特集 2014年3月25日

身欠きニシン磨き

ニシンでピッカピカ!
ニシンでピッカピカ!
身欠きニシンというのだ、ニシンそばに横たわっているあのニシンは。つい最近まで「磨きニシン」だと思っていた。

というわけで、せっかくなので「磨けるニシン」を作ってみたい。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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なんとも地味

モニタの前のあなた。あなたも「磨きニシン」だと勘違いしていたクチではないですか。

あの地味なニシン、昆布なんかに巻かれてじっとしてたり甘露煮にされて茶色くなってるニシン。どうりで「磨き」の語の放つ輝きとイメージとが、かけ離れているはずだ。

「女を磨く」みたいな観念的な意味か、日本酒で言う「米を磨く」みたいな技術的なことかとも考えた。「身を欠く」の「身欠き」とは夢にも思わなかったのである。
ふだんめったに口にしないニシン、買ってみる。
ふだんめったに口にしないニシン、買ってみる。
ニシンの干物を「身欠きニシン」という。保存法の未発達な時代、頭や内臓を除いて干し、遠方までも流通できるようにした。干物を戻したときに身がはがれやすくなることから「身欠きニシン」というようだ(Wikipediaより)。
こうやって見ると「磨き」と書いてもいいような輝きである。
こうやって見ると「磨き」と書いてもいいような輝きである。
はい、そしてニシンそば。実は初めて食べた・・・。
はい、そしてニシンそば。実は初めて食べた・・・。
そしてこれが「磨きブラシ」。
そしてこれが「磨きブラシ」。
研磨用のブラシを、ホームセンターの「磨き・ヤスリ」コーナーで買ってきた。まさに磨きブラシである。

ニシンとブラシ。ふだんめったに買い求める機会のない2つのものが、ここで出会ってしまった。出会ったはいいが、さてどうしようか。

磨きブラシを、身欠きニシンの形にしよう。単純なんだかややこしくなってきたんだかわからない。
木にはこれ、「エポキシパテ・木部用」というのがよかろう。
木にはこれ、「エポキシパテ・木部用」というのがよかろう。
A剤とB剤がこのように分かれており、使うときはよく練って混ぜ合わせる。
A剤とB剤がこのように分かれており、使うときはよく練って混ぜ合わせる。
混ぜると10分で硬化する。モタモタしてちゃいけない一方、早く固まってくれるので便利。
混ぜると10分で硬化する。モタモタしてちゃいけない一方、早く固まってくれるので便利。
こうやって加工していると真鍮のブラシが手に食い込んでイテテテテ!
こうやって加工していると真鍮のブラシが手に食い込んでイテテテテ!
普通のエポキシパテでもいいのだろうが、A剤とB剤が最初からロールケーキ状になっていて便利なので、なんとなくいつもこれを使っている。

さてこうやって実物を見ながらパテを盛って、切り身の曲線をだいたいの感じで再現していく。
月面みたいだけど今はこれで良しとする。
月面みたいだけど今はこれで良しとする。
本当は盛る段階からもっときれいに仕上げると後が楽なんだろうが、「後が楽」という行動原理で動いたことがない。

よって、これから削ってヤスリで磨いて、という作業がとても大変なことになるのだ。ンガー。

身欠きを磨く

少しづつ盛ったパテの起伏を無くしてきれいにするため、彫刻刀やスポンジヤスリで削っていく。
ニシン一刀彫。
ニシン一刀彫。
ヤスリ使ってからが長い。いつ終わるのか。
ヤスリ使ってからが長い。いつ終わるのか。
へこんだ部分にパテを盛ったらまた違うところにへこみができて、そこを削って、また他がへこんで見えるからそこに盛って削って・・・とエンドレスなへっぽこ作業である。基準面が定まらないと延々と削っていき、いつか必要な起伏までもがなくなるのでは、という恐怖。

でもまあ、その先に待っているのは、何のことはない、ニシンである。
ニシンというかカツオ節に近い趣き。(「カバヤのジューC」みたいな点々は、硬化のバラつき部分。)
ニシンというかカツオ節に近い趣き。(「カバヤのジューC」みたいな点々は、硬化のバラつき部分。)
磨きに磨いたニシンの身欠き。これがホントの「身欠き屋シンジケート」である。あるいは身欠き屋ニシンジケート。

それはさておき、このカツオ節みたいな何かを身欠きニシンの甘露煮っぽく着色していこう。

といっても使う色は非常に少ない。シンプルにであるほど、難しい。うまくニシンになってくれるだろうか。
とにかく地の色は銀だ。
とにかく地の色は銀だ。
魚の肌のように点描するなど。ところどころ皮がはがれてるように黒くするなど。
魚の肌のように点描するなど。ところどころ皮がはがれてるように黒くするなど。
甘露煮を再現したいので、水分多めに茶色を置いて・・・。
甘露煮を再現したいので、水分多めに茶色を置いて・・・。
ティッシュでトントンと叩く。どうだろうか。
ティッシュでトントンと叩く。どうだろうか。
指も使う。使えるものは使う。
指も使う。使えるものは使う。
皮の細い線は爪楊枝で。
皮の細い線は爪楊枝で。
うーん、元の身欠きニシン甘露煮があまり特徴のない姿なので、こうすればニシンに見える!という方法がなかなかつかめない。ニシン法、とでも言おうか。

それでも色塗りでやれるだけのことはやった。あとは仕上げだ。ツヤツヤ感を出せば、ニシンにまた一歩近づくかもしれない。一歩でもニシン。

ニ新参者か

照り、それは「つや出しメディウム」で “たれ” を作って表現しよう。ただし醤油の色を出すために絵の具を少し混ぜたい。
これだ!という醤油の色がよくわからないので茶色に黄色とかオレンジも混ぜてみる。
これだ!という醤油の色がよくわからないので茶色に黄色とかオレンジも混ぜてみる。
“メディウムだれ”を何度も塗りつつ、たまに水滴を垂らしてブラシのあとをぼやかす。
“メディウムだれ”を何度も塗りつつ、たまに水滴を垂らしてブラシのあとをぼやかす。
メディウムだれ が乾いたらできあがりだ。
身欠きニシン磨き。
身欠きニシン磨き。
この角度からだと、身欠きニシンに無数の足が生えたみたいでかわいい。逃げていきそうである。
この角度からだと、身欠きニシンに無数の足が生えたみたいでかわいい。逃げていきそうである。
しっくりなじむ。元は磨きブラシだからね。
しっくりなじむ。元は磨きブラシだからね。
・・・と思ったら身欠きブラシだ!
・・・と思ったら身欠きブラシだ!
たれが付きそうで付かない、画期的なブラシとなっております。
たれが付きそうで付かない、画期的なブラシとなっております。
以上が、長年の勘違いから生まれた「ニシン磨き」だ。最後まで、身欠きニシン磨きなのか磨きニシンなのか、あるいは違う呼び名がいいのか、どう呼んでいいのか迷いつつ終わる。

ニシン界のガッキー

出来上がったものだけ見れば、照りもあって魚っぽく見えてくる気もするが、元のニシン甘露煮と比較したらそれほど似てない気がする。形をきれいにまとめ過ぎてしまった。もっと輪郭を崩したほうが本物らしくなったと思うが、つい下地「磨き」に力が入ってしまったので仕方が無い。

実物を目の前にしても、いったいこれが何なのか、いまいち釈然としない何かがある。ふだん食べつけないニシンだったせいか。これを機に、ニシンとお近づきになろうか。残ったほうの甘露煮は、そば以外の方法で食べてみようか。
干したままの身欠きニシンで細いブラシも作ろうと思ったが手をつけられず。普通にツマミになるであろう。
干したままの身欠きニシンで細いブラシも作ろうと思ったが手をつけられず。普通にツマミになるであろう。

告知

1)4月1日、4日に日本橋三越本店の7階特設会場にて、10時30分~17時まで、「三越のライオンはんこ」でしおりを作る、というワークショップをやります(参加費500円)。
皆様おこしあそばせくださいませだわよ。

2)4月18日~23日は西荻窪にて展示をさせていただくことに!
20日にはワークショップも!詳しくは「ギャラリーカドッコ」さんのページにてご確認ください。磨きニシンも飾りますのでどうぞよろしくお願いいたします。 http://cadocco.jimdo.com/
20日にはワークショップも!詳しくは「ギャラリーカドッコ」さんのページにてご確認ください。磨きニシンも飾りますのでどうぞよろしくお願いいたします。
http://cadocco.jimdo.com/
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