食べられるという麺もある。
こういった麺食攻勢の元気いっぱいさに、私は常々圧倒されてきた。
さまざまなる形態、そして方向性。しかし口に入るのは一様に麺である。一貫して麺なのである。
今回はこの麺商品の多様さに感心してみんなでフガフガ言っていこうという企画である。
うどんを例にとって感心してみよう
大型スーパーとコンビニを回り、コンセプトの違ううどんを買い集めた
一口に麺といってもそこからまたうどん、そば、ラーメンという種類の分岐もある。
今回は「うどん」に的を絞って商品の形態ごとに1商品ずつ買い集めてみた。
全部で10商品。すべて違うコンセプトの商品だ。冷凍、冷蔵、常温といった状態が違うので売り場に置かれている場所も違う。
しかしすべてがうどんなのである。
一つの食べ物がこれほどまでに形を変えられるものなのか。
価格帯で住み分けているわけじゃないらしい
各商品の詳細はこれからじっくり紹介するとして、その前にそれぞれのコンセプトの商品について一般的な価格と調理時間をまとめてみた。
軸は調理時間と一般的な商品の価格。色は調理方法を示す。 黄色:ゆで、オレンジ:レンジ、ピンク:熱湯、青:流水、赤:直火、水色:つゆかける
惣菜系のうどんはあらかじめ具が入っているので高いのは仕方がない。
値段的には惣菜系以外は意外にも1食あたり70円~110円くらいで拮抗していた。価格帯で住み分けているわけではないのだ。
では住み分けは保存期間だろうか。
横の軸を保存期間にかえてみた
調理時間で拮抗していた「乾麺VS生麺」、「冷凍麺VSチルド麺」は保存期間で差が開いたか。
値段をとるか、保存期間をとるか、美味しさ(これは主観なのでとりあえず置いておくとして)をとるかで細かく細かくうどんが形態別に住み分けているのだということが分かる。
多様性へパッションをぶつけたい
ひととおり理屈は理解しつつ、この「うどん多様すぎだろ!」という叫びは理屈を超えた私のパッションでもある。
ここから先は理屈抜きのパッション重視で各商品を見ていきたい。
たべるぞー、さまざまなるうどん!
今回紹介するのは、世の中に星の数ほどあるうどん商品の代表に偶然なってしまった品だ。
なので「味」についてはとやかくいわず、その調理時間やできるだけ一般的なことについてフォーカスしていきたい。
まずは乾麺からいきましょうか。
抜きんでるゆで時間、乾麺
代表は私んちにあったいただきものの「かわべ麺 うどん」。かけうどんの場合のゆで時間は16分とあった
麺は細め
まずなにしろ、乾麺はゆでるのにお湯を沸かすのが大変なのだ。しかしその大変さが、家で食べるちゃんとしたうどんというイメージにはバッチリはまる。ちゃんとおいしい。
うどん商品としての立ち位置:
お湯沸かすのが大変、ゆでるのにも時間がかかるが、「自宅でちゃんとうどんを食べている」という素敵な実感がある
うどんが大好きな人という感じ・生麺
生麺の代表(生麺にも半生などいろいろ種類はあるらしいですが、今回はこちらの1種)はトップバリュの「なま さぬきうどん」。トップバリュ内でのうどんのバリエーションがまたかなりの展開でつい笑った。ゆで時間12分。
ゆであがり、きれいでした
生麺というと、私にとってはおみやげでもらうというイメージだ。
たっぷりのお湯を沸かして10分以上ゆでる手間はもちろん、賞味期限的にも短い。
近所の店で自分で買って生麺をゆでるという人はかなりのうどん好きでだと思うのだが、プライベートブランド商品にあるくらいなのだから需要も多いのだろう。そのはず、やはりおいしい。
うどんの懐の広さが如実に表れているように思う。
うどん商品としての立ち位置:
手間もかかるし賞味期限も短い、きちんとおいしいものを食べたい人向けという印象
いつのまにかレンジでも作れるようになっていた
冷蔵であらかじめゆでた状態で売られているチルド麺代表は東洋水産「讃岐風うどん」。このほか同シリーズで「稲庭風うどん」もあった。
レンジで約2分。ゆでると3~4分
一気に調理時間が縮まった。
乾麺や生麺と違い、この手のチルド麺の場合は茹でるにしても少なめの湯量でいいとされる。食べるのに気軽なんだろうと思う。レンジ調理が可能とあってはいよいよだ。
うどん商品としての立ち位置:
手軽。1人前がさっとできる。
「実はおいしいよね」と言われ続けている気がする
冷凍代表はまたもトップバリュ「讃岐うどん(かつおだし風味)」
ゆでる場合は出汁も一緒に入れるのを推奨していた。レンジ3分30秒、ゆで2分
調理時間も価格帯もチルド麺と真っ向から勝負しているのが冷凍うどんだと思う。
「意外と美味しいのよー」と言われてひさしく、チルド麺には間違いなく勝っているともささやかれるが、チルド麺の牙城が一切崩れる気配がないのがうどん界の面白いところだ。
今回はトップバリュの製品だが、冷凍うどんが好きな人はカトキチ原理主義であることが多いですよね。
うどん商品としての立ち位置:
手軽。1人前がさっとできる。「実はおいしいよね」という「実は」の部分の魅力も。
水で洗うだけという衝撃
洗えば食べられるという新機軸(とはいえ商品としての歴史は長い)「流水麺(うどん)」。「楽ちんオープン」とある通り袋を開けるのもものすごく簡単
撮影のため毎食うどんです。これは夜ご飯にあたたかいつけつゆで。コシはないが、のどごしは異様にいい、べとつかないソフト麺のようなあじわい
水でさっと洗ってほぐすだけで食べられる麺である。
ゆでもしくはレンジのうどんとつゆをかけるだけの惣菜のうどん。この2者の間に「洗うだけ」というコンセプトですっと入ってきているのがすごい。
面倒でもレンジにかけるくらいならできるだろう。そうでもなきゃ惣菜コーナーで買うしと思っていたのだが、ある夏大変な夏バテをして火を使うのも買い物に出かけるのもおっくうになりこの商品に大いに助けられたのだった。ちゃんと存在理由があるのだ。
うどん商品としての立ち位置:
微妙かと思われた中途半端な手軽さだが、実は洗うだけというのは超便利。
お湯をかけるだけのうどんもあるぞ
カップ麺代表はすみません、またもトップバリュ「きつねうどん」。熱湯3分ではなく5分だった
100円以下で具が乗っているのはすごいことなんじゃないか
水で洗うだけのうどんがあれば、お湯をかけるだけのうどんもある。
しかもお湯をかけるだけのうどんはほぼ別の食べ物として独自の進化をとげているともいえる。カップ麺である。
なんかもう、いろいろあるのだ。うどん、いろいろあるのだよ。
うどん商品としての立ち位置:
手軽。1人前がさっとできる。お湯をかけるだけでできるって冷静に考えたら面白すぎる。
最手軽うどん・つゆをかけるだけ
惣菜麺のつゆをかけてほぐすタイプの冷やしうどん、代表は「18品目のサラダうどん」。 2階建てになっていて具を乗せるタイプ
この手のうどんは味の当たりはずれが多い
つゆをかけるだけ、今回のラインナップ上でみれば来るところまできたうどんである。
しかし、そんなに存在として派手ではないのがうどん業界の厳しいところなのだと思う。
うどん商品としての立ち位置:
手軽。ほとんど何もしなくていいうどん。
レンジVS直火 カレーうどん
惣菜コーナー系のうどんは冷やし麺のほかにレンジ麺と直火麺がある。この2つは今回どちらもカレーうどんを用意してみた。
惣菜系のレンジにかけるタイプのうどん、代表は「和風だし香るカレーうどん」。レンジで5分10秒
冷凍されたアルミカップで直火にかけるタイプのうどん、代表は「カレーうどん」。弱火の直火で3分、そのあと温まるまで10分くらい火にかける
どちらも同じセブンイレブンで同時に購入。価格は398円(レンジ)と410円(冷凍)の、どちらもカレーうどんである。
いる? この2つの選択肢、いる? という今回の企画の趣旨の代名詞にもなりそうな2商品だ。
レンジのほうはこってりしたつゆ
対しする直火はさらっとしたつゆ…!
「なるほど…」と思った。
カレーうどん2杯目を前にしてひげをなぜながら「なるほど」という。食いしん坊がアホかと思うが実際言った。
どちらもおいしい。麺のぷりぷり感としては冷凍が勝るように思うが、そういう話ではないのだ。2軒の違った店の品という感じである。
うどんの調理方法を変えるだけでセブンイレブンにうどん屋が2軒立つ。「なるほど…」であろう。
うどん商品としての立ち位置:
完成度の高い別のおいしさが2種類あるという存在意義
ソフト麺、売ってました
ソフト麺代表は「マルメイ たらこ」。鳥とたらこが並ぶパッケージに静かな狂気を感じる
ソフト麺が、スーパーで売っていた。しのぎを削りに削るうどん業界では「なつかし枠」すらすでに押さえられずみなのだ。
ただ、給食に出たような「そのまま出してほぐして食べる」ものかと思ったらそうではなく、調理法としては炒めるかレンジでの調理が必要であった。
炒めるか、レンジで3分(以下レンジの調理時間は500Wの場合)。たらこ味の粉で味付けする。主役は麺というより調味料、という商品かも
麺はこしなどなにもなくぶよぶよしていてこれぞソフト麺。スパゲティではないので、うどんでいいと思う。
笑えるおいしさだ。ど直球のジャンク。駄菓子的においしい。
うどん商品としての立ち位置:
なつかしく、手軽。おやつ的なジャンクさ
そのうちうどんが向こうからやってくるのではないか
こうしてうどんは万全の態勢で私たちが食べるのを待ち構えているのだ。思えば食卓はもちろん、外に出れば今度はさまざまな外食産業がうどんを今日も提供している。
そこへきて私たちにはスパゲティもラーメンもあるのだ。ひいてはごはんもパンもあるのだ。
わーーーっ!
選択肢の多さに後ずさりそうである。飽食の時代とかそういうことではなくて、すべてを提供する流通と技術の進化をまぶしがっていきたい。
わかめ麺、こんにゃく麺、とうふ麺など小麦粉圏外からも食卓を狙う影あり