巨大ロボットと日常感
この作品の世界では大型ロボットが作業用機械として一般化し、日常に溶け込んでいる。つまり、これが街中を歩いていてもそれほど驚くことではないのである。
本当にそうだろうか?
でかい! 整備用の階段が長い!
注意書きのシールも細かい。階段をのぼると胸のあたりの高さにまでなる
「汚し」による質感がリアル! だが……。
身長8mと聞いていたのでそこら辺の家と同じくらいの日常的サイズかと高をくくっていたのだが、実際見るとやっぱり大きい。
「近未来を描く場合、ロボットは8mくらいがリアル」というような話を聞いたことがあるが、やすやすと日々の生活に溶け込むとは思えない。
何年修行した人が作ったのか
またどこを見ても緻密である。どこで何年修行したらこんなものが作れるようになるのか。日常の象徴である「ガムテープでとりあえずくっつけてある部分」が1箇所もない。
昔、大仏を作るときは偉いお坊さんが指導したというが、きっとこのイングラムもお坊さんみたいに修行した人が作ったのだろう。徳が高過ぎる。
胸のところを開けると操縦席がある
注意書きのシールも細かい。
操縦性脇の注意書きシールもちゃんと作られたもの。「指をはさまないように」みたいなものではなくもっと賢そうな内容だった。民間人お断りである。
ただ、デッキのコントロールパネルの一部に大きなホチキスが使われている部分。ここだけは僕にも作れると思った。
デッキについていた制御盤
中央のパーツがホチキスだった
このように細部にまでわたってリアルに作りこまれているイングラムだが、如何せん大きい。
そう、意外にもイングラムには日常っぽさが足りないのだ。もっと身近に思えるような要素を加える必要がある。
ネギで日常感をプラス
どうしたら日常感を加えられるかを当サイトウェブマスターの林さんに聞いてみたら「ネギを持たせよう」と言う。
ネギの飛び出したビニール袋を手に持っていたら、きっと日常感がでるに違いないと言うのだ。
こういうことか
グラデーションの付いた紙と画用紙を組み合わせる
意外とあっさりネギになった。それを持ってニヤリとする林さん。
ふだんは見かけることはないくらい大きなネギ袋が出来上がった。
さっそく持たせてみる(というか指先の間接にひっかけてみる)。
持たせる。脚立を使わないといけない。
イングラム、ネギを買いに出動!
非効率にもネギだけ買ってきたイングラム
今日の夕飯はネギぬたよ
ネギをイングラムで買いに行った、というシチュエーションだろうか。ネギがちょっとでかいけど。
たしかに日常感あふれる巨大ロボットになっている気もする。だがイングラムは警視庁のものである。私用で使ったら問題だ。
こう見えて1mくらいあるネギ
企画が地味なことに気づく
確かに日常感は出た。だがこれでいいのだろうか。地味だ。あまりの地味さにため息が漏れる。いや、でも日常とは地味なものだからこれでいいのか?
判然としないが、くじけずに次の撮影に移りたい。
イングラム、焼肉エプロンつける
林さんはもうひとつアイデアをくれた。焼肉エプロンである。たしかに焼肉エプロンのままならない見た目は日常の象徴とも言える。
そこで次は紙でできた焼肉エプロンをイングラムに着せたい。ネギの次はエプロン。地味に次ぐ地味。
かっこよさVSかっこわるさ
かっこわるい焼肉エプロンとかっこいいイングラムの相性はどうなのだろう。意外と革命が起こるかもしれない。
ということで、予め大きな紙を何枚か貼り合わせて巨大エプロンを作ってきた。
巨大ロボット用の大きな紙エプロンを作った
林さんが前からエプロンをかけて、僕は後ろから紐を引っ張る。たったこれだけの作業も相手が大きいので大掛かりだ。
改めて写真を見返すと「なにやってんだ」という感じがする
僕は後ろからの作業なので、はしごを登る。こんなことのために作られたはしごじゃないだろうと思いながら。
背面にははしごが設置されている
エプロン装着用に設置されたわけではない
ちょうちょ結びで浮かれ感を演出
これだけの作業でも昇り降りが必要なので、かなりの全身運動になる。人のいたずらを手伝うだけなのになんでこんなに大変なんだろう……。
さて、少し紐の長さを調整をして、こうなった。
日常的になったとも言えるし、世界観を冒涜しているとも言える。
革命は起きず。
胸のでっぱりのせいだろうか、想像よりエプロンが小さい。そしてエプロンが守れていない部分が多すぎる。肩とかに油がはねたらシミになっちゃう。
だが、この不格好さが逆に焼肉エプロンの本質を突いていると言えるかもしれない。焼き肉エプロンの本質をついてどうなるのかという問題はあるが。
イングラム、空中浮遊
次はイングラムを空中浮遊させたい。
浮かせたいものの前に影を模した黒い紙を置くと、宙に浮いて見えるという撮影手法がある(
この記事を参照)。これを試してみよう。
どこが日常なのかと言われるかも知れないが、この工夫でなんとかする感じが日常なのである!
目の錯覚を利用した方法で宙に浮かす
さっそく黒い紙を地面に敷く。
では、黒い紙がイングラムの影だと思って見てください。(急にですます体になっているのは読者の方の優しい気持ちがないと浮いて見えないからです。)
まずは普通に撮影。浮いて見ますでしょうか。
ぼくは下半身だけだと浮いているように見えました。
これが浮いて見えない人は、画面から距離をとって見たり、視界の端のほうでぼんやり見たりすれば、なんとなく見えてくると思います。頑張ってください。
すこしあおり気味に撮影。しょぼいギミックで世俗感が与えられるイングラム。
「浮いているんだ」という気持ちを持って眺めて欲しい。
まだ見えないという人のために小さい画像も用意した。少なくとも一瞬「あっ」という瞬間があるはず。
どれか浮いて見えないですか
……どうでしょうか。
ちなみにこの撮影、平日の昼間に行われ、数人が撮った写真を互いに見せ合って「これ浮いて見えますよ」「あっ、たしかに」などと、花を愛でるかのようであった。優雅。これはまちがいなく日常だと思った。
うららかな春の陽気、みなさま、いかがお過ごしですか?
おれレイバー
最後は、イングラム用の大きなお面を用意してきたのでそれを装着して「おれレイバー」にしたい。
日常の主役は自分自身である。だからお面を付けるのも自然なことだ。(ちょっと無理がある説明なのは自分でもわかっている。)
倉庫に転がるおれの顔。
お面をどうやって貼りつけるのかは全然考えていなかったのだが、いざ取り付けようとするとイングラムのおでこのところにうってつけのパーツがついていた。ここにテープで貼り付けよう。
おでこのパーツがちょうどお面を貼り付けるのにちょうどいい
ぴったり
養生テープで貼り付けているだけなので粘着力は心もとないが、案外苦戦することなく取り付けられた。急いで撮影してしまおう
じゃーん、かっこよくなったおれ
私です。
無駄に動画まで撮ってしまった。私の趣味の世界へようこそ。
Zくんのお面もあるよ
当サイトのキャラクターZくんのボードも持参したので、これもイングラムの顔に取り付けてみよう。
かっこいい!
合成っぽいけどかっこいい!
サイズ的にZくんの方がしっくりくる気がする。ただ造形がフラットなので、肉眼で見ても合成したように見える。
深い感想も思い浮かばず「ほお~」と唸っていると、重みでテープが外れたのか、ボードが落ちた。
あっ……
ふぁさ~。落ちた。
やっぱり養生テープじゃだめか。
Zくん、花が散るようにひらりと舞う。その落ち方のなんと綺麗なことよ。
以上、イングラムにだいぶ日常感がプラスされて僕は満足です。
終わりのない日常を生きろ
想像以上に地味な記事になってしまった。大きなハプニングはなにもない。だが、これこそが日常だという考え方もある。革命はおこらないまま、日常は続いていく。
それでいい。こうした日常を一日一日重ねていくことに無二の価値があるのだから。(なにか言っているようで何も言っていない。)
4月5日(土)第1章上映開始
THE NEXT GENERATION
パトレイバー
公式サイト
いい写真を撮ろうとして気がついたら凄いところに立っていた