特集 2014年2月28日

四国・五十一番札所の地底マントラに行く

時代は地底マントラです!
時代は地底マントラです!
四国八十八ヶ所巡りというものがある。四国にある八十八ものお寺を巡拝する江戸時代から続く歴史ある行為だ。海外でも人気があるらしく、向こうのガイドブックでも紹介されている。

その内の一つ51番札所「石手寺」が外国人に人気らしい。「地底マントラ」という洞窟があり、それが心をつかんでいるのだそうだ。ぜひ行ってみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

松山でオススメ!

愛媛県にある51番札所「石手寺」。本堂は国の重要文化財になっており、太子堂は「落書堂」とも呼ばれ、夏目漱石や正岡子規もここに落書きをしている。そんな歴史あるお寺にあるのが「地底マントラ」である。
石手寺にやってきました!
石手寺にやってきました!
地底マントラ、テーマパークのアトラクション名にも聞こえる。私はその存在を知らなかった。地元のテレビ局のディレクターさんに「松山でオススメの場所ないですか?」と聞いたら、「地底マントラ」と教えられたのだ。地元では有名なのかと思いきや、隣の音声さんは「知らない」と言う。地元でも有名ではないのかもしれない。
これは国の重要文化財の本堂
これは国の重要文化財の本堂
そのディレクターさんの話よれば、日本のガイドブックではそうでもないが、海外のガイドブックでは大きく紹介されていて、海外での知名度が高いという。訪れる人は日本人より外国人の方が多いとか。実に興味深い場所だ。
地底マントラの入り口
地底マントラの入り口

昔はクリスマス色

地底マントラへの入り口は本堂の脇の日当りが悪い場所にあった。日本人はもちろん、外国人もおらず、私しかそこにはいない。石手寺には人はいたのに。どこか怖く感じる。講義室に入ったら誰もいなくて、今日、授業ないんだっけ、みたいな恐怖だ。
中はこんな感じ
中はこんな感じ
入り口を入るとすぐに道は二つに分かれる。まずはまっすぐに進む。50メートルほどの直線にお地蔵さんが朝の開店を待つ人のように並んでいる。また地底マントラだけれど、地下に行くわけではなく、ゆったりとした上り坂。お線香の匂いが漂い、静かで私の靴音だけが響く。
本当はもっと暗い
本当はもっと暗い
少し進むと踊り場みたいな広さの場所がある。そこには大きなお地蔵さんと、赤ちゃんの寝るベッドの上でクルクル回るようなやつがあった。もちろん回っていない。暗くてなんなのか分からない。明るくてもよく分からなかったかもしれない。お寺という固定観念があるからだ。
天井でクルクル回るようなやつがお地蔵さんの上にある
天井でクルクル回るようなやつがお地蔵さんの上にある
あとでこの洞窟を解説していたおじいさんに話を聞けば、そのクルクル回るようなやつは、電飾でかつては赤と青の光がピカピカしていたらしい。急にクリスマス色が出てきた。お寺らしくないインテリア。それは聞かなければ分からない。
洞窟を進むと裏側に出た(裏側はお寺色ゼロ、ただの道)
洞窟を進むと裏側に出た(裏側はお寺色ゼロ、ただの道)
平成元年に地底マントラは掘られたらしい
平成元年に地底マントラは掘られたらしい

裏側のコンクリ像

この地底マントラは平成元年に掘られたそうだ。そのマントラを抜けた先は道路で、そこを渡れば「マントラ塔」がある。その敷地への入り口は地底マントラ以上に異世界だった。近所で有名なおじさんの家、みたいな感じがする。コンクリのえんま様の下に英語の看板だ。
入り口から異世界
入り口から異世界
ウェルカムなんとかと書いてあるっぽい
ウェルカムなんとかと書いてあるっぽい
中に入れば壊れたコンクリ像。きらびやかなものに心が躍るのが素直だと思うが、私のその辺の感性は、親の教育の結果なのか、友達がいないで休み時間になるとレモン石鹸で手を洗った青春時代の影響なのか、ひん曲がっていて、きらびやかでない方が心が躍る。よって、ここは心が躍る場所だった。
コンクリ像
コンクリ像
入り口のえんま様、英語の看板、壊れたコンクリ像、そのようなものが私の心を宝塚歌劇団以上に踊らせる。しかしきらびやかなものにもキチンと心は踊る。金ピカ。EXILE以上に心が躍る。マントラ塔は金ピカなのだ。
金ピカのマントラ塔
金ピカのマントラ塔

もう一つの方へ

難しいもので、きらびやかでないものに心が踊る反面、金ピカなものにも心は踊る。難しい年頃なのだ。28歳だけど。地底マントラも電飾の存在が心を躍らせる。そのような難しい人間を満たしてくるのがこの場所。道後温泉に行っている場合ではないのだ(本当は取材を終えたら行く予定だった)。
地底マントラに戻ってもう一方の道へ
地底マントラに戻ってもう一方の道へ
地底マントラは入り口を入ってすぐに道が分かれていたので、先ほどとは違う道へ進む。解説していたおじさんによれば、コチラの道は昔からあったそうだ。

またコチラの道の脇にあるお地蔵さんの下には、四国八十八ヶ所の各寺の砂があり、踏めば八十八カ所を回ったことになるそうだ。51番札所だけで、88カ所回ったことになるのだ。便利。
この地蔵の下に各お寺の砂
この地蔵の下に各お寺の砂
八十八カ所は徒歩では40日ほどかかる。しかし、これを使えば2分だ。カップ麺より早く結願できる。素晴らしいシステム。また奥に行けば弘法大師が数週間、断食した洞窟もある。コチラは真面目な感じで電飾も壊れたコンクリ像もないけれど、その便利なシステムに心が踊る。いま(平成元年からだけど)石手寺が熱い! と心から思った。
弘法大師が断食した洞窟
弘法大師が断食した洞窟

温泉より寺だ

地元の人に教えていただいたスポットだったが、行ってみると難しい私の心をガッチリ掴むスポットだった。

取材に行った日は帰る日だったので、電車の時間を気にしなければならなかった。本当は、石手寺に取材に行って、道後温泉に入ってという流れだったけれど、石手寺が楽し過ぎて道後温泉に行く時間を失ってしまった。

浦島太郎気分。私にとっては、竜宮城が地底マントラで、乙姫がコンクリ像なのだ。
地底マントラは、暗くて何に拝んでいるか分からなかった
地底マントラは、暗くて何に拝んでいるか分からなかった
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