まずは弁当から
盛りつけについて説明したいわけだが、判りやすくするためにスーパーで弁当を買ってきた。半額のカルビ弁当と鮭弁当である。べ、別に狙ったわけじゃないのに半額になってたんだからねっ!
181円のカルビ弁当。
190円の鮭弁。おかずが結構多い。
ふつうに美味しそうな鮭弁である。ポイントはバランの緑色だろうか。
鮭弁当の方は煮物やコロッケ、漬け物、鮭などで彩りもよくおいしそうに見える。
一方のカルビ弁当は全体的に茶色が多い。右下にあるバランと紅ショウガで彩りの補助をしているが、いまいち補い切れてないザンネン飯である。
※ここでは見た目のみに注目し、実際の味や肉が好きで魚が嫌いなど個人的嗜好は無視することとする。
一方のカルビ弁当。ちょっと食欲をそそらない。
バラエティ性が乏しいせいだろうか
ほぼ茶色一色の見た目が悪いせいであり、鮭弁当のおかずを移植してやれば美味しそうに見えるはずである。
という事で、移植してみた。
増す一方のザンネン感。
まったくおいしそうに見えない。なんだろう、このザンネン感。ぶっちゃけ残飯のようであり、惨飯と呼んでも良いくらいのザンネン飯だ。
これは何が悪いのかと言えば、ほぼ盛り付け方である。買ってそのままのパックもいけない。こういうのを買うのはいいが、家で食べるならちゃんと皿に盛り付けたい。
盛り付けなおしてみた。少しはマシになっただろうか。しれっと胡麻なんか掛けてある。
今にして思えば、小皿に分けて盛るべきだったのだが、大皿に盛るのもカフェっぽくてお洒落なんじゃないかと思ってこうしてみた。目を細めて見ればカフェ飯のロコモコっぽく見えやしないだろうか(見えない)。
鮭の存在感が大きすぎるのかも知れないし、色的には緑色が足らない。バランでは力不足である。そこで山椒の葉っぱ(木の芽)を乗せてみた。
グッとおいしそうになった様な気がしないでもない。みそ汁も付けてみた。
葉っぱの存在は大きい。そして、みそ汁の力も大きい。食事には面倒でも汁物を付けた方が良い。
盛り付ける時は種類別に綺麗に並べる事も肝要である。混ぜるな危険である。
そして、気をつけなければならない事がもう1点ある。みそ汁の具を皿に盛り付けてはならない(誰もやらない)。
いきなりザンネン飯である。
陸に上がったカッパ、なんて言葉があるが、皿に乗ったみそ汁の具が醸し出すザンネン感はなかなかである。葉っぱが演出したおいしそうさが台無しである。すごく惨飯だ。
和幸の盛りつけを鑑定する
ここで『とんかつ和幸』のロースカツ定食を見ていただきたい。一見すると普通にトンカツ定食だが、キャベツの上に小さく紫キャベツが載っている。こういうチャームポイントが盛りつけには大事である。右上のしば漬けも彩りを増していて良い。
ああ、和幸に行きたい。トンカツ食べたい。
黒いお盆が高級感を出し、素朴な大皿、漆塗りっぽい色の椀、赤紫のしば漬けに映える緑の小鉢など器の選択もいい。
細かい事を言えばカツが乗ってる網がズレてるが、これは僕が撮影前に直すべきだった。
かように盛りつけとは、食材の色や配置、食器の選択が重要なのである。
次のページではゴチャっとせざるをえない料理の残念感について考えます。
ナポリタンはザンネン化しやすい
トンカツ定食はキャベツとトンカツ、ご飯みそ汁漬け物など各要素が独立した料理だ。
一方、料理には素材がゴチャッと混ざっているものも多い。例えばナポリタンである。下の写真は某喫茶店のナポリタンであり、味は良いのだが見た目はかなりザンネンである。
彩りがない。
味の好みは置いておくとして、赤が基調の料理には緑が欲しい。パセリやピーマンなど、なんでもいいので緑色を入れるべきだ。
多分ナポリタンのピーマンは彩り的な理由で入れられているのだと思う。
これはピーマン入りのナポリタン。皿の模様も相まって華やかだ。
次の写真はハンバーグ付きのナポリタンである。サラリーマンがカウンターでチャチャッと食べるような店なので彩りとか見た目とかあんまり気にしてないのかも知れないが、ピーマンがやや寂しい。
ついでに言えば、皿にデミグラスソースが垂れているが見た目的にマイナス。拭いて欲しいなーと。
ナポリタン4枚目はグッと彩りが増している。確か小松菜だったと思うが緑がたっぷり入っていておいしそうに見える。
写真を乗せた4つのナポリタンの味はどれもおいしいのだが、単に写真だけ見れば一番おいしそうなのは小松菜入りナポリタンだろう。
葉っぱは重要なのだ。
量も多いが彩りも良い。
そして春雨の酢の物もザンネン化しやすい
思うに、和え物は気をつけないとザンネン化しやすい。例えばこの春雨の酢の物だ。適当に作って器に盛ってみた。
まぁ、普通の酢の物ですわ。
これをアルミの食器に盛り付けてみる。するとどうだろう、まんま給食である。
給食っぽくなった。こういうの食べた覚えがある。
料理には葉っぱも大事だが器も大事だ。こういう汁が出るモノは深めの小鉢が良い。
こういう小鉢は何種類か持っておきたい。
葉っぱや胡麻で演出する
ただ小鉢に盛り付けても地味である。そこで便利なのが1ページ目でも使っていた胡麻と葉っぱである。
葉っぱについては、プランターで育てている山椒の若芽である『木の芽』を使っている。ちょうど今が旬なのでモサモサ生えているのだ。
木の芽使い放題である。
春雨の酢の物という地味キャラも、葉っぱや胡麻で演出すれば割烹の突出しみたいに見えてくる。
中学のころは地味だったのに高校生になった途端デビューしちゃった山本さんみたいである(いきなり彼氏が出来てた)。
胡麻と葉っぱは便利です。
不味そうに撮る方法
さて、自画自賛しちゃうが単なる春雨の酢の物でおいしそうな写真が撮れた。
では、これをザンネン飯にするにはどうしたらいいか。まずは野菜を大きめにカットしたい。
上の写真はこれくらいの細さにした。
大きく適当な乱切りにする。
一般的に、料理は具が大きいと見た目が野暮ったくなる。家庭のカレーは具が大きいが(多分子供が喜ぶ)、洗練された本格カレーの場合は具が細かい。インドカレーなんかは肉以外、野菜はみじん切りにして使ったりするだろう(例外もあるので突っ込みは不要)。
みそ汁の豆腐は小さく切った方が料亭っぽくなる。
ということで、逆に具を大きくしてみた。
見事な残念感である。
具を大きく切るほかにも色々工夫して不味そうにした。
・器をアルマイトの食器にして給食っぽく。
・キクラゲは切らずに投入。
・カメラのホワイトバランスを電球モードにして青く写るように調整。
・他の写真は
バウンス撮影という方法で明るく撮っているが、これはストロボ無しで蛍光灯の明かりだけで撮った。
大体これでザンネン飯になる。もう一手間加えるともっとよくなる(つまりダメになる)。
食器からはみ出すとザンネン感が増す。ここまでやると方々から怒られそうだが。
なお、作った料理は全て美味しく食べました。見た目はともかく、味はちゃんとしてるのだ。
盛りつけの時に食器のふちが汚れているとザンネンになってしまうので気をつけたい。カレーなんか特に注意して欲しい。
あと、こういう料理を小鉢ではなく平皿に盛り付けるのもやめた方がいい。
合わせ酢が皿に広がるのがなんか嫌だし、具の乱切り具合がよく見えてしまう。
それでも胡麻と葉っぱを乗せればある程度は誤魔化せる。チャームポイントが目を引くので欠点が見えなくなるのだ。これは恋と同じである。人を好きになると悪いとこも見えなくなってしまうのだ。
山本さんの彼は高校生ながらにパチンコ屋に入り浸る結構な不良だった(1年後に別れた)。でも多分、一箇所くらいはいいとこもあったのだろう。
葉っぱが乗ると色々誤魔化せる。
小鉢に盛り付けちゃえば具の乱切り加減はほぼ隠せるので、野菜を綺麗に切るのが苦手な人は小さめの小鉢を使って葉っぱを乗せればいい(大雑把なアドバイス)。
ほら、色々隠れて割烹感が出た。
次のページでは焼きそばの盛りつけについて考えます。
焼きそばのゴチャゴチャ感が嫌だ
『ゴチャット料理』と言えば焼きそばである(断言)。普通に作って普通に盛り付けただけでは見た目的なザンネン感はぬぐえない。
「はい、今日の晩ご飯」って下の写真みたいな焼きそばだけ出てきたら僕は結構悲しい。せめて見た目をキレイに演出して欲しい。
不味そうではないけど、食事としての嬉しみに欠ける。
一人暮らしをはじめたばかりの人が作るご飯はだいたいこんな感じになるだろう。まずは炊飯器やフライパンと一緒にプランターと土を買って、パセリとバジルを育てなさい。出来れば山椒も。
プランターにバジルが生えてればパスタ料理のレベルが上がる。
青のりとか重要
焼きそばに必要な彩りは緑と、緑の対極である赤だ。焼きそばで緑と赤といえば青のりと紅ショウガだろう。
この二つは明らかに彩り的な意味で盛り付けに使われている。
青のりでグッと美味しそうになった。
さらに紅ショウガを乗せる。チャームポイント(注目点)は重要である。マヨネーズも散らしておくといい。
お昼ご飯だったら嬉しいレベルにはなった。
冷やし中華方式の焼きそば
普通の焼きそばが出来たが、ここで焼きそばの盛り付けを一段上に引き上げたい。いつまでのそのままではいけないのだ。
山本さんは2年生の夏、パチンコ高校生から3つ年上の大学生に乗換えた。
まずは麺だけ盛り付け。
冷やし中華風(見た目)の焼きそば。
麺と一緒に調理した具材をより分けるのがすごく大変だった。と、苦労話を書いておく。
放射状に並べたら、定番の青のり、紅ショウガ、そして木の芽である。
なんかこういう感じ知ってる。
確かに焼きそばなんだけど、盛り付けに気合いを入れた結果として、ちょっと高めの創作料理居酒屋が出す、『素材は安いんだけど盛り付けや大きな皿のせいで高級感が出ちゃって、実際けっこうな値段の料理』っぽくなった。丸ノ内OLとかこういう感じ好きだろう。
とりあえず笑いは取れそうな盛りつけである。
ついでだし、そろそろ夏がやってくるはずなので次のページでは冷やし中華の盛り付け、再生と退廃について考えたい。
最低限の冷やし中華。麺を茹でて冷してタレを掛けただけ。
普通に盛り付けてみる
冷やし中華を盛り付ける場合、普通は放射状に盛り付けるのだが、細長い器を使ってしまったのでトリコロール調に具を並べてみた。
キュウリの緑、ハムのピンク色、錦糸玉子の黄色が見た目に良い。
定番の具材3種類。
これが、黄色パプリカ、錦糸玉子、白髪ねぎだったら大変に地味な冷やし中華になってしまう。
全体的にセピア色である。タレもごまだれにしてみた。
冷やし中華は具を乗せた時点で華やかだが、やっぱり紅ショウガと胡麻は必要だろう。
イメージする冷やし中華の色合いになった。
木の芽の威力よ。
盛り付け以外の部分も頑張りたい
料理は周りの雰囲気も重要である。想像してみてほしい。いくらキレイに盛り付けてもアスファルトの上に置いたら台無しであろう。
竹のランチョンマットに箸置き、キンキンに冷えた氷水のグラスなんぞを置いてみた。
それなりの見た目になってきた。
実は僕は冷し中華が好きで好きでしょうがないのだ。見た目のきれいさも良いし、コシのある冷えた中華麺も良い。酸っぱくてごま油の香るタレも好きだ。
涼しげな冷やし中華が出来ましたよ。
冷やし中華は食べてる間がザンネンだ
冷やし中華は盛りつけのきれいさと、食べはじめたあとのザンネンな見た目のギャップがすごい。あのキレイだった冷やし中華を、食べるためにグチャグチャにするのだ。ザンネン極まりない。
無惨である。
だが、ザンネンな見た目になった冷やし中華も上に別の具を乗せればまたキレイなあの頃に戻れるのだ。
上の写真の食べかけ冷やし中華を盛り付け直してみた。
山本さんはその後、大学生に騙されたり20歳年上のオジサンと付き合ったりしたが、今では2児のママである。昔の笑顔に戻ったような気がする。
トマトは丸く盛り付けるべし
トマトをクシ切りにして放射状に盛り付けた。こういうのは奇数で盛りつけのがキレイに見える気がする。
太陽をイメージしてみた。食べかけだった冷やし中華が復活。
明日のお昼は冷やし中華で決まりだね(たぶんまだ始まってない店が多い)。
さっき載せた彩り的にザンネンな冷やし中華も、具を色々載せちゃえばキレイに出来る。
盛り付けに大事なのは、彩り、食器、法則性である。円でも直線でもなんでもいいから法則性を入れておくときれいに見えるのだ。
美女になれる素質があるすっぴん美人と考えたい。
あり合わせの材料として、トマトやキュウリ、あと木の芽をモリモリのせた。青のりも散らしてある。
ほら、美味しそうになった。SNSに載せたらいいね!って言われるだろう。
そしてまた食べかけるとザンネンに
繰り返すが、冷やし中華は食べ始めるとザンネンになる。最初きれいだと一層みじめに見えてしまう。
歴史は繰り返し、冷やし中華は無惨になり続ける。
そしてまた盛りつけによって復活するのだ。花火をイメージして盛り付けた冷やし中華からは夏の匂いがした(ポエム)。
ゴマダレ冷やし中華。錦糸玉子とトマトのコントラストにご注目ください。
料理は見た目が9割
味を期待して行ったお店でも、2ページ目に載せたザンネン酢の物みたいのが出てきたらガッカリするだろう。いくら味がよくでも、だ。
いくら美味しくてもこれじゃあねぇ。
食べログの写真がこんなだったら味の評価が高くても、果たしてその店を選ぶだろうか。
選ばないね。どこでも誰でも料理の写真を撮ってSNSに投稿する昨今、料理に大事なのは味と同時に見た目である。
カップ麺だって盛りつけを工夫すればフレンチっぽくなるのだ。
以前書いた
この記事の為に作った見た目フレンチ風カップ麺。
このカップ麺も葉っぱ(クレソン)を乗せて、ソースの並びとカップ麺の具の並びに法則性を持たせている。
おまけ
だいたい書きたいことは書き散らかしたので満足なのだが、最後にもうちょっとだけ。
赤いきつねも葉っぱを乗せるともっと美味しそうに見える。カップ麺を食べる時も積極的に葉っぱを乗せていきたい。
普通に作った赤いきつね。そのままで美味しいけど。
木の芽を乗せると春の香りがする。
しかし、プランターから取り放題といって、木の芽の乗せすぎには注意したい。
密林に隠れたゲリラみたいな見た目になった。
ここまで乗せると、もはや緑のきつねである。山椒の香りがとても強くて、今まで食べたことのない赤いきつねだった。
慣れればマジで簡単っすよ
料理は見た目が9割。みなさまにおかれましても、単にクックパッドのレシピ通りに作って満足するのではなく、食べるのが惜しいくらいおいしそうな見た目の盛り付けをしていただきたい。
その為にはプランターで葉っぱを育てることだ。毎日新鮮なハーブを使えるってのは、すごく良いですよ。
ちなみに、山本さんの話は僕の創作なので真に受けないように。今年はエイプリルフールに乗り遅れたのでウソを書きたくなったのさ。